初心者におすすめのカメラ『パナソニック LUMIX S9』|写真家 木村琢磨

木村琢磨
初心者におすすめのカメラ『パナソニック LUMIX S9』|写真家 木村琢磨

はじめに

スマートフォンが普及して誰でも写真を楽しめる時代になりました。
きっと読者の方の中にもスマートフォンから写真を初めて趣味として楽しんでいる人も多いと思います。
そして、スマートフォンでの撮影が少し物足りなくなり「カメラが欲しい」という方もきっと多いでしょう。

今回ご紹介するPanasonic LUMIX S9はコンパクトでスタイリッシュなデザイン、多機能でフルサイズセンサー搭載とミラーレス一眼でカメラデビューとしてもぴったりな一台です。

外観デザイン

カメラを選ぶにあたってデザインは大切です。
私の周りでもファッション感覚でカメラを持ち歩く方も増えていますし、私も日常使いをするカメラを選ぶときは「持ち歩きたい」と思わせるデザインのカメラを選びます。
S9は直線的なデザインでどこかクラシカルな感じも漂わせており、フォーマルな服装にも似合うので結婚式や式典にも持ち出しやすいです。

広角から望遠まで一本でカバーできる通称「便利ズーム」と呼ばれるレンズ「Panasonic LUMIX S 28-200mm F4-7.1 MACRO O.I.S.」。
28mmから200mmまでこのレンズ一本あれば撮影できるので、レンズ交換が不安な方やどの焦点距離のレンズを装着して使えばいいのかわからないという方、旅行にカメラを持って行きたいけど荷物を増やしたくないという方におすすめです。

■撮影機材:Panasonic LUMIX S9 + LUMIX S 28-200mm F4-7.1 MACRO O.I.S.
■撮影モード:マニュアル 焦点距離 (35mm換算)200.0mm シャッター速度1/50秒 絞り値F7.1 ISO感度1600

S9にはシルバーやブラックはもちろん、キャメルオレンジやターコイズブルーなどさまざまなカラーバリエーションで展開されていて自分の好きなカラーのボディを選んで購入することができます。

中でも私のおすすめは「広角ズームレンズキット チタンゴールド」です。
ちなみに私もこのセットを購入して愛用しています。
しかもこのチタンゴールドにはボディに合わせたカラーのレンズPanasonic LUMIX S 18-40mm F4.5-6.3が付属しているので(通常はシルバーかブラック)、通常のカラーよりもちょっと特別感が味わえます。

■撮影機材:Panasonic LUMIX S9 + LUMIX S 18-40mm F4.5-6.3
■撮影モード:マニュアル 焦点距離 (35mm換算)40.0mm シャッター速度1/8秒 絞り値F8.0 ISO感度100

ちょっと玄人向けの組み合わせになるかもしれませんが、ミラーレスカメラの設計上レンジファインダーのレンズとも親和性が高く、マウントアダプターを装着して組み合わせても不恰好になりにくいので、スローな撮影を楽しみたい方はマウントアダプターを使った楽しみ方もGoodです。
S9のデザインがまたその親和性を高めてくれています。

私の場合はVoigtlander NOKTON 50mm F1.5 Asphericalをアダプター経由で装着して楽しんでいます。
フォーカスはMFオンリーですが、ミラーレスは部分拡大してピントを合わせることができるので中古のオールドレンズを色々と組み合わせてみるのもS9の楽しみの一つです。

■撮影機材:Panasonic LUMIX S9 + Voigtlander Nokton 50mm F1.5 Aspherical
■撮影モード:マニュアル 焦点距離 (35mm換算)50.0mm シャッター速度1/50秒 ISO感度100

機能デザインとLUT機能

デザインは見た目だけの話ではありません。操作性、使い勝手も含めてのデザインです。
背面はシンプルにボタンとダイヤルが配置されています。
AFボタンも配置されているので親指AF派の人にとっては嬉しいポイントでしょう。

S9には「リアルタイムLUT」機能にダイレクトにアクセスできる「LUTボタン」が設けられています。
リアルタイムLUTとはあらかじめ設定した色味やトーンのプリセット(LUT)を撮影時にリアルタイムに適用させて撮影できる機能で、SNSのアプリなどにあるフィルター機能のようなものと思ってください。
このボタンを押すことで最大39種類のLUTを呼び出して適用することが可能です。

