ストロボ撮影でドラマティックなポートレートに!

はじめに
ポートレート撮影で使用する光は、自然光、LEDライト、ストロボなどがあります。それらの光は、被写体を明るく照らすためのメインの光として、もしくは演出を加えるための、アクセントの光として使用されていると思います。
今回はストロボを使用して、自然光だけでは作り出すことが難しい、ドラマティックなポートレートの撮り方をレクチャーします。
強いサイド光の「ハンサムライティング」

■撮影環境:絞り値:f/1.8 シャッタースピード:1/125秒 露出モード:マニュアル WB:オート0 ISO100 ピクチャーコントロール:スタンダード
まず、ストロボ1灯で作れる、ドラマティックなライティングがこちらです。サイドからの強い光が作り出す陰影が、モデルの顔の彫りをさらに深めて、かっこいいムードにしてくれる「ハンサムライティング」です。
ライティング名称は、ポートレート業界にそういう正式名称がある訳ではなく、筆者がムードに合わせて命名しただけですので、聞いたことがない!と思われた方、慌てなくて大丈夫です。

ストロボは株式会社サンテックの「JINBEI バッテリーモノライト HD-200PRO」を使用しています。最大出力200Wsのハイパワーながら、全長23cmの手のひらサイズのコンパクトさ!フル発光しても1.3秒のチャージですぐにシャッターが切れるので、リズミカルに撮影をしたい筆者には最適のストロボです。
この「HD-200PRO」に、H&Y Filters Japanの「[SMDV]FlipBeauty24ビューティーディッシュ Softbox (60cm)」を装着して、すりガラスの向こう側から、モデルの顔の位置がライトの中央になるように設置しています。

今回使用したソフトボックスは、ストロボからの光を反射する凸型の反射鏡が内部に設置されており、発光されたストロボ光を余すことなく拡散できる、画期的な製品です。
このレクチャーでは、「JINBEI バッテリーモノライト HD-200PRO」と「[SMDV]FlipBeauty24ビューティーディッシュ Softbox (60cm)」に乳白色の前布(ディフューザー)を装着したセットを、メインライトとして全シーンで使用しています。

■撮影環境:絞り値:f/1.8 シャッタースピード:1/125秒 露出モード:マニュアル WB:オート0 ISO100 ピクチャーコントロール:スタンダード
このライティングのポイントは、光が当たっていない側の顔がしっかり暗くなるように、照明を真横に設置することです。モデルにはカメラに向かって真正面を向いてもらい、鼻筋がくっきり出ているかを確認するとわかりやすいでしょう。
この写真が、まさかキタムラ本社の会議室で撮ったとは思えませんよね?
夜の街灯を意識した「シネマティックライティング」

■撮影環境:絞り値:f/1.8 シャッタースピード:1/125秒 露出モード:マニュアル WB:オート0 ISO100 ピクチャーコントロール:スタンダード
こちらはストロボを2灯使ったライティングです。強い逆光を人工的に作り出すことで、全体をシネマティックなムードに仕上げています。

モデルの右前方、少し上にメインライトを設置して、顔全体が明るくなるようにライティングします。サブライトとして、モデルの後方に「JINBEI スピードライト HD-2MAX」を設置します。
このクリップオン型ストロボは、最大出力が80Wsあり、ヘッド部分が水平方向に360度、垂直方向に90度回転します。ここではヘッド部分を前に倒して、モデルの首筋あたりを通って、カメラに光が向かうように設置しています。
このライティングのポイントは、モデルの顔の明るさは、メインライトだけでも撮影できるように光量を調節することです。
サブライトは、木の葉の隙間から強い太陽を覗き見るような気持ちで、モデルの首筋と髪の毛の間から少し漏れる光を写すと、印象的な写真に仕上げられます。ベストな位置に漏れる光を配置するには、何回かチャレンジが必要ですが、いい位置にハマると幻想的なカットが撮れますので、ぜひ諦めずチャレンジしてみてください!
撮影者は光源の位置を見ながら撮影することになるので、ストロボが光る瞬間は目を細めるなどして、目を傷めないように注意しましょう。
「シネマティックライティング」+ ストリークフィルター

■撮影環境:絞り値:f/2 シャッタースピード:1/125秒 露出モード:マニュアル WB:オート0 ISO100 ピクチャーコントロール:スタンダード
■フィルター:Magnetic Streak Rainbow フィルター Kit(ストリークレインボー)
こちらは前述と同じ「シネマティックライティング」ですが、丸い光をライン形状に変えてくれるフィルターを装着して撮影しています。このストリークレインボーは、フィルターの中にカラフルなナイロンの糸が内蔵されていて、強い逆光や点光源などに、カラフルでドラマティックな演出を加えてくれます。
ラインの方向は、フィルターを回転させることで変えられるので、ポートレートの場合は右上か左上から斜め下に流れる線を作ると、自然に見えやすいです。

