スタイリングの古さが斬新な最新鋭ミラーレス一眼!? OM SYSTEM OM-3

礒村浩一
スタイリングの古さが斬新な最新鋭ミラーレス一眼!? OM SYSTEM OM-3

はじめに

OMデジタルソリューションズより2025年3月に発売された「OM SYSTEM OM-3」は、マイクロフォーサーズ規格に準拠したミラーレスデジタル一眼カメラである。イメージセンサーは有効画素数約2037万画素の4/3型 裏面照射積層型 Live MOSセンサーを採用。センサーのサイズからレンズの実効的な焦点距離(35mm判換算)は実焦点距離の2倍に相当する。

2025年5月現在、OM SYSTEMのOM/OM-Dシリーズカメラにはすでにハイエンド機のOM-1 Mark II、中級機のOM-5、エントリー機のOM-D E-M10 Mark IVがラインナップされており、このOM-3はOM-1 Mark IIとOM-5の間のポジションに位置する製品となる。だがこのカメラの特徴はスペックだけではなく、まるで1970年代に製造・販売されたオリンパスのフィルム一眼レフカメラOM-1を彷彿とさせるようなクラシカルなスタイリングにもある。現時点ではシルバーモデルのみが販売されていることもあり、より懐かしさを感じる見た目となっている点も興味深い。

だが、そこはやはり現代の最新鋭デジタルカメラ。OM SYSTEMが得意とする先進のデジタル技術を惜しみなく投入した高パフォーマンスを発揮するモデルとなっているはずだ。そこで今回はこのOM-3を見た目の斬新さ(古さ?)だけではなく、デジタルカメラとしての実力を実写撮影を通して検証していこう。

OM-3の特徴と主なスペック

■マイクロフォーサーズ規格準拠レンズ交換式カメラ
■有効画素数約2037万画素4/3型裏面照射積層Live MOS センサー採用 スーパーソニックウェーブフィルター搭載
■画像処理エンジンTruePic X
■アスペクト比4:3
■5軸補正撮像センサーシフト式ボディ内手ぶれ補正 6.5段分(対応レンズ使用でシンクロ7.5段分)
■視野率約100%/約1.23倍~約1.37倍 アイポイント約27mm 約236万ドットOLEDビューファインダー
■3.0型2軸可動式背面液晶モニター 約162万ドット(静電容量方式タッチパネル)
■UHS-I/II対応 SD/SDXC/SDHCメモリーカードスロット 
■常用ISO感度200-25600 拡張ISO感度 L80・L100(ISO80・100相当)・32000-102400
■メカニカルシャッター1/8000~60秒・バルブ・ライブタイム、電子先幕シャッター1/320~60秒、電子シャッター1/32000~60秒
■連写 最高約6コマ/秒・低振動連写 最高約5.5コマ/秒・静音連写 約20コマ/秒・静音連写SH1最高約120コマ/秒(ブラックアウトなし)・静音連写SH2最高 約50コマ/秒(ブラックアウトなし)
■プロキャプチャー 最高約20コマ/秒・連写SH1 最高約120コマ/秒・連写SH2 最高約50コマ/秒(要対応レンズ使用)最大約70コマ記録
■ハイスピードイメージャAF 1053点(クロスタイプ位相差AF)/1053点(コントラストAF)
■被写体検出機能 あり(人物/車、オートバイ/飛行機、ヘリコプター/電車、汽車/鳥/動物 (犬、猫)
■ライブND あり(ND2/4/8/16/32/64) ISO800まで
■ライブGND あり(ND2/4/8) Soft / Medium / Hard選択・位置・回転可能ISO3200まで
■三脚ハイレゾショット(JPEG 80M/50M/25M・RAW 80M画素相当)/手持ちハイレゾショット(JPEG 50M/25M・RAW 50M画素相当) 記録ビット数12bit / 14bitの選択可
■MOV(MPEG-4AVC H.264/HEVC H.265) C4K・4K ・FHD・ (60p/50P/30p/25P/24P), 4Kタイムラプス動画、縦位置動画、S&Q(スロー&クイック)動画 対応
■無線LAN(IEEE 802.11b/g/n)・Bluetooth(Ver.5.2 Bluetooth Low Energy)内蔵
■電源 リチウムイオン充電式バッテリーBLX-1 撮影可能枚数 標準:約590枚/低消費電力撮影モード:約1040枚、USB充電対応、USB/PD規格デバイスより給電可能
■防塵防滴IP53/IPX1 OMDS(オリンパス)製IP53/IPX1対応レンズとの組み合わせ時に有効
■耐低温仕様 動作保証気温-10℃~+40℃(動作時)
■大きさ 約139.3mm(W)×88.9mm(H)×45.8mm(D)
■質量 付属充電池およびメモリーカード含む、アイカップなし496g

