タムロン 16-30mm F/2.8 Di III VXD G2 × ニコン Z5IIで撮るタイの絶景と世界遺産|三田崇博 海外撮影記

三田崇博
タムロン 16-30mm F/2.8 Di III VXD G2 × ニコン Z5IIで撮るタイの絶景と世界遺産|三田崇博 海外撮影記

はじめに

こんにちは。旅写真家の三田崇博です。今回は2025年8月に発売されたタムロン 16-30mm F/2.8 Di III VXD G2(Zマウント)を携え、タイへと向かいました。

目的は一年に一度、夜空が数千のランタンで埋め尽くされる幻想的な祭り「コムローイ」の撮影です。イーペン祭り(コムローイ祭り)は、タイ北部チェンマイで毎年旧暦12月の満月前後に開催される、無数のランタン(コムローイ)を夜空に放つ幻想的なお祭りです。この旅を共にする相棒として、ボディは同じく2025年発売のニコン Z5IIをチョイスしました。

16-30mm F/2.8 Di III VXD G2の特徴

「16-30mm F/2.8 Di III VXD G2(Model A064)」は、タムロン初となるニコンZマウント用大口径広角ズームレンズです。前モデル「17-28mm F/2.8 Di III RXD」(ソニーEマウントのみ)から広角側で1mm、望遠側で2mm焦点距離が拡張されたことで、16mmから30mmという、より汎用性の高いズームレンジを手に入れました。数値上ではわずか「1mm」の差ですが、超広角域におけるこの違いは、使ってみると目に見えて分かります。

さらにはズーム全域で開放F2.8という明るさを維持しており、夕景や室内、さらには星空撮影といった光量の少ないシーンでも、低感度を保ったままシャープな像を得ることが可能です。質量450g(Zマウント)、全長約10cmという驚異的な軽量コンパクト設計を実現している点も見逃せません。

Z5IIとの組み合わせ

今回のタイ旅行で、レンズの良き相棒となったのがニコンの「Z5II」です。2025年4月に発売されたこのカメラは、ニコンのフルサイズミラーレスにおける「ベーシックモデル」という位置づけながら、上位機に匹敵する最新の画像処理エンジンやAF性能を投入した一台です。

高いスペックを持ちながら、約620gという軽さを実現しています。16-30mm F/2.8 Di III VXD G2と組み合わせた際、その総重量は約1kg。これは、フルサイズの大口径広角ズームの組み合わせとしては究極の軽さです。実際に手に取ってみると、レンズとボディの重心バランスが非常に良く、これを持って一日中歩き回っても苦になりませんでした。

タイの首都バンコクへ

バンコクへの乗り継ぎ地、上海。あえてこのルートを選んだ理由の一つが、高度数千メートルから見下ろす上海の巨大な光の海を撮影することでした。飛行機の窓越し、かつ機体の振動がある中での夜景撮影は極めて過酷な条件です。しかし、16-30mm F/2.8 Di III VXD G2の開放F2.8という明るさが、速いシャッタースピードでの撮影を可能にしてくれました。

■撮影機材:NIKON Z5II + TAMRON 16-30mm F/2.8 Di III VXD G2
■撮影環境:F2.8 SS1/60秒 ISO12800 焦点距離30mm
■撮影地:上海上空(機内より)

バンコクに到着しホテルを一歩出ると、そこにはバンコクらしい熱気に満ちた屋台街が広がっていました。夜のスナップ撮影では、刻々と変わるシャッターチャンスを逃さない機動力と、暗所での描写力が求められます。ボディとレンズを合わせても約1kgという軽量な組み合わせは人通りの多い屋台街でも周囲に威圧感を与えず、スッと懐に入るようにカメラを構えることができます。

■撮影機材:NIKON Z5II + TAMRON 16-30mm F/2.8 Di III VXD G2
■撮影環境:F2.8 SS1/160秒 ISO400 焦点距離16mm
■撮影地:バンコク市内

タイに到着して欠かせないのが、定番の「チャーンビール」です。屋台の喧騒の中で冷えたボトルを手に取ると、ようやくタイに来た実感が湧いてきます。超広角ズームでありながら、開放F2.8の明るさと最短撮影距離の短さを活かすことで、背景にある屋台の照明が綺麗にぼけて、主題であるビールを浮かび上がらせることができました。

