OM SYSTEM OM-3 & OM-5 Mark IIがとらえた7人の松本 ─ 長野県松本市「あがたの森公園」撮影会レポート ─
はじめに
山々の装いが街に降りてきた11月の中ごろ、長野県松本市を訪れました。目的は、カメラのキタムラ松本・並柳店にて行われた「OM-3 & OM-5 Mark II と歩く、あがたの森公園 撮影会」のためです。
この撮影会は、ShaSha寄稿記事「大正ロマンとクラシカルな眼差し ─OM-3が見せてくれた、もうひとつの松本─」を実践する場として開催され、地元の方から東京の方まで、幅広く参加されました。
記事を寄稿するために訪れたときは薄曇りだったこともあり、モノクロプロファイルコントロールでの撮影が多めでした。
しかし、撮影会当日のあがたの森公園は、お天気も紅葉具合も最高の条件に。今回はカラープロファイルコントロールでの撮影が多くなりそうだな…と、楽しみな気持ちで朝を迎えました。
さて、参加者7名がOM-3 & OM-5 Mark IIで切り取った松本の景色、そして使い心地はどうだったのでしょうか?撮影会レポートをお届けします。
カメラの特徴と使いこなし、そして皆さまの反応
当日はOM-3 & OM-5 Mark IIを初めて手にする方々が多かったこともあり、特徴や使いこなしをお伝えしました。OM-3は小型単焦点レンズを装着してスタイリッシュに旅を楽しんだり、さらに小型なOM-5 Mark II は山で楽しんだりしています…など、川野の経験も織り交ぜながら話を進めました。

カラープロファイルコントロール
OM-3に搭載の「カラープロファイルコントロール」は初めて使う方が多く、「どのように使いこなしたら良いかを知りたい」という声が多かったように感じました。
簡単に説明すると、特定の色の濃度(彩度)を調整できる機能になります。

■撮影環境:f/5.6 1/320秒 ISO200 WB Auto +2STEP(R) +1STEP(G) 焦点距離17mm(35mm判換算34mm) カラープロファイルコントロール使用
例えば、こちらの作品は、緑以外の色を少々濃い目に仕上げています。そのおかげで、紅葉はもちろんですが、空の色も印象的に写すことができました。すべての色の濃度を調整すると不自然な仕上がりになりますが、特定の色だけ調整することにより自然に仕上げることができます。

色を濃くして被写体を強調するだけでなく、逆に色を薄くすることで色飽和を防ぐこともできます。さらに、自分の好きな色合いを作ることも可能なので、使いこなせると表現の幅がぐっと広がります。
カラープロファイルコントロールに関して、もう少し詳しく知りたい方はこちらを参考にどうぞ。
モノクロプロファイルコントロール
カラーの次はモノクロ。ということで、OM-3に搭載されている「モノクロプロファイルコントロール」についても説明しました。モノクロ撮影に慣れていない参加者さまの声として印象的だったのは、「カラーフィルター効果」の使いこなしが分からないということ。「モノクロなのにカラーフィルターって?」と疑問に感じていたようです。
カラーフィルター効果について簡単に説明すると、選択した色は明るく、反対の色は暗く写る効果が得られる機能です。

例えば、こちらはレクチャー会場となったカメラのキタムラ松本・並柳店さんの外観ですが、モノクロプロファイルコントロールでカラーフィルター効果(赤)を利用して撮影してみると…
カラーフィルター効果「なし」の写真と比較すると、「赤」を適用した写真は「カメラのキタムラ」ロゴが明るく写り、反対色となる空の青色は暗く写りました。特定の色の明暗が変わるので、被写体の存在感を強めたり弱めたりすることができます。その場で操作や仕組みをお伝えしたことで、参加者の皆さまに理解していただけたようでした。これこそ撮影会の醍醐味のひとつですよね。
モノクロプロファイルコントロールに関して、もう少し詳しく知りたい方はこちらを参考にどうぞ。
その他にも、ライブNDや、ライブGND(※ OM-5 Mark II 非搭載)など、OM SYSTEMの強みである「コンピュテーショナル フォトグラフィ」機能を説明しましたが、「こんなこともできるの?!」、「私の持っている機種より大幅に進化している…!」という声も。
皆さん「早く外に出て撮影したい!」と前のめりな様子だったので…
撮影実践 あがたの森公園へ
カメラのキタムラ松本・並柳店さんにて1時間ほどレクチャーしたあと、あがたの森公園へ移動して実践撮影を行いました。

はじめの30分はウォーミングアップとして、皆さんと一緒に歩きました。机上では理解しても、いざ実践してみると疑問が湧いてくるもの。様子を見てフォローしながら撮影していきます。
皆さんがレンズを向けていたのは旧松本高等学校。大正時代に建てられた歴史的建造物です。旧制高等学校のひとつとして将来を担う人材を育んできました。現在は「あがたの森文化会館」として市民に開かれ、国の重要文化財にも指定されています。