このライティングのポイントは、サブライトの漏れ出る光が大きすぎると、細い線ではなく太い線が画面内に出てしまい、ライトセーバーみたいなってしまうので、肉眼ではわかりにくいくらいの、微量のにじみを作ることです。

フィルターを使用すると、演出効果が楽しくて色々買い揃えたくなってしまいますが、自分が所持しているレンズの口径がすべて同じという可能性は低く、同じフィルターが使えない事態が発生します。
かといって、レンズごとにフィルターを買い揃えていたのでは、とんでもなくコスパが悪い。ステップアップリングを使うとしても、着脱が面倒くさくて結局フィルター自体を使わなくなったり……。
そんな悩みを解消してくれるのが、このH&Y Filters Japanの可変式ステップリング「REVORING(レボリング)」です。今回使用したのは67-82mmのフィルター径に対応するタイプで、筆者が所持している多くのレンズに装着できました。フィルターは82mmのものを使用します。
リングをひねるようにずらすと、内側の黒い可動式のアーム部分が回転して開閉します。一度装着すれば、ぶれずにしっかりホールドしてくれます。撮影の効率とスマートさがぐっとアップする、便利アイテムです。
強い逆光の「ゴージャスライティング」

■撮影環境:絞り値:f/1.8 シャッタースピード:1/125秒 露出モード:マニュアル WB:オート0 ISO640 ピクチャーコントロール:スタンダード
■フィルター:Magnetic Streak Rainbow フィルター Kit(ストリークレインボー)

■撮影環境:絞り値:f/1.8 シャッタースピード:1/125秒 露出モード:マニュアル WB:オート0 ISO640 ピクチャーコントロール:スタンダード
■フィルター:Magnetic White PromistフィルターKit(ホワイトプロミストフィルター)1/4
こちらも「シネマティックライティング」と同じように、メインライトはモデルの右斜め前で、モデルの顔の明るさを調節し、サブライトで逆光を作り出しています。サブライトは、モデルの背中と右腕あたりを狙うような位置に設置し、強めの光量にします。

このライティングのポイントは、モデルの髪の毛、左腕、左のウエストラインを、光で形取るように意識することです。そうすることで、モデルの右顔はメインライトに照らされて綺麗な肌が再現でき、モデルの右側の体は逆光により幻想的に浮かび上がります。
さらに、ストリークフィルターを使えば、画面内に直線の光を出現させられるので、シャープなイメージとともに、よりゴージャス感が増します。光のにじみを作り出してくれるホワイトプロミストフィルターを使えば、逆光の光源を幻想的にぼかして、ドリーミーなムードを高めてくれます。
番外編!グラビア風日中シンクロ

■撮影環境:絞り値:f/5 シャッタースピード:1/160秒 露出モード:マニュアル WB:オート0 ISO100 ピクチャーコントロール:スタンダード
撮影日はあまり天気が良くなく、曇ったり雨が降ったりだったのですが、撮影途中で虹が出てきたので、急いで場所を変えて撮影した一枚です。

「JINBEI LEDスピードライト H1」をカメラに装着して、オンカメラのまま、直接モデルに当てています。
ストロボ無しで撮影すると、モデルの顔色は露出を調整すれば明るくできますが、背景も同時に明るくなってしまって、虹も見えなくなってしまいます。この日中シンクロの手法を使うと、モデルの顔色は明るく、でも背景は暗くすることができます。
この季節はストロボ撮影がオススメ!
ストロボ撮影というと難しいと思われがちですが、ちょっとコツを掴めば、肉眼で見た景色とはガラリと違う景色をカメラの中に収められる、楽しい撮影方法でもあります。
ソフトボックスは簡単に柔らかい光を作り出してくれるし、フィルターはワクワクする演出をプラスしてくれます。これからの季節、ロケ撮影は暑くて難しくなってくると思いますので、この機会にストロボ撮影を始めてみませんか?
■モデル:沙倉しずか
https://x.com/shi_saaa
https://www.instagram.com/sakura_shizuka/
■写真家:水咲奈々
東京都出身。大学卒業後、舞台俳優として活動するがモデルとしてカメラの前に立つうちに撮る側に興味が湧き、作品を持ち込んだカメラ雑誌の出版社に入社し編集と写真を学ぶ。現在はフリーの写真家として雑誌やWEB、イベントや写真教室など多方面で活動中。興味を持った被写体に積極的にアプローチするので撮影ジャンルは赤ちゃんから戦闘機までと幅広い。日本写真家協会(JPS)会員。