佐藤俊斗 × ポートレートVol.11|ロケ撮影に最適。日中シンクロを活用した撮影術

佐藤俊斗
佐藤俊斗 × ポートレートVol.11|ロケ撮影に最適。日中シンクロを活用した撮影術

はじめに

こんにちは。写真家の佐藤俊斗です。
肌寒い日々が続き、しっとりとした冬の光が美しい季節になりました。
柔らかい光は人物撮影において、とても最適な環境ですよね。

今回はクリップオンストロボを使用し、秋冬らしい光の質感で捉える昼の銀杏並木と、ファッション感のある夕方のロケ撮影の2テーマで写真を撮ってきました。
是非参考にしてみてください。

■撮影機材:ソニー α7R IV + ペンタックス SUPER-TAKUMAR 55mm F1.8
■撮影環境:1/125秒 ISO320

クリップオンストロボとは?

みなさんはクリップオンストロボとは何かご存知ですか?

スタジオで使用するモノブロックやジェネレーターとは対照的に、カメラに装着して使用する簡易的なストロボのことです。
使い方によってはカメラから離してワイヤレスで光を発光させる手法もありますが、クリップオンのいいところは、何よりも手軽さ。スタジオなどで使用する大型ストロボとは違い、軽くて持ち運びが便利なところも魅力的です。

私の思うクリップオンストロボの魅力は、

1.質感の変化
2.作品の幅の広がり
です。

自然光を活かした手法や、被写体の魅力を引き立てるような使い方が多く、良くも悪くも気軽に硬い光を照射できるため、それぞれの用途によって好きな質感を表現することができます。

逆光×ストロボ

この日の撮影開始時刻は14時頃。
日中の光があれば十分と言っていいほどの明るい時間帯ですが、先程お伝えした質感の変化という点においてストロボありとなしで比較してみました。

以下をご覧下さい。

■撮影機材:ソニー α7R IV + ペンタックス SUPER-TAKUMAR 55mm F1.8
■撮影環境:1/200秒 ISO320
■撮影機材:ソニー α7R IV + ペンタックス SUPER-TAKUMAR 55mm F1.8
■撮影環境:1/125秒 ISO320

全く同じ場所で撮った写真ですが、2枚の質感の差が分かりますでしょうか。
1枚目は通常の逆光、2枚目はストロボライティングです。

・肌色
・艶感
・陰影

誰が見ても一目瞭然なのは、肌色の明るさの違い。

人物の肌を綺麗に撮影する際、逆光のシーンでよくレフ板を使うのは皆さんお馴染みですね。
レフ板は光をバウンスさせて被写体に光を当てて明るくします。つまり言い換えれば、レフ板のフラッシュのようなもの。

しかし、ストロボを使うことによって明るさだけでなく、肌のツヤ感や陰影をしっかりと出すことができるのです。
明るい晴れ間でも、ストロボを使用して撮影することにより生っぽい質感や、フィルム写真のような陰影感のある1枚になります。

視点の重要性

■撮影機材:ソニー α7R IV + FE35mm F1.8
■撮影環境:1/100秒 f/2.8 35mm ISO320
■撮影機材:ソニー α7R IV + FE35mm F1.8
■撮影環境:1/100秒 f/2.8 35mm ISO320

次に、ちょうど銀杏並木が見頃を迎えてとても美しかったので、黄金色に輝く銀杏をメインに撮影してみました。

まずは被写体を真正面に捉え、2人の距離感が伝わるような切り取り方をしてみました。
実際の目線より少し下くらい。恋人と遊びに来たかのような1枚になっているのが伝わりますでしょうか。

2枚目は、角度を変えてあえて右斜め下にしゃがんで見上げるような形で切り取りました。
少し角度が変わり、被写体の動線や余白が映し出されることで雰囲気が変わってきます。
そしてあえてピントを甘くすることで、髪の動きや不意打ちのような日常感のある1枚になっていますよね。
綺麗に美しく写真を撮る事が基本ですが、その時の温度感を大切に、力を抜いて切り取ってみるのもロケ撮影の醍醐味です。

