リコー GR IVレビュー「変わらないらしさと懐の深さ」|佐々木啓太
はじめに
今回紹介するのはRICOHのGR IVです。先代のGR IIIから6年、すでに多くのレビューが上がっていますが、実際に使って見なければ分からないことも多く、期待値はマックスでした。
■主な仕様比較
| GR IV | GR III | |
| 発売日 | 2025年9月12日 | 2019年3月15日 |
| レンズ構成 | 5郡7枚(非球面レンズ3枚) | 4群6枚(非球面レンズ2枚) |
| 有効画素数 | 2,574万画素 | 2,424万画素 |
| 手ブレ補正 | 5軸手ぶれ補正(約6段分) | 3軸手ぶれ補正(4段分) |
| メディア | 内蔵メモリー(約53GB)microSD/microSDHC/ microSDXCメモリーカード UHS-1 対応 |
内蔵メモリー(約2GB)SD/SDHC/SDXCメモリーカード UHS-1 対応 |
| 感度(標準出力感度) | ISO100~204800 | ISO100~102400 |
| 電池 | 充電式リチウムイオンバッテリー DB-120 | 充電式リチウムイオンバッテリー DB-110 |
| 電池寿命 | 250枚 | 200枚 |
| 本体外形寸法 | 幅:109.4mm 高さ:61.1mm 厚さ:32.7mm (操作部材、突起部を除く)レンズ部厚:31.3mm ボディ部厚:24.5mm |
幅:109.4mm 高さ:61.9mm 厚さ:33.2mm (操作部材、突起部を除く) |
| 質量 | 約262g(バッテリー、 メモリーカード含む) | 約257g(バッテリー、 メモリーカード含む) |
主な仕様で気になっていたのはレンズの変更です。今回はイメージセンサーと画像処理エンジンが新しくなっていますが、GRを語る上でレンズは外せない存在です。そして、そのレンズ構成は初めてAPS-CセンサーになったGRのそれに近くなっています。
実際に触ってみるとその薄さは手で感じることができます。一番わかりやすいのはグリップが少し深くなっていることです。そのほかボタンやダイヤル類の操作性にメリハリを感じて好印象でした。



その他に電池の変更や内臓メモリーが53GBと大幅にアップして、手ブレ補正機能は5軸・約6段分(GR IIIは3軸・4段分)、外部記録メモリーはmaicroSDカードになりAFも速くなっています。
衝撃のファーストショット
描写の比較をするためにあえて郊外に出かけました。GRであれば街の方があっているのは十分わかっているのですが、細かい描写や色味などをよりシビアな条件での比較するためです。ところが1枚撮影して確認したところで、比較する意味がないほど美しくなっていることに気がついたのが下の写真です。
今回の作例は全てリサイズだけで後処理はしていません。撮影モードはプログラムオート、ISO感度オート、WBもAWBです。

曇天気味で少し光の弱い条件でも金属の反射や緑の影の色合い、雲の質感や遠くの木々の分離など無理がなく素直なのが、比較しなくても進化していると感じたポイントでした。

手ブレ補正機能の進化を試すために手持ち状態でシャッタースピードを1/8秒にしました。
シネマ調(イエロー)にハマる
次に気になっていたのはイメージコントロールのシネマ調です。これも郊外で使った方があっていると感じていたのが、ここに出かけたもう一つの理由でした。

建物の歴史を感じる雰囲気を忠実に再現してくれています。

美しさだけでなく深みが加わる感じが心に響きました。

この日の条件では少しあっさりした印象でシネマ調(イエロー)ほど心に響いてきませんでした。

曇天の紅葉前というちょっと微妙な条件でもこれだけ緑の深みを再現してくれます。

露出補正を加えるとイメージしている深みを強くすることができます。
使いやすい露出補正ボタン
露出補正は独立した縦並びのボタン操作に変更されています。これが使いやすく大胆な補正がしやすくなっています。

綺麗な印象を優先した露出。

渓谷の深みを意識した露出。
撮影後に調整しやすいのはデジタルの利点です。それでも風景から感じたイメージを再現するためには、撮影時の露出コントロールが大切だと考えています。今回の露出補正ボタンの変更はそんな思いに答えてくれているようでした。

