キヤノン EOS R5で撮るネイチャースナップのススメ【高倍率ズーム編】

小林義明
キヤノン EOS R5で撮るネイチャースナップのススメ【高倍率ズーム編】

はじめに

フィールドを散策しながら気になったものをどんどん撮っていくネイチャースナップのシリーズも3回目となります。ネイチャースナップがどんなものなのか、だんだん分かってきてもらえたところではないしょうか。同じフィールドにいても、人それぞれに目に入ってくるものが違うのが面白いところです。今回はキヤノンのEOS R5を片手に散歩してきました。

今回の機材はCANON EOS R5とRF24-240mm F4-6.3 IS USMです。たいていの撮影はこの組み合わせだけで撮れてしまう、機動性の高いセットです。

EOS R5はここが好き

キヤノンの中堅モデルであるEOS R5は、高画素と扱いやすさを両立していて、一眼レフのEOSと併用しても違和感なく使えるところが気に入っています。

私は後処理をほとんどしないので、露出を撮影時にしっかり決めるようにしています。露出補正を頻繁に行うため、撮影時にもカメラを持ち変えることなく操作できるサブ電子ダイアルは、どんなカメラよりも優れている操作部分だと思っています。

とくに半年は冬となる北海道では手袋をしたときの操作性が重要で、その点でも扱いやすいカメラといえます。

EOS R5は約4500万画素と解像力に優れていて、緻密な風景撮影でもしっかり細かいところまで描き出してくれる。手ブレ補正もしっかり効いて、手持ち撮影の領域も広く、ネイチャースナップ向けのカメラだ。
■撮影機材:CANON EOS R5 + RF24-240mm F4-6.3 IS USM
■撮影環境:F14 160秒 ISO200 +0.3EV ピクチャースタイル:スタンダード C-PLフィルター
EOSのサブ電子ダイアルは現在の一眼レフのなかでもとくに優れた操作系だと思っている。ミラーレス化されたときに一度廃止されてガッカリしていたが、復活して本当に良かった。

APS-Cサイズにクロップして撮影することも多く、そのときも約1700万画素あり、ちょっとした大伸ばしでも実用になる画素数が保てるのも気に入っているところです。電子シャッターで撮影したときにローリング歪みがあまり起きないのも他のモデルと比べていいところで、電子シャッターを基本としています。

林道の脇に咲いていたクリンソウ。後ろにも花を入れて、林道が入らないようなカメラポジションから240mmで撮影。カメラポジションが限られるときは画角変化の自由度が高い高倍率ズームが便利。
■撮影機材:CANON EOS R5 + RF24-240mm F4-6.3 IS USM
■撮影環境:F10 1/250秒 ISO3200 +0.3EV ピクチャースタイル:風景
同じ位置からAPS-Cにクロップすると、かなり花の姿を大きく切り取ることができた。約1700万画素あるとA2サイズ程度の大伸ばしでも十分使えるので、積極的に活用したい機能だ。
■撮影機材:CANON EOS R5 + RF24-240mm F4-6.3 IS USM
■撮影環境:F10 1/250秒 ISO3200 +0.3EV ピクチャースタイル:風景 APS-Cクロップ
デフォルトの設定では電子先幕だが、普段は電子シャッターにして撮影することが多い。シャッター幕の耐久性を気にしなくていいのもうれしいし、静かに撮影できるのが気に入っている。ただ、連続撮影時は秒10コマくらいの設定ができるとうれしい。

ただ、AFに関しては光学ファインダー機の方が安定している感じがしていて、主に風景など動きのないものの撮影で使うことが多いです。

便利なRF24-240mm F4-6.3 IS USM

EOS R5と同時に購入したレンズがこの「RF24-240mmF4-6.3 IS USM」です。実はEOS R5は当初8K動画撮影用に購入したので、センサーにゴミがつくことを心配して、レンズ交換の頻度を減らせるこの高倍率ズームを選択しました。センサーゴミに関しては、EOS R5はほとんどつかないので気にすることはなかったようです。

