ソニー α7 IVで撮る星景写真|北山輝泰

北山輝泰
ソニー α7 IVで撮る星景写真|北山輝泰

はじめに

2023/6/17(土)に開催されるソニープロカメラマンセミナーでは、北山 輝泰さんが登壇して本記事でレビューしているα7 IVの魅力を紹介する予定です。本レビューをご覧頂き、更に深い理解を求められている方は奮ってご参加ください。セミナーの詳細は文末に記載しています。

 星景写真家・写真講師の北山輝泰です。今回は私が愛用しているフルサイズミラーレスカメラ、ソニー「α7 IV」についてご紹介したいと思います。発売されたのは2021年12月17日と1年半ほど前になりますが、これまで私の創作活動を陰ながら支えてくれた頼りになる相棒の紹介ができるとあって感無量です。この記事では、私がα7 IVで撮影した星景写真をご紹介しながら、なぜ私がメイン機材としてこのカメラを選択したのかをお話ししたいと思います。

α7 IVについて

 α7 IVはソニーのフルサイズミラーレスのラインアップの中でもベーシックモデルに位置する機材で、α7 IIIの後継機種として登場しました。ベーシックモデルと聞くと「カメラ初心者が使う入門機材でしょ?」と思われる方もいるかもしれませんが、先に発売されていたα1やα7S IIIと同じ画像処理エンジン「BIONZ XR」を搭載したことや、この機種のために開発された3300万画素の裏面照射型CMOSセンサーが搭載されるなど、さながらフラッグシップ機のようなスペックで、アマチュアだけでなくプロユースでも活躍する機材です。実際に、発売日当日はソニー公式の販売サイトがフリーズしてサイトにアクセスできなくなるほど大人気で、ニュースになったことをよく覚えています。

 先行機種であったα7 IIIと比べると、チルトからバリアングル液晶モニターに変更になったことや、メニュー画面などのUIもそれまでの横スクロール型からα7S IIIなどと同じ縦スクロール型に変更され、より見やすく使いやすくなっています。反面、サイズや重量はわずかにアップしてしまいましたが、三脚を使った撮影が基本の私にとっては大きな影響ではありませんでした。

 

α7 IIIとの外観比較

左:α7 IV 右:α7 III
左:α7 IV 右:α7 III

α7 IIIと比較した新しいUI

α7 IVの新しいUI
α7 IIIのUI

3300万という画素数

 α7 IVが発売された頃は「レナード彗星」という明るい彗星が話題となっており、この彗星を撮影したのがファーストショットでした。2021年12月後半は、日没後の西の空に見えるという決して撮影に良い条件ではなかったものの、一期一会の彗星を新しい機材で撮れたという感動は今でもよく覚えています。

■撮影機材:ソニー α7 IV
■撮影環境:ISO6400 F2.8 2秒 WB 蛍光灯温白色-1 焦点距離112mm
■撮影機材:ソニー α7 IV + FE 85mm F1.8
■撮影環境:ISO1600 F1.8 1秒 WB AUTO 焦点距離85mm
■撮影機材:ソニー α7 IV + FE 85mm F1.8
■撮影環境:ISO2000 F1.8 2秒 WB 電球 焦点距離85mm
上の写真を約40パーセントほどトリミング

 ところで、一般的に同じセンサーサイズで比べた場合、画素数が低いほど一画素あたりの受光面積が大きくなるので、暗い被写体を撮影した時にわずかな光も捉えやすいという=星景写真では有利という話がありますが、それは決して間違えではないものの、実際はあまり深く考えず高画素機も使っているのが現状です。

 「木の枝の細かい描写まで再現できる」「思いっきりトリミングしても引き伸ばしに十分な画素が残っている」など、高画素機には高画素機なりのメリットもたくさんあるため、撮影の狙いによって機材を使い分けています。それでも撮影現場に機材をたくさん持って行けないことも多く、α7 IVの3300万画素は「高画素機に近い作品描写」と「光に対する感受性」のバランスがちょうど良いため、どの撮影現場にも安心して持っていくことができます。