石の質感を高めるために強めのアンダー露出にしました。

少し極端な露出で画面のなかに暗い部分を作ると狙いが浮き上がる効果が加わり、広い画角の中を整理しやすい利点があります。

マクロ撮影でも質感描写が高く、強いアンダー露出での色のくすみを感じづらくなっています。絞りはF3.5でした。
ケイタのクロスプロセス
GRを使うときに密かに楽しんでいるのがこのクロスプロセスの設定です。

色調をYにしてイエローが強くなるようにしているのが最大の特徴です。ホワイトバランスはAWBのままです。

強さを感じる描写になっているのもポイントです。

ケイタ的にはデフォルトは物足りなく感じます。

強さがあっても再現力は高いのでノスタルジーな雰囲気との相性も良い感じです。

赤が目立ってポイントになるので広がりに負けない強さがでます。

色調をYにしている効果で夕焼けの色は濃く、空の青がエメラルドグリーンのようになります。
多重露出で遊ぶ
個人的にはGRの良いところはいつでも持ち出しやすくチャレンジをしたくなることだと考えています。そんなチャレンジの一つが多重露出です。多重露出はどんな風景を重ねるかというセンスが問われますが、そのセンスはないんです(笑)。それでもチャレンジしたくなるのがGRのすごいところです。

重ねるセンスがないので、同じ場所でピントを合わせたものとあえてピントを外したものを重ねるようにしています。ピントを外すときはマクロモードにします。

手持ちで多重露出をしているので像がズレますが、それはあまり気にし過ぎない方が良いと思います。

ピントを外した画像を重ねることで光のにじみが強くなる効果があります。

トップで使った写真もこの手法を使っています。この写真との違いはアングルで、アングル選びはGRを使うときの醍醐味です。
さらなる強さを求めて
最後はハイコントラスト白黒をカスタマイズした強さです。ケイタのクロスプロセスでも強さを意識していますが、基本的にはレンズの広がりに負けない強さを使うのがGRでの定番になっています。

ところどころ白トビしていたり、ちょっとやりすぎ感はありますが、このぐらい思い切ったことをしたくなるのもGRの魅力だと考えています。

味わいのある商店街の少しごちゃごちゃした印象もこの強さがまとめてくれます。

メリハリが上がると影さえカッコよく感じます。

ここまで強いと構図の傾きが気にならなくなり、利点はさらに上がります。

強さを表現に変えるためには割り切りが大切です。このシーンでも全てを再現するより光の印象を再現することを意識しています。
まとめ
良い意味でGRはGRのままだった。というのが使ったときの素直な印象でした。確かに画質が上がって、持ちやすくなり使い勝手は向上していますが、GRはフィルム時代からほぼ変わらないコンセプトを貫いている珍しいプロダクトだと思います。そんな作り手の思いを感じられるのもGRを持つ喜びです。そして、そのコンセプトへの解釈は使い手の自由。今回紹介したイメージコントロールのカスタマイズの自由度やストラップの取り付け位置の多さに懐の深さを感じます。これも変わらない「らしさ」です。
■写真家:佐々木啓太
1969年兵庫県生まれ。写真専門学校を卒業後、貸スタジオ勤務、写真家のアシスタント生活を経て独立。街角・森角(モリカド)・故郷(ふるさと)というテーマを元に作品制作を続けながら、「写真はモノクロ・オリジナルはプリント」というフィルム時代からの持論を貫いている。八乃塾とweb八乃塾を主宰しフォトウォークなども行い写真の学びを広めている。
八乃塾 組フォト専科 第四期写真展「多彩な街の3枚 台東区」

会期:2025年11月1日(土)〜 9日(日)(会期中は無休・12時から19時・最終日17時まで)
写真展会場 Spase Jing(ホームページ)
■写真展の概要
第四期の10ヶ月は台東区。
24区の中で一番小さい区、というのが決め手だった気がする。
通ってみれば、上野や浅草、かっぱ橋道具街などの有名観光スポットだけでない多彩な姿を見せてくれた。
展示した写真はそんな皆さんが思い描く場所が多くなっています。
そこにたどり着くまでの軌跡もファイルやBookなどを通じてご覧ください。
第五期(12月から翌年10月まで)の参加者も募集中です。
八乃塾 組フォト専科は組写真を学びながら写真楽しみを広げることを目指しています。
詳しくは写真展会場にお越しください。