24mmで撮影。たいていの風景では24mmくらいあれば画面におさまってくれて、使い勝手の良い画角となっていると思う。C-PLフィルターを使用しても画面の四隅でケラレることがないのも安心だ。初期のファームウェアでは広角側で画面の隅で手ブレ補正による像の流れが見られたようだが、新しいファームでは修正されている。
■撮影機材:CANON EOS R5 + RF24-240mm F4-6.3 IS USM
■撮影環境:F11 1/125秒 ISO200 +0.7EV ピクチャースタイル:スタンダード
240mmで撮影。24mmと比べると画角の変化は相当大きく、10倍ズームの威力を感じられる。広い景色を撮影してから、景色の中の魅力的な部分だけを切り取るのに威力を発揮してくれる。
■撮影機材:CANON EOS R5 + RF24-240mm F4-6.3 IS USM
■撮影環境:F11 1/320秒 ISO250 +0.7EV ピクチャースタイル:スタンダード

もちろんスチール撮影にもこの高倍率ズームは活躍してくれています。開放絞り値はそれほど明るいとは言えませんが、風景撮影では絞り込むことも多く、ボディが高感度にも対応できることを考えると十分だといえます。

画角は望遠側がもう少し長くなるとありがたいと感じているのですが、そのときはクロップで対応しています。画質についてもレンズ個別に補正が行われているおかげで実用性十分といえ、感度を上げすぎないようにすれば、十分な解像力が得られています。

フィルター径が72mmとコンパクトなのも良いですね。最短撮影距離が焦点距離によって変化することと、もう少し近づけるようになると、より扱いやすくなると感じています。

林床に咲くギンリョウソウを撮影。広角接写的に狙ってみたが最短撮影距離の制約で24mmではちょっと小さくなってしまうので、30mmで撮影している。画質がもう少し悪くなってしまっても、あとちょっと寄れるようになるとうれしい。
■撮影機材:CANON EOS R5 + RF24-240mm F4-6.3 IS USM
■撮影環境:F11 1/80秒 ISO1000 +1.3EV ピクチャースタイル:スタンダード C-PLフィルター

高倍率ズームを使うメリット・デメリット

高倍率ズームのメリットは、広角と望遠を1本のレンズで両立できるところです。実は北海道で撮影していると、広い景色を広角で撮影したら次は望遠で部分を切り取るというように大きな画角変化が求められることが多く、24-70mmと70-200mmなどの組み合わせだと、頻繁にレンズ交換が必要になってしまいます。

真冬の朝、マイナス10℃以下になっているときは手袋をしていても指先が痺れてきて細かい作業がしにくくなります。そうなるとレンズ交換も一苦労で、できれば避けたい作業になります。

また、風景を撮っているときに突然いきものが出てくるような、咄嗟のシャッターチャンスではレンズ交換していると撮り逃すこともあり、高倍率ズームのありがたみを感じているところです。

雲海と日の出の景色を撮影。24mmでは手前の景色まで含めてフレーミングすることができる。シルエットとなっている手前の部分のバランスを考えながら構図を決めた。
■撮影機材:CANON EOS R5 + RF24-240mm F4-6.3 IS USM
■撮影環境:F10 1/80秒 ISO250 +0.7EV ピクチャースタイル:風景
日が昇って雲海に朝日が射し込んで赤くなり始めたところと山の形、手前の雲海の波打つ様子のバランスを考えてフレーミングしている。このときは113mmで撮影している。
■撮影機材 CANON EOS R5 + RF24-240mmF4-6.3 IS USM
■撮影環境 F10 1/125秒 ISO400 +0.7EV ピクチャースタイル:風景
240mmにして太陽が大きく写るようにフレーミング。この場所では脚立に乗って撮影しているため、レンズ交換はできればしたくないところ。それに日の出のようなときは太陽の動きも速く、瞬時にフレーミングを変えて撮影できる高倍率ズームは実にありがたい。
■撮影機材:CANON EOS R5 + RF24-240mm F4-6.3 IS USM
■撮影環境:F10 1/250秒 ISO800 +0.7EV ピクチャースタイル:風景

レンズ1本で大きな画角変化が得られるのですから、それぞれの焦点距離の特長を活かしながら撮影すれば、多才な表現が可能となるレンズです。使い手の腕が顕著に表れるレンズといっても良いでしょう。

