パナソニック LUMIX S1IIE レビュー|葛原よしひろ
はじめに
今回はLUMIX S1IIEのレビューをさせていただきます。
LUMIX S1IIEは、LUMIXのフルサーズミラーレス一眼カメラの最高峰 S1シリーズの第二世代にあたるカメラになります。この第二世代として3種類のラインナップが発売されており、約4430万画素に8K動画撮影が可能な高画素モデルのS1RII、部分積層型センサーを搭載し、電子シャッターで歪みの少ない静止画を秒間70コマ撮影、動画では6K撮影が可能なS1II、この2機種についてもShaShaでレビューさせていただいておりますのでぜひ御一読ください!
そして今回のS1IIEの魅力は、ここから作例を交えてレビューしていくので最後まで読んでいただけたら嬉しいです。

スローシャッターで韓国スナップ

■撮影環境:絞りF18 SS2秒 ISO100 26mm
まずは韓国ソウルの明洞エリアのスナップです。実はこの日がS1IIEを使う初日だったのですが、本当は明るい時間に到着するはずの飛行機が遅れて、いきなり夜スナップから撮影を始めることになりました。この時はS1IIEと同じ日に発売されたLUMIX S-E2460(24m-60mmF2.8通し)の明るい小型軽量標準ズームを装着して夜の明洞に出てみました。
LUMIXのカメラは全体的に手ブレ補正機能が凄く優秀なイメージがあり、夜の街と流れゆく人々を撮りたくて、このS1IIEも大丈夫だと信じてシャッタースピード2秒に設定してスナップを開始しました。人込みの中での手持ち長秒撮影なので安定感が全くない中での撮影環境ですが、路面のハングル文字がしっかり読めて人々が流れて行く情景を撮影出来ました。

■撮影環境:絞りF20 SS2.5秒 ISO100 37mm

■撮影環境:絞りF20 SS2.5秒 ISO100 24mm
上の2ショットは、調子に乗ってシャッタースピードを更に遅く設定して2.5秒で撮影しました。2.0秒の時より更に、動いている人々を流れている感じに表現出来たと思います。

■撮影環境:絞りF20 SS2.5秒 ISO100 24mm
特にこのショットはハイアングルからの撮影なので、両手を上げて更に不安定な体勢で2.5秒で撮影していますが、問題なくブレずに撮影出来ました。それにしても、人込みの中で、手持ち2.5秒撮影していてほとんど失敗することがないなんて。一般的にセンサーサイズが大きくなればなるほどブレの発生は増えるのですが、フルサイズセンサー搭載のカメラとしてはLUMIX SII1Eの手ブレ補正機能は驚異的だと思います。

そして、もう一点この撮影で役立った機能としてチルトフリーアングルモニターがあります。あらゆる角度に背面液晶を動かせるので、かなり無理な体勢での撮影にも対応出来て、すごく便利でした。
高感度でもノイズが少ない

■撮影環境:絞りF5 SS1/100 ISO640 46mm
ここからはスローシャッターではないショットです。
夜なので、AFが少し心配でしたが、素早く正確に被写体を捉えてくれるので、全く問題なく夜スナップでも軽快に楽しむ事が出来ます。

■撮影環境:絞りF5 SS1/100 ISO800 38mm
面白い店がありました。かばん屋さんのはずですが、何故か新鮮なレバ刺しとハイボールがあるみたいです。

■撮影環境:絞りF5 SS1/100 ISO2500 60mm

■撮影環境:絞りF5 SS1/100 ISO6400 60mm
こちらの2ショットは、それぞれISO2500とISO6400になりますが、ノイズの少なさにビックリしました。AFやファインダーの見やすさに加え、手ブレ補正機能やノイズの少なさ等、S1IIEは暗所撮影の得意なカメラというのが第一印象になりました。S-E2460レンズの性能の良さもその一端を担っていたと思いますので、気になる方はS-E2460のレビューも公開される予定なので合わせて読んでいただきたいです。

