【オールドレンズ】コストパフォーマンスの優れたLeicaレンズ「ELMARIT-R 35mm F2.8」

坂井田富三

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はじめに

 今回のオールドレンズのセレクトは、「Leica ELMARIT-R 35mm F2.8」です。正直それほど人気の高いレンズではないので、高騰しているライカのオールドレンズの中でも比較的お安く購入できるおすすめのレンズです。

 ライカRマウントのレンズの人気が薄いのは、ライカRマウントを採用するライカ一眼レフカメラの「ライカフレックス」・「R」シリーズ自体が、ライカのレンジファインダーのMシリーズよりも市場での人気が薄いところに起因しているようです。とは言え、オールドレンズの人気が全体的に上がってきているので、ライカRマウントのレンズも値段が上昇しているようです。ライカのオールドレンズの初めての1本におすすめできる、「Leica ELMARIT-R 35mm F2.8」の特徴とその写りを紹介いたします。

Leica ELMARIT-R 35mm F2.8の魅力

 ライカRマウントのオールドレンズを検討する際に必ず出てくるのが「カム」や「ROM」の文言。この「カム」や「ROM」はレンズのデータをライカのRボディーに伝える手段で「1カム」、「2カム」、「3カム」、「R-Only」、「ROM」の種類があります。フイルム一眼レフの「ライカフレックス」・「R」ボディーを使用する場合には注意が必要ですが、マウントアダプターを使用してミラーレス機で使用する場合には、どのタイプでも問題ありません。

 ライカRマウントのレンズの種類によって発売年が少し変わってきますが、概ね下記の年からタイプが変更されています。

・「1カム」レンズ 1965年~
・「2カム」レンズ 1968年~
・「3カム」レンズ 1976年~
・「R-Only」レンズ 1986年~
・「ROM」レンズ 1997年~

 「1カム」、「2カム」の頃まではレンズの種類もそれほど多くありませんでしたが、1976年のライカR3のボディとともに発売された「3カム」からレンズのバリエーションもとても豊富になっています。

 今回撮影に使用したのは、筆者が所有している「Leica ELMARIT-R 35mm F2.8」2カムタイプのレンズになります。この「Leica ELMARIT-R 35mm F2.8」は、「1カム」の当初から「R-Only」まで約30年続いた定番レンズです。

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「ELMARIT-R 35mm F2.8」のマウント部分。このレンズは「2カム」仕様です。

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ライカ「ELMARIT-R 35mm F2.8」の基本的なスペックは、
・焦点距離:35mm
・最短撮影距離:0.3m
・絞り開放:F2.8
・レンズ構成:6群7枚
・絞り羽根枚数:6枚
・フィルター径:※タイプにより違いあり
・マウント:ライカRマウント

 この「Leica ELMARIT-R 35mm F2.8」はレンズの重さが凄いんです。小さいレンズですが、持ってみると現代のレンズでは感じられない、「鉄の塊・ガラスの塊」のような重量感を味わわせてくれるレンズです。参考までに現代のソニーのツァイスレンズ「SONY Sonnar T* FE 35mm F2.8 ZA」、35mmの画角でF値が同じF2.8のレンズと比較してみると、「SONY Sonnar T* FE 35mm F2.8 ZA」がカタログ値で約120g、「Leica ELMARIT-R 35mm F2.8」を計ってみると約380gで3倍以上の重量でした。

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 今回マウントアダプターは、「TECHART LM-EA7」と「K&F Concept Leica L/R-L/M」を合わせて使用し撮影をしています。この「TECHART LM-EA7」はマニュアルのオールドレンズをオートフォーカスとして使用できる便利なマウントアダプターです。

 ただ、このマウントアダプター「TECHART LM-EA7」のオートフォーカスの挙動に関しては制限があり、重量500gを超えるレンズに使用する場合、動作不良や正常に駆動しない場合があるので、「Leica ELMARIT-R 35mm F2.8」の重量が少し心配でした。「K&F Concept Leica L/R-L/M」と「Leica ELMARIT-R 35mm F2.8」を足しても500g以内に収まったので、安心してオールドレンズを使ってオートフォーカス撮影を楽しんでみました。

Leica ELMARIT-R 35mm F2.8で小江戸川越の街並みを散策スナップ撮影

 筆者にとって川越の街並み散策は初めて。駅の観光案内所でもらったマップを片手に大正ロマン通り、蔵造の町並み、菓子屋横丁などを散策しながら撮影をしてみました。マウントアダプター「TECHART LM-EA7」を使ってオートフォーカスで撮影しているので、オールドレンズを使って撮影している感じがあまりしなかったので、時々マニュアルフォーカスに切り替えて楽しみながら撮影を行いました。

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■撮影機材:SONY α7R III + ELeica ELMARIT-R 35mm F2.8
■撮影環境:シャッター速度1/6400 絞りF2.8 ISO200 焦点距離35mm
※マウントアダプターTECHART LM-EA7 + K&F Concept Leica L/R-L/M
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■撮影機材:SONY α7R III + Leica ELMARIT-R 35mm F2.8
■撮影環境:シャッター速度1/50 絞りF11 ISO800 焦点距離35mm
※マウントアダプターTECHART LM-EA7 + K&F Concept Leica L/R-L/M

 日当たりが良いシーンなどはクッキリとしたコントラストの強い描写をします。

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■撮影機材:SONY α7R III + Leica ELMARIT-R 35mm F2.8
■撮影環境:シャッター速度1/6400 絞りF4 ISO800 焦点距離35mm
※マウントアダプターTECHART LM-EA7 + K&F Concept Leica L/R-L/M
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■撮影機材:SONY α7R III + Leica ELMARIT-R 35mm F2.8
■撮影環境:シャッター速度1/160 絞りF2.8 ISO200 焦点距離35mm
※マウントアダプターTECHART LM-EA7 + K&F Concept Leica L/R-L/M