スタンダード設定と実際にLUTボタンを使ってLUTを適用した写真を比較してみましょう。
少し効果が強めのLUTを当てているので差がわかりやすいと思います。
効果が強いLUTはカメラ内で適用される補正数値も大きくなるため、元のRAWデータと仕上がりの大きな差が生まれやすいので、LUTを使って撮影する場合は撮って出しをイメージして撮影するのがベストです。
今回撮影している写真は全てリアルタイムLUT機能を使って撮影しています。

スタンダード撮影
リアルタイムLUT撮影
スタンダード撮影
リアルタイムLUT撮影

背面には外開きのバリアングル機構のモニターが備わっています。
ハイアングルからローアングルまで自由な撮影スタイルを楽しむことができます。
タッチ操作にも対応しているのでスマートフォン操作の感覚で操作でき、直感的な撮影ができます。

バリアングルモニターは裏返して収納することでモニターを保護することも可能です。
私の場合はバッグに収納しておくときは必ずモニターを裏返すようにしています。
S9にはファインダーは搭載されていませんが、モニターが綺麗で見やすくファインダーがなくても困ることはありません。

カメラ本体上部の軍幹部には電源レバー、モードダイヤルと露出補正ボタン、レリーズボタンと操作ダイヤル、Recボタンと非常にシンプルです。
背面のボタン類含めボタンやダイヤルが本体右側に集められているので右手のみで操作が完結します。

一点注意しておかなければいけないのは軍幹部に設けられているシューがホットシューではなくコールドシュー(接点なし)であることです。
接点が必要なストロボなどの瞬間光を使って撮影することができないため、灯りが欲しいシーンは定常光のLEDを使ってライティングをする必要があります。

高倍率ズームレンズキット

高倍率ズームレンズキットに付属しているPanasonic LUMIX S 28-200mm F4-7.1 MACRO O.I.S.はカバーしている焦点距離に対してとてもコンパクトなレンズです。
ズーム倍率と描写はトレードオフとなりがちなのですが、Panasonic LUMIX S 28-200mm F4-7.1 MACRO O.I.S.の描写は高倍率ズームのなかでもとても良好で「最初の一本」にも最適です。
S9のボディが非常にコンパクトなのでレンズが大きく見えますが、小さなカメラバッグにもすっぽり収まります。

高倍率ズームが一つあるだけでさまざまなシチュエーションに対応可能です。
特に望遠側が200mmと長いため、スマートフォンではカバーすることが難しい焦点距離なので表現の幅が今まで以上に広がります。
広角側は28mmスタートでスマートフォンのカメラの標準画角(倍率1.0)と近いので戸惑うことはないでしょう。

■撮影機材:Panasonic LUMIX S9 + LUMIX S 28-200mm F4-7.1 MACRO O.I.S.
■撮影モード:マニュアル 焦点距離 (35mm換算)28.0mm シャッター速度1/160秒 絞り値F11.0 ISO感度400
■撮影機材:Panasonic LUMIX S9 + LUMIX S 28-200mm F4-7.1 MACRO O.I.S.
■撮影モード:マニュアル 焦点距離 (35mm換算)200.0mm シャッター速度1/2000秒 絞り値F7.1 ISO感度400
■撮影機材:Panasonic LUMIX S9 + LUMIX S 28-200mm F4-7.1 MACRO O.I.S.
■撮影モード:マニュアル 焦点距離 (35mm換算)139.0mm シャッター速度1/500秒 絞り値F11.0 ISO感度200
■撮影機材:Panasonic LUMIX S9 + Panasonic LUMIX S 28-200mm F4-7.1 MACRO O.I.S.
■撮影モード:マニュアル 焦点距離 (35mm換算)200.0mm シャッター速度1/80秒 絞り値F7.1 ISO感度800
■撮影機材:Panasonic LUMIX S9 + LUMIX S 28-200mm F4-7.1 MACRO O.I.S.
■撮影モード:マニュアル 焦点距離 (35mm換算)200.0mm シャッター速度1/200秒 絞り値F8.0 ISO感度800
■撮影機材:Panasonic LUMIX S9 + Panasonic LUMIX S 28-200mm F4-7.1 MACRO O.I.S.
■撮影モード:マニュアル 焦点距離 (35mm換算)28.0mm シャッター速度1/13秒 絞り値F11.0 ISO感度800

広角ズームレンズキット

ボディのサイズを活かした便利でコンパクトなレンズが良いという方は、迷わずPanasonic LUMIX S 18-40mm F4.5-6.3が付属する「広角ズームレンズキット」がオススメです。
焦点距離が18mmの広角スタートなので旅行やスナップに最適。望遠側は標準域の40mmまでカバーされているので気軽に持ち出してスナップ感覚で撮影を楽しみたいという方にぴったりです。