■撮影環境:絞りF32 SS1/2 ISO100 28mm
2日目からは、こちらも評判の良いS-R28200(28mm-200mm)便利ズームレンズを装着して、引き続き明洞をスナップ撮影してみました。広角端28mm、1/2秒のスローシャッターで撮影しましたが、レンズを選ばずS1IIEの手ブレ補正機能は優秀です。

■撮影環境:絞りF8 SS1/200 ISO100 52mm
関西人には馴染みのある方に、そっくりなオジサンが朝から酔っぱらって走っているのを発見しました。

■撮影環境:絞りF8 SS1/200 ISO3200 71mm
外国の方がストリートで演奏されていて背景も含め、格好良くてシャッターを切りました、と言ってもここでは私も外国人ですが。

■撮影環境:絞りF18 SS1/60 ISO3200 200mm
望遠端200mmを使用して圧縮効果を最大限に活かして撮影してみました。
被写界深度を深めたくて絞りF18を選ぶとシャッタースピードは1/60でISO3200になりました。手ブレ補正とノイズの少なさを昨夜確認しているので安心してシャッターを切りましたが、やはりノイズは少なく200mmでも手ブレ補正は優秀でした。

■撮影環境:絞りF10 SS1/125 ISO100 64mm
明洞の繁華街を少し離れたところにある明洞聖堂、カトリック教徒が多い韓国には沢山の教会がありますが、この聖堂は特に大きく佇まいも優雅で訪れる価値があります。
階段から天辺の十字架までフレーミングしたくてこの構図で撮影したのですが、確認すると64mmで撮影していて自由に切り取れる良さがあり、午前中のスナップで28mmから200mmまで使えて大満足な朝スナップを終えました。7倍以上の倍率では世界最小最軽量のフルサイズ用ズームレンズS-R28200とS1IIEの相性はとても良くて、この軽快感は旅行のスナップ撮影では手放せなくなるほど気に入りました。

■撮影環境:絞りF4.5 SS1/100 ISO100 28mm
という事で、かなりこの組み合わせが気に入ったので、S1IIEには、このままS-R28200レンズを装着して夕方の東大門に向かいました。東大門に着くころには夕暮れが近く、空が美しい色に変わっていて撮影したのですが、やっぱりLUMIXは色が綺麗です。

■撮影環境:絞りF4.5 SS1/100 ISO500 36mm
個性的な東大門デザインプラザは造形的に切り取って撮影したくなるポイントが多くて楽しめます。夕暮れ時とは言え、かなり明暗差のあるシチュエーションですがS1IIEのダイナミックレンジが広いので、思い通りのイメージで撮影出来ました。

■撮影環境:絞りF5.6 SS1/160 ISO1600 79mm
観光用バスのオープンデッキには少し狭そうに沢山のツーリストが座っているのですが、その下には、ツーリストたちとは真逆の方向を向いて、宮殿で一人優雅にお茶を飲む女性が描かれているのが対照的で面白くシャッターを切りました。

■撮影環境:絞りF6.1 SS1/160 ISO640 115mm
ソウル市内は大きなサイネージ広告が至る所にあって最先端な街ですが、昔から丘に所狭しと住宅が密集していて変わらない部分も多く、新旧入り交じる雰囲気を夕暮れが演出してくれました。

■撮影環境:絞りF11 SS1/320 ISO500 200mm
青いバスを背景に、黄色のランボルギーニが映えます。東大門に来てからの写真は全て、フォトスタイルのヴィヴィッドを選んで撮影していますが、夕暮れの淡い雰囲気と原色の鮮やかさ、どちらも表現出来るのが嬉しく思います。
18種類のフォトスタイル
今回レビューさせていただいているS1IIEだけでなく、LUMIX S1IIシリーズは、共通のフォトスタイルを搭載しており、プリセットされた18種類のフォトスタイルと独自のフォトスタイルを4種類本体にメモリーすることが可能となっていて、自分の好みに合わせたり、シュチュエーションに合わせたりすることが簡単に出来るので、表現の幅が広がります。
ポートレート・車

