応募作品への寸評会!|風景写真の引き出しを増やす!その6:水の流れ 編

高橋良典
応募作品への寸評会!|風景写真の引き出しを増やす!その6:水の流れ 編

はじめに

 皆さんこんにちは。今回のshasha写真寸評は水の流れがテーマ。ご応募いただいたみなさまありがとうございます。水の表現は奥が深く極めるのが難しいのですが、それだけに撮っていて飽きることのない被写体とも言えます。それでは6月にお送りした水流表現のポイントを踏まえつつ早速、始めていきましょう。

t_ibaraさんの作品

●良かった点
 高速シャッターで描いた抽象的な揺らぎ模様と淡い色調がマッチ。柔らかな表現ですね。緑色とピンク色の映り込みの正体が何かはわからないのですが、日陰の水面に映り込む様子を狙うことで色がより引き立ちました。目の付け所が素晴らしい作品です。

●アドバイス
 一見、美しく見えるのですがよく見ると印象的な揺らぎ模様が画面下部1/3に固まっており、画面中央付近に隙が感じられます。カメラをもう少し下に振って、画面中央付近に良い模様を配置出来るとさらに作品が引き締まったでしょう。また、常に動き形を変えていく流れの撮影ではシャッターチャンスも重要。タイミングによっては同じ構図でも中央部分に良い形の模様が描けたかもしれません。その場で何枚も撮影と確認を繰り返すと完成度がアップしますよ。

【元の写真】

【画面下部の模様と映り込みは申し分ないのですが、赤丸の画面中央部に見せ場を持ってきたいところです】 

OKさんの作品

●良かった点
 思い切ったアンダー露出でハイライトを引き立たせ、強い光を印象付けました。画面左部分に映り込むブルーは青空の映り込みと思われますが、モノトーン調の中の差し色として上手く取り入れました。

●アドバイス
 露出は大変良かったのですが、画面構成の面でハイライトを生かし切れていないように感じました。輝度差が大きな状況では、明るい側に露出を合わせると暗い部分が落ち込みます。それ自体は良いのですが、この作品では主役のハイライトが画面の端に寄りすぎたことでシャドウ部がたるんでしまった印象です。カメラをもう少し下に振り、手前側の岸を入れ画面真ん中に川筋を通すことが出来れば、シャドウ部がハイライト部をより引き立ててくれたでしょう。手前を入れられなかった場合は、ハイライトを画面の内側に配置するようトリミングすると良いですよ。

【元の写真】

【右上のシャドウ部をカット。主役のハイライトを画面中央付近に配置したもの】

こういちさんの作品

●良かった点
 清涼感溢れる渓流作品です。可変NDフィルターを使い、シャッタースピードをしっかりとコントロール。滑らかでありながら流れの勢いも感じさせる絶妙な設定です。低速シャッターで若干手前の葉が被写体ブレを起こしていますが、川筋は少なからず風があるもの。この程度なら問題ありません。

●アドバイス
 作品的にはほとんど完成された状態なのですが、少し気になったのが構図です。この場合、画面の対角線に沿うよう川の斜めラインを配置した方がよりバランスが良くなります。余分なものが入らないのなら撮影時にカメラをやや上側に振って、川を対角線に沿わせても良かったでしょう。

【元の写真】

【対角線を意識してトリミングしたもの】

大西憲夫さんの作品

●良かった点
 向かって左側の滝は水量が多く、右側の滝は少ない状況。シャッターが遅すぎると左側が白くなりますし、早すぎると右側の印象が弱くなってしまいます。シャッタースピードの設定が難しい中、2つの滝の流れを上手く両立させました。

●アドバイス
 フィルターを持っていなかったとのことですが、NDに関しては撮影地がそう明るい場所ではなく、十分に低速シャッターが切れていることから不要だったと言えます。次にPLフィルターのお話です。画面下部、濡れた岩のテカリを生かしてみずみずしく描いている事自体は良いのですが、その反射が強すぎて滝への視線誘導を妨げているように感じました。PLがあれば、テカリ少し弱めて、主題の滝をより引き立たせることが出来たでしょう。

