ソニー FE 50-150mm F2 GM レビュー|圧巻のボケと高速AFが切り拓くポートレートの新境地

Amatou
ソニー FE 50-150mm F2 GM レビュー|圧巻のボケと高速AFが切り拓くポートレートの新境地

イントロダクション

2025年5月23日、ソニーEマウントシリーズに新たな大口径望遠ズームレンズ、FE 50-150mm F2 GM(SEL50150GM)が登場しました。このレンズは焦点距離50-150mmの幅広いレンジをカバーしながら、開放F値2というズームレンズとしては破格の明るさを実現したレンズです。

そのスペックはポートレート撮影を中心に、ブライダルやイベント撮影、室内スポーツなど 、高速な動体撮影から芸術的なボケ表現まで、一本で複数の単焦点レンズに匹敵する表現力を発揮します。

本レンズは、ソニーの最高峰であるG Masterに属しており、F2という極めて明るい開放絞りを持っています。その革新的な光学設計と先進技術の融合により、昼夜を問わず高品質なポートレート表現を可能としています。本記事では、都市のポートレート撮影をメインにフォーカスし、このレンズがいかにそのジャンルを革新する可能性を持つかを技術的・実践的側面から分析していきます。

レンズの概要と特徴

FE 50-150mm F2 GMは、中望遠から望遠域をカバーする焦点距離を備えています。50mmという標準的な視点から150mmという遠距離を自在に切り替えることができ、ポートレート撮影において多彩な表現を可能にします。特筆すべきはF2という開放絞りであり、ズーム全域に渡って明るさを一定に保つことができる点です。これにより、薄暗い夕暮れ時や夜間でもISO感度を無理に上げることなく、ノイズレスで美しい描写が可能となります。

レンズ構成には特殊なガラス素材や高度な光学設計が施されており、XAレンズ(超高度非球面レンズ)やEDガラス、スーパーEDガラスなどを組み合わせることで、画面全域での高解像度化と色収差の徹底的な低減を実現しています。

また、本レンズは50mm、85mm、135mmといったポートレートで頻繁に使用される焦点距離の単焦点レンズを一本でカバーしており、確かにサイズは大きめではありますが、複数の単焦点レンズを持ち歩くことを考えれば非常に身軽であるとも言えます。軽快な機動性を重視するフォトグラファーにとって、このレンズ一本で完結する利便性は大きな魅力となるでしょう。

ポートレートにおけるメリット

都市におけるポートレートは、被写体との距離感を調整しにくい環境が多く、撮影の迅速性と描写の柔軟性が求められます。このFE 50-150mm F2 GMは、そのズームレンジと明るい開放絞りにより、シーンに応じた的確な構図設定が可能です。特に焦点距離150mmにおける浅い被写界深度は、背景の喧騒を柔らかなボケ味として表現し、被写体を自然かつ鮮明に浮かび上がらせることができます。

さらに、本レンズ最短撮影距離はワイド端で0.40m、テレ端でも0.74mと短く、最大撮影倍率0.2倍の近接撮影も可能です。また、近接撮影時においてもフローティングフォーカス機構により、優れたシャープネスを確保できます。ブライダル撮影などにおいて小物を撮影する時も、レンズ交換の手間を省き、高い機動性を発揮します。

加えて、本レンズは静音性・高速性に優れたXDリニアモーターを搭載しており、動きの速い街中の被写体や夜間の低照度環境でも正確かつ迅速なフォーカスを実現しています。これにより、瞬時に訪れる被写体の表情や動きを逃さず捉え、高品質な作品へと昇華させることが可能となります。

使用機材:Sony α9 III + FE 50-150mm F2 GM
設定:ISO250 122mm F2 1/4000秒

G Masterの称号にふさわしい光学性能

本レンズはソニー独自のナノARコーティングIIを採用することで、フレアやゴーストを最小限に抑えています。逆光条件や都市の複雑な光環境下でも高いコントラストと鮮明な描写が保証され、ポートレート撮影においても自然な色再現性を維持します。
さらに、高い防塵・防滴性能も備えており、突発的な悪天候や埃の多い都市環境でも安心して使用できる堅牢性を持っています。これは、リアルな都市空間での撮影を主軸に据えるフォトグラファーにとって非常に頼もしい要素となります。

MTF曲線に見る描写性能

参照元:https://www.sony.jp/ichigan/products/SEL50150GM/feature_1.html

MTF(Modulation Transfer Function:空間周波数応答)曲線とは、レンズの光学性能を客観的に評価するための指標であり、レンズがどれだけ忠実に被写体の細部を描写できるかを数値的に可視化したものです。

