ドローンでまだ見たことのない世界へ|SILK DRONE

はじめに

二人組写真作家、産業用大型ドローン、5.2m×1.6m 20億画素の作品……。
聞いたことのない、見たことのない文字や作品が並びそのスケールに驚かれるかもしれません。
「前例がないからやる、誰もやっていないからこそ実現する。」これが私たちSILK DRONEの活動理念です。
SILKとmicahの二人組で活動しておりますが、私たちは単なるカメラマンとモデルという関係ではありません。ともに制作者として、共同制作者の立場で活動しており、カメラマンとモデルという従来の枠組みを超えた、二人組写真作家として表現活動を行なっています。
皆様、どんな活動をしていますか?

どんな写真を撮ろう?と考えることは多いでしょう。
チュートリアルや撮影テクニックに関する情報は、世の中にたくさんあります。
しかし「どのように活動しよう?」とはあまり考えないかもしれません。あるいはそれが当然だと思っているかもしれません。
ですが、写真を撮る中で、活動のあり方や表現方法について悩んだり、考える方は少なくないはずです。
そう思い探してみると、「どのように活動しよう」という情報や発信は、驚くほど少ないことに気づきます。
写真を撮る前に、活動の仕方や写真家・表現者としてのあり方を探したい、見直したい、考えたい。
もし、そんな時にこの文章がお役に立てるようでしたら、一つの例として読んでくださると嬉しいです。
まだ見たことのない世界と法令遵守

私たちは『まだ見たことのない世界』、『法令遵守』の2テーマを掲げ活動しています。
法令遵守は今の写真界隈においてとても大切なこと。特にドローンを扱う以上、私たちが悪い見本とならないよう、細心の注意を払って撮影しています。
航空法の許可・承認は当然のこと、飛行する土地の管理者様等からの許可も必要です。場所によってはその許可も多種多様にわたります。
日本では私有地はもちろん、海、川、山などあらゆる場所に管理者がいます。境界線をまたいで飛行する場合や、撮影エリアに入ってしまう場合など、1回の撮影で3つも4つも許可が必要なことも少なくありません。
許認可に関する話はそれだけで連載が必要なほど多岐にわたりますが、私たちは当たり前のルールを当たり前に守り、その上で後述する「まだ見たことのない世界」へ飽くなきチャレンジを続けています。
これがSILK DRONE1つ目の活動方針です。
もう1つのテーマである「まだ見たことのない世界」には、誰も見たことのない光景を追求するだけでなく、誰もやったことのない、前例のない、撮ったことのない作品を創り出すといった意図を込めています。
私たちは有名なフォトスポットを訪れることはほとんどありません。
なぜならそこは、すでに誰かが先に表現した世界だからです。
その世界が見たいのであれば、撮った方から見せてもらえば良いし、欲しければ購入すれば良いと考えています。
誰も撮っていないから、誰もやっていないからこそ価値があると信じ、「まだ見たことのない世界」を追い求めています。「まだ見たことない世界」は見たことのない場所はもちろんですが、見たことない技法、見たことない表現方法、前例がなく現時点での言葉では表現できないことなど、あらゆる可能性が含まれています。
そして、この「まだ見たことのない世界」は作品にとどまらず、活動方針についても同様です。
私たち自身が、二人組の写真作家として活動していくことそのものが、おそらく誰もやったことのない生き方であり、「まだ見たことのない世界」を見たいという、生き方そのものへの想いが込められています。
二人組の写真作家
写真界隈では、二人組での活動はまだまだ珍しいかもしれません。
私たちSILK DRONEは、主に撮影と仕上げを担当するSILK、セレクトやレタッチを行うmicahの二人組。
作品の構想から撮影地の許可、写真展の会場手配、作品制作、発注・搬入など、互いに分担し、様々なことを行なっています。
「あれもやりたい、これもやりたい」とアイディアで溢れる時、皆様も経験があるのではないでしょうか。
そんな時、同じ方向を向いている表現者がもう1人いるだけで、やれることが2倍になります。
同じ作業をしていても、していなくても、お互いが一つの方向を向いて作品表現をする。こういった活動が共に作品を創るということなのだと、私たちは考えています。
また、1人では考えもつかない発想やアイディアが、2人で話し合うことで昇華され、新しい作品表現につながっていく。そんな経験を私たちは何度もしてきました。1人では見られなかった世界も、2人なら実現できるのです。
互いの好きな世界観や表現を共有し、より良いものを探し求めることのできる二人組という環境は、写真作家という表現者にとって、より恵まれたものだと思っています。
共に表現者として、カメラマンとモデルから千歩踏み込んだ共同制作者としての活動。
やっと私たちの中で言語化できた言葉です。
写真界隈では珍しくとも

