OM SYSTEM PENでバンコクをモノクロスナップ
はじめに
遂にOM SYSTEM PENが正式発表になった!
ミラーレス初代のPEN E-P1からの、長年の、長年のマイクロフォーサーズユーザーで、PENシリーズの高級機だったPEN-Fの愛用者でもある自分としては、これは非常に気になるカメラなのである。
この所、OM SYSTEMの製品はOM名のシリーズに全振りしていてPENの存在感が薄れていた感があったが、PENシリーズはOMシリーズとは異なる気軽な魅了がある。威圧感の無い外観はストリートスナップには最適の選択と言える。
E-P7の正常進化形の後継機
PENの新型と言えば、未だ熱烈なファンが多く中古市場で高値を維持しているPEN-Fを引き継ぐ、PEN-F2の登場が一部のマニアの間ではで期待されていた。
今回のOM SYSTEM PENは、PEN-Fの要素も部分的に引き継いではいるが、価格帯的に見ても、PEN-Fの後継機では無いと感じる。
私見だが、PEN-Fの形を変えた実質的な後継機はOM-3である。
僕はOM-3を愛用しているが、両機を連続して使えば作り込みや操作感が共通している事がよく分かる。
だが、今回のPENの立ち位置は前機種のE-P7の正常進化形の後継機であり、PENシリーズの新たな主力と言えるだろう。
マニアックなこだわりの機種であるOM-3よりも間口が広く、より幅広いユーザー向けの気軽に使うことが出来る万能機である。
若者のスマホからのステップアップにも良いし、E-P7までの機種のPENシリーズ愛用者にとっては待望の新型であろう。
OM-3とはまた役割が違うカメラであり、PENというスタイルのカメラとして求められるベストなポジションで登場したと思う。
購入しやすい価格帯で、EVF、防塵防滴、モノクロカラープロファイル機能を装備したPENは、かねてより多くのユーザーが待ち望んだ機種であり、PENシリーズの真打ちが遂に登場した感がある。
特に、このクラスの機種にEVFと防塵防滴とが装備されたメリットは非常に大きい。
プロのサブ機としてもガンガンに使えるカメラになったと思う。
また、後述するモノクロカラープロファイル機能を理解すると、非常に幅広くカメラ内での絵作りが出来るのもアドバンテージと言える。

■撮影環境:焦点距離14mm F4 1/250秒 ISO800
PEN-FTを引き継ぐデザイン
デザインはフィルム時代のハーフサイズ一眼レフの方のPEN-Fのデザインを元に、現代的に解釈したレトロモダン感覚でとても良いと思う。
新たに作られたシンプルなロゴも新鮮だ。
E-P8でなくシンプルにPENと言う名前にしたのも、これぞPENシリーズの完成形という自信に満ちたメッセージに感じる。
個人的には普段、ブラックのカメラが好きなのだが、この機種に関しては何故かシルバーの方がカッコ良く見える。
発売されたら多分、シルバーの方を購入する事になりそうだ。
僕は、フィルムのPEN-FTも好きなカメラで所有しているのだが、ボディ右肩の広い面積のクロームメッキのデザイン処理が両機種に共通したイメージで、脳内でPEN-FTとOM SYSTEM PENが重なってくる。
実際に手にしてみると、手の中にぴたっと収まるサイズと、ファインダー部の一眼レフ的な出っ張りの無いフラットなスタイルは正にペンシリーズのイメージそのものである。
それでいてEVFがごく自然に組み込まれている事に、ペンシリーズとしての伝統を引き継ぎつつ飛躍的な進化を感じる。
接眼部のデザイン処理も、PEN-Fの時と比較してよりスマートになった。
ボディの素材は金属ではなく強化プラスチック製の様だが、塗装の仕上げが良いので安っぽさは微塵も無い。

