色味を美しく再現するパンケーキレンズ|ソニー E 20mm F2.8

水咲奈々
色味を美しく再現するパンケーキレンズ|ソニー E 20mm F2.8

はじめに

 2013年3月にソニーから発売された「E 20mm F2.8」は、35mm判換算で約30mmの、コンパクトサイズの広角単焦点レンズです。今回は、ZV-E10に装着して沖縄の街を撮り歩いてみました。

発色が抜群にいい!

■撮影機材:ソニー ZV-E10 + E 20mm F2.8
■撮影環境:絞りF2.8 1/200秒 ISO100 AWB クリエイティブスタイル:スタンダード

 本レンズの大きな特徴は、長さ20.4mm、最大径62.6mm、重さ69gと小さくて軽いことです。薄型のパンケーキレンズは、スナップ撮影にぴったりです。ZV-E10に装着すると、コンデジを持っているような感覚で撮影できます。

 沖縄の街角には、ちょっと変わったオブジェや装飾が施されている店が多く、このお店の軒先には、沖縄のオリオンビールが販売している「WATTA(ワッタ)」というチューハイを細工した物が飾られていました。手前のピンク色の缶は、パッションフルーツ味でしょう。

 クリエイティブスタイル「スタンダード」でパッと撮っただけですが、発色の良さに驚かされました。上部の青と白のオリオンビールの提灯は抜けるような爽やかさに、WATTAの飾りは、沖縄らしいビタミンカラーを鮮やかに表現しています。

周辺光量落ちは使い方次第で楽しめる

■撮影機材:ソニー ZV-E10 + E 20mm F2.8
■撮影環境:絞りF2.8 1/200秒 ISO100 AWB クリエイティブスタイル:スタンダード

 通年通して日差しの強い沖縄の路地には、トタンやタープのような物で簡易的な日除けを設置しているところも多く、裏道散策が楽しい土地です。ここでは柵に絡まっている葉を前ボケにして、絞り開放らしいスナップを撮影。

 周辺光量は多少落ちますが、筆者はスナップでの周辺光量落ちは逆に好ましく思っているので、やりすぎない落ち具合は好印象です。また、これくらいの周辺光量落ちは、10年前のレンズとしては優秀でしょう。

 同様に周辺部の画質も、中央部のクリアーさに比べれば多少にょもっとしますが、そのお陰でピントを合わせた主役の被写体や、この場合は、トンネルのような路地の向こう側へ視線の誘導効果が高くなっているので、その特性を知って有効に使うことで、考えて写真を撮る楽しみを感じられます。

素晴らしい質感の再現性

■撮影機材:ソニー ZV-E10 + E 20mm F2.8
■撮影環境:絞りF2.8 1/200秒 ISO100 AWB クリエイティブスタイル:スタンダード

 質感の表現は見事で、裸電球のつるんとした滑りのいい手触り感と、その上のビニールの、経年劣化で少し硬くなってワシャワシャと音が出そうな質感を、丁寧に描き出しています。

 後ろボケの描写は派手目で、人によっては騒がしいと感じるかもしれません。被写体の輪郭を残しつつ、滲ませるようにボケさせているので、この作品のように、背景のムードを少し残したいシーンには最適です。

ワイドマクロ的にも使えるレンズ

■撮影機材:ソニー ZV-E10 + E 20mm F2.8
■撮影環境:絞りF2.8 1/640秒 ISO100 AWB クリエイティブスタイル:風景

 最短撮影距離は0.2mとかなり寄れるので、ワイドマクロ的な使い方も楽しめます。開放F値の2.8で撮影すれば、約30mm(35mm判換算)の広角画角とは思えないほどの大きなボケを得られました。背景の玉ボケには、ほんの少し玉ねぎボケが見られましたが、柔らかいボケ味に助けられて、そこまで雑味は感じませんでした。

ショート・ムービー

■撮影機材:ソニー ZV-E10 + E 20mm F2.8
■使用アクセサリ:シューティンググリップ「GP-VPT2BT」

 ショートムービーは、那覇市壺屋の「やちむん通り」にある「南ヌ窯 (フエヌカム)」で撮影しました。琉球王国時代に作られたと言われている、素焼きの陶器を焼きあげる登り窯で、やちむん通りに現存する唯一の窯です。

 現在は窯としては使用されていませんが、見学は自由となっています。窯口やガジュマルの根元に陶器の破片が積み重なっている光景は、その場にいるだけで、ノスタルジックな気持ちにさせてくれます。やちむん通りのお店が開く前の朝早い時間に訪れると、ゆっくりと見ることができますよ。

好感の持てる丸みのある玉ボケ

■撮影機材:ソニー ZV-E10 + E 20mm F2.8
■撮影環境:絞りF2.8 1/200秒 ISO100 AWB クリエイティブスタイル:スタンダード
■撮影機材:ソニー ZV-E10 + E 20mm F2.8
■撮影環境:絞りF2.8 1/250秒 ISO100 AWB クリエイティブスタイル:スタンダード

 ショートムービーを撮影した「南ヌ窯 (フエヌカム)」の、陶器のかけらたちと、窯の中を覗いた画です。

 陶器のかけらの埋まっている木を見上げると、葉の間から木漏れ日が差し込んでいて、綺麗な玉ボケになりました。絞り羽根枚数は7枚、円形絞りを採用しています。光の当たり具合によって二線ボケになっているところも見られますが、全体的に、好感の持てる丸みのある玉ボケになっています。

 前ボケは形を残した自然なボケが特徴的。覗き見るような構図にすると、広角画角の特性で、遠近感の感じられる面白い画になります。アンダー部の粘りも良く、モノクロの撮影も楽しそうだなと感じました。

優しく柔らかい描写

■撮影機材:ソニー ZV-E10 + E 20mm F2.8
■撮影環境:絞りF2.8 1/640秒 ISO100 AWB クリエイティブスタイル:スタンダード

 やちむん通りは、陶器のかけらがあちこちに散りばめられています。道路だったり、植木鉢だったり。いろいろな形や柄があるので、歩くときは足元にも注意を配って歩くと、とても楽しい散歩になります。

 レンズ設計は、非球面レンズ3枚を採用した6群6枚の構成。歪曲収差はちょっと見られますが、色収差がよく抑えられていて、とにかく色味の綺麗さは重ねて言及したいほどです。また、最近のシャープさを追求したレンズとは違って、全体に優しく柔らかい描写のレンズなので、このように硬い質感の被写体を撮影しても、程よく柔らかいイメージに仕上げてくれます。

AFの速度良好

■撮影機材:ソニー ZV-E10 + E 20mm F2.8
■撮影環境:絞りF2.8 1/640秒 ISO100 AWB クリエイティブスタイル:スタンダード

 AFの速度も良好で、目をつぶっているネコの目にも、素早くピントを合わせられました。これはZV-E10との相性の良さもあるのでしょうね。

 レンズは一生モノといいますが、ちょっと昔のレンズを最先端のカメラボディと組み合わせることで、以前では感じられなかった魅力を感じたりできるのは、楽しい遊び方だと改めて思いました。

 

 

■写真家:水咲奈々
東京都出身。大学卒業後、舞台俳優として活動するがモデルとしてカメラの前に立つうちに撮る側に興味が湧き、作品を持ち込んだカメラ雑誌の出版社に入社し編集と写真を学ぶ。現在はフリーの写真家として雑誌やWEB、イベントや写真教室など多方面で活動中。興味を持った被写体に積極的にアプローチするので撮影ジャンルは赤ちゃんから戦闘機までと幅広い。日本写真家協会(JPS)会員。

 

 

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