実はSILKもmicahも写真を始めるずっと前、まだお互いを知る遥か以前、音楽をやっていました。
そして写真で活動をするうちに思うところがありました。
皆様ご存知のように、音楽はソロ、デュオ、バンド、グループなど様々な形があり、複数人での活動が広く受け入れられています。しかし、写真も音楽も同じ表現活動なのに、ことポートレートにおいては絶対的に1人では成立しないのに、どうして2人以上での表現活動が見当たらないのだろうと。
活動をするうえで様々な形があって良いと思います。
もちろん、私たちは既存の形を否定するつもりはありませんし、どれが正解でどれが間違っているということもないと思っています。
ただ、その多様な形の中で、私たちはデュオとして活動することを選びました。
二人組のSILK DRONEという表現者として活動することを選んだのです。
そして、今後、二人組で活動する写真家が少しずつでも現れてくれれば嬉しいと思っています。
これが、隠された3つ目の活動テーマです。
実際、ここ数年で、私たちの影響があったのかなかったのか、特にInstagramにおいて二人組の写真家も少しずつ浸透し、増えてきた実感を得ています。そして、その中の数組とは実際に交流を持たせていただいている人たちもいます。
物語の主人公

約 縦2.7m×横2.4m 約2億画素 9枚パネル組 (中央) 電飾用表打ち PETフィルム、 (周辺)ラスターシルク
私たちは写真展に活動の重きを置いています。
概ね1年に1回程度の個展を開催し、年数回は写真展に出展しています。
その物語の主人公は作品を見てくださるファンの皆様であり、撮影地の方々でもあると思っています。
見たことのない世界を撮っていると新しい発見の連続です。
例えばこの作品。「海からの終着駅」という作品で、海の中から続いてきた線路が、終着駅の陸地に上がってきたところをイメージしたものです。
場所に関して私たちは非公開を原則としておりますが、この線路は実際には列車の線路ではなく廃造船所のレール。メンテナンスする船を海から上げ、新造された・整備された船が海へ入っていくレールです。
そしてここは立ち入り禁止の場所で、そういったところへはドローンも進入してはいけません。
幸い管理者がわかったので、作品構想から説明させていただき、特別に許可をいただいて撮影することができました。
管理者の方もその時はどんな作品になるのか、説明を受けたとはいえ想像もつかなかったと思います。
もう誰も入ることのない役割を終えた造船所。
正直に言うと、最初はゴミだらけの現場でした。
撮影前、1時間ほどかけて私たちは現場の掃除から始め、撮影できる状態にしました。
数時間をかけ撮影し、出来上がった作品をお見せした時、管理者の方は「あの場所がこんなになるのか」と感動してくださったものです。
何もないと思っていた場所がキラキラ輝く世界に変わる瞬間です。
何十年もこの土地に住んできて初めて知った世界、いつも目にしている筈なのになぜか知らなかった世界。各撮影地のみなさまが、目をキラキラさせてもっと見せてほしいと言ってくださることも多いです。
そしてその作品に相応しいサイズと装丁でギャラリーという空間に飾られたとき、ファンの方々が「この作品にはどんな物語があるんだろう」「どんな感情を表現しているのだろう」「この場所にはどんな伝説が眠っているのだろう」などと思ってくださるのです。
作品を見ていただいた方が、私たち以上に作品の幅や解釈を広げ、作品に収まらないその先まで考えてくれる。それはファンの皆様が、私たちの作品の物語の主人公になっているからこそ、色々なことを考えられると思うのです。
作家冥利につきる瞬間です。
作品を見て終わりではない、私たちの見たい世界がファンの皆様のもっと「SILKDRONEの新しい世界を見てみたい」という気持ちに繋がっていくと信じています。
生き方も作品の一部

