フルサイズとの併用も視野に。OM SYSTEMで増える、広がる作品づくり。標準ズームレンズ1本でも始めてみたくなる魅力

高橋渉
フルサイズとの併用も視野に。OM SYSTEMで増える、広がる作品づくり。標準ズームレンズ1本でも始めてみたくなる魅力

初めてのOM SYSTEM。標準ズームレンズでも満足できる?

小型軽量でふだん持ち歩くのに1台あればよさそうなOM SYSTEMミラーレス一眼
フルサイズ(35mm判)を使っているので所有には至っていなかったが、カメラ内でのグラデーションND(ハーフND)機能や、ヘリテージなデザインでこれならふだん持ち歩きたくなるOM-3、アウトドアイメージの新色サンドベージュも追加されて進化したOM-5 Mark IIの登場など、気になり始めたOM SYSTEM ミラーレス一眼。改めて、小さくて軽いというだけではないメリットを知りたいところです。

これまでの連載記事 『フルサイズとの併用も視野に。OM SYSTEMで増える、広がる作品づくり』 で、周辺部までの解像度が高く、歪みの少ない映像を実現しているマイクロフォーサーズシステムのしくみ、フルサイズ(35mm判)とは違った最短撮影距離で得られる撮影領域や浅い被写界深度など、小さくて軽いということだけではないOM SYSTEMの魅力をご紹介してきました。それだけではなく、強力な手ぶれ補正、防塵防滴、コンピュテーショナル フォトグラフィ機能によって得られる撮影の魅力もあります。
とはいえ、OM SYSTEM ミラーレス一眼カメラを標準ズームレンズ1本で使い始めても満足できるのか、今回は、初めて手にする機会が多い2本のPRO標準ズームレンズを使った作例で、フルサイズ(35mm判)との併用でプラスになるポイントをご紹介しましょう。

近く寄れる2種類の高解像PROズームレンズ

最短撮影距離・最大撮影倍率は?
フルサイズ(35mm判)での同じ画角、同じ距離での撮影と比較して、より近い最短撮影距離で得られる撮影領域や、近く寄れることでの浅い被写界深度で撮影できるマイクロフォーサーズシステムの特徴は、標準ズームレンズも例外ではありません。M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO IIは最短撮影距離がズーム全域で20cm、テレ側での最大撮影倍率が35mm判換算で0.6倍相当、M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PROは、ズーム全域で最大撮影倍率35mm判換算0.5倍相当というハーフマクロとしての撮影が可能です。

 

 

最短撮影距離と最大撮影倍率 ※撮影倍率は35mm判換算

被写界深度は?ボケは?
フルサイズ(35mm判)と比較して同じ画角、同じ距離での撮影の場合、被写界深度は約2段分深くなりますが、近く寄れることで、浅い被写界深度で背景や手前のボケを表現することができます。広角側12mm(35mm判換算24mm相当)でも近距離の撮影が可能、画角を広く、背景をぼかした風景の撮影ができます。

M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO II

「日常写真、自然風景だけではなく、夜景や星景も撮りたい」
開放絞り値が全域でF2.8の明るさを持つフルサイズ(35mm判)換算24-80mm相当の高解像PRO標準ズームレンズ。開放絞り値F2.8の明るさで、よりボケを活かした表現や、夜景、星景の撮影にも有効です。

望遠側40mmで最短撮影距離、35mm判換算最大撮影倍率0.6倍相当での撮影。タンポポの花をここまで大きく撮影することができます。
■撮影機材:OM-1 Mark II + M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO II / C-PLフィルター使用
■撮影データ:A(絞り優先オート) / 焦点距離:40mm(35mm判換算:80mm相当)/ 1/2500秒 F2.8 ISO200 露出補正:0.0EV
開放絞り値F2.8による浅い被写界深度でのボケを活かした撮影。葉と葉の隙間から見える下に咲いている花にピントを合わせ、手前の花をぼかして撮影。
■撮影機材:OM-1 Mark II + M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO II / C-PLフィルター使用
■撮影データ:A(絞り優先) / 焦点距離:40mm(35mm判換算:80mm相当)/ 1/25秒 F2.8 ISO400 露出補正:+0.3EV
OM-1 Mark IIの強力な手ぶれ補正と、開放絞り値F2.8による明るさの組み合わせでISO感度を上げずに手持ち夜景撮影。
■撮影機材:OM-1 Mark II + M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO II
■撮影データ:A(絞り優先) / 焦点距離:12mm(35mm判換算:24mm相当)/ 1/2秒 F2.8 ISO200 露出補正:0.0EV
OM-1 Mark IIの強力な手ぶれ補正と、開放絞り値F2.8による明るさの組み合わせで手持ち5秒の星景撮影。
■撮影機材:OM-1 Mark II + M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO II / 光害カット・ソフト効果フィルター使用
■撮影データ:M(マニュアル) / 焦点距離:12mm(35mm判換算:24mm相当)/ 5秒 F2.8 ISO6400 露出補正:0.0EV

