着実な進化と深化を遂げたリコー GR IV
RICOH GR IIIからのさらなるブラッシュアップ
「これ以上何を望むのか」そう思ったRICOH GR IVの発表。だってGR IIIで十分ではないか。以前の記事でも述べているが、コンパクトながら高いレンズ性能と優れたセンサー、さらに0.8秒という機動力があればここから何をどう変えるというのか。そう思いながらRICOH GR IVを箱から取り出した。手に取ってまず感じたのは「あれ、重くなった?」ということ。公式によればバッテリーなどを含めた質量は+5gとのことなので気のせいなのだろうが、小さな個体からミシミシと発せられる凝縮感がなにやらすさまじいのだ。
たった2ミリの大きな変化
外観に関して最も大きな変化は本体の厚みの部分だろう。GR IIIが26.5ミリだったのに対し、GR IVは24.5ミリ。たった2ミリ、されど2ミリ。GR IV製品サイトの作例を担当していたこともあってすでに数カ月もの間毎日のように使用してきたが、この2ミリの差は非常に大きい。GR IIIやGR IIIxではフィンガーストラップを装着していたが、GR IVでは完全にストラップレス。長年受け継がれてきたGRシリーズの高品位なデザインを体現するにはそもそもストラップは不要だったのだ。この2ミリのダウンサイジングには目に見えるところで言えばSDカードからmicro SDカードへの変更などの変更が行われているわけで、使いにくいと感じる人もいるかもしれない。でもね、内蔵メモリーが53GBもあれば十分でしょう。外部メモリーはあくまで補助的に使うのが正解といえる。

画作りに触れる前に特筆すべき点が多すぎるのだが、もう2点だけ。ひとつは露出補正ボタンの扱いやすさ。GR IIIでは露出補正機能はADJレバーに割り当てていたが、ひとつのボタンがひとつの機能に特化しているのはやはり便利。もうひとつはプログラムAEの進化である。これは新機能「プログラムオートEx」というもので、前ダイヤルを操作すればAvに、後ろダイヤルでTvに遷移するというもの。普段はAvを使用することが多いが、シャッタースピードをコントロールして動きを出したいこともあるので、「プログラムオートEx」さえあればいいのではないかとも思ったり。リセットボタン(モードダイヤルのロックボタン)を押せば通常のプログラムオートに戻るというのも非常によく練られている。モードダイヤル部分の塗料も変更されたようで、厚盛り感のある主張がなんともニクいではないか。


画作りを大きく左右する様々な機能のアップデート

さて、肝心の画作りである。大きなトピックスはふたつ。まずオートホワイトバランスに「ウォーム優先」と「ホワイト優先」という選択肢が増えたこと。人工光源下における光の印象を操作するものだが、普段から温かみのある光を好むわたしにとってはこの「ウォーム優先」が非常に使い勝手が良い。特にイメージコントロールに新たに加わった「シネマ調(イエロー)」との相性は抜群で、夜間のスナップはこの組み合わせで撮影することが多い。撮影意欲というのはGRに関しては特に撮影時の印象に左右されることが多いカメラだと思うので、こうした痒いところに手が届くアップデートというのは本当にありがたい。

手ぶれ補正機構も3軸4段から5軸6段に進化したため、気軽にスローシャッターの効果を狙った写真を撮ってみようという気にもなるもの。だってGRだもの、片手でスマートに撮りたいでしょう?思い立ったらすぐ試すことができるのが、これまた嬉しい進化のひとつ。


先ほども少し触れたが、イメージコントロールに新たに搭載された「シネマ調(イエロー)」と「シネマ調(グリーン)」。これがまたいい。「シネマ調(イエロー)」はハイライト部分が暖色に寄り、「シネマ調(グリーン)」はやや彩度が低く、シャドー部に緑がかるのが特徴だろう。どちらもシネマティックな表現が魅力であり、表現をより深化させた印象。GRのイメージコントロール全般にいえることだが、いずれも品位を感じさせるのがGRの系譜なのであろう。
さらなる進化を遂げた機動力とAF性能


約0.6秒という高機動力とAF性能の進化も表現に大きく関わってくる部分。「あっ」と思った瞬間に電源を入れて即撮れる、いわゆる撮り逃しのないということがこれほどストレスから解放されることとは正直思ってもみなかった。普段であれば撮れなかった、もしくは撮りたいと思った場面ではなくやや「外した」シーンを捉えていたことに慣れてしまっていたのかもしれない、ということに気づかされたりする。

高感度性能も当然のようにアップ。GR IIIではISO3200あたりが限界値かと思っていたけれど、GR IVはISO6400までなら常用できる印象。この作例でもノイズは確認できるものの、イヤなざらつきというのは感じさせない。
まだまだ言い足りないことはたくさんあるけれど、 GR IVはユーザーにとことん寄り添って考え抜かれたカメラという印象。写真を楽しむための道具としてのGRの着実な進化と深化をひとりでも多くの人と共有したい、そんな愛すべきカメラです。RICOH GR IVは。

※文中の作例については一部試作機での撮影となります。
■写真家:大門美奈(Mina Daimon)
横浜出身、茅ヶ崎在住。作家活動のほかアパレルブランド等とのコラボレーション、またカメラメーカー・ショップ主催の講座・イベント等の講師、雑誌・WEBマガジンなどへの寄稿を行っている。個展・グループ展多数開催。代表作に「浜」・「新ばし」、同じく写真集に「浜」(赤々舎)など。