OM-1 Mark II / OM-5との仕様比較表

OM-1 Mark II OM-5との仕様比較

OM-3の仕様を、上位機種でハイエンドモデルのOM-1 Mark IIと下位機種で中級機モデルのOM-5と比較するため一覧表を作成した。表ではOM-1 Mark IIと共通する仕様を赤文字で、OM-5と共通する仕様を青文字で表している。これを見るとOM-3とOM-1 Mark IIでは共通点が多いことがわかるだろう。センサーは共に約2037万画素の4/3型裏面照射積層Live MOS センサーを採用しており、搭載された画像処理エンジンもTruePic Xと共通だ。そのほか多くの基本的な仕様もOM-1 Mark IIのものを継承していることがわかる。一方でいくつかの機能はOM-5と共通していることからも、OM-3はOM-1 Mark IIの基本性能を受け継ぎつつ一部の仕様はOM-5同等とすることで、両機の良いところ取りをした機体であることが判る。なお最新機であるだけにOM-3 には独自の機能も追加されており、表では緑文字で記載した。

OM-3を外観からチェック

OM-3を正面から見る。ボディは堅牢かつ軽量なマグネシウム合金製。上下金属部表面は梨地仕上げにより光沢が抑えられた落ち着いた仕上がりだ。ボディにグリップはなく直線的かつフラットな形状に合成皮革製の貼り革がなされている。フィルムカメラ時代のペンタプリズム部を彷彿とさせるファインダー部の形状とも合わせて、クラシカルな印象が強いデザインだ。なおOM-3発売開始から3ヶ月の現時点においてはシルバーモデルのみの販売となっており、ブラックモデルが発売されるかどうかは全く未定だ。

OM-3に搭載された有効画素数約2037万画素4/3型裏面照射積層Live MOS センサー。このセンサーは上位機種のOM-1 Mark IIと同じものが搭載されている。センサーシフト式の手ぶれ補正機構が備えられており、ボディ単体で6.5段、IS機構搭載の対応レンズとの組み合わせなら7.5段分の手ぶれ補正効果を発揮する。またセンサー部に付着するゴミを超音波振動で弾き飛ばす強力なダストリダクション機能が搭載されているので、画像にゴミの影が写り込むことを最小限に抑えることができる。

OM-3を上面から見る。フラットなトップカバーに必要最小限と思われるレバー&ダイヤル、ボタン類が並ぶシンプルなレイアウト。ダイヤモンド形状に尖ったファインダー部とともにかつてのフィルム一眼レフカメラのレイアウトをなぞらえたデザインであることがわかる。

ファインダー部の右手側には大きな露出モードダイヤル、レリーズボタンを軸に配したフロントダイヤル、リアダイヤル、Fnボタン、動画ボタンが並ぶ。

ファインダー部の左手側には電源ON/OFFレバー、静止画/動画/スロー&クイックムービー切り替えダイヤル、LVボタンが配置。

背面には3.0型約162万ドットのモニターと、十字キーならびに各機能を割り当てたボタンが配置。親指を沿える位置には小さいながらもサムグリップがある。各レイアウトはOM-5の背面のものと似通っている。

約236万ドット・視野率100%のOLEDビューファインダーを搭載。接眼すると背面モニターが消えてビューファインダーに切り替わるセンサーが設けられている。これらはOM-5に搭載されているものと同等だ。ファインダー部左側面には視度調整ダイヤルが設けられている。

ファインダーの右横にはCPボタンとFn切り替えレバーが設けられており、このレバーをFn1/Fn2それぞれに切り替えることで、フロントとリアダイヤルで機能を入れ替えたり、電源ON/OFFレバーとして使用することができる。これらはMENU内の「Fnレバーの設定」にて設定できる。CPボタンはOM-3で新設されたボタンで、初期設定ではコンピュテーショナル フォトグラフィ機能であるハイレゾショット、ライブND撮影、ライブGND撮影、深度合成、HDR、多重露出が登録されており、それらをCPボタン押下+ダイヤル操作でダイレクトに呼び出せる。

