シグマ fp L レビュー|映像表現の可能性について

FPS24

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はじめに

 こんにちは、FPS24です。私たちは活動当初から「SIGMA fp」をメイン機として使⽤しており、数々の撮影を同機で⾏ってきました。そんな私たちにとって待望の兄弟機「SIGMA fp L」が2021年4⽉16⽇に発売開始となりました。

 現時点でも世界最⼩・最軽量のフルサイズミラーレスカメラであるSIGMA fpとほとんど同様の筐体(きょうたい)デザインに、約6100万画素もの⾼解像度センサーを搭載したSIGMA fp Lは、シグマ史上最⾼解像度のカメラでもあります。

 SIGMA fpの⾼画素モデルとして位置付けられるSIGMA fp Lは、写真表現を中⼼としたカメラのイメージが先⾏されがちですが、決してそのような訳ではありません。動画機としてのポテンシャルもしっかりと存在し、SIGMA fp Lならではの映像表現も可能となっています。

 今ではすっかり私たちのメイン機の⼀つとなったSIGMA fp Lですが、その理由やSIGMA fp Lがもたらす映像表現の可能性について、じっくりご紹介していこうと思います。

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私たちの基本的な撮影スタイル。ジンバルにSIGMA fp Lを乗せて、外部マイクを使⽤しています。ジンバルに乗せず⼿持ちで撮影を行うことも多いです。

動画機として「SIGMA fp L」の魅⼒的なポイント

 詳細をご説明する前に、動画機としてSIGMA fp Lの魅⼒的なポイント5つを簡単にご紹介します。もしこの中に少しでも興味の惹かれるポイントがあるとすれば、SIGMA fp Lは大いに活躍してくれる存在となるはずです。詳細は後述の項⽬でしっかりご説明します。SIGMA fpと共通する項⽬もありますので、参考にしてみてください。

 まず1つ⽬が、⾼解像度センサーの搭載です。
 動画撮影をメインに⾏っていても写真を撮影する機会は⾮常に多く発⽣します。 9520×6328ピクセルにも及ぶ⾼解像度の写真は、細部のディテールを保ったまま繊細に⾵景を記録することができます。後述しますが、撮影時に行う「クロップズーム」は、写真撮影時はもちろんですが動画撮影時にも有効で⾮常に役立ちます。

 2つ⽬は、充実の動画機能です。
 本体上部のスイッチで、「スチルモード」と「シネモード」を即座に切り替えられるのは⾮常に優れたデザイン設計です。外部SSDを接続して収録が可能な点は、動画撮影者にとっては大変嬉しい機能です。動画の「CinemaDNG」収録はカメラの性能を最⼤限に引き出せる記録⽅式でもあり、外部レコーダーを⽤いての各種RAW収録が可能になるのも特筆すべきポイントです。

 3つ⽬は、魅⼒的なカラーモードの数々です。
 SIGMA fpに搭載されているカラーモード13種類に加えて、SIGMA fp Lでは新たに「パウダーブルー」と「デュオトーン」(SIGMA fpにもアップデートで後⽇追加予定)が追加されました。複雑なカラーグレーディングの知識が無くても、好みの世界観に合わせた映像作品を仕上げることが可能です。

 4つ⽬は、デザインです。
 SIGMA fp Lのミニマムに設計されたデザイン、そして所有欲を満たしてくれる質感はSIGMA fpと同様に唯⼀無⼆の存在です。シンプルな使い⽅だけでなく、拡張を可能とした本体設計がされている点も忘れてはなりません。リグを組んだり拡張パーツを使⽤したりすることで、思い通りの撮影スタイルを構築できる設計思想は⾮常によく考えられています。

 5つ⽬は、⾼品質かつ豊富なLマウントレンズ群の存在です。
 シグマから続々と発売されているLマウント「DG DN」シリーズのレンズは、SIGMA fp Lのようなフルサイズミラーレスカメラ専⽤に光学設計がされており、そのスペックを最⼤限に引き出すことができます。

 以上が特に魅⼒的なポイント5つです。それぞれの項⽬の詳細について、順を追ってご紹介していきます。

⾼解像度センサーの搭載

 SIGMA fp Lに搭載された約6100万画素の⾼解像度センサーが表現する写真は⾮常に繊細で魅⼒的です。9520×6328ピクセルにも及ぶ記録画素数は、表現の可能性を大きく広げてくれるはずです。

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■撮影機材:SIGMA fp L + SIGMA 100-400mm F5-6.3 DG DN OS | Contemporary
■撮影環境:ISO100 F8.0 SS1/800 焦点距離224mm
■カラーモード:ティールアンドオレンジ

 特に⾼解像度センサーを⽣かした「クロップズーム」機能は、任意の倍率(最⼤5倍)で写真をクロップして撮影することができます。動画撮影時にも有効で、HDサイズの収録時であれば最⼤5倍まで拡⼤して動画を撮影することができます。この機能は⾼解像度センサーを搭載したSIGMA fp Lならではの利点です。

