キヤノン RF400mm F2.8L IS USM でラグビーを撮る|中西祐介

中西祐介
キヤノン RF400mm F2.8L IS USM でラグビーを撮る|中西祐介

はじめに

 EFレンズ時代からスポーツフォトグラファーの支持を集め続ける400mmF2.8がRFマウントになって登場しました。私が最初に使用したのはEF400mm F2.8L IS USMでした。スポーツ写真を仕事にするためにどうしても必要になり、当時は少々無理をして購入したのを今でもよく覚えています。私のスポーツフォトグラファーのキャリアの中でこのレンズはなくてはならないものとなり、RF400mm F2.8L IS USMで3代目になります。

 サッカーやラグビー、水泳など多くのスポーツ撮影は400mm以上の焦点距離が必要になるケースが多くあります。近年ではカメラの高感度性能がよくなったことを受けて開放絞りがF4以上のズームレンズという選択肢もありますが、ナイターや室内競技という決して明るくないギリギリの環境下では、開放絞りF2.8は撮影者に余裕を与えてくれるため大変重宝しています。今回はRF用1.4×エクステンダーであるEXTENDER RF1.4との組み合わせも含めて、ラグビーを被写体に撮影を行いました。

■使用機材:Canon EOS R3 + RF400mm F2.8 L IS USM + EXTENDER RF1.4x
■撮影環境:ISO1250 SS1/2000 F4

開放絞りから圧倒的な高画質を持つレンズ

 私がスポーツを撮影する際に一番よく使用する絞りは開放です。その理由は高速シャッターを低感度で切りたいということと、被写体を浮かび上がらせる独特なボケ味を求めるためです。短い焦点距離では得られない超望遠独自の圧縮効果と被写体を引き立てる綺麗な背景のボケ味は力強さの表現を求めるスポーツ撮影では大きな効果を発揮します。

 私が一番にレンズに求める性能は開放絞りからシャープで満足いく画質が確保出来ることです。私としては、少し絞れば画質が良くなるというレンズはスポーツ撮影において使用ハードルが高いと思います。RF400mm F2.8L IS USMはこの条件を十分に満たしてくれるレンズです。

 その分価格も高いですが、高倍率ズームレンズでは決して得られない圧倒的な高画質を体験できます。今回の撮影ではラグビー選手が一瞬だけ見せる表情や体の強さ、スピード感などの彼らが体全体で表現している熱量をそのまま写真に落とし込めたと思います。

■使用機材:Canon EOS R3 + RF400mm F2.8 L IS USM + EXTENDER RF1.4x
■撮影環境:ISO800 SS1/2000 F4

高速で正確なAF性能

 ラグビーは複数の選手が交錯しながら試合が展開し、左右や斜め前への動きが交互にやってきます。少し気を抜いていると次のシーンに移っていることも多く、絶えず選手の動きを観察しながら撮影する必要があります。

 一度フォーカスを外してしまうとボールを持つ選手を見失ってしまうため、AFには初動のフォーカススピードや継続した正確さを求めます。狙った選手が一気に加速したり、突如走る方向を変えるシーンに粘り強く追い続けてくれる力が必要です。タックルの瞬間は初動のAFスピードが重要になってきます。

 AFは組み合わせるボディ性能によっても大きく左右されますが、レンズ単体の力も大きいです。RF400mm F2.8L IS USMはスポーツ撮影に必要な全ての要素を満たしてくれるためとても信頼しています。これまでもワンプレーで勝敗が決まってしまう重要な場面で何度も私を助けてくれました。

■使用機材:Canon EOS R3 + RF400mm F2.8 L IS USM
■撮影環境:ISO640 SS1/3200 F2.8

軽量化された超望遠

 超望遠レンズというと重量が大変気になりますが、RF400mm F2.8L IS USMは2890gです。数字で見ると約3kg弱ですが、実際に手に取ると想像以上に軽く感じます。これはレンズ全体の重量バランスがよく持ちやすいためです。

 場所を移動しながら長時間撮影をした際も、以前のレンズに比べて疲労を低減してくれるのでとても助かります。私は一脚を使用して撮影することが多いですが、レンズを頻繁に上下に振るような撮影では機動力を確保するために一脚を外して手振れ補正5.5段分の効果を信じて手持ち撮影をするケースも多くなりそうな予感がしています。

