クモリの多いジャンクレンズはどう写るのか? ライカ Elmar 5cm F2.8 編

坂井田富三
クモリの多いジャンクレンズはどう写るのか? ライカ Elmar 5cm F2.8 編

はじめに

今回は、オールドレンズやジャンクコーナーなどで見かける表示「クモリあり」のレンズについて、撮影画像にどのような影響がでるのかを実際に撮影してみました。撮影に使ったのは、筆者が大好きなレンズの一つ「Leica Elmar 5cm F2.8」です。L39マウントの「Leica Elmar 5cm F2.8」は1957年にライカIIIg用に開発されたもので、製造個数も多く中古市場でも数多くみられるので、ライカレンズの中では比較的お手頃な価格で入手できるレンズです。

今回は、ジャンクコーナーに並んでいた「やや難あり」の「Leica Elmar 5cm F2.8」(レンズ内ゴミ・クモリあり)が実際にどう写るのかを、レンズの特徴を含めて紹介します。

ジャンクコーナーで手に入れた「クモリあり」の「Leica Elmar 5cm F2.8」

「新宿北村写真機店」3Fのライカレンズなどが並ぶジャンク品コーナー
今回のジャンク品レンズは、「Leica Elmar 5cm F2.8」(レンズ内ゴミ・クモリあり)
かなりのクモリがあるので、撮影には大きな影響がありそうです

今回のライカ「エルマー」レンズの歴史は古く、35mmフィルムの焦点距離50mmが標準レンズとなった起源とも言われているレンズです。初代の「Leitz Elmer 5cm f/3.5」は、1925年頃~1961年にわたり製造され今なお人気のあるオールドレンズです。今回紹介する「Leica Elmar 5cm F2.8」は、1957年~1974年の間に製造されていたもので、初期のレンズよりも明るくなり、デザインも変更されています。

今回撮影に使用したレンズ「Leica Elmar 5cm F2.8」は、シリアルナンバーから1957年に製造されたものと推測され、約67年前のレンズになります。レンズ構成は3群4枚で、絞り羽根の枚数は15枚と非常に贅沢な造り。最短撮影距離は1mでマウントに関しては「L39マウント」と「Mマウント」の両方があり、「Mマウント」の方が人気は高いようです。

左:「ELMAR-M50mm F2.8」2003年製造   右:「Leica Elmar 5cm F2.8」1957年製造

1974年に製造が終わってしまったエルマーレンズですが、ライカM型誕生40周年を迎えた1994年に1640台限定で生産された限定モデル「Leica M6J」のセットレンズとして「ELMAR-M50mm F2.8」が復活しました。1996年にこのレンズを単体販売し2007年まで販売されていました。

この1994年~2007年に販売された「ELMAR-M50mm F2.8」は、今回紹介している「Leica Elmar 5cm F2.8」とは光学設計も少し異なっています。このモデルもレンズ構成は3群4枚ですが、絞り羽根の枚数は6枚に変更されています。

仕様とマウントアダプターの使用上注意点

今回のジャンク品で入手した「Leica Elmar 5cm F2.8」ですが、1957年製造の初期モデルの「L39マウント」タイプで、沈胴式のレンズのため撮影時に鏡筒を引き出して撮影するスタイルになります。沈胴式のレンズは、収納時には非常にコンパクトになるのが魅力のポイントです。

撮影する前にマウントアダプターの準備が必要です。Eマウントのソニーαで使用する為に今回使用したマウントアダプターは、L39マウントをMマウントに変換する「K&F Concept M/L変換リング」と、「TECHART LM-EA7」(ライカMマウントレンズ → ソニーEマウント変換)の2つを使用して撮影をしてみました。

