オールドレンズを始めよう!オールドレンズの基礎・描写編

鈴木啓太|urban
オールドレンズを始めよう!オールドレンズの基礎・描写編

はじめに

こんにちは!フォトグラファーの鈴木 啓太|urbanです。長年オールドレンズやフィルムを中心にポートレート、スナップ、家族写真を撮影しております。今回はその「オールドレンズ」に関する導入として、皆様にその魅力を伝えていければと思っております。

 

オールドレンズってなに?

カメラブログや写真サイトを眺めていると、ふと、こんなレンズ現行ラインナップにあったかな?と思うことはありませんでしょうか。ご存じない方は驚かれるかもしれませんが、今発売されているデジタルカメラ(主にミラーレスカメラ)には、フィルムカメラの時代に発売されたレンズをボディにつけて楽しむことができるようになっています!まさに革命ですよね。カメラを嗜む方であれば、多くの方に知られるようになったオールドレンズ、その描写や人気の秘密を紐解いていきましょう。

※オールドレンズの定義は、人によってやや解釈が異なるものの、ここでは「フィルムカメラ時代に生産されたレンズ」とします。

 

デジタルカメラとオールドレンズの親和性

オールドレンズがブームとなった背景には、2008年のミラーレスカメラの台頭が挙げられます。ミラーレスカメラはボディ内のミラーを廃したことにより、映像素子からレンズのマウント面までの距離(フランジバック)を短くすることができるようになりました。その空いたスペースに、レンズとボディをつなぐ「マウントアダプター」を接続することで、様々なマウントのレンズと互換性を得ることができるようになったのです。

もちろんデジタル一眼レフ時代もオールドレンズは活用されていましたが、ミラーが存在する分フランジバックが長くなり、使用できるのは特定のレンズのみと制約がありました。ミラーレスカメラの登場は、この問題点を解決するまさに「革命」だったわけです。

 

ミラーレスカメラの進化とオールドレンズの台頭

しかし、ミラーレスカメラが登場したからと言って、すべてのレンズが従来と同じ条件で使えるようになったかといえば、そうではありません。初のミラーレス機はマイクロフォーサーズフォーマット。標準レンズである50mmを当時のミラーレスカメラで使用した場合、35mm換算で100mm相当の画角を持つレンズになってしまうのです。標準域のレンズとして活用するためには、24mm付近(35mm換算で48mm相当)のレンズを使わなければならないなど、まだまだ人気となるには程遠い状態でした。

そんな中、2013年に世界初フルサイズミラーレスであるSONY α7シリーズがリリースされます。35mmフィルムカメラと同等のフォーマットサイズとなるα7は、オールドレンズを本来の画角で使用できるようになり、オールドレンズ界の新たな幕開けとなりました。MFレンズでもピント面がわかるピーキング機能やピント拡大機能等、アシスト機能も充実したことで、オールドレンズが一般的なカメラ用語として認知・浸透し、市民権を得ていくのでした。

 

私がオールドレンズを使う理由

■撮影機材:SONY α7 II + Minolta AUTO ROKKOR-PF 58mm F1.4
■撮影環境:f1.4 1/2000秒 ISO100 WBオート レンズの状態:カビ

 

自己の表現方法の確立

さて、高性能な現行レンズが数多く市場にリリースされている中、なぜオールドレンズを使うのでしょうか。その最も大きな理由は、「自分の表現したい写真にオールドレンズが必要」だからです。筆者は主にポートレートを撮影することが多いですが、現行レンズを使ったかっちりとしたポートレートより、オールドレンズがもたらす淡く緩い描写が自分の理想とする表現に近いと感じました。

もちろん、仕事で撮影をする際や風景をしっかり撮る場合は、現行レンズで撮影することがほとんどです。自己の写真表現においては目指す世界観があり、それを表現するためにオールドレンズを使っています。筆者は手段としてのオールドレンズより、自己の表現達成のためにオールドレンズを使用しています。一方でオールドレンズのビジュアル、コレクション性も十分理解しており、オールドレンズを集める楽しみ方も大いに賛成です。様々な楽しみ方ができるのもオールドレンズの良さだと考えます。

 

価格と描写のバランスの良さ

オールドレンズを選ぶ理由のひとつに、安価ということも挙げられます。筆者はカメラを初めて使う方にはF値の小さい単焦点レンズをおすすめしています。撮影の楽しさ、ボケの大きさなど、スマホとは異なる体験をしていただきたいからです。ボディを買ったけど、現行単焦点レンズは高くて買えない!という方にこそ、オールドレンズはおすすめしたいもの。50mm F1.8程度の所謂、標準オールドレンズであれば、マウントアダプター付きでもまだ1万円台で購入できます。

ファインダーを覗いて、被写体にピントを合わせてシャッターを切るという、カメラ本来の撮影方法を体験できることもおすすめの要素。これこそが「写真を撮る」行為であり、それに触れることが良い写真を撮るための第一歩でもあると考えています。

 