次に、こちらの座っているシーン。

■撮影機材:ソニー α7R IV + FE35mm F1.8
■撮影環境:1/160秒 f/2.8 35mm ISO320

背景に木漏れ日も入っていて、ある程度バランスもよくモデルさんの可愛らしさを表現するには十分いい写真なのですが、私はまずこの写真に物足りなさを感じました。

■撮影機材:ソニー α7R IV + FE35mm F1.8
■撮影環境:1/160秒 f/2.8 35mm ISO320

次にこちらはどうでしょう。
さらに引いて全体の景色を入れただけでかなり印象が違って見えますね。

以前、shashaの記事にも書きましたが、人物を美しく撮影するにおいて被写体以外の情報を入れることは、私は不要な要素だと考えています。

ですが、今回は人混みの様子もあえてフレーム内に入れることにより、そこに集まる人々の温度感が伝わるように切り取ってみました。大きな銀杏の木の下にいる被写体の存在感や木漏れ日、あえて後ろの人を隠さずに入れることによって生まれる不完全さが心地いいと感じます。

通行人を隠さず入れるという選択肢は、観光客で賑わっている雰囲気やその日常感を伝えることができるため、状況に応じて活用してみましょう。

夕陽シーンでのストロボ活用術

日も少しずつ傾いてきたので、夕陽のシーンでもストロボを使って撮影をしてみました。

夕陽のシーンで被写体が黒く影になってしまったという経験はありませんか?
シルエットももちろん綺麗なのですが、ストロボを使えば夕陽の色合いも美しく表現しつつ被写体も明るく写すことができます。

それでは、こちらの2枚をご覧ください。

■撮影機材:ソニー α7R IV + シグマ 24-70mm F2.8 DG DN Art
■撮影環境:1/125秒 f/2.8 36.3mm ISO400
■撮影機材:ソニー α7R IV + シグマ 24-70mm F2.8 DG DN Art
■撮影環境:1/125秒 f/2.8 55.1mm ISO400

みなさんは違いが分かりましたか?

1枚目はご覧いただければ分かるように、少し被写体の顔が暗い印象ですがレンズを通して逆光で捉えているので、綺麗なフレアが入っています。夕陽を活かしつつ、ストロボで顔の明るさを起こすことで美しく切り取ることを意識してみました。

2枚目は、そこから体の向きを少し変えて半逆光で光を捉えることで、髪の毛にハイライトが入っているのが分かるでしょうか。そして先程よりストロボの光量を強くすることで被写体の顔の陰影がしっかりと写されているのが分かりますね。

夕陽のシーンでは、いわゆる自然光と自分が作る光のバランスで写真が構成されています。
1枚目に比べて2枚目は、ストロボの光量の割合を強くすることで、被写体がより引き立つ写真になっています。
ストロボの光でアイキャッチと肌のツヤ感も出した写真に仕上げています。

このように、微妙な差ですが光量を調整することによって夕陽の光を活かしつつ被写体をより美しく見せる。
皆さんの好みや、撮影の用途に合わせて調整してみてください。

日没前後の撮影ポイント

■撮影機材:ソニー α7R IV + シグマ 24-70mm F2.8 DG DN Art
■撮影環境:1/125秒 f/2.8 24mm ISO400

写真を撮るのが難しい時間帯は日没後の暗くなり始めた時間。
構図的にとてもいい場所なのに、暗くて自然光だと思ったような写真が撮れなかった、という経験が私自身もあります。

そんな時にストロボのいいところは、どの時間でも被写体を明るく写し出してくれる点。
この写真のように、実際は既に暗くなり始めているくらいの時間でしたが、被写体の写りにしっかりとメリハリがついています。

このように、どの時間帯でもシーンに応じてクリップオンストロボを使うことによって、より写真の質を高めることが出来ます。

ぜひ皆さんも自分好みの写真に仕上げる手段として、使用してみてはいかがでしょうか?

おわりに

冬のロケ撮影を、クリップオンストロボを使用しながら撮影してきましたが、いかがだったでしょうか?
ストロボを使うことで格段に写真の質をあげることが出来ます。

この1年で街も人で溢れかえるようになり、自分の中の無駄と決めていた項目をあえて気にせず撮ってみたり、逆に人や無駄な情報を一切入れずに撮ってみたりと、自分でルールを決めた撮影をしてみるのもお勧めです。
何よりも、シーンに応じて情報の取捨選択をすることが大切であるということ。

撮影を終えて見返した時に、この時は楽しかったなとその時の情景を思い出すような、思い出を切り取ったような写真を撮り続けたいと最近よく感じています。

自分の世界観を広げるためにも、ぜひ色々試してみてください。

 

 

■モデル:ロンモンロウ

 

■写真家:佐藤俊斗

 

 

関連記事

人気記事