高感度耐性

 星景写真では高感度撮影が基本となりますが、気になるのはα7 IVの高感度耐性です。1枚目の写真はISO8000という超高感度にして撮影した写真ですが、ノイズ処理を施していない状態でも十分に鑑賞に耐えうるノイズ量でした。撮影時の気温によってもノイズ量が変わってくるため一概には言えませんが、主観ではISO12800までは十分に使えるという印象です。

 ISO感度を上げるシチュエーションとしては、「星をできるかぎり点で撮りたい」「ブレを最小限にしたい」などが考えられますが、そのようなシチュエーションでも躊躇なく感度を高くできるのは作品を残す上でとても重要になります。さらに今はAIによるノイズ処理ソフトや、そういった機能が備わったRAW現像ソフトなども気軽に使用できるようになったため、私は高ISOも積極的に選択しています。

■撮影機材:ソニー α7 IV
■撮影環境:ISO8000 F2.8 5秒 WB 蛍光灯温白色-1 焦点距離28mm
■撮影機材:ソニー α7 IV
■撮影環境:ISO16000 F6.3 2秒 WB AUTO 焦点距離400mm

バリアングルモニターの有用性

 α7 IIIとの大きな変更点として挙げた「バリアングル液晶モニター」ですが、星空撮影では必須と呼べるほど重宝する場面が多いです。まず天体写真撮影のシチュエーションでは、地平線付近ではなく高度が高い天体を撮影するシーンが多くなりますが、従来のチルト式では縦構図での確認の際、モニターが見える位置までしゃがむ必要がありました。その場合、どうしても身体が窮屈になってしまい、ピントや構図を追い込むことができず失敗…ということがありましたが、バリアングル式であれば構図の縦横問わず楽に撮影することができます。

 また星景撮影のシーンでも、作品に意外性を与えるためにローアングルで撮影することがありますが、モニターを展開しブライトモニタリング機能をオンにした状態で水準器を併用して構図合わせをするという流れで、スムーズに構図を決めることができます。細かいことですが、モニターを反転させることで、液晶に傷がつくのを防いだりすることもできますので、移動時にモニターに傷がついてしまったというケアレスミスも防ぐことができます。

■撮影機材:ソニー α7 IV + FE 20mm F1.8G
■撮影環境:ISO6400 F1.8 5秒 WB 蛍光灯温白色-1 焦点距離20mm
■撮影機材:ソニー α7 IV + FE 14mm F1.8GM
■撮影環境:ISO12800 F1.8 8秒 WB AUTO 焦点距離14mm

ダイナミックレンジの恩恵

 月明かりがないタイミングで撮影することの多い星景写真では、地上風景は暗くなりがちです。もちろんシルエットとして見せるのが正解のロケーションも多くありますが、山肌や構造物の質感を見せたいという場合もよくあります。ライティングできる環境であれば不自然にならない程度に照らすということも考えられますが、より簡単に行う場合はRAWデータを使って部分的に明るさを補正するテクニックを身につけるのが良いでしょう。

 暗い部分を明るくしたり、逆に明るすぎた部分を暗くする場合には、そこのデータが欠損しておらず残っている必要があります。良く言われる「黒つぶれ」「白飛び」とはその情報がないことを表していますが、ダイナミックレンジが広いカメラほど暗部から明部までの記録できる情報量が多くなるため、RAW現像でレタッチできることも増えてきます。

 α7 IVはスチル撮影におけるダイナミックレンジは公表されていないものの、初代α7からすべてのベーシックモデルを使ってきた私の主観では、グレードごとにダイナミックレンジが広くなってきている実感があります。特にα7 IVは、黒つぶれぎりぎりで撮影したデータでも荒れることなく復元できるため、RAW現像でじっくり写真と向かい合って、自分の思い描く作品のイメージに仕上げることができるようになりました。

