佐藤俊斗 × ポートレート vol.1|光の捉え方

佐藤俊斗

00_佐藤俊斗が撮影したのポートレート(モデル山崎江莉).jpeg

はじめに

こんにちは。写真家の佐藤俊斗です。
まずは私が考える「写真の完成度」についてお話しをさせていただきます。

上手く撮れた!と思った写真でも背景に何かが映り込んでいたり、あと1秒早くシャッターを切れば良かったと思うような1枚だったり。がむしゃらにシャッターを切り続けて紡ぎだした1枚の写真であっても、その写真を構成する全ての要素を、良い条件で捉え納得の行く状態に仕上げることはとても難しいものです。

しかし、私が撮る写真において常に考えていることは、全ての条件を揃えて完璧な写真にする事で、それはつまり『被写体となる人物や物、光や背景など構図のバランスが全てにおいて完璧で、1枚にその全ての条件が100%揃っている事』となります。写真において正解はないからこそ、その瞬間を切り取る1枚1枚への微細なこだわりを強く持っています。

今回は、写真の完成度を上げるためのテクニックとして、私が最も大事にしている要素の一つである、『光』に焦点を当ててお話ししていきます。今まであまり話してこなかった撮影時のこだわりや、注意点についても深掘りして解説して行きたいと思いますので、ぜひ最後までご覧ください。

光の重要性について

写真において「光」は必要不可欠なものであり、同じ時間でも季節によって太陽の向きや光の強さが大きく異なります。暑い夏の強い光では必然的に影の色は濃くなり、冬では柔らかい光の中でふんわりとした雰囲気の写真を作り易いですよね。この撮影する季節に加え、どの時間帯の光をどのように扱うかを何となく考えて撮影されている方も多いのではないでしょうか。

今回は冬の14:30~16:30の光の変化が大きく現れる時間帯で撮影しました。冬のこの時間帯に撮影していると、気が付いたら10分も経たないうちに光の位置が変わっていて、もう同じ写真が撮れない、なんてこともしばしばあります。いい光を捉えて撮影するには、タイミングと時間との勝負だとも言えます。この冬の時期は特に、素早い判断でシャッターを切って行くことが大事になってくるでしょう。

01_冬の光.jpeg

逆光撮影

まずは、ポートレートにおいて定番といえる逆光撮影での光の取り込み方について2つのポイントを解説していきます。

下の2枚の写真をご覧ください。

(1)モデルと背景の間に余白、空間を作り、そこから取り込んだ光で全体をふんわりと優しく包み込むように撮影。

02_佐藤俊斗が撮影したのポートレート(モデル山崎江莉).jpeg
■撮影機材:SONY α7R IV + SIGMA 24-70mm F2.8 DGDN Art
■撮影環境:f/2.8 1/400秒 ISO250 焦点距離70mm
■モデル:山崎江莉

(2)寄りで撮影し光をモデルの真後ろで捉え、コントラストを付けて撮影。

03_佐藤俊斗が撮影したのポートレート(モデル山崎江莉).jpeg
■撮影機材:SONY α7R IV + SIGMA 24-70mm F2.8 DGDN Art
■撮影環境:f/2.8 1/400秒 ISO250 焦点距離68mm
■モデル:山崎江莉

いかがでしょうか?
どちらの写真も14:30頃。同じ場所で撮った写真ですが、光の取り込み方や角度でこのように写真に変化をつけることが出来ます。

同じシチュエーションでの逆光撮影においても、このような知識を身に付けることにより状況に応じた撮影や、作品のバリエーションを増やすのに役立てることが出来るので覚えておくと大変便利です。

光と被写体とのバランス、光の読み方

このタイトルを聞いて、みなさんは何を思い浮かべましたか?頭にハテナが浮かぶ人も多いかもしれません。記事の冒頭でもお話しした通り、私が考える写真の完成度とは 『被写体となる人物や物、光や背景など構図のバランスが全てにおいて完璧で、1枚にその全ての条件が100%揃っている事』になりますが、ここでは下の写真を使ってもう少し詳しく説明させてください。

次の写真2枚を比較してみてください。

(1)

04_佐藤俊斗が撮影したのポートレート(モデル山崎江莉).jpeg
■撮影機材:SONY α7R IV + SIGMA 24-70mm F2.8 DGDN Art
■撮影環境:f/2.8 1/320秒 ISO250 焦点距離42mm
■モデル:山崎江莉

(2)

05_佐藤俊斗が撮影したのポートレート(モデル山崎江莉).jpeg
■撮影機材:SONY α7R IV + SIGMA 24-70mm F2.8 DGDN Art
■撮影環境:f/2.8 1/500秒 ISO250 焦点距離31mm
■モデル:山崎江莉

みなさんはどちらの写真がお好みでしょうか?