FE 50-150mm F2 GMのMTF曲線を詳細に分析すると、特に50mmと150mm両端の焦点距離において、開放絞り時から非常に高い性能を示しています。50mm開放時では、画面中心から約16mmまで10本/mm(全体的なコントラスト)のMTF値がほぼ100%を維持し、30本/mm(細部の解像力)も安定して高く、単焦点レンズに匹敵する性能を示しています。

150mm開放時でも中心部から周辺まで高いMTF値を維持しており、ズームレンズとしては驚異的な描写性能です。放射方向(実線)と同心円方向(破線)との差が少なく、非点収差や軸上色収差が効果的に抑制されていることを示しています。F8に絞った場合には全域のシャープネスがさらに向上し、ポートレート撮影でも安心して使える性能が確認できます。

開放F2で検証する浅い被写界深度と中心から周辺解像度の安定性

使用機材:Sony α9 III + FE 50-150mm F2 GM
設定:ISO250 50mm F2 1/3200秒

モデルをアップ気味に捉えた作例です。開放F2で背景の街並みを大きくぼかすことで、雑踏の中にあっても被写体の存在感が際立ちます。瞳にピントを合わせると顔の後ろは自然に溶けるようにボケていき、被写体がまるで背景から浮き上がるような立体感を創出しています。
高解像な描写と柔らかなボケ味のバランスが絶妙で、シャープネスと描写のやわらかさが両立している点はさすがG Masterレンズと言えます。

使用機材:Sony α9 III + FE 50-150mm F2 GM
設定:ISO250 150mm F2 1/4000秒

橋の上で撮影したポートレート作例です。背景には橋の欄干や街の風景が写り込んでいますが、開放F2で撮影することで背景は滑らかにぼけています。モデルの表情や髪の質感は非常にクリアに写り、ディテールを損なうことなく背景だけを効果的にぼかせるので、主題である人物の魅力を存分に引き出すことができます。ピント面の解像力の高さにより被写体の目鼻立ちがくっきり描写され、その前後はとろけるようにボケていく描写は、まさに大口径ポートレートレンズならではの醍醐味です。

使用機材:Sony α9 III + FE 50-150mm F2 GM
設定:ISO250 86mm F2 1/160秒

細い路地での環境ポートレートの作例です。手前には観葉植物を敢えて入れ込み前ボケとし、被写体との距離感を演出しています。遠近感を活かした構図においても、F2の浅い被写界深度と86mmの中望遠域の圧縮効果により、手前のボケと背景ボケが重なって被写体を包み込むような奥行き表現が可能です。モデルが歩く軌道上にピントを合わせると、前景の葉や後ろの通りの景色は柔らかなボケとなり、画面に立体的な層が生まれています。近距離から遠距離まで滑らかにつながるボケ描写は非常に自然で、背景の情報量を抑えつつもその場の雰囲気を感じさせるポートレートに仕上がっています。

点光源描写と11枚円形絞りが生むボケ品質とフレア耐性

使用機材:Sony α9 III + FE 50-150mm F2 GM
設定:ISO250 73mm F2 1/100秒

夕暮れ時の繁華街で撮影したポートレートです。背景にはビルの看板や街灯など無数の光源が存在しますが、開放F2で撮影することでそれらは大きく美しい玉ボケとなり、まるで光の海に包まれているかのような幻想的な雰囲気を生み出しています。モデルの背後で様々な色の光が円形にぼけていますが、その輪郭は非常に滑らかでザラつきがありません。11枚羽根の円形絞りにより絞り開放付近でもボケ像が真円に近く保たれており、玉ボケの縁も硬くならず自然です。また、大口径ゆえに夕景の少ない光量下でも低ISOで高速シャッターを切ることができ、手持ちでもブレなくクリアな描写を得ることができています。

使用機材:Sony α9 III + FE 50-150mm F2 GM
設定:ISO250 132mm F2 1/320秒

夜のネオン街で撮影した作例です。遠景に無数のネオン看板が写り込むシーンですが、132mmの望遠域かつ開放F2という組み合わせにより、背景の光は絵画的なボケ模様へと変貌しています。被写体は画面中央に据えられていますが、背後のビルの看板は判読できないほど大きく柔らかな光のボケとなり、被写体を浮かび上がらせる役割を果たしています。開放F値が明るい本レンズでは夜間撮影でもシャッター速度とISO感度に余裕が生まれ、人物をぶれさせず高画質に捉えられます。実際、本作例でもISO250程度に抑えつつ1/320秒で撮影されていますが、モデルの表情はしっかりと解像し、ノイズも極めて少ないクリアな仕上がりです。