■撮影環境:焦点距離17mm F4 1/125秒 ISO800
OM SYSTEM PENに似合うレンズ
今回、レンズはキットレンズであるM.ZUIKO DIGITAL14-42mm 3.5-5.6 IIIを付けっぱなしで使用したが、このレンズも新たに防滴防塵仕様にリニューアルされたとの事で、ボディと併せて安心して使用出来る。
このレンズは、強い逆光や夜間の光源などの強い光を画面に入れるとフレアーが生じる事があるのだが、どこか白昼夢の様なフレアーの描写は品のあるオールドレンズの様で美しい。
レンズのひとつの個性と考えると表現手段として大いに活用出来る。
14-42mmは一種の沈胴式の構造になっていて携帯時にはコンパクトに収まるのが良い。
ただ、慣れの問題もあるが、ボディのスイッチを入れた時にレンズを繰り出し忘れて「ズームリングを回し繰り出して下さい」の警告が出て、一瞬スタンバイが遅れる事が時々あったので注意したい。
OM-3の発売と同時期にリニューアルされ、同様に防滴防塵仕様になったM.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 II やM.ZUIKO DIGITAL 25mm F1.8 IIの2本も、小型軽量のボディの持ち味を活かす上で非常に相性が良いだろう。
他にもM.ZUIKO DIGITAL ED 12mm F2.0やM.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8などの定評ある小振りな単焦点レンズとの組み合わせはとても似合いそうだ。
逆に大口径レンズや巨大な望遠レンズを付けるタイプの機種ではない気がする。
小振りなズームや単焦点レンズと合わせて、粋に軽快にスナップしたくなるカメラと言えるだろう。

■撮影環境:焦点距離15mm F4 1/40秒 ISO6400
操作性とEVFの装備
OM SYSTEM PENは最新機種ではあるが、特に目新しい斬新な機能が搭載された訳ではない。
スペックよりも、基本性能と使いやすさに重きを置き、長年の経験値が蓄積された非常に完成度の高いカメラだと感じる。
ブラッシュアップされた各種機能がバランス良く組み込まれ、各ダイヤルやスイッチ、背面モニターの表示パネルの内容など操作性もよく整理され分かりやすい。
また、PENシリーズとしては高級機のPEN-F以来久々に搭載された内蔵EVFの装備は大きなセールスポイントと言える。
やはりカメラはファインダーを覗いて撮りたいものなのである。視度補正機能も組み込まれた十分以上な見え味で、EVFの実用性は高い。
総じて良くこなれており、これまでOM SYSTEMのカメラを使用して来たユーザーはもちろん、他メーカーからの乗り換えやスマホからのステップアップしたビギナーでも戸惑う事無く直感的に把握する事が出来るだろう。
モノクロカラープロファイル機能
PEN-Fから引き継ぐ特筆すべき機能として、カメラ前面に設置されたレバーで切り替えるモノクロカラープロファイル機能がある。
これは、簡単に言うとカメラ内での細かい絵作りが可能な画像調整機能で、これまで何故かPEN-F、OM-3、PEN EP-7の3機種にしか搭載されていなかった。
モノクロとカラーそれぞれの4つのプロファイルをベースに、具体的にはトーンカーブ、シェーディング効果、シャープネス、コントラスト、粒状フィルム効果、色相(カラープロファイル)、カラーフィルター、調色(モノクロプロファイル)といった、細かい部分まで各種設定を自分自身の好みに応じて撮影と同時進行で調整し、jpeg撮って出しでも非常に完成度の高い画を得る事が出来るのだ。
こうして言葉にすると複雑であるが、実際に画像を見ながら効果を試してみた方が理解が早いと思う。
特にモノクロプロファイルに関しては、カメラ内でここまで幅広く調整出来る機種は他メーカーには見当たらず、僕の様なモノクロ派にとっては大変有り難く、これまでも作品制作に愛用して来た。
PCでのRAWデータからのレタッチ作業の手間と時間を省ける意味でも非常に有用性が高く、もっと広く写真ファンに知られて良い機能だと思う。
もちろん、レタッチでじっくり画像を仕上げるのが好きな向きは、それも良いし、要は仕上げのプロセスの選択肢が多くなるという事で歓迎すべき機能である。
ひとつ注意点としては、基本となるプロファイルの順番がこれまでと変わっている。
前の機種ではノーマルな状態であるスタンダードのプロファイルが1だったのが4に変更され、それに従って他のプロファイルも順番がずれているので、以前からの愛用者はうっかり間違えない様に注意したい。
モノクロプロファイルの実践
さて今回、嬉しい事に発売前のOM SYSTEM PENをお借り出来る事になり、タイのバンコクに持参し、ストリートスナップの撮影を実践してみる事にした。
普段からの僕の作風は強い調子のモノクロームのスナップショットである為、今回カラー作品は無いのだが、そこは各種機能を試す作例写真ではなく、実践的な作品撮りという事でご容赦願いたい。
主にモノクロプロファイルを駆使し、時にはアートフィルターのラフモノクロームなども織り交ぜながら、下町を中心に人々や街の風景や建物を撮り歩いた。
ほとんどの場面では、フィルムライクな力強いコントラストと粒状感が好みのプロファイル1を使用し、条件や気分に応じて、カラーフィルターやシェーディング効果を調整して撮影している。
天候によっては赤外フィルム風(IR)のプロファイル2も使用したが、晴天時の空や雲を強調して表現するのに非常に効果的であった。
ローコントラストのプロファイル3と、スタンダードなプロファイル4は、自分の作風とは合わないので今回は使用しなかった。
この辺りは何が正解という事はなく、使う者それぞれが自分自身の生理的な好みに応じて調整すれば良いのだと思う。
プロファイル機能を使うのが初めての人でも、少し使い込む内に、カラーでもモノクロでも自分の好みの基本のプロファイルが把握出来ると思うので、そこから場面に応じてプロファイルを育てていくのが良い使い方だろう。

