ソニー Distagon T* FE 35mm F1.4 ZAレビュー|プライスダウンで魅力を増した高性能レンズ

葛原よしひろ

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はじめに

 今回のレンズレビューはSONYの「SEL35F14Z」です。SONY純正ながら正真正銘のZEISS Distagonレンズであり、新製品「SEL35F14GM」の発表後大幅にプライスダウンされました。発売から少し時間が経っているとは言え、現在の価格であればEマウントユーザーには気になるレンズに再浮上間違いなし。という事で実写を交えながら改めてこのレンズの魅力を探ってみたいと思います。

スナップ

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■撮影機材:ソニー α7C + Distagon T* FE 35mm F1.4 ZA
■撮影環境:F5.6 1/20秒 ISO100 露出補正-1

 現場に向かう道中に大阪の淀屋橋界隈をブラリ撮影。趣のある建物の窓を中心に、向かい側のビルの写り込みも考慮してシャッターを切りました。ファインダーを覗いた瞬間に建物の線が歪んだり曲がったりせずに真直ぐシャープに見える事で、このレンズがハイクオリティであることが理解出来ました。

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■撮影機材:ソニー α7C + Distagon T* FE 35mm F1.4 ZA
■撮影環境:F5.6 1/2000秒 ISO6400 露出補正+1.3

 先程の写真を撮影した後スマートフォンの地図アプリを見ると、目的の撮影地が遠のいている事に気付いて駅の方向に戻る事になりました。実は私は生粋の方向音痴なのでこのような事は日常茶飯事なのですが、駅方向に戻って路上地図と地図アプリを合わせ見て方向確認していると、地図の落書きと路駐自転車が気になりパシャリ。田舎者の私には何となくこういうものが都会的に見えてフォトジェニックに思えたりもするのですが、地図の落書きも自転車の路駐も迷惑行為なので止めて下さいね。

 そして以前からZEISSのレンズを使うといつも思う事なのですが、このSEL35F14Zも例外では無くて良く黒が締まってくれます。黒が締まるレンズは私が街スナップに持ち出すレンズを選ぶ時の選択基準として外せない要素です。

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■撮影機材:ソニー α7C + Distagon T* FE 35mm F1.4 ZA
■撮影環境:F5.6 1/2000秒 ISO6400 露出補正+1.3

 黒が締まるレンズを使うとB&Wにした時の仕上がりも格段に良い雰囲気になりますので、特に街スナップのレンズ選択ではその点も押さえたいポイントになります。そういった意味でもこのDistagon 35mmはスナップに連れ出したくなるレンズです。

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■撮影機材:ソニー α7C + Distagon T* FE 35mm F1.4 ZA
■撮影環境:F1.4 1/2000秒 ISO6400 露出補正±0

 目的地までの目途がついてホッとした気持ちになると、朝食を未だ食べていないことを思い出しました。通りすがりの喫茶店のモーニングセットにつられて入り口をみると、良い感じの階段が目に入ってきたので4階のお店まで上りながら撮影。おそらく床材を剥がした跡をそのままにされているのだと思うのですが、自然な経年変化も含めてアートな感じになっており、昭和の雰囲気と薄暗い空間のハードボイルドな匂いが私好みで食欲を満たす前に写欲が満たされました。

 少し暗い場所での撮影でも、開放値F1.4にダイレクトドライブSSM高速モーター搭載のこのレンズはAFが迷う事も無く素早く合焦するので、ストレスなく撮影を楽しめるのは嬉しいですね。

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■撮影機材:ソニー α7C + Distagon T* FE 35mm F1.4 ZA
■撮影環境:F5.0 1/30秒 ISO400 露出補正±0

 少し遅めの朝ごはんとなったモーニングセットを撮影。窓からの自然光と店内の電球色の光源が合わさったミックス光なので、通常だと狙った色味を出すのが難しい状況なのですが、AWBで撮影したところお店の雰囲気も食材も美味しそうな感じに収まりました。こういう微妙な雰囲気を表現したいときにZEISSのレンズは期待に答えてくれる事が多いので助かります。