■撮影機材:ソニー α7 IV + FE 14mm F1.8GM
■撮影環境:ISO6400 F1.8 20秒 WB AUTO 焦点距離14mm
■撮影機材:ソニー α7 IV + FE14mm F1.8GM
■撮影環境:ISO6400 F1.8 10秒 WB AUTO 焦点距離14mm

まとめ

 今回は発売当初からα7 IVを使い、星空撮影をし続けた筆者による機材レビューをお届けしました。星空写真は、一生に一度撮影できるかどうかというシチュエーションで撮影することも多いため、機材は全幅の信頼がおけるものを選ぶ必要があります。そのような貴重な撮影シーンでも、期待通りの活躍をしてくれるα7 IVはまさに私にとって相棒で、ずっと使い続けたいと思える機材です。ぜひ皆さんもお手にとっていただければ嬉しいです。お読みいただきありがとうございました!

【2023/6/17】北山輝泰さん登壇のα7R IVを紹介するソニープロカメラマンセミナーを開催

2023年6月17日(土)講師に北山輝泰さんをお招きして、SONYフルサイズミラーレスカメラ”α”の魅力を紹介するセミナーを開催します。その中で今回の記事で紹介したα7 IVを使用した星景写真の撮影ポイントや、FEレンズをはじめとしたおすすめのレンズの紹介、各レンズの特徴やそのシーン別使用例などをお話いただきます。自然風景や星空を普段から撮影されている方や、これから星景写真を始めてみたいと考えている方にオススメのセミナーです。

開催場所は新宿 北村写真機店の他、全国のカメラのキタムラ18店舗でもライブ中継にて開催いたしますので、最寄りの店舗でご参加ください。

 

【概要とお申込み】
■開催日時:2023年6月17日(土)【第一部】11:00~12:00【第二部】14:30~16:00
■費用:無料
■場所:新宿 北村写真機店 6F ライカヴィンテージサロン、ライブ中継先店舗
■定員
 □新宿 北村写真機店:各部12名
 □ライブ中継先店舗:下記店舗一覧より希望店舗へお問い合わせください。
■お申し込み方法
 □新宿 北村写真機店 1部:こちらよりお申込み
 □新宿 北村写真機店 2部こちらよりお申込み
 □ライブ中継先店舗:下記店舗一覧より希望店舗へお問い合わせください。
■申込み期限:2023年6月15日(木)21:00

【ライブ中継先店舗一覧】
 募集状況やお申込み、ご質問などはお申込み希望店舗へお電話ください。

■北海道:札幌/羊ケ丘通り店
■青森県:弘前/高田店
■山形県:米沢/金池店
■山形県:山形/馬見ヶ崎店
■茨城県:神栖/神栖店
■埼玉県:春日部/ユリノキ通り
■長野県:松本/渚店
■静岡県:浜松/柳通り店
■愛知県:豊橋/牧野店
■三重県:四日市/西浦店
■富山県:富山/掛尾店
■大阪府:大阪/なんばCITY店
■滋賀県:草津/野村店
■兵庫県:宝塚/安倉店
■山口県:宇部/南浜町店
■香川県:高松/高松南店
■福岡県:久留米/上津店
■佐賀県:佐賀/南部バイパス店

 

【北山輝泰さんプロフィール】

東京都生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業。天文台インストラクター、天体望遠鏡メーカー勤務を経て、2017年に写真家として独立。世界各地で月食や日食、オーロラなど様々な天文現象を撮影しながら、天文雑誌「星ナビ」ライターとしても活動。また、タイムラプスを中心として動画製作にも力を入れており、観光プロモーションビデオなどの制作も行っている。星空の魅力を多くの人に伝えたいという思いから、全国各地で星空写真の撮り方セミナーを主催している。セミナーでは、ただ星空の撮り方を教えるのではなく、星空そのものの楽しさを知ってもらうために、星座やギリシャ神話についての解説も積極的に行なっている。

北山輝泰さんShaSha執筆記事はこちらからご覧いただけます。

 

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