■撮影環境:焦点距離14mm F10 1/1000秒 ISO640
バンコクでストリートスナップ
軽快でタフなPENを携えてのバンコクでのストリートスナップは充実した楽しい撮影となった。
小型軽量のボディと14-42mmの組み合わせは、朝から晩まで1日スナップして歩いても身体的な負担が殆ど無く、フルサイズ等の大きなカメラを持つ時と比較して格段に疲労が少ない。
EVFの見え味や、AFの速度や精度など基本的な機能もしっかりと熟成されていて、全くストレスを感じる事が無かった。
また、今回の取材は雨期だった為、何度か土砂降りのスコールに遭遇したのだが、PENシリーズとしては初の防塵防滴仕様なので、安心して持ち歩く事が出来た。
PEN-Fを2台、水で修理不能にしてしまった前科のある自分としては非常に有り難い進化である。
スナップの現場においては、こうした信頼感はとても重要なのである。
バンコクの市場や路地裏を回り、存在感を発する人物に声をかけてのコミュニケーションは良い時間であった。
タイ人は気さくな人が多く、市井の人々でも大半が快く被写体になってくれたが、PENの威圧感の無い親しみやすいデザインで、余計な警戒をされなかった事も大きい気がする。
おかげで自然な表情のポートレートスナップが撮れたのではないかと思う。

■撮影環境:焦点距離16mm F9 1/100秒 ISO6400

■撮影環境:焦点距離14mm F5.6 1/1600秒 ISO3200

■撮影環境:焦点距離17mm F6.3 1/2500秒 ISO3200

■撮影環境:焦点距離16mm F6.3 1/400秒 ISO1600

■撮影環境:焦点距離17mm F7.1 1/640秒 ISO800

■撮影環境:焦点距離16mm F10 1/60秒 ISO800

■撮影環境:焦点距離24mm F4.4 1/200秒 ISO6400

■撮影環境:焦点距離38mm F9 1/400秒 ISO400

■撮影環境:焦点距離17mm F5.6 1/40秒 ISO3200

■撮影環境:焦点距離17mm F5.6 1/500秒 ISO800

■撮影環境:焦点距離19mm F4 1/125秒 ISO6400
今回、1週間程の短期集中の旅であったが、新しいPENは、ずっと以前から使っていた愛機の様に何の違和感も無く自分の手に馴染んでいた。
古くはオリンパスのフィルム時代のPENから、またE-P1から続くマイクロフォーサーズ機として、DNAが脈々と受け継がれた楽しみな新機種の登場である。
■写真家:中藤毅彦
1970 年東京生まれ。早稲田大学第一文学部中退。東京ビジュアルアーツ写真学科卒業。
作家活動と共に東京•四谷三丁目にてギャラリー・ニエプスを運営。都市のスナップショットを中心に作品を発表し続けている。国内各地の他、東欧、ロシア、キューバ、中国、香港、パリ、ニューヨークなど世界各地を取材。国内外にて個展、グループ展多数開催。
「Sakuan Matapaan Hokkaido」で第29回東川賞特別作家賞受賞。
「STREET RAMBLER」で第24回林忠彦賞受賞。
主な写真集に「DOWN ON THE STREET」「HONG KONG 2019」「STREET RAMBLER」
「Enter the Mirror」「Winterlicht」「Sakuan Matapaan Hokkaido」など。