 「Leica ELMARIT-R 35mm F2.8」は最短撮影距離が0.30mと短いレンズなので、気になった被写体を見つけたときは積極的に寄って撮ることができるレンズです。

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■撮影機材:SONY α7R III + Leica ELMARIT-R 35mm F2.8
■撮影環境:シャッター速度1/1600 絞りF2.8 ISO800 焦点距離35mm
※マウントアダプターTECHART LM-EA7 + K&F Concept Leica L/R-L/M
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■撮影機材:SONY α7R III + Leica ELMARIT-R 35mm F2.8
■撮影環境:シャッター速度1/1250 絞りF2.8 ISO200 焦点距離35mm
※マウントアダプターTECHART LM-EA7 + K&F Concept Leica L/R-L/M

 絞り羽根は6枚なので、絞った時の光芒の線の数が6本になります。オールドレンズで多い羽根絞り6枚の光芒の形は、個人的にとても気に入っています。

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■撮影機材:SONY α7R III + Leica ELMARIT-R 35mm F2.8
■撮影環境:シャッター速度1/100 絞りF8 ISO800 焦点距離35mm
※マウントアダプターTECHART LM-EA7 + K&F Concept Leica L/R-L/M

 絞りを開けた時のボケに関して周辺部ではあまり綺麗でないように感じます。積極的にボケを活用するレンズでは無さそうです。

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■撮影機材:SONY α7R III + Leica ELMARIT-R 35mm F2.8
■撮影環境:シャッター速度1/640 絞りF2.8 ISO800 焦点距離35mm
※マウントアダプターTECHART LM-EA7 + K&F Concept Leica L/R-L/M

Leica ELMARIT-R 35mm F2.8で都内スナップ撮影

 川越での撮影を楽しんだ後に、夕方都内に戻り再び撮影。川越で撮影していて感じた「Leica ELMARIT-R 35mm F2.8」のコントラストの高い重厚な描写は、現代的な街中スナップにもマッチする気がしたので、東京八重洲から丸ノ内、有楽町をスナップ撮影してみました。

 東京駅の有名スポットのドーム部分ですが、さすがに35mmの画角では全体を入れ込むことができませんが、非常に細かい部分も繊細に描写していて「Leica ELMARIT-R 35mm F2.8」の凄さを感じる一枚です。

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■撮影機材:SONY α7R III + Leica ELMARIT-R 35mm F2.8
■撮影環境:シャッター速度1/50 絞りF8 ISO800 焦点距離35mm
※マウントアダプターTECHART LM-EA7 + K&F Concept Leica L/R-L/M
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■撮影機材:SONY α7R III + Leica ELMARIT-R 35mm F2.8
■撮影環境:シャッター速度1/200 絞りF8 ISO100 焦点距離35mm
※マウントアダプターTECHART LM-EA7 + K&F Concept Leica L/R-L/M

 レンズフードを付けていない「Leica ELMARIT-R 35mm F2.8」で、太陽光がレンズに直接入ってくるようなシーンを撮ってみました。ゴーストやフレアの出方は思っていたよりも強くは出ていない感じです。レンズフードは是非欲しいところですが、ライカの純正レンズフードはかなり高額なので購入をためらっています。

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■撮影機材:SONY α7R III + Leica ELMARIT-R 35mm F2.8
■撮影環境:シャッター速度1/500 絞りF4 ISO800 焦点距離35mm
※マウントアダプターTECHART LM-EA7 + K&F Concept Leica L/R-L/M

 低い位置にイルミネーションがあったので、ピントを最短撮影距離、絞りを開放にして全体をボカし、中心部のボケの形と周辺のボケの形をチェックしてみました。中心部のボケも、きれいな丸ボケとはなりませんし、周辺のボケは流れるような感じになります。

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■撮影機材:SONY α7R III + Leica ELMARIT-R 35mm F2.8
■撮影環境:シャッター速度1/40 絞りF2.8 ISO100 焦点距離35mm
※マウントアダプターTECHART LM-EA7 + K&F Concept Leica L/R-L/M
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■撮影機材:SONY α7R III + Leica ELMARIT-R 35mm F2.8
■撮影環境:シャッター速度1/320 絞りF2.8 ISO800 焦点距離35mm
※マウントアダプターTECHART LM-EA7 + K&F Concept Leica L/R-L/M
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■撮影機材:SONY α7R III + Leica ELMARIT-R 35mm F2.8
■撮影環境:シャッター速度1/13 絞りF2.8 ISO800 焦点距離35mm
※マウントアダプターTECHART LM-EA7 + K&F Concept Leica L/R-L/M

まとめ

 「Leica ELMARIT-R 35mm F2.8」の写りは、絞りを開けた時の周辺光量落ちはやや目立つ傾向にありますが、一言でいえば重厚な描写をするレンズです。少し硬めの描写がオールドレンズらしく無いといえばそうなりますが、他のオールドレンズとは少し違った独特の味わいを感じる事ができるレンズです。今回はフルサイズミラーレス機のαで撮影しましたが、APS-Cサイズのミラーレス機で使用すれば52mm相当となり、周辺光量落ちの問題もクリアされます。「Leica ELMARIT-R 35mm F2.8」は、APS-Cサイズのミラーレス機でも楽しめるオールドレンズです。

■写真家:坂井田富三
写真小売業会で27年勤務したのち独立しフリーランスカメラマンとして活動中。 撮影ジャンルは、スポーツ・モータースポーツ、ネイチャー・ペット・動物・風景写真を中心に撮影。第48回キヤノンフォトコンテスト スポーツ/モータースポーツ部門で大賞を受賞。

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