風景写真の引き出しを増やす!|その5:ホワイトバランス編 ~2023/5/14まで寸評ご応募受付中~

高橋良典
風景写真の引き出しを増やす!|その5:ホワイトバランス編 ~2023/5/14まで寸評ご応募受付中~

はじめに

今回の記事で紹介する「ホワイトバランス」の更なる学びとなるよう、テーマに沿ってご応募頂いた写真の中から高橋良典さんからの寸評を次回の記事でご紹介します。応募方法は文末「寸評のご応募について」をご覧ください。皆さまからのご応募お待ちしております。

連載でお送りしている「風景写真の引き出しを増やす!」
1月の第4回目から少し時間が空きましたが、第5回目は「ホワイトバランス」編です。ホワイトバランスの理解のためには、被写体そのものの色と光の色との関係性を理解する必要があるのですが、今回はそれらについてもお伝えしてまいります。

ホワイトバランスって何?

直訳すると「白色のバランス」ということになるのですが、まずは以下2枚の写真を見て下さい。
2枚は同じ被写体なのですが全く色が異なって写っていることがわかりますね。ホワイトバランスは【写真1】が太陽光、【写真2】がオートホワイトバランス(以下AWBと表記)です。

【写真1】WB:太陽光で撮影
【写真2】WB:AWBで撮影 OKカット

実際の被写体の色は【写真2】なのですが、それでは【写真1】はどうして赤黄色っぽく写ったのでしょうか?実はこの写真、白熱電球の元で撮影しているのですが、答えは光の色とホワイトバランスとの関係性にあります。ご自宅にある電球や電球色の蛍光灯・LEDの光を思い浮かべると赤黄色っぽいですよね?【写真1】はその光の色そのものが写り込んだためこのような色に写ってしまったわけです。但し、これでは被写体の元の色が何色かわかりません。この状態で人物の写真を撮ったと仮定すれば人の顔色が赤黄色っぽく写ってしまい使い物になりませんよね。

そこで・・・
ホワイトバランスを太陽光に設定すると光の色がそのまま写真に反映される
ことを頭に入れておきましょう。

【写真2】はAWBに設定。赤黄色っぽく偏った光の色をカメラが自動的に修正して、「白色のバランス」をとってくれたことで正しい被写体の色が描かれたという訳です。

風景写真でのホワイトバランスの考え方

AWBを使えばカメラが概ね「白色のバランス」を自動的に取ってくれるわけですから一見良いように感じます。しかし、風景写真では光の色を作画に生かす事が多く、「白色のバランス」が取れている事がイコール良い作品とは限りません。基礎知識としてまずは時間帯や光源による光の色の移り変わりについて説明します。

光の色について

晴天日中の白色(無色)の光を基準にすると、朝夕や電球などは赤黄色っぽい光の色。対して曇りや雨、晴天の日陰、また朝夕でも日の出前や日没後は青っぽい光の色を持っています。色温度とは光の色を数値で表したもので、「K」は「ケルビン」と読みます。光の色が赤っぽくなるほど「色温度が低い」、青っぽくなるほど「色温度が高い」と表現しますので覚えておきましょう。

以下の2枚は同じ場所で時間を変えて撮影したものです。両方ともホワイトバランスは太陽光に設定しています。日の出前に撮った【写真1】では青っぽく写り、【写真2】では黄色っぽく写っていることがわかりますね。

ホワイトバランスを太陽光に設定したことで、光の色がストレートに写真に反映された結果です(いずれもOKのカット)。朝夕は光の色の変化が大きく日の出前と日の出後、日没前と日没後で真逆に光の色が入れ替わります。

【写真1】 日の出15分程前の色温度の高い光で撮影。その青味によって静寂感が描かれました。
■撮影機材:ソニーα7R IV + FE100-400mm F4.5-5.6 GM OSS
■撮影環境:焦点距離 143mm 絞り優先AE(F16、1/6秒) ISO200 太陽光 CPLフィルター
【写真2】 日の出直後の色温度の低い光で撮影。その黄色味によって朝日の印象が強まります。
■撮影機材:ソニーα7R IV + FE100-400mm F4.5-5.6 GM OSS
■撮影環境:焦点距離 133mm 絞り優先AE(F16、1/30秒) ISO200 太陽光 CPLフィルター