背面液晶モニターはバリアングル方式を採用。約162万ドット3.0型。静電容量方式タッチパネルを採用。各種設定やレリーズなどが指先タッチによって行うことができる。モニターの明るさ・色味はMenuのライブビュー設定から調整が可能。LVボタンからモニター表示を消すこともできる。

メモリーカードスロットは1スロット。対応メディアはSD、SDHC(UHS-I / II)、SDXC(UHS-I / II)。これもOM-5と同等だ。OM-1 Mark IIは2スロットであるがOM-3はボディサイズを小さくしたこともあり1スロットとなっている。

左手側面には外部入出力端子部が設けられている。上から3.5mm径マイク端子/3.5mm径ヘッドフォン端子/タイプD HDMI端子/USB Type-C端子となる。HDMI出力は外部モニターへ映像とカメラ情報を表示させる[モニターモード]、外部レコーダーへ保存用の映像を出力する[記録モード]、外部レコーダーへ保存用RAWの映像を出力する[RAWモード]が選択できる。

バッテリー室は底部にあり充電池はOM-1/OM-1 Mark IIと共通のリチウムイオン充電式バッテリーBLX-1(表面の印字は刷新)を採用している。スロットカバーには浸水防止リングが装着されており防塵防滴への対応がなされている。

OM-3にはリモートケーブル端子が備えられていない。OM-1 Mark IIおよびOM-5ではリモートケーブルを直接カメラに挿してのコントロールもできるのだが、OM-3でリモート撮影を行うにはオプションのワイヤレスリモコンRM-WR2をBluetooth接続して利用する必要がある。なおOM-1/OM-1 Mark IIおよびOM-5のオプションとして販売されていたRM-WR1は使用できない。それぞれのリモコンの見た目はわずかな色違いのみなので間違えないように気をつけたい。実は筆者も当初、RM-WR1をOM-3にペアリングしようと試みたところ、全く接続できず困ってしまった経験がある。

OM-3, M.ZUIKO DIGITAL ED 12mm F2.0, M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 II, M.ZUIKO DIGITAL 25mm F1.8 II, M.ZUIKO DIGITAL ED 75mm F1.8, WOTANCRAFT PARASHOOTER ネックカメラストラップ,WOTANCRAFT PILOT UPGRADE 10Lカメラバッグ

OM-3のスタイリングおよび手の大きさにちょうど馴染むサイズ感から、筆者としてはスナップシューター用カメラとして最適なカメラと考える。レンズはコンパクトな単焦点レンズで揃えて広角~標準~中望遠までの3,4本をセレクト。これらを7Lサイズのスリングバックに収めて実際に出かけたところ、実に軽快にスナップ撮影を進めることができた。それにしてもOM-3はシルバーレンズと皮革製ストラップの組み合わせがとても似合うカメラだと思う。

OM-3とOM-1 Mark IIの基本画質の比較検証

OM-3およびOM-1 Mark IIのイメージセンサーは共に有効画素数約2037万画素4/3型裏面照射積層Live MOS センサーを採用しており、画像エンジンも同じくTruePic Xである。この組み合わせは、OM SYSTEMのデジタル一眼カメラのイメージセンサーとしては現在もっとも高画質を引き出す組み合わせとされている。このことから基本的な画質に関しては両機ともに同等であると予想できる。そこでここでは、両機の撮影画像を比較して基本画質を確認する。確認事項は通常撮影時の解像力と高ISO感度撮影時の解像感とノイズの発生具合である。

OM-3およびOM-1 Mark IIで木の枝を撮影。撮影時の焦点距離は100mm(35mm判換算200mm相当)、絞りは開放絞り値であるF5.0から2/3段となるF8.0まで絞り込み、レンズの解像力を高めた状態にしている。両機間の撮影条件は同じに揃えてある。結果、撮影した画像の中央部を切り出しピクセル等倍表示で両機の画像を比較し見比べても両機に解像感の違いは見られないことから、両機の解像力は同等と判断した。