焦点距離18mmは一般的な標準ズームの広角側24mmと比較するとかなり広く写すことができるため、風景写真はもちろん街中でのスナップや広角レンズが持つパース効果(奥行き)を活かした撮影が楽しめます。
24mmより広い焦点距離を持つ広角レンズは高価なものが多く、ましてや18mmスタートはキットレンズではなかなか見かけないので非常に面白いラインナップです。

描写も素晴らしく、歪曲もしっかりと補正されていて素直な写りです。
何より、コンパクトさがこのレンズの強みなので、お散歩カメラとしてS9を考えている人にはとても魅力的に見えると思います。

■撮影機材:Panasonic LUMIX S9 + LUMIX S 18-40mm F4.5-6.3
■撮影モード:絞り優先 焦点距離 (35mm換算)18.0mm シャッター速度1/60秒 絞り値F11.0 ISO感度100
■撮影機材:Panasonic LUMIX S9 + LUMIX S 18-40mm F4.5-6.3
■撮影モード:マニュアル 焦点距離 (35mm換算)18.0mm シャッター速度1/2500秒 絞り値F8.0 ISO感度200
■撮影機材:Panasonic LUMIX S9 + LUMIX S 18-40mm F4.5-6.3
■撮影モード:マニュアル 焦点距離 (35mm換算)39.0mm シャッター速度1/6秒 絞り値F11.0 ISO感度200
■撮影機材:Panasonic LUMIX S9 + LUMIX S 18-40mm F4.5-6.3
■撮影モード:マニュアル 焦点距離 (35mm換算)18.0mm シャッター速度1/100秒 絞り値F11.0 ISO感度100
■撮影機材:Panasonic LUMIX S9 + LUMIX S 18-40mm F4.5-6.3
■撮影モード:マニュアル 焦点距離 (35mm換算)40.0mm シャッター速度1/40秒 絞り値F8.0 ISO感度100
■撮影機材:Panasonic LUMIX S9 + LUMIX S 18-40mm F4.5-6.3
■撮影モード:マニュアル 焦点距離 (35mm換算)23.0mm シャッター速度1/1000秒 絞り値F8.0 ISO感度200

撮影機能

S9には2400万画素(6000×4000px)のフルサイズのセンサーが搭載されていて解像感はもちろん、高感度の画質もクリーンなので暗い場所での撮影も難なく可能です。
ボディ内手ぶれ補正も搭載されているので、全てのレンズ(オールドレンズも)で補正が効くためスローシャッターも手持ちで可能です。

手持ちでスローシャッターが切れるので三脚がなくても水の流れを抽象化した表現も可能です。
あくまで「補正」なので100%成功するというわけではないのと、目安として広角であればシャッタースピード1/2秒〜1.0秒まで、標準であれば1/8〜1/4秒あたりは手持ちで撮影できると思っていいでしょう。
カメラの構え方や体勢で成功率が大きく変わるので、自分のやりやすいフォームを研究してみるのもいいと思います。

■撮影機材:Panasonic LUMIX S9 + LUMIX S 28-200mm F4-7.1 MACRO O.I.S.
■撮影モード:マニュアル 焦点距離 (35mm換算)28.0mm シャッター速度1/1.6秒 絞り値F10.0 ISO感度200
■撮影機材:Panasonic LUMIX S9 + LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6
■撮影モード:マニュアル 焦点距離 (35mm換算)20.0mm シャッター速度1/3.2秒 絞り値F3.5 ISO感度640
■撮影機材:Panasonic LUMIX S9 + LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6
■撮影モード:マニュアル 焦点距離 (35mm換算)27.0mm シャッター速度1/5秒 絞り値F4.0 ISO感度200

S9には補正以外にも撮影をサポートする機能があり、画素数を2400万画素から9600万画素相当に拡張する「ハイレゾ撮影」機能が搭載されています。
特に風景のように解像感が欲しい被写体に非常に効果的です。
手持ちモードと三脚モードとありどちらも9600万画素相当の撮影結果を得ることができますが、三脚モードの方がより精度の高い結果を得ることができます。
せっかくのコンパクトボディのカメラなので手持ちで気軽にハイレゾ撮影を楽しんでみましょう。