それではここからはケースごとに解説していきましょう。光の色を意識しながらお読みくださいね。

 

朝夕の光(赤っぽい光)

最初の「まねき猫」の写真同様にホワイトバランスは【写真1】が太陽光【写真2】がAWBです。

【写真1】WB:太陽光で撮影 OKカット
【写真2】WB:AWBで撮影
2枚の共通データ
■撮影機材:ソニーα7R IV + FE70-200mm F4 G OSS
■撮影環境:焦点距離 102mm 絞り優先AE(F8、1.5秒、+0.5V補正) ISO200

いかがでしょうか?「まねき猫」の写真と決定的に違うのは、赤っぽい光(つまり朝焼けの色)が作品的に良い方に働いている事です。逆に「まねき猫」では電球の赤黄色っぽい光が悪い方に働いたと言えます。

【写真1】は太陽光で撮影しているため光の色がストレートに描かれ、実際の風景が写真からよみがえってくるようです。しかしAWBで撮影した【写真2】では朝焼け空の赤っぽい光をカメラが偏った光の色だと判断。結果的に赤みを取り除いてしまい冷めたような空色に写ってしまいました。

という訳で私の場合は光の色を重視しているため、ほとんどを太陽光で撮影しています。但し、近年のカメラではAWBの精度が上がり、ケースバイケースで上手くカラーバランスを補正してくれるようになってきたことも事実ですので、撮影時に両方撮っておくのも良いでしょう。なおRAWで撮影しておけば後から画像の劣化なくホワイトバランスを変更することが出来ますが、処理する現像アプリによってAWBの色味が変わりますので、お使いのカメラメーカーの色を出すにはメーカー純正のアプリを使用する方が良いと言えます。

ちなみに上記の2枚はソニー純正アプリImaging Edgeで処理していますが、参考までにAdobe Lightroom Classicで処理したAWBの写真をご覧ください。随分と色味が異なりますよね。

【参考】Adobe Lightroom Classicで現像処理。AWBに変更したもの

また、ホワイトバランスを太陽光に設定して朝夕景を撮影している時、状況によってもう少し赤みや黄色みが欲しいと感じる事があります。そのような時はホワイトバランスを曇天や日陰に設定すると色の印象が増します。太陽光で撮影してみて色が足りないと感じた時は、太陽光→曇天(くもり)→日陰の順に赤みが増していくと考えれば良いでしょう。但しやりすぎには注意が必要です。

【写真1】WB:太陽光で撮影 
【写真2】WB:曇天で撮影 OKカット
2枚の共通データ
■撮影機材:ソニーα7R IV + FE16-35mm F2.8 GM
■撮影環境:焦点距離 22mm 絞り優先AE(F16、1/4秒、-1.5V補正) ISO100 太陽光 ハーフNDフィルター

曇りや雨天、晴天時の日陰の光(青っぽい光)

ここで質問です。撮影している時、青い光の色が見えている方はいらっしゃいますか?朝夕や電球、ろうそくの炎などは肉眼でも赤っぽさを感じますよね。ところが青い光の色というのは肉眼では感じにくくあまり見えていないと言えるでしょう。しかし曇りや雨天、晴天時の日陰、朝夕でも日の出前や日没後は前述と重複しますが青い光なのです。

以下の写真は昼間にホワイトバランス太陽光で撮影した雪景色ですが、日なたの雪は白く写っているのに対して日陰の雪が青っぽく写っていることがわかりますね。このように意識していなくても青い光は存在しているのです。

WB:太陽光で撮影
■撮影機材:ソニーα7R III + FE70-200mm F2.8 GM OSS
■撮影環境:焦点距離 200mm 絞り優先AE(F8、1/250秒、+0.5V補正) ISO400 太陽光 CPLフィルター

以下の3枚は雨上がり、蜘蛛の巣に着いた水滴を撮影したものです。マクロレンズを使いネックレスのイメージで描きました。どちらかというとAWBで撮影した【写真2】の方が肉眼には近いのですが、青味が湿度を感じさせ作品にプラスに働くと判断。太陽光で撮影した【写真1】をOKとしました。