OM-3にてISO感度を拡張感度域のL100から標準感度、そして拡張感度域上限102400まで1EVごとに変えながら撮影した画像の一部を等倍で切り出し比較した。注目点は建物壁面のノイズとディテールの精細さとする。

まず常用感度域であるISO200から1600までは遜色なくこの感度域を選択できる画質。ISO3200ではISO200と比較すればわずかながら暗部にノイズを感じるが、目を凝らして比べなければ判らない程度だ。ISO6400になると暗部のノイズもわずかに増えるが高感度撮影としては十分に許容できるレベルといえる。ISO12800を超え25600となると暗部でノイズが目立つようになり壁面のディテールが緩くなっているのがわかる。拡張感度域のISO51200を超えるとカラーノイズが目立つようになり、最高感度のISO102400ではカラーバランスが偏ったうえでディテールが大きく崩れノイズも目立つ。一方、低感度の拡張域となるL100ではISO200の描写とほぼ違いは見られないので、スローシャッター撮影時など必要に応じて選択すると良いだろう。なお比較サンプルとしてOM-1 Mark IIで撮影したISO6400画像も掲示してあるが、OM-3の画像と比較しても双方の描写に違いは見られない。このことからISO感度特性は両機において同等であると判断できる。

以上のようにOM-3およびOM-1 Mark IIで撮影した画像の解像力および高ISO感度撮影の画像を比較した結果、両者の画質に違いを見出すことはできなかった。これらの結果からOM-3とOM-1 Mark IIは同等の画質であると判断した。

14bit RAW画像記録に対応したハイレゾショットに対応

OM-1 Mark IIで初めて実装されたハイレゾショットRAW画像の14bit記録は、OM-3にも引き継がれている。ハイレゾショットとはカメラ内に搭載されたセンサーシフト方式の手ぶれ補正機構を転用した機能で、イメージセンサーを0.5ピクセル単位でずらしながら複数枚の画像を撮影し合成処理することにより解像度を補完するというものだ。OM-1/OM-5までのハイレゾショットでは12bitでの記録しか行えなかったが、OM-3およびOM-1 Mark IIではRAWに限り14bitでの記録も選択できる。これによりRAW現像処理を行う際に発生し得る、明るさやコントラストなどの調整に伴う画質劣化に対して耐性が上がった。ただしハイレゾショットRAWの現像は基本的にOM SYSTEM純正のRAW現像ソフト「OM Workspace」で現像する必要がある。なお14bit RAWからの現像でも、JPEGやTIFF画像に書き出した時点で8bitに変換されるので、あくまでもRAW現像時の画像調整への耐性向上が対象となる。

ハイレゾショットにはカメラを三脚などに固定して撮影を行う「三脚ハイレゾショット」と、手持ちでの撮影を行う「手持ちハイレゾショット」の二種類がある。通常約2037万画素(5184 x 3888)で記録される撮影画像を、三脚ハイレゾショットでは8枚の画像を撮影し合成処理することにより最大で約8000万画素相当(10368 x 7776)にまで拡張し保存することができる。また手持ちハイレゾショットでは12枚の連写が行われ、そのコマ間に撮影者の揺れで発生するわずかな画角のずれを、ハイレゾショットでの補完用画像サンプルとして利用し合成処理を行うことで、最大5000万画素相当(8160 x 6120)にまで拡張した画像を保存できる。また同時に複数画像の合成による効果からISO感度にしておよそ2段分のノイズ改善が見込める点もメリットとなる。

■使用機材:OM-3 + M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO(12mm)
■撮影環境:F5.6 1/1000秒 ISO200 絞り優先モード -0.3EV WBオート 仕上がりモードVivid S-AF 静音+単写S-IS OFF 三脚ハイレゾショット
■使用機材:OM-3 + M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO(19mm)
■撮影環境:F5.6 1/60秒 ISO200 絞り優先モード WBオート 仕上がりモードVivid S-AF 静音+単写S-ISオート 手持ちハイレゾショット

