PENTAX K-3 Mark IIIで楽しむネイチャースナップとレンズ交換のススメ

小林義明
PENTAX K-3 Mark IIIで楽しむネイチャースナップとレンズ交換のススメ

はじめに

今年のサクラは全国的に早く、北海道でも一週間から10日ほど早く開花が始まりました。北海道のサクラは公園などに植えられたものがほとんどで、本州で見られるような自然風景として成立するものは少ないです。でも、視点を変えて見れば、そんな場所でもいろいろな写真を撮ることができます。

今回はPENTAX K-3 Mark IIIを片手に歩いたある日のロケを紹介していきますので、参考にしてください。

K-3 Mark IIIのここが好き!

PENTAXブランドのAPS-Cモデルでフラッグシップとなる「K-3 Mark III」は、適度なサイズ感とキビキビとした動作が使っていて心地よい一眼レフ。光学ファインダー機としてはAFエリアも広く、測距点レバーの搭載で操作性も向上しています。

測距点が101点へ増えたのと同時に、測距点選択レバーが搭載され、構図の自由度が高い操作性を身につけている。最新のファームウェアアップデートでは、測距点の範囲をより小さく選択できるようになり、いっそう正確なAFが期待できるようになった。

また、ウリとなっているファインダーの見やすさはこのクラスとしてはトップレベルで、光を読みとることが重要な写真撮影で大きなアドバンテージとなります。

風景撮影では多用するC-PLフィルターの効き具合も光学ファインダーならはっきりと分かり、意図通りの仕上がりを得られる。実際の光を感じられる光学ファインダーのいいところだ。
■撮影機材:PENTAX K-3 Mark III + HD PENTAX-DA★16-50mmF2.8ED PLM AW + C-PLフィルター
■撮影環境:F11 1/40秒 ISO200 +0.3EV カスタムイメージ:鮮やか
こういった被写界深度が浅くなるクローズアップ撮影でも、見やすいファインダーは的確なところにピント合わせができるので作品のクオリティが上がる。何となくAFでピントを合わせるのではなく、ここにピントを合わせると自分の意図を反映できるのだ。
■撮影機材:PENTAX K-3 Mark III + smc PENTAX-D FA MACRO 100mmF2.8 WR
■撮影環境:F2.8 1/200秒 ISO200 +1.7EV カスタムイメージ:雅

いくつもの機能の設定をまとめて登録できるユーザーモードもなくてはならないものです。あらかじめユーザーモードに各種の設定を登録しておけば、モードダイヤルを回すだけで瞬時に設定を大幅に変えることができます。

このユーザーモードを5パターンの登録ができるのが便利なところで、私は風景用、いきもの撮影用、三脚用など予め登録しておき、とっさに必要な設定を呼び出せるようにしています。

ユーザーモードが5つ登録できるようになり、瞬時にいくつもの設定を切り替えることができる。多機能だからこそ自分好みの設定を登録しておくことで、意図通りにK-3 Mark IIIを操ることができる。
ユーザーモードのうち4つまでは常用する設定を登録してあって、最後の5つ目は必要に応じて設定を登録している。名前をつけることもできるので、どんな設定であったのか忘れることもなく、活用できるのもいい。
U3には動物撮影時用の設定をしている。露出はマニュアルで、晴天のタンチョウ撮影をベースにISO400、F8、1/1250秒を基準としている。実際の撮影ではここから調節をしていくことになる。

ダイヤルやボタンのカスタマイズ性も高く、購入と同時にカスタマイズしていて、まさに自分の手足のように使えるようになっています。唯一変更を希望するところは背面液晶を可動式にして欲しい、ということでしょうか。

私はCanon、Nikonも併用するので、前の電子ダイヤルで絞りの設定、後ろの電子ダイヤルで露出補正ができるように操作系を統一している。好みに合わせて細かくカスタマイズできるのはとてもありがたい。
K-3 Mark IIIでは、再生ボタンが窮屈な位置にあって誤操作をまねくと判断したので、購入してすぐに普段使わない「AEロックボタン」に再生機能を割り当てた。再生ボタンの方は「自動水平補正」を割り当ててある。

レンズを変えると世界が変わる

PENTAXのデジタル一眼レフはAPS-Cで始まったこともあり、APS-C用のレンズが揃っていることも気に入っている理由のひとつです。フルサイズ用と比べると、同じ画角でもレンズが一回り以上小さくなり、システム自体をコンパクトにまとめられます。超広角から超望遠まで持ち歩いても、小さなカメラバッグに収まるシステムはありがたいです。

普段持ち歩いているK-3 Mark IIIとレンズ。これでもフルサイズのセットと比較したら格段にコンパクトで軽くなり、機動性は格段に違ってくる。被写界深度の具合や画角のことを考えても、私はAPS-Cが合っていると感じている。