▼SIGMA fp L のクロップズームを動画で試す

 近年のSNSやインターネットで写真をシェアする⽂化において、この「クロップズーム」機能、または⾼解像度の写真をクロップしてフレーミングするアイデアは、⾮常に合理的と⾔えます。特に動画編集時において写真素材を使⽤する際、素材が⾼解像度であればあるほど編集の⾃由度が利きます。

 フルHDサイズで1920×1080ピクセル、4Kサイズでも 3840×2160ピクセルというサイズの中で、写真素材の9520×6328ピクセルという有り余るほどの解像度は驚くほど⾼精細で⾃由にクロップすることができます。

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■撮影機材:SIGMA fp L + SIGMA 24-70mm F2.8 DG DN | Art
■撮影環境:ISO320 F5.6 SS1/200 焦点距離70mm
■カラーモード:パウダーブルー
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上の写真を1920×1080サイズのピクセル等倍でクロップした写真。ここまで拡⼤しても繊細に描写されていて驚きます。

 旅⾏や散歩で気軽にカメラを持ち出したい時に、たった⼀本のレンズだけで幅広い表現が可能になるのは⾼解像度センサーだからこそです。望遠レンズが⼿もとにない突発的な状況でも、気軽に拡⼤して撮影できる利便さは他に変えられません。

充実の動画機能

 私たちがSIGMA fpとSIGMA fp Lをメイン機として運⽤している決定的なポイントは、充実した動画機能の存在です。本体上部の「スチルモード」と「シネモード」切り替えスイッチの存在が示す通り、動画機能においても妥協のない設計がされており、⼒強く映像表現の⼿助けをしてくれます。⼤型ヒートシンクの搭載により排熱設計もしっかりされており、熱で収録が⽌まるという経験は今まで⼀度もありません。

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シンプルなデザインの中で「スチルモード」と「シネモード」を直感的に切り替えられるスイッチの存在は、現在のカメラの状況もひと⽬で把握することができ便利です。

 なにより、外部SSD接続による動画記録が可能なことは、撮影後のバックアップや編集作業の効率化にも⼀役買っています。

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リグパーツも組み合わせることで、SSDを付けていてもコンパクトに収めることができます。

 特に私たちが撮影する際は⼀⽇中収録を続けることがあり、⼀度に撮影時間の合計が24時間を超えることもあります。その際に、⽐較的安価で⼤容量のSSDに動画を記録できるのは⾮常に便利で経済的でもあります。

 さらに外部SSD接続による「CinemaDNG」収録や、外部レコーダー接続による各種RAW収録が可能になる点は、⾃由なカラーグレーディングを可能とし映像表現の幅が大きく広がります。

SIGMA fp LとATOMOS NINJA Vを使⽤し、ProRes RAW収録に挑戦。カラーグレーディングを行ったりLUTを活⽤したりすることで、本体収録とはまた違った雰囲気の映像表現が可能になります。

 私たちはATOMOS社製のNINJA Vという外部レコーダーでProRes RAW収録を⾏っています。写真のRAW現像を経験されたことがある⽅であればイメージしやすいと思いますが、動画のRAW収録を行うと映像の⾒栄えを繊細に追い込むことが可能になります。映像表現の⾃由度が格段に上がり驚かされます。

 Blackmagic Design社製のレコーダーを使⽤すればBlackmagic RAWというフォーマットの収録にも対応しています。様々なフォーマットに対応できるよう柔軟に開発されているSIGMA fp Lは、今後もさらに活躍の幅が広がってくるのは間違いないでしょう。

魅⼒的なカラーモード

 シグマのカメラが作り出す画作りは以前より定評があります。SIGMA fpでは 「ティールアンドオレンジ」というシネマベースのカラーを彷彿させるカラーモードが話題となりました。SIGMA fp Lでは従来のカラーモードに加え「パウダーブルー」と「デュオトーン」(SIGMA fpにもアップデートで後⽇追加予定)が新たに追加されました。特に新しく追加された「パウダーブルー」の爽やかで透き通るような表現⼒は素晴らしいの⼀⾔に尽きます。

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■撮影機材:SIGMA fp L + SIGMA 28-70mm F2.8 DG DN | Contemporary
■撮影環境:ISO100 F2.8 SS1/2000 焦点距離54mm
■カラーモード:パウダーブルー
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■撮影機材:SIGMA fp L + SIGMA 28-70mm F2.8 DG DN | Contemporary
■撮影環境:ISO100 F5.6 SS1/1600 焦点距離70mm
■カラーモード:パウダーブルー

 これらのカラーモードは当然ながら、動画撮影時にも適⽤することが可能です。複雑なカラーグレーディングの知識がなくとも、好みのスタイルに合わせてカラーモードを活⽤することで、⾮常に表情豊かな映像表現をすることが可能になります。映像作品とも相性が良く、私たちもよく使⽤します。どのような景⾊でもドラマチックに表現できるカラーモードの数々は、それらを⼀つ⼀つ試すだけでも想像⼒が膨らみ、撮影する楽しさを再発⾒させてくれます。