「Leica Elmar 5cm F2.8」沈胴式レンズを出して撮影できる状態
「Leica Elmar 5cm F2.8」沈胴式レンズを収納した状態
「Leica Elmar 5cm F2.8」沈胴式レンズを収納した状態のマウント側。マウントスクリュー式の「L39」マウント
L39マウントをMマウントに変換するマウントアダプター
L39マウントをMマウントに変換するマウントアダプターを「Leica Elmar 5cm F2.8」に装着した状態
マウントアダプター「TECHART LM-EA7」に装着した「Leica Elmar 5cm F2.8」

ここで、この沈胴式のレンズ「Leica Elmar 5cm F2.8」を使用するにあたっての注意点があります。
上の写真を見ていただいても分かるように、沈胴式のレンズを収納した際にマウント面よりもかなりレンズ後端が飛び出しているのが分かります。このレンズ後端が飛び出していることで、ミラーレス機に装着した際にセンサーに接触する可能性があるので注意が必要です。沈胴式レンズの収納時のコンパクトさは活かせなくなりますが、ミラーレス機に「Leica Elmar 5cm F2.8」を装着する場合は、レンズを出した状態で使用するのが鉄則です。

マウントアダプター「TECHART LM-EA7」を使用してαに装着した「Leica Elmar 5cm F2.8」

「クモリあり」ジャンク「Leica Elmar 5cm F2.8」はどう写るのか?

実際に盛大にクモリのあるジャンクレンズ「Leica Elmar 5cm F2.8」を持ち出してどのような描写をするのか撮影をしてみました。レンズの状態から予想される写りは、「逆光には弱い」「ソフトフォーカス基調」「大きな周辺光量落ち」と言ったとこころですが、実際に撮影してみると予想よりも良く写っている感じが見受けられました。

レンズのフードも無いため逆光や斜光には極度に弱いのは仕方がないですが、写りそのものはレンズの状態を考えれば良く写っています。しかしクモリありのレンズは、逆光や斜光時の撮影の際にはファインダーが白く霞がかって、ピント合わせに苦労をするのが少し難点になります。

■撮影機材:SONY α7R IV + Leica Elmar 5cm F2.8
■撮影環境:シャッター速度1/800 絞りF2.8 ISO800 焦点距離50mm
※マウントアダプター「TECHART LM-EA7」使用
■撮影機材:SONY α7R IV + Leica Elmar 5cm F2.8
■撮影環境:シャッター速度1/1600 絞りF2.8 ISO100 焦点距離50mm
※マウントアダプター「TECHART LM-EA7」使用
■撮影機材:SONY α7R IV + Leica Elmar 5cm F2.8
■撮影環境:シャッター速度1/80 絞りF2.8 ISO100 焦点距離50mm
※マウントアダプター「TECHART LM-EA7」使用
■撮影機材:SONY α7R IV + Leica Elmar 5cm F2.8
■撮影環境:シャッター速度1/100 絞りF2.8 ISO800 焦点距離50mm
※マウントアダプター「TECHART LM-EA7」使用

クモリありのレンズの影響を確認にする為に、積極的に絞り開放で撮影をしてみましたが、クモリの影響は流石に大きく、撮影する被写体や光の影響をしっかりと考えて撮影する必要があります。しかし、クモリを上手く活用した写真を撮るのも一つの撮影方法だと思います。

下の写真は、絞りを少し絞って順光で撮影したものになります。霞がかっていたものが取れて重厚な感じの描写をするようになります。

■撮影機材:SONY α7R IV + Leica Elmar 5cm F2.8
■撮影環境:シャッター速度1/8000 絞りF8 ISO200 焦点距離50mm
※マウントアダプター「TECHART LM-EA7」使用

「クモリあり」のレンズで絞りの値によって、その描写がどのように変わるかを同じ場所で撮影して比べてみました。下の写真の1枚目が絞り開放で撮影したもので、2枚目が絞りを絞ってF16で撮影したものになります。1枚目の写真は、クモリの影響が大きく霞がかって全体的に軟調な描写です。対して2枚目の絞りを絞ったものは、霞は少し取れて描写がくっきりとしコントラストが上がってきます。