■撮影環境:f/9.0 1/6秒 ISO200 WB Auto 焦点距離12mm(35mm判換算24mm) アートフィルター使用(ブリーチバイパスII)
こちらが旧松本高等学校になりますが、じつはこの写真、2019年の冬に訪れたときに撮影したものです。このときはE-PL10を持って松本を旅しました。冬の寒さを表現しようと、アートフィルターの「ブリーチバイパスII」を使用しました。
ちょうど高校生が歩いてきたので、スローシャッターでぶらすことにより動感を出しました。E-PL10には「ライブND」が搭載されていなかったので、ISO感度を下げ、絞り値をF9まで上げることでスローシャッターにしていましたが、

■撮影環境:f/4.5 1/8秒 ISO200 WB Auto 焦点距離33mm(35mm判換算66mm) モノクロプロファイルコントロール使用(COLOR:マゼンタ Level+3) ライブND ND16使用
OM-3もOM-5 Mark II もスローシャッター効果を得られる「ライブND」が搭載され、あらためて進化を実感しています。物理NDフィルターを持たずとも明るい場所でもスローシャッターを楽しめますし、小さな絞り値で前ボケを活かした撮影も可能です。


作品発表 〜 OM-3 & OM-5 Mark IIがとらえた7名の松本
さて、参加者の皆さまはOM-3、およびOM-5 Mark IIで、どのように撮影を楽しまれたのでしょうか?作品をご提出いただきましたので、読者の皆さまも一緒にご覧くださいませ。
Kさん

■撮影環境:f/4.0 1/20秒 ISO200 WB 5800K 焦点距離15mm(35mm判換算30mm) カラープロファイルコントロール使用 ライブGND ND08 Soft 使用
窓辺にただずむ人物に物語を感じます。紅葉の美しさに見惚れているようです。この作品でこだわりを感じる点は、室内と室外の露出差を調整されていることです。通常、室内の明るさを適正露出で撮影すると室外は明るく写ってしまいます。ですが、部分的に明るさの調整を可能にする「ライブGND」機能を活用し、窓から上の露出を抑えたことで、室内外とも適正な明るさで写すことができています。カラープロファイルコントロールで紅葉の色を強調しているので、自然と外に目線が流れるのも良いと感じました。
Kさん

■撮影環境:f/4.0 1/50秒 ISO200 WB Auto 焦点距離42mm(35mm判換算84mm) モノクロプロファイルコントロール使用(COLOR:無し 粒状フィルム効果)
手を繋ぐ親子の姿が微笑ましい一枚ですね。モノクロプロファイルコントロールの粒状フィルム効果により、過去の幸せな記憶のようにも感じられます。路面に差し込む日差しが親子の歩く位置と重なり、温かみが増すだけでなく、輪郭が照らし出されることで存在感も増していますね。モノクロ撮影で色の情報が削除されたことにより他の色に目移りすることなく、親子へと自然に目線が誘導されます。縦位置で切り取られたことで、並木道の奥行きとヒマラヤ杉の高さを強調できているのも良いと感じました。
Tさん

■撮影環境:f/6.3 1/800秒 ISO200 WB 晴天日陰 焦点距離200mm(35mm判換算400mm) カラークリエーター使用
OM-5 Mark II のカラークリエーター機能を駆使し、紅葉の赤が燃えるように美しく仕上がっています。カラークリエーターは画面内すべての色に対して色の濃さ(彩度)・および色相を調整する機能で、この作品では彩度を高くし、さらに赤色のフィルターを被せています。それにより、色褪せた紅葉を鮮やかに写すことができています。この作品で機転を感じた点は、画面内にもみじの葉だけを配置していることです。もし、空や人などが入り込んでいたら不自然に感じていたことでしょう。
参考までに、カラークリエーターとカラープロファイルコントロールについて、簡単に違いを説明しますと…どちらも色の調整を行う機能ですが、
カラークリエーター:画面内のすべての色を調整(OM-3、OM-5 Mark IIに搭載)
カラープロファイルコントロール:画面内の特定(複数色選択可)の色を調整(OM-3に搭載)
という違いがあります。川野は、OM-5 Mark II でこの機能を多用します。理由として、彩度を8段階の細かさで調整できるからです。もう少しだけ彩度を上げたいな…というときに重宝しています。
Nさん

■撮影環境:f/4.0 1/320秒 ISO200 WB 晴天 焦点距離45mm(35mm判換算90mm) カラープロファイルコントロール使用
今回の撮影会では、「物だけでなく、光を見て撮影すると印象的な写真に仕上がります」とお伝えしたのですが、忠実に実践してくださった一枚だと感じました。建物の造形でも、黄葉でもない、壁面に反射した黄葉の光が美しいと感じられたのだ…と。立派なイチョウの木でしたので黄葉を多めに入れてしまいたくなりますが、わずかな量にとどめたことでむしろ、イチョウの木の大きさや黄葉の美しさを想像させられました。
Fさん