倒木に生えているキノコを24mmで撮影。広角レンズは広く写すだけでなく、被写体と同時に周りの環境を写し込むのに適している。主役となる被写体に近づいて撮影することが大切だ。
■撮影機材:CANON EOS R5 + RF24-240mmF4-6.3 IS USM
■撮影環境:F11 1/60秒 ISO500 +0.7EV ピクチャースタイル:スタンダード C-PLフィルター
肉眼で見た感じに近い遠近感が得られる58mmで撮影。奇をてらわずに自然な雰囲気を狙うのであれば、50mm前後の焦点距離を選ぶようにするといい。
■撮影機材:CANON EOS R5 + RF24-240mm F4-6.3 IS USM
■撮影環境:F13 1/80秒 ISO320 ピクチャースタイル:スタンダード C-PLフィルター
雲海の端のあたりで霧がかかっているような景色の部分を240mmで切り取っている。景色の中から魅力的な部分を抜き出すのに望遠レンズは活躍する。じっくり観察してそのときの最高の部分を見つけて切り取ろう。
■撮影機材:CANON EOS R5 + RF24-240mm F4-6.3 IS USM
■撮影環境:F11 1/400秒 ISO2000 -0.3EV ピクチャースタイル:風景

デメリットとしては画角変化だけに頼って撮影すると、被写体が画面にほどよくおさまっているだけになって絵作りが甘くなることでしょうか。画角を変えると同時にカメラポジションを厳選して、構図には妥協しないことが大切です。

また、高倍率ズームは最短撮影距離が他のレンズと比べて長めのことが多いので、広角側で被写体に寄って遠近感を強調するような撮り方が思うようにできないこともあります。頻繁にこのような撮り方をする人には向かないといえます。

林道を走っていると森の奥にエゾシカの姿が見えた。車を停めて慌てて撮影した。このように被写体が小さいと、ちょっとピントが怪しいこともあるが、まあまあの雰囲気に撮影できた。
■撮影機材:CANON EOS R5 + RF24-240mm F4-6.3 IS USM
■撮影環境:F8 1/250秒 ISO3200 +0.3EV ピクチャースタイル:風景 C-PLフィルター
さらにAPS-Cにクロップしてエゾシカの姿をより大きく撮影した。R5は高画素機なのであとからトリミングするという方法もあるが、個人的には撮影時に構図をしっかり完成させておきたいと考えている。
■撮影機材:CANON EOS R5 + RF24-240mm F4-6.3 IS USM
■撮影環境:F8 1/125秒 ISO3200 +0.3EV ピクチャースタイル:風景 APS-Cクロップ
水滴のきらめきを背景にタンポポの穂を撮影。後ろの玉ボケが口径食によって楕円になるのを防ぐために、APS-Cにクロップしている。玉ボケの配置やタンポポの穂が玉ボケと重ならないようカメラポジションは微調節している。
■撮影機材:CANON EOS R5 + RF24-240mm F4-6.3 IS USM
■撮影環境:F6.3 1/640秒 ISO200 ピクチャースタイル:風景 APS-Cクロップ

まとめ

広い景色のなかでは構図の変化を付けることが難しいので、バリエーションを作るためにレンズの画角も大きく変化させて撮影することが効果的です。頻繁に広角と望遠を切り替えなければならないシーンには、レンズ交換の手間を省ける高倍率ズームを使うことで、効率よく撮影できます。

画角変化だけでなく、焦点距離ごとの遠近感や被写界深度の変化も理解して、高倍率ズームを利用すれば多才な表現が可能です。より高画質なレンズはたくさんありますが、身軽に行動でき咄嗟のシャッターチャンスに強いという面において高倍率ズームに勝るものはないと思います。

自由な視点を広げられるレンズとして、高倍率ズームを活用してネイチャースナップを楽しんでみてください。

 

 

■自然写真家:小林義明
1969年東京生まれ。自然の優しさを捉えた作品を得意とする。現在は北海道に住み、ゆっくりとしずかに自然を見つめながら「いのちの景色」をテーマに撮影。カメラメーカーの写真教室講師などのほか、自主的な勉強会なども開催し自分の視点で撮影できるアマチュアカメラマンの育成も行っている。

 

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