■撮影機材:NIKON Z5II + TAMRON 16-30mm F/2.8 Di III VXD G2
■撮影環境:F2.8 SS1/60秒 ISO1600 焦点距離21mm
■撮影地:バンコク市内

チェンマイ・イーペン祭

バンコクからチェンマイまでは飛行機で約1時間15分、バスで約10時間かかりますが、日本から直接チェンマイまで飛ぶこともできます。イーペン祭では市内の至るところで装飾やライトアップがされますが、メイン会場の「ターペー門」周辺は特にきらびやかでした。手持ちではシビアなシャッタースピードですが、Z5IIの強力なボディ内手ブレ補正との組み合わせにより、三脚を使わなくてもブレなくシャープに描き出すことができました。

■撮影機材:NIKON Z5II + TAMRON 16-30mm F/2.8 Di III VXD G2
■撮影環境:F6.3 SS1/13秒 ISO1250 焦点距離16mm
■撮影地:ターペー門周辺(チェンマイ)

今年(2025年)のイーペン祭りは、シキリット王太后の崩御に伴い、街を彩る装飾の多くが、純潔と敬意を象徴する「白」で統一されました。例年の色鮮やかな賑やかさとは異なりますが上品な美しさに包まれていました。

■撮影機材:NIKON Z5II + TAMRON 16-30mm F/2.8 Di III VXD G2
■撮影環境:F8 SS1/15秒 ISO1250 焦点距離21mm
■撮影地:ターペー門周辺(チェンマイ)

ふと頭上を見上げると、ランタンが整然と並び、まるで光の迷宮のような光景が広がっていました。このようなアングルは距離がとれない分、広角レンズが役に立ちます。また人の多いなかでの撮影のため、小型軽量なカメラとレンズの組み合わせで周囲の邪魔にならずに撮影に集中することができます。

■撮影機材:NIKON Z5II + TAMRON 16-30mm F/2.8 Di III VXD G2
■撮影環境:F9 SS1/80秒 ISO1000 焦点距離19mm
■撮影地:ターペー門周辺(チェンマイ)

ライトアップされた寺院も、雨上がりの水たまりと一緒に撮影するとぐっとフォトジェニックになります。ここはメイン会場の喧騒から離れ人が少なかったので、三脚を据えてじっくりと構図を練りました。

このカットでは、水面の映り込みをより鮮明に強調するため、ハーフNDフィルターを使用しています。超広角レンズは前玉が飛び出した「出目金レンズ」であることが多く、角型フィルターを装着するには専用のアダプターが必要なことも珍しくありません。しかし、この16-30mm F/2.8 Di III VXD G2は、超広角でありながらレンズ前面が平面で、かつ汎用性の高い67mmのフィルター径を採用しています。これにより、いつものフィルターをそのまま、ストレスなく装着できるのは旅の現場では大きなアドバンテージです。

■撮影機材:NIKON Z5II + TAMRON 16-30mm F/2.8 Di III VXD G2 + 100x150mm K-Series Hard GND 8 (0.9)
■撮影環境:F8 SS2秒 ISO200 焦点距離16mm
■撮影地:ワット ブッパーラーム(チェンマイ)

チェンマイの旧市街は、歴史ある城壁に囲まれています。お祭りの夜、人々はそのレンガの隙間に無数の蝋燭を灯し、静かな祈りを捧げていました。絞り込んで横を走る車の光跡を描いてみましたが、街灯の光条も含めて極めてシャープでこのレンズの描写力の高さが伺えます。

■撮影機材:NIKON Z5II + TAMRON 16-30mm F/2.8 Di III VXD G2
■撮影環境:F16 SS4秒 ISO125 焦点距離22mm
■撮影地:チェンマイ旧市街(チェンマイ)

お祭りの熱狂の中に一歩踏み込み、人々の祈りの姿を間近で捉えました。16mmという画角はぐっと人物に近寄ることによって超広角特有の遠近感が画面に圧倒的な躍動感をもたらします。開放から少し絞ることによって周辺の解像度が安定し画面の端に配した人物も鮮明になり、まるで自分もその場にいて、一緒に蝋燭を灯しているかのような臨場感を写し取ることができました。