■撮影環境:絞りF2.8 SS1/125 ISO640 18mm
■モデル:くれは
■撮影スタジオ:東大阪 Latiras
等倍(オリジナルサイズ)でご覧頂けます
次はスタジオポートレート撮影です。18mmのS-S18レンズを装着して、超広角ポートレート撮影をしてみました。LUMIX S-S18は開放値F1.8と明るいレンズなので、超広角18mmでもポートレートらしいボケ表現を活かした撮影が出来ます。
S1IIEのフォトスタイル:ポートレートの肌色はLUMIXの統一性のある、透明感のある美しい色合いが特徴となります。瞳AFの精度も高く、モデルの瞳には撮影する私がしっかり映っています。こちらの作例はタップもしくはクリックすると等倍(オリジナルサイズ)になりますのでぜひ拡大してご覧頂ければと思います。

■撮影環境:絞りF4.5 SS1/60 ISO1000 35mm
■モデル:くれは・りなぽそ
■撮影スタジオ:東大阪 Latiras
レンズをS-E2460に付け替えて撮影。24mmから60mmのレンズですが35mmに合わせて、モデルが二人なのでF4.5に絞って、二人ともにフォーカスが合うようにしました。

■撮影環境:絞りF2.8 SS1/64 ISO640 98mm
■モデル:りなぽそ
S-R70200、70-200mm F2.8を装着して紫陽花の咲く屋外で撮影。100mm付近を使用してのショットですが前後ともに自然で美しいボケ表現と、ピント面の解像感の高さで立体感のある撮影が出来ました。屋外でもフォトスタイル ポートレートを使用しましたが。肌色もワンピースも、紫陽花も全てナチュラル且つ鮮やかな色で表現出来て、とても満足です。

■撮影環境:絞りF7.1 SS1/125 ISO200 102mm
クラシックカーイベントで撮影。レンズ交換をせずにイベント撮影する為、ソウル撮影でも使用したS-R28200レンズを装着して撮影に挑みました。
希少なジャガーが並んでいたので、少し離れた所から、軽く圧縮効果も出せるように100mm付近で撮影してみました。

■撮影環境:絞りF7.1 SS1/80 ISO100 60mm
今度は60mmでオースチン・ヒーレーのフロントマスクに寄ってアップで撮影。

■撮影環境:絞りF6.3 SS1/250 ISO250 29mm
クラシックカーが似合う京都府庁舎を出発するアルピーヌを広角端に近い29mmでローアングル撮影。ここでもチルトフリーアングルモニターが役立ちました。
少し引いた位置から広角端28mmで動画撮影。
それにしても、広角から望遠まで、静止画も動画もS1IIEとS-R28200の組み合わせは、とても小型軽量なので取り廻しも良く、AFも速くてレスポンス良く撮影出来る組み合わせなので、レンズ交換しづらいような撮影会的なシュチュエーションや、荷物を最小限にしたいが色々撮りたい旅行には、とてもオススメです。

■撮影環境:絞りF2.8 SS60秒 ISO100 24mm
滋賀県高島市で蛍撮影もしてみました。
比較明合成ではなく、1枚撮りで撮影したかったので、シャッタースピードを1分にして撮影しました。シャッタースピードの設定が1分まであるのはBLUB撮影より手軽に撮影可能なので、とても便利です。
ハイレゾやハイブリッドズーム機能も優秀
S1IIEは通常2420万画素の裏面照射型イメージセンサーが搭載されているのですが、ハイレゾ機能が備わっており約9600万画素相当の撮影をすることが可能となっています。


前述のLUMIXの強力な手ブレ補正機能を使用して、手持ちハイレゾ撮影も容易に出来ますので、風景撮影等で画素数の欲しい撮影がしたい場合、凄く有益な機能となります。上の写真が2420万画素、下の写真が手持ちハイレゾを使用した写真になります。ピント面の木の部分を比べてみると、かなり画質差があることが見て取れます。
ハイレゾ以外にも便利な機能は沢山搭載されているのですが、私が特に気に入った機能は、ハイブリッドズーム機能です。通常の光学ズームとクロップズームを融合させた機能となります。S-E2460の24mm-60mmズームレンズを装着して作例を交えて解説させていただきます。




