リコー GR IV|主役にも、脇役にもなれる相棒:長崎・雲仙紀行

大門正明
リコー GR IV|主役にも、脇役にもなれる相棒:長崎・雲仙紀行

ポケットの中の巨人

「旅に出るなら、アレは必須だよな」そう、いつもポケットに忍ばせておけるこのサイズ感こそ、リコー GR IVの真骨頂。旅先でこそ、その偉大さが身に沁みるというものだ。気まぐれな秋の空模様をよそに、ポケットからサッと繰り出せば、移ろう光景を鮮やかにパシャリ。こいつは、本当に頼れる相棒だ。今回、私はライカQ3 43とリコー GR IVの2台と共に旅をしたが、リコー GR IVは先代からのレンズ構成と映像エンジンの進化により、画質が大幅に向上。フルサイズのライカQ3 43にも肩を並べるほどの高画質で、機材間の垣根をすっかり取り払ってくれた。まさに、ポケットサイズの「巨人」である。

■撮影機材:リコー GR IV
■撮影環境:f/4.0 1/320 ISO200 35mmクロップ

雲仙地獄で、硫黄ガスもなんのその

■撮影機材:リコー GR IV
■撮影環境:f/5.6 1/100 ISO400 28mm

地獄の名を冠する場所に降り立てば、そこは白い噴煙が舞い上がり、瞬時に視界を奪う魔境。強烈な硫黄の香りに呼吸すらままならない。そんな極限状態でも、リコー GR IVは迷いも躊躇もなく、一瞬で起動。荒涼とした地獄の景色を、いとも簡単に切り取ってくれた。被写体を見つけたら、まるで荒野のガンマンが鮮やかな手つきでホルスターから銃を抜くがごとく、リコー GR IVをポケットから抜き出してワンショット、撮影後はすぐにポケットにしまう。雲仙地獄で何十回も繰り返したが不具合は一切発生せず、噴煙からもリコー GR IVを守ることができ、防塵防滴でなくともこの小さい相棒は十分に戦えることを証明した。

また、アウトドアモニターを+2に設定した際の液晶画面の見やすさは、硫黄ガスが充満する中でも、最高の視認性能を発揮した。このような細かい気の利かせ方こそが、歴代GRシリーズのDNAとして磨かれてきた証だろう。

潔し哉、GRの美学

■撮影機材:リコー GR IV
■撮影環境:f/4.0 1/100 ISO400 35mmクロップ
■撮影機材:リコー GR IV
■撮影環境:f/5.0 1/400 ISO200 28mm

今回の旅でも頻繁に使用したクロップ機能。クロップ時の画素数は、28mm時2574万画素、35mm相当時約1630万画素、50mm相当時約820万画。50mm相当までクロップしても十分な画素数で安心して撮影できるが、今回の旅では28mmと35mmクロップのみ使用し、それ以上の焦点距離はライカQ3 43に任せることにした。

リコー GR IVはファインダーを載せていないからこそ、液晶画面で構図を煮詰める必要があるが、液晶画面がとても見やすく、容易に構図を確認することができた。
RAWデータすらクロップするという、この潔さこそが、GRの美学だろう。

5群7枚構成となったGRレンズ

■撮影機材:リコー GR IV
■撮影環境:f/5.6 1/100 ISO100 28mm
■撮影機材:リコー GR IV
■撮影環境:f/2.8 1/2500 ISO100 28mm

もう完成しているのでは?と思われていたGRレンズに、あえて手を加えた開発陣の大いなる勇気に、まずは敬意を表したい。その結果、豊かな表現力を手に入れ、活躍の場はグッと広がった。いつでも、どこでも、どんな時でも、簡単に持ち運べる自由。そして、常に最高品質のレンズを携えているという安心感。これは、写真ライフを謳歌するための実に粋なプレゼントだ。

速さこそスナップシューターの神髄

■撮影機材:リコー GR IV
■撮影環境:f/2.8 1/125 ISO400 35mmクロップ
■撮影機材:リコー GR IV
■撮影環境:f/5.6 1/800 ISO200 28mm

「速さは正義」とは、よく言ったもの。リコー GR IVは、驚異の0.6秒起動。電源ボタンを押すたびに、その進化を実感できる。ポケットの中で出番を待つリコー GR IV。雲仙地獄で可愛らしい猫に出会った瞬間、人差し指で電源オン、構図を決め、AF、シャッター、一連の動作が、瞬く間に完了。

帰り道、バスで山道を揺られていたら、突然目の前に雄大な橘湾が現れた。ポケットの中のリコー GR IVを素早く取り出し、P(プログラムAE)モードであったが、瞬時に前ボタンを回しf/5.6まで絞った。被写体との突然の出会いにも動じることなく、静粛な風景がメモリに収まった。

後処理も、サクサク軽快

■撮影機材:リコー GR IV
■撮影環境:f/2.8 1/100 ISO400 28mm

ご愛嬌として、リコー GR IVはmicroSDメモリーカード仕様になった関係で、カードの抜き差し時に「ロケット発射」(カードが勢いよく飛び出す現象)が起きることもあった。本体が26.5mmから24.5mmに薄型化された影響だろう。しかし、このたった2ミリのダイエットのおかげで、GR IVはよりスタイリッシュになり、グリップ感が格段に良くなった。個人的には、この改良は大歓迎。ロケット問題なんてどこかに吹っ飛んだ。

とは言え、私はもっぱら内蔵メモリ(先代の2GBから約53GBへ大幅増量)を使用。付属の頑丈なUSB-CケーブルでMacに接続し、Adobe Lightroom Classicに読み込むワークフローが、安定していて快適。そして、スマートデバイス用アプリ「GR WORLD」カメラとの接続が驚くほど容易で、途中で切断される不満も一切なし。リモート撮影から画像のコピー、SNSへのアップロードまで、多彩な機能をストレスなくこなしてくれる。GR IVの魅力をさらに一段引き上げてくれた。

おわりに

3泊4日の長崎・雲仙の旅は、達成感と満足感に包まれながら終焉を迎えた。食・酒・湯・観光と盛りだくさんで、再び当地を訪れたいと思った。
その際持っていくのはどの相棒になることだろうか。

 

 

■写真家:大門正明
大門美奈と2011年リコーRING CUBEの公募展「Portugal」でデビュー。以来、妻に鍛えられながら制作を続けている。グループ展への参加のほか2022年に2人展「Bright Britain」など。DAIMONWORKS主催。

 

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