■撮影機材:NIKON Z5II + TAMRON 16-30mm F/2.8 Di III VXD G2
■撮影環境:F5.6 SS1/60秒 ISO2000 焦点距離16mm
■撮影地:ワット ジェットリン(チェンマイ)

敷地内にある池では人々が祈りを捧げながら「クラトン(灯籠)」を流す姿が見られました。暗闇に浮かぶ小さな光の粒を印象的に捉えるため、水面に浮かぶクラトンに限界まで近づいてシャッターを切りました。このレンズの最短撮影距離は広角端で0.19m(19cm)、望遠端でも0.3m(30cm)と非常に短く、被写体にかなり近くからでもピントを合わせて撮影が可能です。

■撮影機材:NIKON Z5II + TAMRON 16-30mm F/2.8 Di III VXD G2
■撮影環境:F5.6 SS1/40秒 ISO2000 焦点距離23mm
■撮影地:ワット ジェットリン(チェンマイ)

コムローイの打上げ会場へ

いよいよ今回のメインイベント、ランタンの一斉打ち上げ会場に向かいます。

会場内にはカラフルなランタンのトンネルがありました。頭上のランタンをあえて見上げる角度で捉えることで、奥行きと広がりの両方を一度に表現しています。F8まで絞ることで、手前のランタンから最奥の光の点まで、すべてを鮮明に描き出す「パンフォーカス」に近い状態を作り出しました。

■撮影機材:NIKON Z5II + TAMRON 16-30mm F/2.8 Di III VXD G2
■撮影環境:F8 SS1/40秒 ISO1600 焦点距離16mm
■撮影地:CADカルチャーセンター・ランナー(チェンマイ)

ランタン打ち上げの瞬間。至近距離から見上げるランタンと、頭上に広がる光の群れを同時に捉えるには、16mmという画角が不可欠です。あえて人物のシルエットを大きく配置し、その手元から光が放たれる構図にすることで、お祭りの熱量と没入感を表現してみました。

■撮影機材:NIKON Z5II + TAMRON 16-30mm F/2.8 Di III VXD G2
■撮影環境:F4 SS1/60秒 ISO1600 焦点距離16mm
■撮影地:CADカルチャーセンター・ランナー(チェンマイ)

特筆すべきは、開放F2.8での周辺部の描写力です。打ち上げられたランタンは画面の端々にまで広がりますが、このレンズは四隅の小さな光の点まで流れさせることなく、シャープな点像として描き出しています。最新のVXD駆動によるAFは、暗所でも迷うことなくピントを合わせ続けてくれました。

■撮影機材:NIKON Z5II + TAMRON 16-30mm F/2.8 Di III VXD G2
■撮影環境:F2.8 SS1/160秒 ISO1600 焦点距離16mm
■撮影地:CADカルチャーセンター・ランナー(チェンマイ)

夜空を埋め尽くす無数の光がゆっくりと昇っていく光景は、まさに幻想的という言葉がふさわしいものです。暗い夜空を背景に、ランタンという動きのある被写体を捉えるこの撮影は、レンズにとって最も過酷な条件の一つです。このレンズを持ってきた理由はこの撮影のためだったと言っても過言ではありません。

■撮影機材:NIKON Z5II + TAMRON 16-30mm F/2.8 Di III VXD G2
■撮影環境:F2.8 SS1/80秒 ISO1600 焦点距離16mm
■撮影地:CADカルチャーセンター・ランナー(チェンマイ)

動画も撮影しましたのでぜひ会場の雰囲気をお楽しみください。なおこちらの動画は、360度撮影が可能なInsta360の最新モデルX5を使用しました。

雨のランプーン

次に訪れたのは、古都ランプーンにある名刹「ワット・プラタート・ハリプンチャイ」です。ここのランタン装飾もチェンマイに負けず劣らずの規模だと聞き足を運びましたが、あいにくの雨に見舞われました。しかし、その雨だったからこそ撮れたリフレクションでした。