 本レンズでも十分高性能ですが、今後新製品が開発されるのであれば開放絞りF2.8を維持したまま小型化と更なる手振れ補正機能の強化を期待したいところです。

■使用機材:Canon EOS R3 + RF400mm F2.8 L IS USM + EXTENDER RF1.4x
■撮影環境:ISO1250 SS1/2500 F4

エクステンダーとの組み合わせも良好な結果

 400mmといつもセットで持ち歩いているのがEXTENDER RF1.4xです。ラグビーではハーフラインよりも遠くのエリアで撮影する場合は400mmでは選手が小さくなってしまうので、1.4×のエクステンダーを装着して焦点距離を560mmに伸ばして撮影しています。400mmと560mmでは見える世界が大きく違います。

 カメラの高画素化に伴い、撮影後にトリミングで対応という選択もありますが、やはり撮影時に焦点距離を伸ばしたほうが自分の理想に近いのと同時に、撮影するタイミングやファインダーを通して見えている世界が異なるため、撮影時に可能な限りフレーミングを完結するようにしています。

 絞りは1段暗くなりF4となりますが、画質の低下もよく抑えられていて利便性がとても高いです。またAFスピードは僅かに落ちますが実用上問題ありません。EF用のエクステンダーに比べ、RF用はより薄くコンパクトになったのもいいですね。

 ×2のEXTENDER RF2xもラインナップにありますが、開放絞りが2段落ちてしまうことを考慮してEXTENDER RF1.4のみ使用しています。

■使用機材:Canon EOS R3 + RF400mm F2.8 L IS USM + EXTENDER RF1.4x
■撮影環境:ISO1250 SS1/2000 F4

まとめ ラグビー撮影のコツ

 ラグビーは知れば知るほど面白くて奥深いスポーツです。こちらではラグビー撮影をもっと楽しむために、私が実践していることをいくつかお伝えできればと思います。ラグビーは上下左右、斜め前への予測がしづらい複雑な動きやスピードの急加速、急減速などがあり、動きを追っていくのが難しいスポーツかもしれません。

 その動きについていくためにまず出来ることは、ルールと各ポジションの役割や動きの特徴を理解することです。競技経験者や普段からラグビーを見ている方はご存知のことばかりだと思いますが、これらを知ることで試合の中で次の展開が読みやすくなり、次にどんなシーンがやってくるのかを予想して身構えることが出来るようになります。

 その結果として動きを追いやすくなると同時に、シャッターを押すタイミングやカメラを振る方向を判断する際に僅かではありますが気持ちに余裕が生まれてきます。そうするとよりリラックスしてカメラを構えることが出来て突発的な操作ミスや手振れを防ぎ、正確なフレーミングの構築を手助けしてくれます。このような土台があるとレンズが持っている本来のAF性能や高画質といったハード面を一層生かせると思います。

 今回はラグビーを被写体にして撮影を行いました。全てをお伝え出来てはおりませんが、RF400mm F2.8L IS USMが持つ圧倒的な描写力は他の追随を許さない唯一無二の存在であることは間違いありません。これからもこのレンズを手に様々なスポーツの現場に出かけていきたいと思います。

■使用機材:Canon EOS R3 + RF400mm F2.8 L IS USM + EXTENDER RF1.4x
■撮影環境:ISO1600 SS1/1600 F4
■使用機材:Canon EOS R3 + RF400mm F2.8 L IS USM
■撮影環境:ISO1250 SS1/3200 F2.8

 

 

■撮影協力:日本大学ラグビー部
練習試合にて撮影

■写真家:中西祐介
1979年東京生まれ 東京工芸大学芸術学部写真学科卒業。講談社写真部、フォトエージェンシーであるアフロスポーツを経てフリーランスフォトグラファー。夏季オリンピック、冬季オリンピック等スポーツ取材経験多数。スポーツ媒体への原稿執筆、写真ワークショップや大学での講師も行う。現在はライフワークとして馬術競技に関わる人馬を中心とした「馬と人」をテーマに作品制作を行う。

・日本スポーツプレス協会会員
・国際スポーツプレス協会会員

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