M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO

「登山やトレッキングに軽く持ち歩きたい。できれば高解像で撮影したい」
コンパクトに持ち歩けるフルサイズ(35mm判)換算24-90mm相当の高解像PRO標準ズームレンズ。小さくて軽く登山やトレッキングにも最適で、防塵防滴にも対応しており、急な雨でも安心して撮影ができます。ズーム全域で35mm判換算 最大撮影倍率0.5倍相当を実現、ハーフマクロとして使うことができます。

広角側12mm(35mm判換算24mm相当)、望遠側45mm(35mm判換算90mm相当)での最短撮影距離で撮影したシロツメクサ。ズーム全域で被写体を同じ大きさで撮影ができ、画角と被写界深度に違いが出ます。

35mm判換算90mm相当の望遠側でムラサキツメクサの花に近寄り、浅い被写界深度で花の中心だけピントがあったやわらかい表現で撮影。
■撮影機材:OM-5 Mark II + M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO / C-PLフィルター使用
■撮影データ:A(絞り優先) / 焦点距離:45mm(35mm判換算:90mm相当)/ 1/500秒 F4.0 ISO200 露出補正:-0.7EV
紫とピンクのあじさいの花が重なり合っている部分を撮影。近距離による浅い被写界深度で、開放絞り値F4.0でありながらもボケを活かした撮影が可能です。
■撮影機材:OM-5 Mark II + M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO / C-PLフィルター使用
■撮影データ:A(絞り優先) / 焦点距離:45mm(35mm判換算:90mm相当)/ 1/400秒 F4.0 ISO400 露出補正:-0.3EV
カメラ・レンズともに防塵防滴で、雨の日でも安心して撮影ができます。
■撮影機材:OM-5 Mark II + M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO / C-PLフィルター使用
■撮影データ:A(絞り優先) / 焦点距離:45mm(35mm判換算:90mm相当)/ 1/100秒 F5.6 ISO800 露出補正:-0.7EV

近距離で深い被写界深度を実現する「深度合成」

ピント位置をずらしながら複数枚を撮影した写真を合成して、被写界深度の深い写真に仕上げる「深度合成」。2本のPRO標準ズームレンズM.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO II、M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PROはこの「深度合成」にも対応しており、過剰に絞り込むことなく被写体に応じた被写界深度で撮影ができます。被写界深度が浅くなる近距離での撮影に有効です。

葉っぱに止まっている約2cmの小さなカエルを撮影。絞り値を開放のF4.0で背景のボケは残しつつ、カエル全体にピントが合っています。
■撮影機材:OM-5 Mark II + M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO / C-PLフィルター使用
■撮影データ:A(絞り優先) / 焦点距離:45mm(35mm判換算:90mm相当)/ 1/400秒 F4.0 ISO1600 露出補正:+0.3EV

明るいところでスローシャッター効果「ライブND」

複数の画像を合成して疑似的に露光時間を延ばし、明るいところでもスローシャッター効果を実現できる機能です。カメラの設定で使えるため、フィルター径のサイズにも関係なく、フィルターが装着できない超広角ズームレンズやフィッシュアイレンズなども含め、すべてのレンズで使えます。NDフィルターをサイズごと、段数ごとに取り揃えて持ち歩くこともないので機材がかさばらないことも魅力です。

「ライブND」機能は、Sモード(シャッター優先)とMモード(マニュアル露出)で利用が可能、カメラ内でNDの段数をし、LVシミュレーションで効果を見ながらシャッター速度を決めることができます。短いシャッター速度を複数枚合成することで1画像分のシャッター速度を実現しているため、減光がなくノイズを低減する効果もあります。

西沢渓谷の人気の撮影スポット七ツ釜五段の滝。ライブNDでのスローシャッターを手持ちで撮影。
■撮影機材:OM-5 Mark II + M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO / C-PLフィルター使用
■撮影データ:S(シャッター優先) / 焦点距離:23mm(35mm判換算:46mm相当)/ 1秒 F10 ISO400 露出補正:0.0EV
■ライブND:ND16

