意外な暗所性能!?パナソニック LUMIX S9で星景写真・オーロラを撮影

成澤広幸
意外な暗所性能!?パナソニック LUMIX S9で星景写真・オーロラを撮影

はじめに

2024年6月にパナソニックから発売された、LUMIX S9。当初はフルサイズなのに超コンパクト!という外観が気になって使い始めましたが、実際に使ってみると「もしかしたら現時点で暗所性能は歴代No.1かも?」と思わせるような性能を伴っていて驚いたことを覚えています。

発売当初はメカシャッター非搭載、それに伴いストロボとの同調ができないことや、ファインダーの廃止など、大胆な仕様が話題を呼んだ機種でした。正直に言うとマイナス部分がクローズアップされてしまった印象がありますが、中身は間違いなく、私が撮影する星空撮影に向いた機種でした。

この記事では、星空撮影の観点から見たLUMIX S9の素晴らしさをお伝えしたいのですが、同時に「なんでこうなっちゃたの!?」な注意点もお伝えしたいと思います。

小型軽量が魅力のLUMIX S9。特にLUMIX S 18mm F1.8との組み合わせは動画も星景も両方いける組み合わせ。小ささを伝えるためにSIGMA fp Lと並べてみた。fp Lにはグリップやケージなどを装着しているので少々大きく感じるが、それでもS9のコンパクトさが伝わるのではないかと思う。LUMIX S9のアクセサリーシューについてるのは別売りのサムレスト。

LUMIX S9で撮影した作例

いつもはうんちくから始まることが多い私のレビュー記事ですが、今回は作例からお見せしようと思います。

■撮影機材:パナソニック LUMIX S9 + LUMIX S 18mm F1.8
■撮影環境:ISO8000 F1.8 8秒 Kenkoスターリーナイトプロソフトン使用 Photoshop Lightroom Classic, Photoshop CC
■撮影地:高知県室戸
■撮影機材:パナソニック LUMIX S9 + SIGMA 15mm F1.4 DG DN DIAGONAL FISHEYE | Art
■撮影環境:ISO6400 F1.4 6秒 Kenkoリアプロソフトン使用 Photoshop Lightroom Classic
■撮影地:モンゴル・バヤンザク
■撮影機材:パナソニック LUMIX S9 + SIGMA 15mm F1.4 DG DN DIAGONAL FISHEYE | Art
■撮影環境:ISO8000 F1.4 5秒 Photoshop Lightroom Classic
■撮影地:カナダ・イエローナイフ
■撮影機材:パナソニック LUMIX S9 + LUMIX S 18mm F1.8
■撮影環境:ISO8000 F1.8 2秒 Photoshop Lightroom Classic, Photoshop CC
■撮影地:カナダ・イエローナイフ

うーん、どの写真も素晴らしいですね(自画自賛ではなく、カメラが良いという意味で)。カメラが小さくコンパクトで初心者向けみたいなイメージがあったので、使用するまではそんなに期待していなかったのですが、中身はしっかりフルサイズ。というか、現時点で暗所性能は最高性能じゃ・・・と感じました。

同じ構図での画像がないため正確な比較ができずで申し訳ないのですが、私はLUMIX S5もS5IIXも使用した経験があります。過去画像や体感をすり合わせると、そのような結論に至りました。ここからは使用していて良かったポイントをお伝えします。

良かった点

1.液晶が超絶見やすく、ピント合わせがしやすい
さすがテレビを作っているメーカーだからでしょうか。めちゃめちゃ見やすかったです。今、星景写真向けカメラと言えば必ずついていてほしい「液晶ブースト」の機能も備わっています。

以下の動画はLUMIX S5をレビューしたときのものですが、基本的な見え方は変わりませんので参考にしてみてください。

2.流星群の撮影に最適!業界最短(成澤調べ)で撮影できるインターバル撮影機能「撮影間隔設定OFF」
カメラ内インターバル撮影を行うと、必ずバッファ(次の撮影に入るまでの時間)が生まれます。露出時間によっては2秒のバッファが必ず発生します。その2秒の間に流星が流れた!なんてことはほんとによくあります。

ところがS9の場合は「撮影間隔設定」をOFFにすると、バッファを限りなくゼロにした状態でインターバル撮影が行えるのです。地味に神機能だと思います。どうやっているんだろう?