強力な手ぶれ補正機能で撮影をスマートに手助け

OM-3には5軸補正センサーシフト方式の手ぶれ補正機構が搭載されている。数値的にはボディー単体6.5段分/シンクロ手ぶれ補正7.5段分とOM-5と同等だが、実際の撮影においてその効果はとても高い。これにより三脚を使用しない手持ち撮影において、よりスローなシャッタスピード、より望遠域での撮影であっても手ブレを起こしにくくなっている。OM-3はボディにグリップがないフラットボディ形状であり、さらに純正オプションにも外付けグリップは設定されていない。広角や標準域のレンズでは問題ないが、デザインを優先した代わりに大型グリップを採用しているOM-1 Mark IIなどと比較するとホールド性は劣ってしまうことから、望遠レンズを使用する際には手ぶれに気を付ける必要がある。その観点からも強力な手ぶれ補正機能が備えられているのはとても心強いといえるだろう。

ハイエンド機譲りの自由度の高いAFシステムとインテリジェント被写体認識を採用

OM-3のAFシステムは、撮像素子のほぼ全面に広がる1053点像面位相差AFセンサーを採用。イメージセンサーひとつひとつの画素のフォトダイオードを4分割とするクアッドピクセルにより、縦横両方向での位相差情報が取得できる。これに画像エンジンTruePic X による高速演算能力と最新のAFアルゴリズムを組み合わせることで、さまざまな被写体において高い精度でのAFおよび低輝度AF限界-5.5EVでのAFを可能としている(ISO 100相当、F2.8レンズ装着時)。これはミラーレス一眼であることを最大限に活かしたAFシステムであり、ハイエンド機であるOM-1 Mark IIに匹敵する自由度の高いものとなっている。

AFエリアはAllターゲット(1,053点)、Singleターゲット(1点)、Smallターゲット(9点)、Crossターゲット(39点)、Middleターゲット(63点)、Largeターゲット(165点)と、ユーザー自身で点数と移動ステップ数を設定できるカスタムターゲット(4パターン設定可)が選択可能。フォーカスモードはシングルAF、シングルAF+MF、コンティニュアスAF、コンティニュアスAF+MF、マニュアルフォーカス、追尾AF、追尾AF+MF、プリセットMF、星空AF、星空AF+MFのうちから任意のモードを選択できる。

OM-1 Mark IIと同じくAI被写体認識AFにも対応しており、人物 / 車、オートバイ / 飛行機、ヘリコプター / 電車、汽車 / 鳥 / 動物 (犬、猫)の認識が可能。各モードにおいてAFエリア内の被写体を認識することでフォーカスを追随させることができる。すでにAI被写体認識AFの搭載は各社カメラのトレンドとなっている感があるが、その認識精度は年々高まっておりすでに常用できるレベルとなっている。いちど利用するとその便利さに驚くはずだ。ぜひ積極的にトライしていただきたい機能だ。

写真表現を拡張する心強い機能 ライブNDとライブGND

OM-3ではOM-1 Mark IIおよびOM-5にも搭載されているコンピュテーショナルフォトグラフィ機能も使用可能だ。そのなかのライブNDとライブGNDは、カメラへ取り込む光量を減衰させるNDフィルター同様の表現効果をデジタル処理にて擬似的に得られるものだ。通常はレンズ前に装着して効果を得るNDフィルターおよびGNDフィルターをカメラ内で擬似的に再現している。

ライブNDは撮影画像全面にND2(-1EV)から1EV間隔でND64(-6EV)までのND効果を選択することが可能(シャッター優先モード、マニュアルモードで使用可能)。ライブGNDは画像のなかで上下左右のいずれかの方向から部分的にグラデーションでND2(-1EV)から1EV間隔でND8(-3EV)までのハーフND効果を付与することができる。ただしライブNDとライブGNDを同時に適用することはできない。

ライブGNDのグラデーションの強さの違いによる画像の変化を確認した。三段階のND度数(ND2,4,8)と三種類のグラデーションの強さ(SOFT,MEDIUM,HARD)をそれぞれ選択して組み合わせている。ND度数の変化による明るさの変化とグラデーションの強さの変化によるND濃度の変化がわかるだろう。

またライブGNDでは画面内の任意の位置にグラデーションの中心をセットすることができる。モニター画面に表示されたライブビュー画像を見ながら境界線を設定する。境界線の位置と回転軸は十時ボタンで変更可能。フロントダイヤルで角度を15度ずつ、リアダイヤルで角度を1度ずつ回転できる。