あらかじめカメラにセットされているホワイトバランスには曇天(くもり)や日陰がありますが、曇りの日だからと言って曇天(くもり)にセットすれば良いという訳ではなく、その点はケースバイケースだと言えます。実際、曇天(くもり)に設定した【写真3】ではやや黄色っぽく見えてしまいます。重要なのは作者がどのような色味で表現したいかということですね。

【写真1】WB:太陽光で撮影 OKカット
【写真2】WB:AWBで撮影
【写真3】WB:曇天で撮影
3枚の共通データ
■撮影機材:ソニーα7R III + FE90mm F2.8 Macro G OSS
■撮影環境:焦点距離 90mm 絞り優先AE(F5.6、1/125秒、-0.5V補正) ISO400 太陽光

太陽が低くなり辺り一帯が日陰になると一層青い光に包まれます。【写真1】は太陽光で撮影したものですが、あまりに青味が強いため【写真2】ではホワイトバランスを日陰に設定して青みを取り除きました。太陽光で撮影してみて青すぎると感じた時は、太陽光→曇天(くもり)→日陰の順に青みが取れていくと考えれば良いでしょう。

【写真1】WB:太陽光で撮影
【写真2】WB:日陰で撮影 OKカット
2枚の共通データ
■撮影機材:ソニーα7R IV + FE24mm F1.4 GM
■撮影環境:焦点距離 24mm マニュアル露出(F8、1秒) ISO400 太陽光 CPLフィルター ハーフNDフィルター

人工的な光(ライトアップなど)

人工的な光の場合はその光源の色によって写真の色が大きく左右されてしまいます。以下の2枚は黄緑色っぽい光でライトアップされているのですが、【写真1】のように太陽光で撮影すると光の色ばかりが目立ってしまい雪景色らしさが出ません。一方、AWBで撮影した【写真2】では黄緑っぽい光の色を上手くカメラが打ち消してくれることで雪の白が表現出来ています。

【写真1】WB:太陽光で撮影
【写真2】WB:AWBで撮影 OKカット
2枚の共通データ
■撮影機材:ソニーα7R V + FE70-200mm F2.8 GM OSS II
■撮影環境:焦点距離 145mm 絞り優先AE(F2.8、15秒、+1.5V補正) ISO200

昼間の光(白っぽい光)

AWBはカメラが偏った光の色だと判断した場合にカラーバランスを自動的に変更するものですから、晴天日中、光の色が白い状態では太陽光で撮ってもAWBで撮ってもほとんど違いはありません。

まとめ

今回は風景撮影のホワイトバランスについてお話してまいりましたがいかがでしたでしょうか?初心者の方にはわかりにくい部分もあると思いますが、まずはあれこれと変更して撮影してみれば色の傾向が徐々に掴めるようになっていくでしょう。ホワイトバランスに関してはまだまだ深い部分があるのですが、話が複雑になりすぎますのでこの辺で留めておきたいと思います。最後になりますが設定に戸惑わないようまとめると・・・
 
 まずは太陽光で撮影
     ↓
・赤みが足りないと思った時は曇天や日陰を試してみる(赤みが増す)
・青すぎると思ったら曇天や日陰を試してみる(青みが減る)
・色が上手く出ないと感じた時はAWBを試してみる。

これらを頭に入れておけば大体のシーンには対応できるでしょう。最後までお読みいただきありがとうございました。

 

■写真家:高橋良典
(公社)日本写真家協会会員・日本風景写真家協会会員・奈良県美術人協会会員・ソニープロイメージングサポート会員・αアカデミー講師

寸評のご応募について

今回の「風景写真の引き出しを増やす!|その5:ホワイトバランス 編」で紹介している風景写真でのホワイトバランスをテーマに、これはうまくいった、逆にうまくいかなかったと感じる写真がありましたら、ぜひその時の状況と合わせて編集部に投稿してみませんか。ご投稿いただいた写真の中からいくつかの写真に対して高橋良典さんが寸評を行い、次回の記事で掲載する事を予定しています。皆さまの風景写真の学びの機会にご活用いただければと思います。

・お一人さま1点までのご投稿でお願いします。
・応募締め切りは2023年5月14日(日)迄となります。
・過去に撮影した写真でも応募できます。
・応募ページにある規約をご確認の上、ご応募をお願いします。

応募ページはこちら
https://pro.form-mailer.jp/fms/f0589a47284239

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