3.ボディ側でピント位置をロックできる
ピントを合わせた後で「フォーカスリングロック」をONにするとピントが固定できます。撮影の途中でレンズヒーターを巻くときや移動の際もピント位置がずれることなく安心です。

4.高感度ノイズが少なく、画像処理がしやすい
以下は上にある作例のJPEG撮って出し画像です。カメラ内の色設定は「シネライク D2」です。撮って出し画像を見てもよく写っていてノイズが少ないのがわかります。そして画像処理で消しやすいノイズなんですよね。

オーロラの写真に限ってはオーロラ自体が明るいということもありますが、そのままでも全く問題ないです。実は他社カメラだとグリーンがきつく出てしまうので、撮って出しでなんて使えないのですが、LUMIX S9は問題なし。LUMIXの色設定が優れていることがわかりますね。

JPEG撮って出し

5.LUMIX Labが自撮りで使いやすい
LUMIX Labを使うとリアルタイムでカメラの写りを確認できます。これが自撮り撮影だととても便利。
以下は撮影時にスマホ内で見えている様子と、実際に撮影した画像です。

LUMIX Labを使用すると、遠隔操作で構図をスマホで確認することができる。
このような自撮り写真も、いちいちカメラを確認せずに済むので大変便利。ベストな一枚を慎重に撮影することができる。

6.ボディサイズの小ささで操作性が損なわれない豊富なカスタマイズ
通常はボディサイズが小さくなるとカスタマイズ機能が弱くなりますが、S9はまったくそんなことありません。カスタムモードのC3には好みの設定を最大10セットまで登録できますし、各ボタンや液晶内のFn設定でよく使う機能がガンガン割り振れます。まじで使いやすい。

7.シャッターディレイ搭載
これは地味に大事。シャッター手押しだと押した反動でブレます。そのためレリーズやスマホアプリを使用しますが、シャッターディレイを使用すれば、シャッターボタンを手押しして数秒後に撮影が開始する、ということができます。

 

しかしながら良かったところばかりではありません!イマイチなところもありました。

なんでこんな仕様にした!?な注意点

1.感度を上げるに従って露出時間に制限がでる
この仕様は最初に使ったとき驚きました。感度に合わせて以下のようにシャッタースピードが制限されます。

ISO12800…8秒まで
ISO10000…10秒まで
ISO8000…13秒まで
ISO6400…15秒まで

星景撮影においてこれはなかなか厳しい仕様です。撮影場所やレンズによってはF2.8、ISO6400、15秒で適正露出を出すのは難しいです。S9の良さを活かすのであればF2.8よりも明るいレンズを使用するのをおすすめします。

2.レリーズ時間に制限がある
基本的に60秒以上の露光ができません。ISO感度を1600まで下げると60秒まで露光することが可能になります。不思議なのは、LUMIX Labを使うとバルブ撮影ができると謳っているのですが、ISO感度を下げてバルブにしても64秒で撮影が終わってしまうことです。このあたりの上限を取り払ってくれると撮影に幅がでるのになぁと思います。

3.星向け広角レンズがLUMIX S 18mm F1.8のみ
これは非常に寂しいです。SIGMAのレンズがあるじゃないかと言われそうですが、純正でこの分野に力を入れてくれていないのは寂しいですね。今後に期待したいと思います。

さいごに

最近はLUMIXのカメラで星景写真を撮影する人が徐々に増えているような気がして、とても嬉しいです。私のYouTubeチャンネルでもLUMIX S9のレビューをしていますので、こちらもぜひ参考にしてみてください。

 

 

■写真家:成澤広幸
1980年5月31日生まれ。北海道留萌市出身。星空写真家・タイムラプスクリエイター。全国各地で星空撮影セミナーを多数開催。カメラ雑誌・webマガジンなどで執筆を担当。写真スタジオ、天体望遠鏡メーカーでの勤務の後、2020年4月に独立。動画撮影・編集技術を磨くべくYouTuberとしても活動している。
・著書「成澤広幸の星空撮影塾」「成澤広幸の星空撮影地105選」「プロが教えるタイムラプス撮影の教科書」「成澤広幸の星空撮影塾 決定版」「星空写真撮影ハンドブック」
・月刊「天文ガイド」にて「星空撮影QUCIKガイド」を連載中
・公益社団法人 日本写真家協会(JPS)正会員

 

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