使用機材:Sony α9 III + FE 50-150mm F2 GM
設定:ISO250 76mm F2 1/80秒

こちらも夜景ポートレートの一例で、先程よりやや近寄って撮影したものです。カラフルな看板や街の光が背景いっぱいに広がっていますが、開放F2ならではの大きなボケにより色とりどりの光が溶け合い、まるで抽象画のように背景が描かれています。被写体との距離を詰め76mmで撮影することで人物の存在感がさらに強調され、背景の光は大きなボケとして柔らかい後景を形成しています。にもかかわらず、モデルの目元や髪の描写は非常に精細で、暗所でもAFが迷うことなく確実にピントを合わせているのが分かります。暗所での合焦性能の高さと大口径による表現力で、夜のポートレートにも新たな可能性を感じさせる作例です。

使用機材:Sony α9 III + FE 50-150mm F2 GM
設定:ISO250 150mm F2 1/500秒

日中の街角で、点在する照明を背景に入れて撮影したポートレートです。背景奥に並ぶ丸ボケがアクセントとなっています。F2の浅い被写界深度により雑多な街のディテールは程良くぼかされ、背景の椅子や人影も柔らかな描写になっています。加えて点光源は綺麗な丸ボケとなり、白やオレンジの光が玉ボケとなって被写体を引き立てています。強い逆光や照明が入る条件でもコントラストの低下やフレアの発生は抑えられており、クリアな描写を保っている点も特筆すべきでしょう。総合的に、本レンズは昼夜を問わずボケ表現を積極的に活かした撮影で真価を発揮してくれることが分かります。

4基リニアモーターAFの追従性能と望遠圧縮効果の実証

使用機材:Sony α9 III + FE 50-150mm F2 GM
設定:ISO250 150mm F2 1/3200秒

銀座の歩行者天国で撮影したスナップポートレートです。モデルがこちらに向かって歩いてくるシーンを連写した中の一枚で、F2の開放ながら被写体に正確にピントが合い続けていることが分かります。背景には多くの通行人が写り込んでいますが、大口径望遠ズームならではの圧縮効果とボケによりモデルが人混みから浮かび上がり、視線を被写体にしっかりと誘導します。4基の高速リニアモーターによるAFは非常に俊敏で、カメラのリアルタイム瞳AFと相まって、歩行シーンのように被写体との距離が絶えず変化する場面でも食いつくようにピントを追従してくれます。動く被写体を背景からしっかり分離しつつ捉えられるのは、本レンズの大きな強みです。

使用機材:Sony α9 III + FE 50-150mm F2 GM
設定:ISO250 150mm F2 1/3200秒

モデルがくるりと振り向いた瞬間を捉えたダイナミックなポートレートです。髪が大きく宙になびく一瞬の動きに対しても、FE 50-150mm F2 GMの高速AFは見事に食いつき、瞳に正確にピントを合わせ続けています。画面いっぱいに広がる髪の動きが躍動感を生み、スピード感を演出しています。被写体の顔は非常にシャープで、動きの中でも解像力の高さが際立っています。開放F2で撮影していますが、前後のボケが滑らかなため被写体の動きがより印象的に際立ちます。瞬間を逃さない俊敏なオートフォーカスと美しいボケ描写により、ドラマチックな一コマを確実に切り取ることができています。

使用機材:Sony α9 III + FE 50-150mm F2 GM
設定:ISO250 100mm F7.1 1/500秒

モデルがビル群を背負ってさりげなくポーズを取った瞬間を収めたポートレートです。髪が大きく宙になびく一瞬の動きに対しても、FE 50-150mm F2 GMの高速AFは見事に食いつき、瞳に正確にピントを合わせ続けています。画面いっぱいに広がる髪の動きが躍動感を生み、シャッター速度1/500 秒で風に揺れる髪をほぼ止めつつ、微妙な動きだけを残して躍動感を演出しています

F8までしっかり絞り込むことで、肌やデニムの縫い目、イヤリングの細かなエッジまでも輪郭が破綻せず、卓越した解像力が隅々まで行き渡っています。背景の高層ビルもボケ感もありつつ窓枠一本一本が明瞭に判読できるほどシャープで、さすが最新G Masterレンズと思わせるような作例になりました。

