タムロン 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXDで撮る台湾|三田崇博 海外撮影記

三田崇博
タムロン 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXDで撮る台湾|三田崇博 海外撮影記

はじめに

こんにちは。旅写真家の三田崇博です。今回、私がタムロン 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXDを携えて向かったのは、台湾です。最近は円安や航空券代の高騰により海外旅行が敬遠されがちですが、台湾は時間的にも金銭的にも訪れやすい海外ではないかと思います。

今回は活気あふれる台北の街並みから、ノスタルジックな九份、そしてダイナミックな自然が広がる沿岸部までを、標準画角の50mmから超望遠の400mmまでをカバーするズームレンズが、旅の撮影においてどれほど強力な武器になるのか。今年5月に撮影したばかりの写真とともにお届けします。

タムロン 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXDの特徴

2022年に発売された(ニコンZ用は2024年発売)本レンズは、それまでに各社から販売されていた100-400mmレンズよりも広角側を50mm拡張し、標準域での撮影にも対応したのが最大の特徴です。

超望遠ズームの常識を変える「標準50mmスタート」の8倍ズーム

これまでの超望遠ズームといえば「100-400mm」が一般的でしたが、本レンズは広角側を「50mm」まで拡張。これにより、標準域の50mmから超望遠の400mmまでを1本でカバーする驚異の8倍ズームを実現しました。

超望遠レンズを装着している際、目の前に広がった美しいスナップや料理、人物を撮りたくても、レンズ交換の手間やタイムラグでシャッターチャンスを逃してしまうことは少なくありません。50mmからスタートする本レンズなら、レンズを交換することなく、手元の被写体から遠くの景色までシームレスに描き切ることができます。

400mmクラスを感じさせない圧倒的な機動力

400mmという強力な超望遠域をカバーしながら、ニコンZマウント用で質量1,180g、長さ185.8mmという驚異的なコンパクトさを実現しています。

荷物を減らしたい海外の撮影や、長時間歩き回るフィールドワークでも、肩や腕への負担を大幅に軽減。超望遠ながらカメラバッグに収まりやすいサイズ感は、「とりあえず持っていく1本」としてのフットワークを高い次元で維持してくれます。

マクロレンズ級の近接撮影能力

近接撮影能力の高さも、このレンズが「万能」と呼ばれる大きな理由です。

広角端(50mm): 最短撮影距離 0.25m、最大撮影倍率 1:2(ハーフマクロ)
望遠端(400mm): 最短撮影距離 1.5m、最大撮影倍率 1:4

特に50mm時の一歩踏み込める寄りの強さは圧巻で、旅先でのグルメ撮影やテーブルフォト、植物のディテール再現など、超望遠レンズとは思えないほど多彩な表現を可能にします。

高い描写性能と信頼の基本スペック

高倍率ズームでありながら画質に妥協はなく、特殊硝材を効果的に配置することで、全ズーム域で画面周辺まで非常にクリアでシャープな描写力を誇ります。

さらに、リニアモーターフォーカス機構「VXD」による高速・高精度なAF、タムロン独自の補正機構「VC」による強力な手ブレ補正、そして屋外撮影でも安心な簡易防滴構造や防汚コートなど、タフな要求に応える基本性能が凝縮されています。

台北へ

台湾に来るのは4回目です。公共交通機関が充実しているので日本からの発着便の多い桃園国際空港からバスや地下鉄で台北まですぐにアクセスできます。初日はあいにくの雨でしたがホテル周辺の散策に出かけました。

台北の街を歩いて真っ先に目を引くのが、通りを埋め尽くすように連なる無数の看板です。文字のデザインや色使いが独特で、どこかノスタルジックな雰囲気を醸し出しています。
望遠域を使って通りを一本の直線状に捉えることで、手前から奥へと続く何枚もの看板が、まるで一つの画面に押し込められたかのような圧倒的な密集感を生み出しました。

■撮影機材:ニコン Z5II + タムロン 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD
■撮影環境:F8 SS1/250 ISO400 焦点距離400mm
■撮影地:台北市内

立ち寄った廟(びょう)の軒先に美しく並ぶ無数のランタン。400mmという強い望遠効果は、ランタン一つひとつのディテールを鮮明に捉えるとともに、強力な「圧縮効果」をもたらします。これにより、並んでいるランタンがギュッと密集し、画面全体が赤と黄色の鮮烈な色彩で埋め尽くされるような、力強い構図を作ることができました。強力な手ブレ補正のおかげで遅めのシャッター速度でもブレなく撮影できました。

■撮影機材:ニコン Z5II + タムロン 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD
■撮影環境:F8 SS1/125 ISO400 焦点距離400mm
■撮影地:台北市内