個展や写真展の在廊時、私たち自身も作品の一部であることを意識し、立ち振る舞いを考えています。
作品のイメージを損なわないよう、在廊時の服装や立ち居振る舞いに気を配ります。
この空間で何を語るべきか、あるいは語るべきでないか、綿密に打ち合わせをします。
時には何千文字の原稿が出来上がったり、毎日の衣装のラフスケッチを描いたりすることもあります。
なぜここまでするのか。
それはSILKとmicahも作品の一部だからです。
展示空間にあるもの含め全てが作品なのです。
写真、テーマに沿った額装、空間、光、そしてそれを語る作家。その全てが一体となって作品を構成しています。
作品を見てくださる方々が、作品の一部としてSILKとmicahを受け入れてくれる。
存在感がないわけでもなく、存在感がありすぎるわけでもない、その空間にいること自体が自然な存在な私達でいたいのです。
誰もやったことのないことをやろう

こちらは2024年発表作品で東京個展にも展示した作品「水辺の妖精」。
データ解像度20億画素から切り出された5.2m×1.6mの作品です。
私たちの作品は大きな作品が多いですが、これほど大きなものは初の試みでした。
作品サイズも、データのサイズも桁外れの大きさです。
その甲斐あって、遠くから見た圧倒的な迫力はもちろん、
近くで見ても、その質感やリアリティに息を呑んでいただけたことでしょう。

制作に1ヶ月かかりました。
最高のコンディションを求め撮影日は3回リスケジュールしました。
たった1枚の写真のために、です。
詳しい制作方法は長くなるので割愛しますが、産業用大型ドローンで撮影した1枚6000万画素の写真をスティッチングという技法で何十枚も繋ぎ合わせ、1つの作品にしています。
また、上空からの写真は、地上よりさらに輝度差が大きいので、この巨大なデータを自然な葉の色、花の色、水中の影、睡蓮の根、沈殿物など全てが自然に見えるよう、手作業で花・葉っぱの1枚1枚ずつから調整し、やっと完成しています。
たくさんの写真が必要なので、撮影は滞空時間を少しでも延ばしたい。
そのため軽量かつ高性能なレンズとボディが必要です。
睡蓮に近づきすぎると水面が波立ってしまうため、ある程度高度を確保する必要があります。
そのため、長めのレンズが必要ですが、レンズは長ければ長いほどブレが出やすくなります。
これだけの高解像度では、わずかなブレも許されないため、絶妙なバランスが求められました。
睡蓮の開花時期は限られているので、開花情報など現地からの情報も不可欠です。
睡蓮は朝に咲き始め、昼前には閉じてしまいます。
そのため、撮影時間は準備を含めて早朝になり、お借りするボートの手配、周囲の方との調整など、多くの方にご協力いただきました。
出来上がったデータを最高のコンディションでF100号という巨大なパネルに印刷、配送から搬入まで行ってくださった印刷会社様の協力も不可欠でした。
本当に多くの工程、多くの方々のご協力のもとに完成したこの作品はweb上の画像では伝わらない、リアルでしか感じることのできない感動を与えてくれた作品となりました。
そして、作品発表や個展時にいらしてくださった先生方、関係者の方々やお客様。
多くの方から賞賛の声をいただき
「どうしてここまでやるのか」という言葉に、最大限の賞賛をくださったものと受け止めております。
また一つ、SILK DRONEの歴史が刻まれた瞬間でした。
皆様の記憶にも刻めたものと信じています。
あなたも、どこかで見たものではなく
見たことない世界へ行ってみませんか?
■写真家:SILK DRONE
東京カメラ部10選 2023
SILKとmicahの二人組で活動するドローン専門の写真作家。
「まだ見たことのない世界」「法令遵守」をテーマに、産業用ドローン+ミラーレス一眼カメラをメイン機材に使用し、5億画素を超える超大型作品や、斬新な技法を駆使した作品を発表し続けている。
KANIフィルター アンバサダー/Nextorage サポーター
個展
2025 「星と契約した日」
2024 「天空写真家がリアポS一部屋貸し切って個展をやってみることにした」
2022 「UNTITLED」