明暗差の大きな撮影シーンを美しく表現できる「ライブGND」

複数枚の画像を高輝度部と低輝度部で異なる合成を行うことで、明暗差の大きな撮影シーンを美しい作品に仕上げる「ライブGND(グラデーションND)」。「ライブND」と同様、カメラの設定で使えるため、フィルター径のサイズにも関係なく、フィルターが装着できない超広角ズームレンズやフィッシュアイレンズなども含め、すべてのレンズで使えます。GNDフィルターやフィルターホルダーなどを取り揃えて持ち歩くこともないので、いつでもあらゆるシーンで使うことができます。複数枚の合成で撮影するため、動いている被写体には向きませんが、渓流や滝など、水の流れは自然な感じで撮影ができます。

「ライブGND」機能は、P(プログラム)、A(絞り優先)、S(シャッター優先)、M(マニュアル露出)で利用が可能、GNDの段数(ND2、ND4、ND8)と、フィルタータイプ(Soft、Medium、Hard)が選択でき、フィルター効果の境界位置をファインダーをのぞきながら自在に設定することができます。搭載機種:OM-1 Mark II・OM-3

手持ち夜景撮影にも最適。ノイズ軽減効果も高い「手持ちハイレゾショット」

手持ち撮影中に発生するわずかな位置ずれを利用し、12回撮影した画像を基に約5000万画素相当の高解像写真が撮影できる機能。移動の多い山岳や三脚を利用できない場所でも、手持ちで超高解像写真を撮ることができます。複数枚を合成するため動いている被写体には向きませんが、ISO感度で約2段分のノイズ軽減効果が得られるのも特長で、高感度での夜景撮影でも威力を発揮します。

神戸港に停泊中のクルーズ船「御座船安宅丸(ござぶねあたけまる)」を手持ちハイレゾショットで撮影。
■撮影機材:OM-1 Mark II + M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO II
■撮影データ:A(絞り優先) / 焦点距離:17mm(35mm判換算:34mm相当)/ 1/20秒 F2.8 ISO6400 露出補正:-0.3EV
長野県塩尻市にある日本の情緒が残る中山道の宿場町「奈良井宿(ならいじゅく)」を手持ちハイレゾショットで撮影。
■撮影機材:OM-3 + M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO
■撮影データ:A(絞り優先) / 焦点距離:20mm(35mm判換算:40mm相当)/ 1/8秒 F5.6 ISO6400 露出補正:-1.0EV

モニターで光跡の変化を見ながら撮影できる「ライブコンポジット撮影」

連続して撮影する画像で、明るく変化した部分だけを重ねていく「比較明合成」をカメラ内で行える「ライブコンポジット」機能。星景や打ち上げ花火、飛行機、鉄道、船などの光跡撮影はもちろん、水に漂う木の葉の撮影にも利用できます。撮影途中の経過をモニターで見ることができるので、光跡の長さをお好みのところで止めることができます。

箱根・芦ノ湖での星景撮影。風もなく、箱根神社の水中鳥居が湖面に映り込んでいました。
■撮影機材:OM-1 Mark II + M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO II
■撮影データ:B(LiveComp) / 焦点距離:12mm(35mm判換算:24mm相当)/ 30分(15秒×120回)F2.8 ISO1600

まとめ

OM SYSTEM のPRO標準ズームの特長は伝わりましたでしょうか。マイクロフォーサーズシステムだから、フルサイズ(35mm判)よりも小型軽量で持ち歩けることは最大の魅力かもしれませんが、それだけではありません。最短撮影距離が近く、近寄ることで得られる前ボケ、背景ボケを活かせることなど、OM SYSTEMで広がる撮影領域があります。OM-1 Mark II、OM-3、OM-5 Mark IIでのレンズキットで準備されているPRO標準ズームレンズも例外ではありません。フルサイズ(35mm判)とは違った撮影領域が広がり、強力な手ぶれ補正、防塵防滴、さらにコンピュテーショナル フォトグラフィ機能を使った撮影など、作品づくりが広がります。ぜひOM SYSTEM ミラーレス一眼カメラ・レンズで作品のバリエーションを広げてください。

カメラ+レンズ 質量比較表
PRO標準ズームレンズ仕様比較表

 

 

■写真家:高橋渉
1988年より写真業界に従事。雑誌・Webメディアなどへの執筆、カメラメーカーでの作例の撮影や展示、トークイベントや動画コンテンツ出演などを行っている。主な撮影のテーマは鉄道や乗り物、風景・花など。2019年11月より箱根・芦ノ湖で運航されている箱根海賊船の絶景に魅了され、2023年10月には「Hakone Pirate Ship 写真集・箱根海賊船」を発売、2024年4月には箱根海賊船をテーマにした写真展を開催。
・公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員
・公益社団法人 日本広告写真家協会(APA)会員
・公益社団法人 日本写真協会(PSJ)会員

 

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