■撮影機材:NIKON Z5II + TAMRON 16-30mm F/2.8 Di III VXD G2
■撮影環境:F8 SS1/13秒 ISO1250 焦点距離16mm
■撮影地:ワット・プラタート・ハリプンチャイ(ランプーン)

実はこの写真は、カメラを載せた三脚を高く手で持ち上げ、吊られているランタンよりもさらに高い位置から見下ろすように撮影しています。腕にかかる重みと戦いながら、揺れる三脚の先で構図を安定させるのは至難の業で、失敗の連続でした。しかし、ボディとレンズを合わせても約1kgというこの軽量な組み合わせだったからこそ、一瞬の静止を捉え、この一枚をモノにすることができたのだと思います。

■撮影機材:NIKON Z5II + TAMRON 16-30mm F/2.8 Di III VXD G2
■撮影環境:F8 SS1/25秒 ISO3200 焦点距離18mm
■撮影地:ワット・プラタート・ハリプンチャイ(ランプーン)

世界遺産「シーテープ歴史公園」へ

2023年に登録されたばかりの世界遺産へと向かう道中、ピッサヌロークという町で一泊しました。ここに「タイで一番美しい」と称される仏様がいると聞き、ワット・プラ・シー・ラタナー・マハータートを訪れました。

本堂に足を踏み入れると、黄金の仏様はもちろんのこと、それを包み込む寺院内部の装飾の美しさに圧倒されました。このレンズの16mmという超広角を活かすことで、高くそびえる漆黒と黄金の柱、天井を彩る緻密な紋様、そして中央に鎮座する仏様を一つの画面に収めることができました。

■撮影機材:NIKON Z5II + TAMRON 16-30mm F/2.8 Di III VXD G2
■撮影環境:F2.8 SS1/160秒 ISO1000 焦点距離16mm
■撮影地:ワット・プラ・シー・ラタナー・マハータート(ピッサヌローク)

タイ北中部のペッチャブーン県に位置するシーテープ歴史公園。2023年にユネスコ世界遺産に登録されたばかりのこの遺跡は、7世紀から11世紀にかけて繁栄した「ドヴァーラヴァティー文化」の傑作です。本来脇役である木を大きくフレームに入れることで奥にそびえる遺跡との間に圧倒的な奥行きを生み出すことができました。

■撮影機材:NIKON Z5II + TAMRON 16-30mm F/2.8 Di III VXD G2
■撮影環境:F9 SS1/125秒 ISO160 焦点距離18mm
■撮影地:シーテープ歴史公園(ペッチャブーン県)

シーテープの中心部に位置する「カオ・クラン・ナイ」は、ドヴァーラヴァティー様式の巨大な仏教寺院跡です。1000年以上の時を経た今もなお、その広大な基壇は圧倒的な存在感を放っています。

■撮影機材:NIKON Z5II + TAMRON 16-30mm F/2.8 Di III VXD G2
■撮影環境:F11 SS1/80秒 ISO200 焦点距離18mm
■撮影地:シーテープ歴史公園(ペッチャブーン県)

まとめ

バンコクの喧騒、チェンマイの夜空を埋め尽くしたランタン、雨に濡れたランプーンの寺院、そして古代の息吹を伝えるシーテープの遺跡。今回の旅を通して、タムロン 16-30mm F/2.8 Di III VXD G2は風景からスナップまで使えるレンズだということを実感しました。

そして、ズーム全域で使えるF2.8の明るさとVXDによる高速AFは、コムローイの夜空を舞うランタンのような、極めて難易度の高い被写体も確実に捉え切ってくれました。これほどの実力を持ちながら、Z5IIとの組み合わせで約1kgという軽さは、旅に持っていくフルサイズシステムとして最良の組み合わせではないかと思います。

 

 

■写真家:三田崇博
1975年奈良県生駒市生まれ。世界遺産撮影をライフワークとし現在までに100を超える国と地域で400か所以上の世界遺産を撮影。定期的に全国各地で開催している写真展は100回を超える。各種雑誌やカレンダーへの作品掲載も多数。主な著書に「世界三十六景」「生駒の火祭り」がある。
日本写真家協会(JPS)会員・FUJIFILM X-Photographer

 

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