銘匠光学 TTArtisan AF 75mm f/2 ニコンZマウントで楽しむベトナムの旅
はじめに

銘匠光学(めいしょうこうがく)TTArtisan AF 75mm f/2は、フルサイズ機対応の単焦点レンズです。75mmの中望遠画角で開放値F2の明るいレンズながら、新品価格が3万円台という、お財布に優しいレンズです。今回は、このレンズのZマウントを持ってベトナムに行ってきましたので、旅スナップのお供として、本レンズの使い勝手をレビューいたします。
ピント面の描写は驚きの鋭さ!シャキッシャキ!

今回、本レンズと共に使用したのはNikon Z5IIです。こちらの記事でも初心者さんにお勧めのカメラとしてご紹介しましたが、Nikon Z5IIは、重さ約700gのフルサイズ機にしては小型・軽量なので、なるべく荷物を減らしたい海外旅行にピッタリのカメラです。
そして、TTArtisan AF 75mm f/2はお財布に優しいだけではなく、体にも優しいコンパクトサイズ。ニコンZマウントの大きさは約Φ67×76mm、重さは約344gと、手の小さい筆者でも片手に収まる小ささです。
このベトナムの旅でまず訪れたのが、中部の人気観光地、世界文化遺産にも登録されているホイアンです。

■撮影環境::f2 シャッタースピード:1/1000秒 露出モード:マニュアル
WB:オート0 ISO100 ピクチャーコントロール:スタンダード
こちらは、ホイアンのメイン通り沿いを流れるトゥボン川。夜はこれらの船に乗って、灯籠流しを楽しむこともできます。撮影したのは夕方の時間帯ですが太陽の影響はまだ強く、被写体を色濃くカラフルに描く手伝いをしてくれました。
75mmの焦点距離は、旅スナップにはちょっと長いかと思ったのですが、もともと望遠好きな筆者には、新鮮さもありながら丁度良い焦点距離でした。
もう一歩寄りたいけど足場が悪かったり、人が多かったり、川があって物理的に近付けないときなど、75mmの中望遠画角でぐっと引き寄せた迫力のある写真が撮れるのは、とても気持ちが良かったです。

■撮影環境:絞り値::f2 シャッタースピード:1/500秒 露出モード:マニュアル
WB:オート0 ISO100 ピクチャーコントロール:スタンダード
ホイアン旧市街はランタンと共に、黄色い建物とピンク色のブーゲンビリアが印象的なノスタルジックな街です。夏の昼間は1時間も歩けばバテてしまうほど暑いので、早朝か夕方からの散策がお勧めです。
最初の写真でも思ったのですが、本レンズ、ピントの合っている箇所がシャッキとシャープで、その描き方がびっくりするほど鋭い!
この価格帯で75mmの中望遠画角なら、多少ぬるっとした描写でも許容範囲かなと思っていたのですが、全然そんなことのない、思わず謝りたくなってしまうほどの鋭さ。ナメていたつもりはないんですけど、ホント、ごめんなさい。シャキッシャキです。
合格をあげたいAF性能

■撮影環境:絞り値::f2 シャッタースピード:1/160秒 露出モード:マニュアル
WB:オート0 ISO100 ピクチャーコントロール:スタンダード

■撮影環境:絞り値::f2 シャッタースピード:1/200秒 露出モード:マニュアル
WB:オート0 ISO100 ピクチャーコントロール:スタンダード
ホイアンは人気の観光地だけあって、涼しくなってくる夕方から人手がぐっと増えます。こちらは旧市街のメイン通りで、左右にカラフルなお土産物屋さんが並んでいます。ベトナムの民族衣装のアオザイを着たり、可愛いワンピースなどを着た方々が、あちらこちらで自撮りをしたり、写真を撮り合っていました。
モデルさんがいるポートレートだったら、また違う撮り方をするのだろうなと考えながらも、お土産物屋さんの商品が惜しげもなく外に陳列されているのでスナップ撮影が楽しい!
このときは、液晶画面をタッチしてAFを作動させる「タッチAF」を使用してピントを合わせて、シャッターボタンを押してシャッターを切る流れで撮影していましたが、ピント合わせでの苦労はありませんでした。
走る人や、飛ぶ鳥を撮影するとまた違う印象になるかもですが、スナップ撮影のレンズとしては合格でしょう。ボケ部分が多少賑やかで、周辺光量もシチュエーションによってはちょっと落ちますが、筆者はどちらも好みなので、もっと賑やかで、もっと落ちてくれてもいいくらいです。
ぐっと引き寄せたいときのDXクロップ