私は2枚目の写真が好きです。
理由として、被写体に対する観点では表情、動き、スタイリング、写真的な観点からすると、光と影のバランス、立体感などの写真全体の完成度を踏まえ、2枚目の写真を選びました。
2枚目は光の向きに合わせて、少し光の当たる位置に移動して動きをつけることによって影が体に出ます。クールな写真を作りたかったので、動きをつけてコントラストをつけた写真に仕上げています。

このように、同じ場所で撮影した場合であっても少し位置や動きが変わるだけでこんなに見え方が変わります。

カメラマンが特に陥りやすい「光」の読み間違い

木漏れ日、窓から差し込む光、逆光、、、撮影の1つのアレンジとして、またメインのテーマにもなるほど重要な「光」は、先程述べた通り、季節や時間によって様々な顔を見せてくれます。

この流れるように変化していく「光」の捉え方を少しでも間違うと、被写体の魅力が半減してしまうといえるでしょう。少し遠回しの表現をしてしまいましたが、人物撮影において被写体となる人物をより綺麗に、より美しく撮影することはとても重要であり、それを確実なものとする為にはその時々の状況や状態を見極めるセンスが必要になります。

ここで、例として
私がNGにした写真をお見せします。

06_作例.jpeg
■撮影機材:SONY α7R IV + SIGMA 24-70mm F2.8 DGDN Art
■撮影環境:f/2.8 1/640秒 ISO250 焦点距離24mm

顔に綺麗な光が入った1枚ですが、口元に模様のような1本の影が入ってしまっていますね。これがNGにした理由であり、被写体を美しく撮影する為には不要な要素です。  

単純に光を捉えるのは簡単ですが、写真の完成度を高めるためには影の形も読みながら撮影する必要があります。

写真選定の際に背景や構図、光だけが綺麗な写真を選んでいませんか?
私は完成度85%の写真は絶対に選びません。写真は人それぞれの好みがあり、正解はないとも言えますが、私はどの角度から見ても妥協のないものを選ぶことを第1に心がけています。

主役を引き立てる光

00_佐藤俊斗が撮影したのポートレート(モデル山崎江莉).jpeg
■撮影機材:SONY α7R IV + Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA
■撮影環境:f/1.8 1/3200秒 ISO500 焦点距離55mm
■モデル:山崎江莉

では、以上の内容を元に光を活用した撮影テクニックをご紹介します。
私の写真において最も定評があり、本記事のメインテーマです。

撮影条件
・時間は16:00~16:30頃
・光は順光
・撮影場所はカフェの窓際

冬のこの時間帯は、光が濃いオレンジ色に変化し夕日ならではの暖かい光になるのが特徴的ですね。
夕日での撮影といえば逆光で撮影することが多いと思いますが、今回は室内に差し込む夕日の光を上手く利用して撮影したいと考え、カフェの窓際を選びました。

本題の「主役を引き立てる光」と聞いて、皆さんは一体どのようなものを想像するでしょうか。

下の写真をご覧ください。

08_佐藤俊斗が撮影したのポートレート(モデル山崎江莉).jpeg
■撮影機材:SONY α7R IV + Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA
■撮影環境:f/1.8 1/2000秒 ISO500 焦点距離55mm
■モデル:山崎江莉

はじめにも述べたとおり、光は写真のイメージを左右する大事な要素の1つ。主役でもあり脇役でもある大切な役割を果たしてくれます。

今回の窓際での撮影シーンの場合、被写体をより一層綺麗に引き立てる方法として、室内に差し込む夕日の光に対し、顔の向きを左に流してあえてバランスの良い陰影を作り、加えて瞳に光を入れる、いわゆる自然光によるキャッチライトという手法を使っています。これにより目の色が夕日色に染まり、ビー玉のような輝きを作り出し、さらに陰影とのバランスを考えながら立体感のある写真を撮影しました。

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トリミングで表現する光の魅力

撮影環境や状況によってはどうしても不要な影が入ってしまう事もあります。
確実に綺麗な光を捉え、トリミングによる完成イメージを描くこともテクニックの1つと言えるでしょう。

光の強弱は、その時のシチュエーションや季節毎によって異なるため、常に変化する新しい光と向き合う事が大切です。つまり、シーン毎に応じて一瞬の光を読み、上手く捉えることが出来ればより完成度の高い1枚を撮影することができます。瞬間的な判断能力が求められる上、光をどのように取り込むか、どのように表現するかがとても重要です。

まとめ

今回は「光」についてお話をさせていただきましたがいかがでしたでしょうか。
写真を撮る上でシーンや状況に応じた光の捉え方、つまり ″光を選ぶ″ という事はとても大切な事になります。またその選んだ光を「どのように自分の写真に活かしていくか」で写真は大きく変わっていきます。今回お話しした内容が、今後のみなさんの写真活動において少しでもお力になる事が出来たらとても嬉しいです。

■モデル:山崎江莉

■写真家:佐藤俊斗
1991年 東京都出身。幼少期から20年間打ち込んできた剣道を辞めて2019年1月 フリーランスフォトグラファーとして活動開始。唯一無二の質感と色彩感覚を得意とし、感覚的な思考と明確に感じ取る「距離感」から作り出す作品を強みに、アパレルや広告、TV番組の撮影などジャンルを問わず幅広く活動。Instagramではフォロワー数が10万人を超え、今年8月に開催された『私が撮りたかった女優展vol.4』では女優の川栄李奈さんを撮り下ろした作品を公開し、各方面から大きな反響を呼んだ。同年9月には、約4,250万作品の中から、年間延べ11億人超の評価データから選出される『東京カメラ部10選2021』として日本の写真家10選の称号を獲得。

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