■撮影環境:f/3.5 1/100秒 ISO200 WB Auto 焦点距離17mm(35mm判換算34mm) カラープロファイルコントロール使用 ライブGND ND08 Hard使用
この作品が素敵だと思う点は、窓枠にピントを合わせ、外の景色をわずかにぼかすことで絵画のような印象を与えていることです。窓枠が額縁のようにも見えます。また、カラープロファイルコントロールで空の色を強調しているので、秋の爽やかさも感じられます。
ちなみに、ライブGNDのND08 Hardを使用し、窓枠を境に室外の露出を抑えて撮られています。つまり、画面の右2/3に効果を適用しています。ライブGNDは境界の仕上がりにSoft、Medium、Hardを選べるのですが、窓枠を境に明暗がはっきり別れているので、Hardを選ぶことで自然に仕上がっているのが良いと感じました。
参考までに、空に対してライブGND Hardを適用する場合、境界線を空の上に配置すると急激に明暗差が生まれ、不自然な印象に仕上がります。この場合、緩やかに効果が適用されるSoftを選ぶのがおすすめです。
Mさん

■撮影環境:f/13 1/60秒 ISO200 WB Auto 焦点距離12mm(35mm判換算24mm) ピクチャーモード Vivid ライブGND ND04 Soft使用
ライブGNDを使用して空の露出を落とし、建物との露出差を抑えながら撮影されています。それにより、空の青色とイチョウの黄色のコントラストが際立ち、爽やかな秋晴れを感じさせる一枚になりました。通常の撮影だったら空の青色が薄く写っていたことでしょう。さらに、絞り値をF13まで上げることで太陽に光芒が発生し、日差しの透明感が強調されていますね。横位置で撮影されていますが、縦位置で見せたい部分(画面の主に右側だと思うのですが…)に絞るとさらに良くなるように感じました。
Mさん

■撮影環境:f/3.5 1/60秒 ISO200 WB 晴天 焦点距離24mm(35mm判換算48mm) カラープロファイルコントロール使用
読書の秋を感じさせる一枚ですね。黄葉や木の幹、人物など、三分割構図により要素が配置されているので、画面に安定感を感じます。ハイライト&シャドウコントロールにより、シャドウ部を明るくすることで全体的に柔らかく仕上がっていますが、穏やかな秋の空気が感じられるのも良いですね。個人的な好みではありますが…もう少し引いて空間を多く入れると、外で過ごす開放感がより感じられるのではないかと思いました。
撮影会を終えて
半日がかりの撮影会もあっという間に終了するほど、OM-3 & OM-5 Mark II にじっくり向きあっていただけた一日だったと感じています。

機能が豊富だからこそ、どの機能をどの場面で活用するか悩まれていた様子もありました。ですが、カメラの個性と撮影者の個性が共鳴しあう作品の数々に、「こんな撮りかたもあるのだな…」と皆さま感心しながら鑑賞されていたのが印象的でした。

■撮影環境:f/5.6 1/125秒 ISO200 WB Auto +2STEP(R) 焦点距離17mm(35mm判換算34mm) カラープロファイルコントロール使用
川野にとって、OM-3は旅に、OM-5 Mark IIは山に…と、欠かせない相棒となっています。だからこそ、皆さまにもOM-3やOM-5 Mark II と仲良くしていただけたら嬉しい…そんな想いで撮影会のお手伝いをしました。
読者の皆さまにもこの記事がきっかけで OM-3 や OM-5 Mark II に興味をもち、カメラのキタムラさんに足を運んでみようかな…と思っていただけたなら嬉しい限りです。
開催店舗 カメラのキタムラ 松本・並柳店

2025年7月11日(金)にリニューアルオープンしたばかりで、約200点もの新品カメラ・レンズに加えて150点以上のリユースカメラが置かれており、そのラインアップは地域最大級なのだそう。
また、「カメラを体験できる」ことを重視されていて、エントリー機からハイエンド機まで気軽に触って試し撮りできる展示も魅力です。高品質なプリントを楽しめるプライベートラボ、写真を展示できるフォトギャラリーも併設されていて、撮る・残す・飾るという写真体験を誰もが気軽に楽しめる場所を目指した新コンセプト店になっています。
お近くにお越しの際は、ぜひお立ち寄りください。
・住所:長野県松本市出川3-5-16
・営業時間:10:00-19:00 12月31日は18時閉店
・電話番号:0263-28-6661
・ホームページ:https://blog.kitamura.jp/37/4125/
■写真家:川野恭子
「日常と山」を並行して捉え、文化や営みが交わる点を軸に作品制作を行う。ここ数年は山小屋勤務を経験しながら、山の歴史・文化に造詣を深めることに努めている。メディアへの写真提供、撮影、執筆、講師、テレビ出演(NHKにっぽん百名山ほか)など、多岐に渡り活動。京都芸術大学通信教育部美術科写真コース非常勤講師。著書に、写真集『山を探す』(リブロアルテ)、織田紗織氏との共著『山の辞典』(雷鳥社)ほか多数。