普段のセットとして、
HD PENTAX-DA★16-50mmF2.8ED PLM AW
smc PENTAX-DA★50-135mmF2.8ED[IF]SDM
smc PENTAX-D FA MACRO 100mmF2.8 WR
HD PENTAX-D FA 150-450mmF4.5-5.6ED DC AW
HD PENTAX-DA FISH-EYE10-17mmF3.5-4.5ED

を持ち歩くことが多いです。HD PENTAX-D FA 150-450mmF4.5-5.6ED DC AWは大柄で重いですが、他のレンズはどれもコンパクトで高画質です。

コンパクトに超広角から超望遠まで持ち歩けるおかげで、私の視点は幅広く、まさに肉眼のようにいろいろなものを撮ることができます。

暗く見える防風林を背景に形の良いサクラを切り取った。フルサイズなら70-200mmに相当する望遠ズームも、APS-C専用設計ならふたまわり近くコンパクトになって、とりまわしも良い。
■撮影機材:PENTAX K-3 Mark III + smc PENTAX-DA★50-135mmF2.8ED[IF]SDM
■撮影環境:F4.5 1/160秒 ISO320 -0.3EV カスタムイメージ:ナチュラル

みなさんにもそれぞれに使いやすいレンズや得意なレンズがあると思います。でも、一眼レフを使っているのに面倒だからとレンズ交換をしないのでは、宝(カメラ)の持ち腐れになってしまいます。交換レンズはそれぞれ表現できる世界が違いますから、一眼レフはレンズを使いこなしてこそ活きてきます。気に入った被写体を見つけたら、レンズを変えて撮影できるときはぜひ撮っておきたいものです

サクラの根本付近くに植えられていたシバザクラ。その中にポツンと1本だけツクシが顔を出していた。ちいさな被写体なので、マクロレンズでクローズアップした。
■撮影機材:PENTAX K-3 Mark III + smc PENTAX-D FA MACRO 100mmF2.8 WR
■撮影環境:F4.5 1/160秒 ISO200 -0.3EV カスタムイメージ:鮮やか
同じ被写体でもレンズを変えるとまったく違ったイメージで見せることができる。ここではフィッシュアイズームを使って、後ろにあるサクラも画面に入れることで、広がりのある景色としてツクシやシバザクラを捉えた。
■撮影機材:PENTAX K-3 Mark III + HD PENTAX-DA FISH-EYE10-17mmF3.5-4.5ED
■撮影環境:F11 1/500秒 ISO640 カスタムイメージ:鮮やか

また、レンズが決まれば撮れるシーンや雰囲気も限定されてしまいます。逆にムリに画角に合わないシーンを撮影しても中途半端な構図となって、作品として物足りないものになってしまいます。せっかく良い被写体と出会えたわけですから、そんなことにならないよう、面倒がらず撮影意図とシーンに合わせてレンズを変えて撮影しましょう。

もし、1本だけのレンズで撮影するとしたら、マクロレンズでネイチャースナップをしてみるといいでしょう。焦点距離によって切り取れる範囲は違いますが、ちょっとした風景からクローズアップまで撮影することができます。

背の低いサクラを地面近くに咲いているタンポポを背景として撮影。このような近くの被写体ではマクロレンズでも十分に意図通りに切り取ることができ、ネイチャースナップ向きのレンズだ。
■撮影機材:PENTAX K-3 Mark III + smc PENTAX-D FA MACRO 100mmF2.8 WR
■撮影環境:F4.5 1/160秒 ISO640 +2EV カスタムイメージ:雅
同じところで足下を見ると、タンポポの植えにサクラの花びらが散っていた。こんなシーンでもマクロレンズならグッと近づいて、凝視して見ているようにクローズアップすることができる。
■撮影機材:PENTAX K-3 Mark III + smc PENTAX-D FA MACRO 100mmF2.8 WR
■撮影環境:F4 1/160秒 ISO250 +1EV カスタムイメージ:鮮やか

立ち止まると見えて来るもの

今回は、扉のカットに写っている双子のサクラ呼ばれるサクラの木がある公園で撮影しました。定番のサクラだけでなく、広い範囲にサクラが植えられていて、なかなか華やかなところです。

ネイチャースナップで大切なのは、定番だけを撮影して次の定番に移動する観光的な撮影をするのではなく、その場所の雰囲気を表現できるようなバリエーションを探すようにすることです。だから、私はカメラを持って歩いていると、とても歩みが遅いです。この公園でも2時間ほどウロウロしながら撮り歩いていました。

扉のカットを標準ズームで撮影したあと、後ろを振り返るとシラカバの新緑とサクラのコラボがとてもきれいだった。ここではレンズを超望遠ズームに交換して切り取った。
■撮影機材:PENTAX K-3 Mark III + HD PENTAX-D FA 150-450mmF4.5-5.6ED DC AW
■撮影環境:F18 1/250秒 ISO1250 カスタムイメージ:鮮やか