台湾で食事と言ったら夜市は外せません。今回は台北でも屈指の人気を誇る「饒河街(じょうががい)観光夜市」へと足を運びました。少し高い場所に上って夜市を俯瞰で撮影しました。夜の超望遠撮影は手ブレとの闘いでもあります。手すりに置いての撮影でしたがニコン Z5IIのボディ内手ブレ補正と、レンズ側の強力なVC機構がシームレスに機能することで、1/10秒というスローシャッターでありながら正門の文字や看板はブレなくカチッと解像しています。

■撮影機材:ニコン Z5II + タムロン 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD
■撮影環境:F9 SS1/10 ISO400 焦点距離268mm
■撮影地:饒河街観光夜市

翌日は早朝にしか見られない台北名物、通称「スクーターの滝」の撮影に。これは通勤ラッシュ時に現れる、橋を下る道がスクーターで埋め尽くされる日本では決して起こらないであろうスクーターの集団です。

この圧倒的な熱量と密集感を表現するためには、このレンズの400mmという超望遠域が絶対に必要でした。坂道をなだれ落ちてくる無数のスクーターを正面から狙い、強力な圧縮効果によって画面の上下左右をヘルメットと車体で完全に埋め尽くす。動体に対しても非常に高速かつ正確に追従してくれるVXD(リニアモーター)のおかげで、狙ったポジションでスムーズにピントを固定し、シャッターを切ることができました。

■撮影機材:ニコン Z5II + タムロン 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD
■撮影環境:F9 SS1/640 ISO800 焦点距離400mm
■撮影地:台北市内

もう一カ所このレンズのテスト撮影にぴったりの場所に行ってきました。台湾の名門ホテル「圓山大飯店」の美しい建築の上を、ちょうどANAの機体が通過する瞬間。不意に訪れるシャッターチャンスも、リニアモーターフォーカス機構(VXD)の爆速AFが瞬時に被写体を捉えてくれました。

■撮影機材:ニコン Z5II + タムロン 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD
■撮影環境:F8 SS1/1600 ISO400 焦点距離177mm
■撮影地:台北市内(飛行機撮影スポット)

台北の絶景と言えば象山からの夕日と夜景ではないでしょうか。

整備された遊歩道とはいえ、カメラを担いで急な階段をひたすら登る道中は、思った以上にハードで息が上がります。そんな厳しい登山だからこそ、このレンズの軽さと、50mmから400mmまで1本でカバーできる高倍率さが大きな味方になってくれました。超望遠レンズとは思えない軽量・コンパクトな設計のおかげで、フットワークを犠牲にせず山頂まで辿り着くことができました。

苦労して登った先で迎えた、夕暮れ時の台北のビル群。これだけ強い逆光でありながら、ゴーストやフレアに悩まされることなく、ビル群が身を寄せ合う圧倒的なスケール感をクリアに切り取ることができました。

■撮影機材:ニコン Z5II + タムロン 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD
■撮影環境:F8 SS1/400 ISO125 焦点距離195mm
■撮影地:台北市(象山からの眺め)

夕日の後は周辺で夜景を散策。建物の間から台北のシンボル「台北101」が見える場所を見つけて撮影しました。最新の超高層ビルと、生活感あふれるレトロな小路。この新旧のコントラストこそが、台北の大きな魅力です。超望遠ズームである本レンズですが、広角端が「50mm」から始まるのでこのようなシーンでもレンズ交換することなく撮影に臨むことができます。

■撮影機材:ニコン Z5II + タムロン 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD
■撮影環境:F5 SS1/50 ISO3200 焦点距離50mm
■撮影地:台北市

台湾に来たら絶対に外せないのが小籠包。今回は、現地の友人に「観光客向けではないけれど、台北で一番美味い!」と連れていってもらった隠れた名店での一枚です。テーブルの上の料理を撮るとき、超望遠ズームだと引きが足りずに苦労しがちですが、広角端で最短撮影距離0.25mまで寄れるこのレンズは、中望遠域でも席に座ったままスムーズに近接撮影が可能です。

■撮影機材:ニコン Z5II + タムロン 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD
■撮影環境:F8 SS1/100 ISO1250 焦点距離99mm
■撮影地:台北市内のレストラン

九份へ

多くの旅人を魅了する、ノスタルジックな坂の町・九份。狭く高低差のあるこの町でも、機動力のあるこのレンズが真価を発揮しました。正直に言うと、九份は広角レンズが主役になる場面も多い街ですが、本レンズと広角ズームレンズの2本ですべての撮影をすることができました。

九份の幻想的な夜を彩る、赤提灯の明かりと細い路地の熱気。観光客で混雑し、引きが作れない九份の狭い階段道でも、レンズを交換することなく、人間の視野に近い標準画角で空間の広がりと情緒をそのまま切り取ることができました。

■撮影機材:ニコン Z5II + タムロン 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD
■撮影環境:F5.6 SS1/80 ISO800 焦点距離67mm
■撮影地:九份