1枚目の24mmは通常の光学ズームを使用した写真になります。2枚目の60mmも通常の光学ズームを使用した写真になります。
ハイブリッドズームを使用する場合は、通常の光学ズームの望遠端より更に長い焦点距離の望遠を使用したい時に使う方が良い機能になりますので、ここからハイブリッドズームを使用した写真になります。
3枚目はハイブリッドズームを使用して120mm相当、4枚目はハイブリッドズームを使用して180mm相当で撮影。
ハイブリッドズームは徐々にデジタルズームのクロップ機能を光学ズームと文字通りハイブリッドしていく仕組みなので、3枚目の120mmは光学ズームとデジタルズームが半分半分位の比率になっていると思うのですが、私の印象としては、この辺りまでは画質の劣化も少なく実用的に使いやすいと思いました。120mm以上から更に長い焦点距離を使用していくと、デジタルズームを使用している感じが増えていく印象で、4枚目の望遠端180mm相当では画質的には、少し荒くなった印象を受けますが、元来24mm-60mmの標準ズームレンズで180mm相当の写真が撮れると思うと、凄く便利な使い方が出来るので助かります。




さいごに
ここまで、作例を交えて読んでいただき有難うございます。
最後に、S1IIEについて、私の感じた総合的な印象をお話しさせていただきます。
冒頭でお伝えしたとおり、LUMIX S1シリーズの第二世代はS1II、S1RII、S1IIEの3種類がラインナップされています。そもそもS1シリーズはLUMIXの最上級カメラシリーズになるのですが、最近のデジタルカメラ市場の高価格化の中では、ハイエンドカメラとしては比較的リーズナブルな価格設定になっており、その中でも特にS1IIEはコストパフォーマンスに優れたモデルだと思います。
シリーズの3機種は全て、幅約134.3mm、高さ約102.3mm、奥行約91.8mm、重さ800g以内と、ほぼ統一された小型軽量ボディサイズになっています。そして、操作系のスイッチやボタンも3機種全て統一されているのも特徴的です。そうする事で、3種類のS1IIシリーズを使用する際に違和感なく撮影することが出来ます。加えて、自分の好みに応じて変更や割付した機能を、SDカードを使用して3機種全て共通のカスタマイズに設定可能になっていますので、各カメラを個別設定する手間を省くことが可能となっていて凄く便利です。そもそも、ボタンやスイッチの配置がとても使いやすく、撮影する人の立場に立って考えて設計してあることが、撮影してみると凄く解ります。
約576万ドット有機ELファインダーと約184万ドットのチルトフリーアングルモニターは、どちらも視認性に優れていて、とても見やすく構図の確認もしやすかったです。防塵防滴を配慮した設計と-10度の寒冷地から真夏の40度まで使用可能な、撮影地を選ばない動作環境の広さはフラッグシップシリーズらしく頼もしいです。
S1IIEは電子シャッター使用時には秒間約30コマの撮影が可能なので連写機能も優れています。動画についても6K30Pまでの高画質な撮影が可能であり、ボディに搭載された冷却ファンによって長時間録画が可能な点も好印象です。解像感が高く、発色が美しい写真や動画が撮れるのは勿論の事、強力な手ブレ補正機能を搭載し、ノイズが少なく高感度耐性に優れ、AF性能も高いので暗所撮影に強くて、あらゆる被写体をレスポンス良く撮影することができます。
S1IIEはメインカメラとしても、S1IIやS1RIIのサブカメラとしても使いやすく、本当にコストパフォーマンスに優れたカメラというのが私の印象であり、これからデジタルカメラを始める方から、プロフェッショナルなクリエイターまで、幅広く自信をもってオススメ出来るカメラでした。

■写真家:葛原よしひろ
ジャンルに捉われず何でも撮影するマルチプレイヤースタイルの写真家。カメラメーカー等の写真セミナー講師としても全国的に活動している。大阪芸術大学写真学科卒/滋賀県高島市公認フォトアドバイザー/JPS(日本写真家協会)正会員

