また、私は見るだけでなく耳や鼻も活かして被写体を探しています。小鳥の鳴き声が近くですれば良い被写体になりますし、森のなかをカサカサと音を立てて動く小動物にも気を配ります。森で甘い香りが漂っていれば、近くに花がたくさん咲いているのではと探すのです。

近くでヒヨドリのにぎやかな鳴き声が聞こえたので、静かに待っていると、すっきりした場所に出てきた。450mmでも小さかったので、クロップして構図を整えて撮影した。
■撮影機材:PENTAX K-3 Mark III + HD PENTAX-D FA 150-450mmF4.5-5.6ED DC AW
■撮影環境:F7.1 1/500秒 ISO500 +1.3EV 1.7×クロップ カスタムイメージ:鮮やか

サクラの時期は色のある被写体も少ないので、どうしても鮮やかなサクラの花に目が向いてしまいますが、ワンカット撮影したらその場で自分の周りを見回してみるのが新しい被写体を見つけるポイントです。広い景色を撮影した後に、切り取ったらきれいなところはないか、クローズアップしてみるとどうか、と視点を変えて景色を見つめるのです。今回は、足下で多くの被写体を見つけることができました。

足下ではタンポポよりもずっと小さいエゾリンドウも咲き始めていた。地面にカメラを置いたアングルからライブビューで撮影。こんな小さな被写体にも気づくことができるとうれしいものだ。
■撮影機材:PENTAX K-3 Mark III + smc PENTAX-D FA MACRO 100mmF2.8 WR
■撮影環境:F3.5 1/200秒 ISO200 カスタムイメージ:鮮やか

主役と脇役を入れ替えよう

サクラも部分的に切り取るだけでは同じような写真ばかりになってしまいますから、ちょっと工夫が必要です。目立つ被写体があるときに雰囲気を変えるコツとしては、目立つ主役になりやすい被写体を脇役になるよう工夫してみるといいですね。

サクラの幹にツルアジサイが葉を広げていた。よく見るとひとつだけサクラの花びらが乗っていて、背景に満開のサクラを入れることで季節の移り変わりを表現できるワンカットとなった。
■撮影機材:PENTAX K-3 Mark III + HD PENTAX-DA★16-50mmF2.8ED PLM AW
■撮影環境:F9 1/80秒 ISO200 カスタムイメージ:鮮やか

サクラのような誰もが知っているものならちょっとくらいボケていても、写真を見る人は色や形から何が画面に入っているのかイメージしやすいです。また、組写真のような複数の写真で構成しているときには、すでにそのぼかしているものをはっきりと見せた写真を見せていることから、同じ色が画面にあれば何がぼけているのか分かります。

サクラを背景に絵ができないかと考えて、木立の間に育っている小さな木をシルエット気味に捉えることにした。このような発想の転換でストーリー性のあるワンカットが生まれてくる。
■撮影機材:PENTAX K-3 Mark III + HD PENTAX-D FA 150-450mmF4.5-5.6ED DC AW
■撮影環境:F5.6 1/400秒 ISO320 カスタムイメージ:雅

なので、この場合はサクラを前ボケや背景にボケとして画面に入れるようにして被写体を探すのです。意図した前景・背景を被写体とバランス良く配置するには、カメラポジションを細かく調節することが必要です。まずは肉眼で大体の位置を把握して、ファインダーを覗きながら最終的なカメラポジションを細かく決定します。なんとなくこの場所から・・・とシャッターを押してしまうと、中途半端な写真になってしまいます。

このように視点を変えて工夫することで意外なものも被写体になって、作品のバリエーションも増えていきます。

まとめ

超広角から超望遠までの幅広い視点(画角)を利用することで、何気ない被写体が魅力的に見えてきます。システムがコンパクトになりさまざまなレンズをいつでも持ち歩けることは、自由な視点を手に入れることと同意ですから、そのコンパクトさを活かせるカメラボディを選び使いこなすことは、思い通りに撮影するための第一歩ともいえます。

重いから今日はこのレンズだけとなってしまうのなら、軽いからもう一本レンズを持っていこうかなと思えるPENTAXのシステムを選んで、ネイチャースナップを楽しんでみてください。

 

 

■自然写真家:小林義明
1969年東京生まれ。自然の優しさを捉えた作品を得意とする。現在は北海道に住み、ゆっくりとしずかに自然を見つめながら「いのちの景色」をテーマに撮影。カメラメーカーの写真教室講師などのほか、自主的な勉強会なども開催し自分の視点で撮影できるアマチュアカメラマンの育成も行っている。

 

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