台湾随一のノスタルジックな街並みが広がる九份。その象徴とも言える「阿妹茶樓(あめいちゃろう)」が、夕暮れのブルーモーメントの中に浮かび上がる瞬間を撮影しました。さすがに九份一の撮影スポットで到着したときには記念写真を撮る人であふれていました。広角レンズに変えようにもカメラバッグを置く場所もないくらいの混雑で、この瞬間を逃すまいと本レンズの最広角側を使って撮影しました。

■撮影機材:ニコン Z5II + タムロン 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD
■撮影環境:F8 SS1/60 ISO4500 焦点距離50mm
■撮影地:九份

その後食事に入ったレストランのテラスからも撮影。広角レンズでも撮影しましたが本レンズで画面いっぱいにランタンが入る構図も気に入っています。

■撮影機材:ニコン Z5II + タムロン 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD
■撮影環境:F8 SS1/60 ISO9000 焦点距離50mm
■撮影地:九份

台湾東海岸へ

都会を離れ、海風を感じる台湾の東海岸エリアへ。ここでは大自然の造形美や、ノスタルジックな漁港を撮影しました。

基隆にあるSNSでも大人気のカラフルなスポット。対岸から水面と船、そして並び立つポップな建物を標準画角で撮影しました。この画角では、港に集う船や背後に迫る豊かな緑、そしてどこか懐かしさを残す街並みの全景をバランスよく画面に収めることができ、この場所に流れるのんびりとした空気感をそのまま写し取ることができました。

■撮影機材:ニコン Z5II + タムロン 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD
■撮影環境:F8 SS1/25 ISO100 焦点距離56mm
■撮影地:基隆市・正濱漁港

次にズームリングを回し、焦点距離259mmの望遠域まで一気に引き寄せます。すると先ほどまで風景の一部だったカラフルな壁面がファインダーいっぱいに広がり、まるで絵本を切り取ったかのような、ポップな世界観へと表情を変えました。

■撮影機材:ニコン Z5II + タムロン 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD
■撮影環境:F8 SS1/80 ISO100 焦点距離259mm
■撮影地:基隆市・正濱漁港

次に訪れたのは、独特な岩肌と絹糸のような流れが美しい黄金瀑布です。
岩肌を流れる美しい滝の優美なライン。三脚を据え、シャッタースピードを少し遅くして水の流れを絹のように表現。水の流れを表現するためF25まで絞り込みましたが、岩のゴツゴツした質感をしっかりと描き出してくれました。

■撮影機材:ニコン Z5II + タムロン 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD
■撮影環境:F25 SS1/4 ISO50 焦点距離119mm
■撮影地:瑞芳区・黄金瀑布周辺

途中休憩に入ったお茶の専門店。その茶器がとても美しかったので撮影しました。
薄暗い店内での手持ち撮影でしたが、茶器にあしらわれた金と青の文様がシャープに浮かび上がりました。ピントを合わせた手前の絵柄から、奥に向かってなだらかに変化していくボケの階調も非常に美しく、その空気感まで写し止められたように感じました。

■撮影機材:ニコン Z5II + タムロン 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD
■撮影環境:F5.3 SS1/30 ISO1250 焦点距離91mm
■撮影地:小田茶館

夕暮れ時、雲の隙間から強烈な光が漏れ、海面をオレンジ色に染めるドラマチックな光景に出くわしました。逆光という非常に厳しい条件ですが、ゴーストやフレアもしっかり抑えられており、シルエットとなった手前の岩肌と、神々しい太陽のコントラストを綺麗に表現しています。

■撮影機材:ニコン Z5II + タムロン 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD
■撮影環境:F11 SS1/500 ISO100 焦点距離125mm
■撮影地:台湾東北角沿岸

まとめ

今回実感したのは、タムロン「50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD」というレンズが持つ、圧倒的な表現の幅と機動力です。世の中にはこれより軽量な望遠ズームレンズもありますが、「旅先だからこそ画質に妥協したくない」という方にこそ、周辺までクリアに描き出す描写性能は、軽量なズームレンズとは一線を画す安心感があります。

今回の旅では、広角ズームレンズとこのレンズの2本で、ほとんどすべての撮影を完結させることができました。フットワークが鍵となる海外の旅において、このレンズは、旅の可能性を最大限に広げてくれる最高の相棒になってくれるはずです。

 

 

■写真家:三田崇博
1975年奈良県生駒市生まれ。世界遺産撮影をライフワークとし現在までに100を超える国と地域で420か所以上の世界遺産を撮影。定期的に全国各地で開催している写真展は100回を超える。各種雑誌やカレンダーへの作品掲載も多数。主な著書に「世界三十六景」「生駒の火祭り」がある。
日本写真家協会(JPS)会員・FUJIFILM X-Photographer

 

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