オールドレンズを代表する3つの描写

ではそのオールドレンズ、どんな写りをするのか、実際の写真を見ていくことにします。ここではオールドレンズの代表的な描写として、ゴースト、フレア、ぐるぐるボケを紹介します。

 

ゴースト

■撮影機材:SONY α7 IV + Vivitar Series 1 35-85mm F2.8 VMC
■撮影環境:焦点距離85mm f2.8 1/400秒 ISO100 WBオート
■撮影機材:SONY α7 II + Leica Summar 5cm F2
■撮影環境:f6.3 1/640秒 ISO100 WBオート

ゴーストとは主にレンズの内面反射などの影響により、写真にその反射の描写が現れてしまう現象です。フィルムカメラ時代では現像しないとゴーストが発生しているか確認することができなかったため、意図せず写ってしまったゴーストやフレアは害悪なものとして捉えられてきました。デジタルカメラが主流となった現代では、撮影結果がすぐにわかるため、それを敢えて写真に取り入れる表現方法が確立しています。

非常に多くの種類があるゴーストですが、レンズによって描写も異なり、これぞザ・オールドレンズ的描写と言えます。ゴーストを出すことに固執せず、あくまで最終的にこうしたいというイメージを持ったうえで、ゴーストを写真表現として取り入れていきましょう。

 

フレア

■撮影機材:SONY α7 IV + Carl Zeiss Planar T* 50mm F1.4
■撮影環境:f1.4 1/1000秒 ISO100 WBオート
■撮影機材:SONY α7 IV + Carl Zeiss Planar T* 50mm F1.4
■撮影環境:f1.4 1/4000秒 ISO100 WBオート

フレアもまた、逆光~半逆光時の撮影の際に現れる描写のひとつで、レンズ面やレンズの鏡胴内、ボディ内で光が反射し発生してしまう現象の事です。逆光にカメラを向けた時に、なんだか画面全体が白っぽくなってしまった、という経験をお持ちの方は多いと思います。

フレアはほとんどのオールドレンズで発生しますが、レンズそのものがフレアを出しやすいもの、レンズ鏡胴内の乱反射によってフレアが出るもの、レンズの傷など経年劣化でフレアが出やすくなってしまったものなど様々。必要以上にフレアが出やすい場合は、余計な光をフードや手などでカットする、などといったハレーションコントロールをうまく行いましょう。

 

ぐるぐるボケ

■撮影機材:SONY α7 II + KMZ HELIOS-40-2 85mm F1.5
■撮影環境:f1.5 1/4000秒 ISO100 WBオート
■撮影機材:SONY α7 II + Lomo PO3-3M 50mm F2
■撮影環境:f2 1/400秒 ISO100 WBオート

ぐるぐるボケもオールドレンズの代表的な描写のひとつです。好き嫌いの分かれる描写ですが、被写体を中心に添えた時の視線集中効果は、ポートレートや花などを印象的なものにします。ぐるぐるボケの強さもレンズによって様々で、特に1930年代~1950年代のレンズにぐるぐるボケの傾向が多く見られます。

ぐるぐるボケを出すには、細かい花や木々の木漏れ日を背景にして、絞り開放で撮影をすることがポイントです。被写体を中心に同心円状に渦を巻くような効果が期待できますので、日の丸構図で効果を発揮するでしょう。こちらも現行レンズではほとんどみられない描写ですので、正にオールドレンズ独自の表現方法と言って良いと考えます。

 

まとめ

■撮影機材:SONY α7 II + Leica Summarit 5cm F1.5
■撮影環境:f1.5 1/500秒 ISO100 WBオート

オールドレンズの基礎知識や描写について簡単にですがまとめてみました。人気のオールドレンズですが、使えるか否かは「撮り手の表現したいイメージにマッチするか」これに尽きます。したがって、全然肌に合わなかった!や、とても気に入った!など感想は様々かと思います。マウントアダプターを選ぶ難しさやMF故の操作性の悪さはありますので、まずはカメラのキタムラ店頭などショップで試写することから始めてみましょう。新たな表現方法としてオールドレンズを活用いただければ嬉しいです。

もしオールドレンズに興味を持っていただけたのであれば、筆者が執筆している「ポートレートのためのオールドレンズ入門」そして「ポートレートのためのオールドレンズ撮影マニュアル」に数多くのオールドレンズの作例と詳細な解説を載せておりますので、そちらも是非お手に取っていただければと思います。では、次の記事でお会いしましょう!

 

■フォトグラファー:鈴木啓太|urban
カメラ及びレンズメーカーでのセミナー講師をする傍ら、Web、雑誌、書籍での執筆、人物及びカタログ撮影等に加えフィルムやオールドレンズを使った写真をメインに活動。2017年より開始した「フィルムさんぽ/フランジバック」は月間延べ60人ほどの参加者を有する、関東最大のフィルム&オールドレンズワークショップに成長している。著書に「ポートレートのためのオールドレンズ入門」「ポートレートのためのオールドレンズ撮影マニュアル」がある。リコーフォトアカデミー講師。

 

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