▼絞りF2.8

■撮影機材:SONY α7R IV + Leica Elmar 5cm F2.8
■撮影環境:シャッター速度1/640 絞りF2.8 ISO800 焦点距離50mm
※マウントアダプター「TECHART LM-EA7」使用

▼絞りF16

■撮影機材:SONY α7R IV + Leica Elmar 5cm F2.8
■撮影環境:シャッター速度1/10 絞りF16 ISO800 焦点距離50mm
※マウントアダプター「TECHART LM-EA7」使用

水族館の中の暗い水槽でクラゲとイルミネーションの玉ボケを撮影してみましたが、「Leica Elmar 5cm F2.8」の最短撮影距離が1mと、焦点距離50mmのレンズとしては寄れないレンズなので少々苦労しました。

今回の場合クモリによる影響ですが、玉ボケの部分を拡大してみると周辺部に対して中心部が少し明るいボケになっているようなので少し影響が出ている感じがしますが、それほど気になるレベルではなさそうです。

■撮影機材:SONY α7R IV + Leica Elmar 5cm F2.8
■撮影環境:シャッター速度1/160 絞りF2.8 ISO1600 焦点距離50mm
※マウントアダプター「TECHART LM-EA7」使用

クモリありのレンズを使用する際の撮影の仕方は、普段以上に構図内に入ってくる太陽光や環境光を考慮しなければなりませんが、普段よりもいろいろと考えて撮影を工夫することが難ありレンズの楽しみ方の一つです。そして仕上がりに大きく影響する絞りに関しては、普段の撮影のボケのコントロールというよりは、「クモリありレンズ」では絞りによりコントラストを調整するという考えで撮影するのが、良い結果が得られると思います。

ここからは参考までに、比較的新しい程度の良い「ELMAR-M50mm F2.8」で撮影したものを紹介します。もちろんカビやクモリの無いレンズなので、先に紹介したジャンクレンズには無い現代的なシャープでクリアーな描写で、本来のエルマー50mmレンズの描写と言えるものです。

「ELMAR-M50mm F2.8」
■撮影機材:SONY α7R IV + ELMAR-M50mm F2.8
■撮影環境:シャッター速度1/1600 絞りF2.8 ISO100 焦点距離50mm
※マウントアダプター「TECHART LM-EA7」使用
■撮影機材:SONY α7R IV + ELMAR-M50mm F2.8
■撮影環境:シャッター速度1/1000 絞りF2.8 ISO200 焦点距離50mm
※マウントアダプター「TECHART LM-EA7」使用
■撮影機材:SONY α7R IV + ELMAR-M50mm F2.8
■撮影環境:シャッター速度1/60 絞りF2.8 ISO800 焦点距離50mm
※マウントアダプター「TECHART LM-EA7」使用
■撮影機材:SONY α7R IV + ELMAR-M50mm F2.8
■撮影環境:シャッター速度1/15 絞りF16 ISO100 焦点距離50mm
※マウントアダプター「TECHART LM-EA7」使用

まとめ

今回は少し古くて、かなり「クモリあり」のジャンクレンズ「Leica Elmar 5cm F2.8」を紹介してみました。「クモリあり」のレンズでも程度こそ違いはありますが、工夫次第で雰囲気のある写真が撮れたり、絞りを絞って撮影すればそこそこのクオリティのあるものが撮れます。あえて欠点である「クモリ」を上手く活用する方法も、被写体によってはアリかもしれません。気に入ったレンズやお手頃で入手できるものがあれば、一度「クモリあり」のジャンクレンズにチャレンジしてみるのも良いかもしれません。

 

■写真家:坂井田富三
写真小売業界で27年勤務したのち独立しフリーランスカメラマンとして活動中。撮影ジャンルは、スポーツ・モータースポーツ・ネイチャー・ペット・動物・風景写真を中心に撮影。第48回キヤノンフォトコンテスト スポーツ/モータースポーツ部門で大賞を受賞。

・公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員
・EIZO認定ColorEdgeアンバサダー
・ソニーαアカデミー講師

 

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