シグマ 24mm F2 DG DN | Contemporaryで撮る旅の記録

SIGMA 24mm F2 DG DN|Contemporaryの概要
デザインが際立つカメラBFの発売で話題のSIGMA。展開するレンズラインナップの中でも、fpとBFにマッチするレンズとして、セットされた状態で目にすることが多いIシリーズ。高画質なF2ラインには20mm 24mm 35mm 50mm 65mmの5本が存在する。今回は、広角で最も馴染み深い24mm F2 DG DN|Contemporaryをレビューする。
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まずは、撮影に大きく影響するサイズと質量。このレンズは筆者が以前にレビューした、同シリーズのコンパクトネス重視F2.8ラインよりも僅かだが大きく重い。とはいえ、Iシリーズらしい凝縮感を感じる絶妙なサイズ感である。直径70mm、全長72mm。Iシリーズに共通したイメージだが「手のひらにすっぽり収まるサイズ」という感じは、前回の50mm同様である。SIGMA fpやBFはもちろん、LUMIXのS9、またはSONY α7Cシリーズなどコンパクトなカメラにマッチする。
質量は365gと軽い。小さな筐体に緻密な機構を詰め込んだ、金属の塊感を感じる。とはいえたったの365gなので、持ち歩きにストレスを感じることもなく、女性ユーザーも扱いやすいと思う。
レンズ構成は11群13枚(FLDガラス1枚、SLDガラス2枚、非球面レンズ2枚)と、かなり贅沢な構成になっている。光学性能はSIGMAらしく、全く妥協がない。最小絞りはF22としっかり絞り込める。最短撮影距離は24.5cm、限界まで寄れば、被写体がレンズに当たってしまうのではないかと思うほど寄れる。
レンズ仕様
レンズ構成 11群13枚(FLDガラス1枚、SLDガラス2枚、非球面レンズ2枚)
絞り羽枚数 9枚
最小絞 F22
最短撮影距離 24.5cm
最大撮影倍率 1:6.7
フィルターサイズ 62mm

デザインと質感
Iシリーズレンズはデザインが洗練されていて、SIGMAのアイデンティティを感じる飽きのこない素晴らしいデザインである。絞りリングからレンズフード先端まで伸びる、繊細なローレット仕上げが美しい。全てのパーツはアルマイト処理が施されているので、腐食や摩耗に強い耐性があり、美しさと強さを兼ね備えている。
実際に手に取ると感じる金属筐体の冷たさが心地よく、デザイン面だけではなく感覚的にも満足感がある。重厚で滑らかに動く印象の、金属製フォーカスリングと、上質なクリック感のある絞りリングは、マニュアル操作をしないと勿体無いとさえ思ってしまう。SIGMAのプロダクトは、多くのカメラの堅牢で実用的なイメージとは異なり、シンプルで洗練されていて、モダンな印象であり、ライフスタイルに自然に溶け込む。

豪華な金属製レンズフードとレンズキャップ
レンズフードもプラスティックではなく金属が採用されている。性能を求めると大きくなるレンズフードも、コンパクトなレンズなので金属製フードでも重さは全く気にならない。
キャップは(45mmを除く)には、コンパクトシリーズと同様に、金属製のマグネットレンズキャップと従来通りのレンズキャップの2つが付属する。高価なマグネット式メタルキャップが付属する点は満足度が高い。細部まで考え抜かれた、ミニマルなデザインと金属の質感は高級感がある。このマグネット式レンズキャップを、ピタッとセットする心地よい感覚が「Iシリーズを使っている」という実感を与えてくれる。

動画での使用感
まずは動画の作例を見ていただきたい。本動画はRAW動画なので、カメラのデジタル補正が入っていない、レンズそのままの描写に近い。動画撮影では必須とも言える、NDフィルターは使わずに撮影している。動画では解像感とボケ味、歪曲収差などを見ていただけると思う。カラーグレーディングは趣味性が強い色にしている。素材はRAWなのでグレーディングの自由度が高い素材である。
今回もショットの大半をハンドヘルドで撮影したが、やはり軽いレンズは楽である。ハンドリングが良いからこそ、色々なアングルを試したくなる。操作面では滑らかなフォーカスリングが、動画撮影で特に使いやすい。それに加えて高画質なので安心感もある。軽いことで、長い距離を歩きながらの撮影でも疲れにくい。
使っていて1つ注意したいポイントがある。小さいレンズ故に仕方がないのだが、レンズ交換やフォーカシング時に、絞りリングが不意に動いてしまうことがあるので、撮影前に絞り値をチェックした方がよいだろう。それ以外は総じて使いやすくコンパクトで高画質な、三拍子揃ったレンズである。
解像感とボケ味
まずは解放F2のボケ味を見てみる。想像以上に浅い被写界深度で大きくボケる。開放ではメリハリの効いた印象である。被写体にグッと寄ると、どこか幻想的な表現が楽しめる。少し絞りこむとボケ感は、自然で滑らかな印象に変わる。開放と絞った時の印象が違うのが楽しい。