使用機材:Sony α9 III + FE 50-150mm F2 GM
設定:ISO250 150mm F8 1/250秒

都会のビル街で、モデルがふと遠くを見上げた瞬間を切り取ったポートレートです。150mm域でF8.0まで絞り込むことで、肌の質感や衣服の布目、眼差しの微妙な陰影までも克明に浮かび上がっています。背景に広がる曲面ガラスのファサードは線の崩れがなくシャープに描写されつつ、適度な距離と中望遠圧縮のおかげで色だけが柔らかく溶け、被写体を引き立てるニュアンス豊かな後景へと変換されました。1/250秒のシャッターは微細な髪の動きや頬を流れる風のニュアンスを的確に止め、ISO250でもノイズはほとんど感じられません。高解像度と背景描写の品位を両立させる“絞り込みポートレート”の実践例と言えるカットです。

夜景撮影における適用性の実証

使用機材:Sony α9 III + FE 50-150mm F2 GM
設定:ISO125 107 mm F2 1/125 秒

雨に濡れた歓楽街で、開放F2の浅い被写界深度を生かして奥行きを誇張しました。アスファルトに映り込む看板のネオンが鏡面のように伸び、高輝度と低輝度が入り交じる複雑な光環境でもコントラストは良好。街並みの細かなディテールは残しつつ、前景と後景の光を美しい円形ボケに変換し、シーンに映画的な深みを与えています。

使用機材:Sony α9 III + FE 50-150mm F2 GM
設定:ISO125 132 mm F20 12 秒

望遠端132mmでF20まで絞り、12秒の長秒露光で橋と花火を同時に収めた一枚です。絞り込んでも解像感の低下や回折の影響は最小限で、橋脚のリベットや花火の細い光跡までシャープに再現。点光源は美しい光条となり、ナノARコーティングIIのおかげでフレアも抑制されています。望遠圧縮効果で橋と花火のスケール感を凝縮しつつ、青い水面のグラデーションも滑らかに描かれ、ズームレンズとは思えない描写の緻密さが際立ちました。

使用機材:Sony α9 III + FE 50-150mm F2 GM
設定:ISO125 107 mm F2 1/100秒

街灯のオレンジとテールランプの赤が混在する雨夜の路地で、クリア傘の水滴にピントを合わせたクローズアップです。開放F2により背景の光は大きく滲む玉ボケとなり、透明な傘の輪郭をやわらかく縁取ります。濡れたビニール表面の微細な水滴までシャープに写し取りながら、後景のボケが騒がしい街を幻想的な色彩のヴェールへ変貌させます。高コントラストな点光源でも色収差が目立たないのはED/Super EDガラスとXAレンズの恩恵で、夜のスナップにおける大口径望遠ズームの可能性を感じさせるカットです。

まとめ

SONY FE 50-150 mm F2 GMは、望遠ズームに求められる画質と機動力を単焦点級にまで高めた“次世代ポートレートズーム”です。XAレンズやSuper EDガラスを含む贅沢な17群19枚構成により、50mmから150mmの全域で画面中心から周辺まで均質な高解像と色収差の徹底排除を実現しています。実際、公式MTF曲線を詳細に確認すると、開放F2から10本/mm・30本/mmともに高い数値を維持し、絞り込めば周辺まで単焦点さながらのシャープネスが得られることが裏付けられています。

開放F2という明るさは、夕景や夜景、室内イベントなど光量の限られるシーンでも低ISO・高速シャッターで被写体をクリアに捉え、11枚円形絞りと相まってとろけるようなボケ表現を可能にします。さらに、最短撮影距離0.40m(ワイド端)/0.74m(テレ端)、最大撮影倍率0.2倍という近接性能は小物やディテール撮影にも強く、レンズ交換の手間を大幅に削減します。

AF駆動には4基のXDリニアモーターを採用し、最新ボディの高速連写にも遅延なく追従。動体ポートレートやブライダル、スポーツシーンでも瞳を逃さない正確性と静粛性を兼備します。加えて内部ズーム構造と防塵防滴設計、着脱式三脚座により、ロケや長時間撮影でも安心して使用できる堅牢性と操作性を有しています。

総じて、FE 50-150 mm F2 GMは50mm、85mm、135mmといった定番単焦点を1本に凝縮しつつ画質で妥協しない、真に単焦点級のオールラウンダーです。ポートレート、ブライダル、イベント、ナイトスナップ──あらゆる現場で創造性を解放し、フォトグラファーにこれまで以上の表現領域をもたらしてくれるでしょう。

 

■モデル:
日咲美音
Rina Takehara

■写真家:Amatou
1995年千葉県生まれ。非現実的な都市景観の表現をコンセプトとしたファインアートフォトグラフィーをメインに撮影している。その独特な世界観が評価され、International Photography Awards、Sony World Photography Awardsをはじめ、国際的写真コンテストで数多くの上位入賞を果たす。

 

関連記事

人気記事