■撮影機材:Panasonic LUMIX S9 + LUMIX S 28-200mm F4-7.1 MACRO O.I.S.
■撮影モード:マニュアル 焦点距離 (35mm換算)38.0mm シャッター速度:/50秒 絞り値F8.0 ISO感度800 
ハイレゾ撮影等倍切り抜き
ハイレゾ撮影と通常撮影の画素数の違い。
通常撮影よりも4倍の画素数で撮影することができるので細かいディテールまで描写されている
■撮影機材:Panasonic LUMIX S9 + LUMIX S 28-200mm F4-7.1 MACRO O.I.S.
■撮影モード:マニュアル 焦点距離 (35mm換算)38.0mm シャッター速度1/50秒 絞り値F8.0 ISO感度800
ハイレゾ撮影等倍切り抜き
葉脈や葉の表面に付着している朝露の質感とディテールにうっとり。

LUMIX Labを使ってみよう

スマートフォンとS9を繋いで画像転送やワイヤレス撮影を楽しめるスマートフォンアプリLUMIX Labには、LUT機能を楽しむ機能も搭載されています。
S9で撮影した画像データをLUMIX Lab経由でスマートフォンに転送することで、スマートフォンに登録したLUTを適用することができます。
カメラロールにあるその他カメラで撮影した写真データを読み込んでLUTを当てることも可能です。

LUMIX LabのLUT機能画面

スマートフォンに登録されたLUTを撮影した写真に適用することが可能です。
自分が登録しているLUTがどのようなシーンにぴったりなのか気軽に試すことができます。

LUMIX LabにはLUTを自作する機能も搭載されています。
S9で撮影した写真データを元にコントラスト調整やカラー調整を行った後、LUTを保存することでRAW現像アプリのプリセットを作る感覚でLUTを作成することができます。
さらに、この自作LUTはLUMIX Labを通じてS9に登録することが可能なため、S9のリアルタイムLUT機能をつかって自作LUTを楽しむことが可能です。

LUMIX Labの自作LUT作成画面

リアルタイムLUT機能を使うことで無限の絵作りを楽しむことができます。
Panasonicが運営しているLUMIX Color Labでは著名なクリエーターや写真家が作成したLUTが配布されており、さまざまな絵作りを楽しむことができます。
すでに手元にいくつかLUTを所有している方はそのLUTもS9に登録して使用することが可能です。
私も動画用のLUTをいくつか所有しており、リアルタイムLUT機能を使って動画用の絵作りをスチル撮影で楽しんでいます。

まとめ

S9の魅力はまだまだたくさんありますが、今回はS9の特徴でもあるリアルタイムLUT機能とデザインについてご紹介させていただきました。
今回メインで紹介したPanasonic LUMIX S 28-200mm F4-7.1 MACRO O.I.S.とPanasonic LUMIX S 18-40mm F4.5-6.3以外にも魅力的なレンズが多く、LマウントにはLマウントアライアンスのレンズが豊富にラインナップされているため、Panasonicのレンズ以外にもSIGMAやLeicaのレンズも純正レンズとして活用することができます。

■撮影機材:Panasonic LUMIX S9 + LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6
■撮影モード:マニュアル 焦点距離 (35mm換算)20.0mm シャッター速度1/5秒 絞り値F11.0 ISO感度200
■撮影機材:Panasonic LUMIX S9 + LUMIX S 20-60mm F3.5-5.6
■撮影モード:マニュアル 焦点距離 (35mm換算)60.0mm シャッター速度1/15秒 絞り値F5.6 ISO感度800

デザイン性、小型軽量、機能性…ミラーレス一眼デビューにぴったりなカメラですが気軽に持ち出せる2台目のカメラとしてもとても良い選択肢だと思います。
私もS9は気軽に持ち出す用カメラとして導入し、実際S9が手元に来たことで気軽にフルサイズを楽しめるようになりました。
見た目も機能も写真を楽しむポイントが盛りだくさんなS9を使って写真ライフを楽しんでみてください。

 

■写真家:木村琢磨
1984年生まれ。岡山県在住のフリーランスフォト&ビデオグラファー。広告写真スタジオに12年勤務したのち独立。主に風景・料理・建築・ポートレートなどの広告写真の撮影や日本各地を車で巡って撮影。ライフワーク・作家活動として地元岡山県の風景を撮影し続けている。12mのロング一脚(Bi Rod)やドローンを使った空撮も手がけ、カメラメーカー主催のイベントやセミナーで講師を務める。

 

 

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