■撮影環境:1/125 f2 ISO100

■撮影環境:1/125 f2.8 ISO100

■撮影環境:1/25 f2 ISO1600
次は絞り込んで、解像感を引き出してみる。夜明け前、まだ真っ暗な時間にスローシャッターで撮影。日が登る前のローコントラストな条件でも、しっかりと解像している。川向こうの桜の花、そのはるか先の山肌までしっかりと描写している。

■撮影環境:15.0sec f8 ISO100
F8まで絞るとレンズの持つ解像感を存分に味わえるので、ランドスケープを撮影する際には好んで使う。特に広めにフレーミングして桜を撮影する時は、桜の花を余すところなく描写したいもの。解像感の高い広角レンズは「目にする光景を、余すところなく写真にして持ち帰る」そんな使い方が楽しい。この高画質を小さなレンズで気軽に持ち歩けるのがとても素晴らしい。

■撮影環境:0.7sec f8 ISO100

■撮影環境:1/20 f8 ISO100

■撮影環境:1/20 f8 ISO100
今回の作例も動画・写真ともにRAWで撮影しているので、各種収差補正が入っていない。その中でも特に如実に感じるのが歪曲収差である。広角レンズともなれば、場合によっては派手な樽型の歪曲がみられる。ところが、24mm F2 DG DNはデジタル処理だけに頼らず、レンズ自体で歪曲収差をしっかり補正しているのが分かる。まるで APS-C専用レンズのようなサイズ感でありながら、フルサイズに対応し、各種収差を光学的にこのレベルまで補正しているのは、素直に凄いと感じる。

■撮影環境:0.7sec f8 ISO100

■撮影環境:0.7sec f8 ISO100
このレンズの全体的な印象は自然で柔らかい。広角でありながら絞り開放では、浅い被写界深度のおかげで主題を見事に浮き上がらせる。コントラストの高い条件でも繊細で滑らかな印象。絞れば情報豊かに解像感のある描写であるが、いずれにしても繊細さを感じる。

■撮影環境:1/500 f2 ISO100

■撮影環境:1/125 f4 ISO100

■撮影環境:1/125 f4 ISO100
集落をひと回りして、夜明け前に撮影した川辺へと戻ってきた。 早起きの観光客がちらほら、皆が美しく咲いた桜へスマホやカメラを構えて夢中で撮影している。すれ違いざま挨拶を交わす。いつの間にか筆者の真後ろにカメラを構えた人に、「真似してすみません」と声をかけられた。「どういたしまして」と笑顔で答えて、場所を譲るべくその場を後にした。
コンパクトで軽量な24mm F2 DG DNはよい意味で、撮影機材感がなく気軽に高画質な撮影ができる。大きく迫力のあるレンズでじっくり撮るのも楽しいが、観光地で撮影者という感じではなく、自然な振る舞いで、写真や動画を撮るのもよい。気軽だからこそ、もっと先まで散策してみようと思える。

■撮影環境:1/20 f11 ISO100

■撮影環境:1/1000 f2 ISO100

■撮影環境:1/100 f8 ISO100
Lマウントアライアンスの他のボディーと組み合わせてみる
ソニーEマウントとLマウントで発売されるこのレンズ、筆者は現在Lマウントユーザーである。Lマウントは、アライアンスに参加したメーカーが共通のマウントを使用しているので、レンズとボディーの様々な組み合わせが可能である。SIGMA・Panasonic・Leica・DJIに加え、新たにBlackmagic Designが加わったことで、さらに選択肢が広がった。
筆者の手持ち機材からfpのほか2台のカメラにセットしてみた。購入前の参考になるように、サイズ感やバランスをみてもらえたらと思う。使用したボディーは、LUMIX S5M2X・Blackmagic design BMCC6K、全てケージに入れた状態でセットしてみた。


まとめ
動画と写真の両方で使った印象をまとめたいと思う。SIGMAのIシリーズ、高画質F2のラインに属するこのレンズは、前回の50mmF2と同様に「コンパクトネスと高画質」という相反する性能を、見事なバランスで仕上げたレンズだと感じた。開放F値2という明るさで、手のひらに収まる小さな大口径レンズである。
広角24mmといえど、F2なので浅い被写界深度から、美しいボケが得られる。広角らしい解像感のある描写は、緻密で繊細な印象で、小さな広角レンズとは思えない画質である。広角レンズではあまりボカして撮ることがない筆者も、積極的に開放を使って撮影したくなるほど「広角のボケ味」は楽しかった。フォーカスの操作感はとても滑らかで、繊細なピント合わせができる。日常的にマニュアルフォーカスを多用する筆者も満足できた。
IシリーズF2ラインは、所有感と画質と価格のバランスが素晴らしいレンズであり、初めての広角単焦点レンズとしておすすめできる、クオリティーの高い素晴らしいレンズである。


■フォトグラファー/ビデオグラファー:坂口正臣
坂口写真事務所(SPO)を運営。広告写真やTV-CMから、プロモーション映像やドキュメンタリーなど幅広いジャンルで活動し、撮影だけではなく演出もこなす。YouTubeチャンネルSPOを運営、レンズやボディーの作例や、その他機材レビュー動画も公開している。