■撮影環境:絞り値::f2 シャッタースピード:1/800秒 露出モード:マニュアル
WB:オート0 ISO100 ピクチャーコントロール:スタンダード
DXクロップ使用
暑くて暑くて避難した、ホイアン市場近くのカフェの2階から撮影。ベトナムならではの甘いコーヒーをいただきながら、通行人を眺めているうちに、DXクロップして撮影してみたくなりました。
ベトナムの街は電線がなかなか賑やかですね。ホイアン市場には、電線をデザインしたTシャツも売っていました(買いました)。その電線の隙間から、覗き見るような構図で撮影。電線の前ボケが、ほんの少しだけリアルをアンリアルに変えてくれたような気がします。影と日向のコントラストの強さを見るたびに、暑かった記憶が昨日のことのように思い出せます。
なめらかで美しい玉ボケ

■撮影環境:絞り値::f2 シャッタースピード:1/400秒 露出モード:マニュアル
WB:オート0 ISO1250 ピクチャーコントロール:風景
ホイアンでは月に1度、満月の夜に灯籠流しが行われます。トゥボン川にはランタンを灯した船が何艘も行き交い、水面には沢山の灯籠が浮かびます。川沿いのレストランも、ランタンやライトアップで彩られてとても幻想的です。
こちらはレストランのテラス席から撮影。EDレンズ1枚、高屈折レンズ4枚を有した7群10枚のレンズ構成で、色収差が出やすいシーンでも良好な画を生み出してくれました。
絞り羽根枚数は9枚なので、真ん丸な玉ボケを追求したい方には向きませんが、玉ボケ内のグラデーションは美しく、うるさいにじみも丁寧に抑えられています。絞りは絞らず開放のほうが、なめらかで美しい玉ボケになりました。
ここでもピント面のシャープさが際立ち、ボケている水上の船のランタン、向こう岸のお店のライトと、ピントを合わせたテラスのランタンとの対比を、ぐっと強く出すことができました。
納得の1枚が撮れる良コスパレンズ

■撮影環境:絞り値::f2 シャッタースピード:1/500秒 露出モード:マニュアル
WB:オート0 ISO800 ピクチャーコントロール:風景
こちらはベトナムの首都ハノイのトレインストリートです。実際に運行している電車の線路沿いにカフェが立ち並んでいて、目の前ギリギリを電車が走る抜けるスリル体験ができる場所として有名です。
電車は1日に7〜10本前後通過しますが、時間の変更などもあるので、カフェのオーナーに時間の確認をすると確実です(※電車の運行時間、線路内への立ち入り可否は情勢によって変わりますので、実際に訪れる方は事前に最新の情報をお調べください)。カフェでベトナムコーヒーやビール、フレッシュジュースなどを飲みながら、目の前の線路を歩いたり、撮影したりと自由に楽しめます。
ですが、そろそろ電車が来るという時間になると、警察官の笛が鳴り響き、ここから出てはいけないという黄色いライン内に、カフェのテーブルや椅子を引っ込められます。この笛の音が甲高くて大きいので、なかなかの緊張感!
この写真では、お店の方が線路にビール瓶のキャップを置いています。通過する電車に潰してもらって、お土産として持ち帰るのがブームなのだそうです。

■撮影環境:絞り値::f2 シャッタースピード:1/500秒 露出モード:マニュアル
WB:オート0 ISO500 ピクチャーコントロール:風景
いざ、電車が来ると、みんな一斉にカメラやスマホを電車に向けます。筆者がいたカフェも満席状態で、テーブルの上の瓶や他のお客さんの手が写り込むことから、絞りは開放で撮ろうと決めていました。
絞りリングはクリック感があるので、このような慌ただしい状態で、間違ってリングを触っちゃって絞り値が変わってしまった!というような、ケアレスミスが起こりにくいのが有り難かったです。それくらい、現地はわちゃわちゃしていました。
電車が通り過ぎると拍手や歓声が上がり、ちょっとしたショーが終わったあとのようなムードになります。それからじっくり、背面液晶を見ながら撮影した写真を確認したのですが、もう日本に帰ってもいいかなってくらい、納得の1枚が撮れました。
コンパクトでコスパが良く、AFもスナップ撮影で使用するには十分働いてくれる本レンズは、特に中望遠画角が好きな方には劇的に刺さるレンズだと思いますよ。
■写真家:水咲奈々
東京都出身。大学卒業後、舞台俳優として活動するがモデルとしてカメラの前に立つうちに撮る側に興味が湧き、作品を持ち込んだカメラ雑誌の出版社に入社し編集と写真を学ぶ。現在はフリーの写真家として雑誌やWEB、イベントや写真教室など多方面で活動中。興味を持った被写体に積極的にアプローチするので撮影ジャンルは赤ちゃんから戦闘機までと幅広い。日本写真家協会(JPS)会員。