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■撮影機材:SIGMA fp L + SIGMA 14-24mm F2.8 DG DN | Art
■撮影環境:ISO100 F5.6 SS1/200 焦点距離14mm
■カラーモード:ティールアンドオレンジ
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■撮影機材:SIGMA fp L + SIGMA 14-24mm F2.8 DG DN | Art
■撮影環境:ISO100 F2.8 SS1/500 焦点距離15mm
■カラーモード:ティールアンドオレンジ

デザインとリグ組み

 SIGMA fp Lのコンパクトでシンプルなデザインには驚きます。気軽に持ち運べる軽量さに加えて、ずっと触っていたくなる所有欲のくすぐられるデザインは唯⼀無⼆です。肌⾝離さず携帯していると、シャッターチャンスもそれだけ増えるということです。不意に訪れるシャッターチャンスを逃すことが少なくなったと感じるのは、私たちが⻑期間使⽤しているからこそ感じているメリットだと思います。

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■撮影機材:SIGMA fp L + SIGMA 28-70mm F2.8 DG DN | Contemporary
■撮影環境:ISO400 F5.6 SS1/200 焦点距離70mm

 様々なパーツによる拡張性の⾼さも魅⼒的です。動画撮影時においては主にリグ組みを行うことが多く、その場の撮影スタイルに合わせてカスタムを⾏っています。SIGMA fpとSIGMA fp Lはベースの筐体(きょうたい)デザインが同じなため、基本的にはあらゆる拡張パーツを併⽤して使⽤することができるのも忘れてはならないポイントです。

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様々なリグパーツ・機材を⼀度に装着してみました。この状態で撮影したことはまだ⼀度もありませんが、コンパクトなカメラがここまで進化する姿は⾮常に夢が広がります。

 また、動画撮影を⾏っていると様々な機材が増えてしまい、それに伴い重量も増えてしまいます。ただSIGMA fp Lのように⾼性能かつ⼩型軽量な本体デザインは、⼿持ち撮影の他にジンバルと連携させての収録も⾮常に⾏いやすく、負担も少なく済みます。様々な構成に組み替えられる柔軟さはSIGMA fp Lだからこそです。

⾼品質かつ豊富なLマウントレンズ

 SIGMA fp LはライカLマウントを採⽤しています。豊富なLマウントレンズから好みのレンズを選ぶことができます。特にシグマから近年発売されているレンズには「絞りリング」が備わっているものもあり、直感的な操作が可能で動画撮影時においても役立ちます。

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絞りリングは⼀度使い始めるとその利便性に気が付きます。クリックOFFスイッチがあるので、動画撮影中でも静かでスムーズに絞り値が調節できるのは安⼼です。

 さらに最近では、シグマIシリーズに代表されるようなContemporaryラインの、光学性能と携帯性・デザイン性すべてを兼ね備えたレンズも増えてきています。画質だけを追求するのではなく、場⾯や⽤途に合わせたレンズ選びができるようになってきたと感じています。

 SIGMA fp Lの魅⼒を多⽅⾯に引き出させる豊富なレンズ群は、様々な写真・映像表現を⼒強く⽀えて続けてくれるでしょう。

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私たちの使⽤しているレンズたち。SIGMA 14-24mm F2.8 DG DN | Artから始まり、様々なレンズが増えました。

おわりに

 妥協のない映像表現をこの軽量なボディで実現できるSIGMA fp Lには本当に驚かされます。このコンパクトなサイズで約6100万画素もの⾼解像度を実現し、そのセンサーの性能を余すこと無く動画機能へも活⽤することができます。写真表現だけでなく、映像表現の⾃由度を大きく広げてくれるカメラだと感じました。そしてこれからの大きな可能性も秘めています。コンパクトでシンプルであるからこそ、⾃由な使い⽅を楽しみながらこれからを作り上げていくカメラがSIGMA fp Lなのだと私たちは感じています。

 今回ご紹介した内容の他に、実際の映像や表現⼒についてまとめたSIGMA fp Lレビュー動画もYouTubeに公開しております。ご興味がございましたらぜひご覧ください。

■執筆者:FPS24
2019年12⽉からスタートした、2⼈組の映像ユニット。「SIGMA fp」「SIGMA fp L」を使⽤して旅⾏やVlogの動画を撮影しYouTubeで配信している。

「fp L」はこちらの記事でも紹介されています

■シグマ fp L レビュー|三井公一
https://www.kitamura.jp/shasha/sigma/fp-l-4-20210416/

■シグマ fp Lのパウダーブルーで楽しむポートレート|水咲奈々
https://www.kitamura.jp/shasha/article/481497085/

■更新
・2021年5月17日:「シグマ fp L レビュー|三井公一」、「シグマ fp Lのパウダーブルーで楽しむポートレート|水咲奈々」への記事リンクを追加

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