 珈琲は勿論の事、ちゃんと手の込んだサイドメニューもとても美味しくて大満足な朝食にこの後のお仕事での撮影の鋭気も養われました。隠れ家的な店内は店主のセンスの良さが溢れていて、時間が有れば店内も撮影したかったのですが出来なかった事が少し心残りでした。

ポートレート

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■撮影機材:ソニー α7R IV + Distagon T* FE 35mm F1.4 ZA
■撮影環境:F1.4 1/125秒 ISO100 露出補正±0

 次の被写体も35mmF1.4レンズを使用しての定番撮影となるポートレート撮影です。今回のモデルさんは世界最大規模のミスコンテスト、ミス・グランド・インターナショナル2017 日本大会ファイナリストで、鈴鹿サーキットクイーン37期生の森江由衣さんを京都市内で撮影させて戴きました。

 一枚目は叡山電鉄の無人駅にて撮影。雨の日の撮影でしたが森江さんの大きな瞳と白い歯が印象的な笑顔で明るい一枚になりました。このレンズは以前より私の中でポートレートを得意とするレンズというイメージが有りました。その理由は女性の肌に透明感が出るといいましょうか、少し透き通るように美しく描写してくれるので柔らかく優しい表現がしやすいと感じていたからです。そして雨の日は防塵防滴に配慮したレンズは心強いですね。

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■撮影機材:ソニー α7R IV+ Distagon T* FE 35mm F1.4 ZA
■撮影環境:F1.4 1/125秒 ISO100 露出補正±0

 アメリカンな壁画の前で撮影。色とりどりの壁をみると、このレンズの発色の良さが解ります。開放F1.4でも原色系から淡い色まで鮮やかに濁らず再現してくれるので、どの様な背景でも安心して撮影することが出来るのは頼もしいですね。特にネオン管の薄いピンクの色が蛍光感も有りつつも、ここまで発色している事に驚きました。

風景

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■撮影機材:ソニー α7R IV + Distagon T* FE 35mm F1.4 ZA
■撮影環境:F13 30秒 ISO100 露出補正±0

 最後は私の地元である滋賀県高島市の琵琶湖に浮かぶ竹生島と対岸の伊吹山が直線状に並んで見えるポイントで撮影。雪化粧の伊吹山と流れる雲と晴れ渡る空の青さに惹かれながら寒さを忘れて夢中で撮影しました。それにしても風景撮影にZEISSのレンズを使うと、いつも空や水面のグラデーションの美しさに顔が緩んでしまうのは私だけでは無いと思います。操作面ではレンズ本体に絞り環が付いているので、撮影時に絞り環を廻して絞りのコントロールが出来るのは凄く便利です。

さいごに

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 今回、改めてじっくりSEL35F14Zを使用しましたが、初期SONYフルサイズEマウントレンズとあって最新の同スペックのレンズには解像感やAF性能で及ばない面も確かに有ると感じます。AF/MF切替スイッチもないため、マニュアルで撮影したい場合はボディ側で設定操作する必要があります(昨今のカメラはAF性能が良く、MFの出番はほとんどなくなっていますが…)。

しかしフィルター径72mm、最大径78.5mm、長さ112mm、重さ630gと決して小さいとは言えないボディに8群12枚のレンズ群を持ち、高度非球面レンズ1枚を含む非球面レンズ3枚を使用した高性能レンズであることは紛れもありません。35mmF1.4のZEISS DistagonをAFで使用する事が出来て、尚且つそれがSONYの純正レンズでも有るなんて、それだけでも充分過ぎるほど魅力的ですよね。それに加え衝撃のプライスダウンがなされた現在の価格で明るい単焦点のZEISSマジックが手に入るとなれば、どう考えても最高のコストパフォーマンスを持った一本であることは間違いないと思います。是非一度お試しされてみては如何でしょうか。

■写真家:葛原よしひろ
ジャンルに捉われず何でも撮影するマルチプレイヤースタイルの写真家。カメラメーカー等の写真セミナー講師としても全国的に活動している。大阪芸術大学写真学科卒、滋賀県高島市公認フォトアドバイザー、JPS(日本写真家協会)正会員

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