【元の写真】

【レタッチで手前の岩のテカリを抑えたイメージ】

たまどんさんの作品

●良かった点
 水車と水の勢いを意識して、シャッタースピードが遅くなりすぎないよう工夫したことが感じられます。主題を強調するため寄りの構図とし、部分的に切り取ったことも功を奏しました。水の輝きを半逆光で生かした光の読みがgoodです。

●アドバイス
 まずは露出。明るくなりすぎて写真が軽い印象になってしまいました。本当はもっと暗く撮りたいのですが、晴れている状況でこれくらいの低速シャッターを切るにはNDフィルターが必須と言えます。それから若干のカメラブレがあります。低速シャッターでの水流表現では三脚も必須。ご自宅から近い場所であれば再度NDフィルターと三脚を用意してトライしてみましょう。

【元の写真】

【適正な明るさのイメージ】

KhunTaさんの作品

●良かった点
 絶妙なシャッタースピード設定で流れの勢いを表現しています。もっと低速にして水を滑らかに描くのもアリなのですが、それだと奥に霞む水煙が消えてしまったでしょう。その場の状況と、どのように撮りたいかが明確に伝わる作品です。川幅を上手く使った正方形トリミングも良いですね。

●アドバイス
 狙いどころがハッキリしており、それに沿う設定が出来ている点は良いのですが、最上部の小さな滝状の部分に垂直ラインを合わせれば、より流れの勢いが伝わると感じました。もし撮影時に水準器を使用しているのなら、それだけにとらわれず、画面の印象を優先して垂直・水平を取ることを心掛けると良いでしょう。

【元の写真】

【角度調整したもの】

kazさんの作品

●良かった点
 超低速シャッター(30秒)で柔らかに流れを描きました。それにも関わらず滝壺の流れは白飛びを起こしていないことから、シャッタースピードの設定と多すぎない水量との組み合わせが良かったと言えます。素晴らしい判断ですね。

●アドバイス
 前述の通り、水量から判断して長秒露光で表現したことは見事なのですが、画面中央部、岩のシャドウ部分がかなりの面積を占めており重さを感じます。岩の部分をもう少し見せるようレタッチでカバーすれば、さらに良くなります。もしくは撮影時にリズミカルな模様を描く部分を探して切り取るなど、構図面で工夫してみることを考えても良かったでしょう。

【元の写真】

【岩のみレタッチで明るくしたイメージ】

孤太郎さんの作品

●良かった点
 形の良い岩と葉を上手く見つけました。その配置が良くしっかりとフレーミングされています。画面手前の映り込みのグリーンも効いていますね。

●アドバイス
 まず気になったのが流れの描写です。シャッタースピードが遅すぎて、その模様がほぼ消えています。もう少し速いシャッターにすれば流れが表現できたのではないでしょうか?ただ写真から見る限り、流れが瀬のようになっていないので色々とシャッタースピードを変えて試しても上手く行かないかもしれません。その場合はPLフィルターを若干弱めて反射を作ると流れの形が出てきます。弱めすぎると映り込みの緑色が浅くなってしまうので注意が必要です。

【元の写真】
【赤丸部分にもう少し流れの模様が欲しい】

 

 

まとめ

 今回の写真寸評いかがでしたか?ご自分が撮っている気持ちになって参考にしていただけると嬉しいです。

 滝や渓流ではシャッタースピードによる流れ表現をマスターして、その場の水量や状況に合わせて臨機応変に撮り方を変えていく必要があります。また、同じ被写体でも高速側、低速側のシャッターを使い分けることで全く異なった表現が楽しめます。夏もそろそろ終盤。秋になれば美しい紅葉と流れの撮影にも是非お出かけくださいね。最後までお読みいただきありがとうございました。

 

 

■写真家:高橋良典
(公社)日本写真家協会会員・日本風景写真家協会会員・奈良県美術人協会会員・ソニープロイメージングサポート会員・αアカデミー講師

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