作品の色味や仕上がりを直感的にコントロールできるクリエイティブダイヤル搭載

OM-3には画像仕上がりの色調や諧調などを直感的に変化させることができるクリエイティブダイヤルが搭載された。このダイヤルを回し各モードを切り替えることで、撮影者が望む画像仕上がりを得ることができる。選べるモードはMONO(モノクロプロファイルコントロール)、COLOR(カラープロファイルコントロール)、| (ピクチャーモード)、ART(アートフィルター)、CRT(カラークリエーター)の4種類。これらは仕上がりプロファイルがあらかじめ設定されたプリセットを選び適用することもできるし、それぞれのモードにて色相・彩度・諧調を自在に変化させることも可能。撮影者は撮影前に背面モニターで仕上がりイメージを確認しながら撮影することができる。

前面エプロン部に設置されたクリエイティブダイヤル。ダイヤルを回して「MONO(モノクロプロファイルコントロール)」、「COLOR(カラープロファイルコントロール)」、「| (ピクチャーモード)」、「ART(アートフィルター)」、「CRT(カラークリエーター)」を切り替える。なお従来の色味設定であるピクチャーモード「i-Finish、Vivid、Natural、Flat、Portrait、モノトーン」等は「| (ピクチャーモード)」にダイヤルを合わせることで選択することができる。

カラープロファイル3設定画面
カラークリエーター設定画面
モノクロプロファイル1設定画面
モノクロプロファイル1+シアンフィルター設定画面
モノクロプロファイル1+緑フィルター設定画面
モノクロプロファイル1+ハイライト&シャドウコントロール設定画面

ピクチャーモード、カラープロファイルコントロール、モノクロプロファイルコントロールに設定されている各プリセットおよびいくつかの任意のパラメーターに設定した画像の仕上がり違いを一覧にした。基準として左上にピクチャーモード(Natural)画像を表示してあるので、それとの違いを確認していただきたい。なおモノクロプロファイルコントロールでは色フィルターによる諧調変化の効果も参考としたい。

OM-3実写作例

■使用機材:OM-3 + M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO(19mm)
■撮影環境:F6.3 1/500秒 ISO200 絞り優先モードWBオート 仕上がりモードVivid S-AF S-IS Auto 静音単写 手持ちハイレゾショット
■使用機材:OM-3+ M.ZUIKO DIGITAL M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 IS II(100mm)
■撮影環境:F5.0 1/1600秒 ISO200 絞り優先モード -0.3EV WBオート 仕上がりモードVivid S-AF S-IS Auto 単写
■使用機材:OM-3 + M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 IS II(150mm)
■撮影環境:F5.7 1/125秒 ISO1600 絞り優先モードWBオート 仕上がりモードNatural C-AF S-IS Auto 連写 被写体検出「鉄道」
■使用機材:OM-3 + M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4.0 PRO(140mm)
■撮影環境:F5.6 1/1600秒 ISO200 絞り優先モード -0.7EV WBオート 仕上がりモードVivid S-AF S-IS Auto 単写
■使用機材:OM-3 + M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO(12mm)
■撮影環境:F5.6 1/160秒 ISO200 絞り優先モード -0.7EV WBオート 仕上がりモードVivid S-AF S-IS Auto 単写
■使用機材:OM-3 + M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO(12mm)
■撮影環境:F5.6 1/640秒 ISO200 シャッター優先モード WBオート 仕上がりモードVivid S-AF S-IS Auto 単写
■使用機材:OM-3 + M.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8(45mm)
■撮影環境:F3.2 1/640秒 ISO200 絞り優先モード +1.0EV WBオート 仕上がりモードNatural アートフィルターネオノスタルジー S-AF S-IS Auto 連写
■使用機材:OM-3 + M.ZUIKO DIGITAL ED 75mm F1.8(75mm)
■撮影環境:F1.8 1/320秒 ISO200 絞り優先モード +1.0EV WBオート 仕上がりモードNatural S-AF S-IS Auto 単写
■使用機材:OM-3 + M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO(8mm)
■撮影環境:F6.3 1/6秒 ISO200 絞り優先モード +0.3EV WBオート 仕上がりモードCOLOR2 S-AF S-IS Auto 連写
■使用機材:OM-3 + M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO(8mm)
■撮影環境:F4.0 1/13秒 ISO200 絞り優先モード WBオート 仕上がりモードCOLOR2 S-AF S-IS Auto 連写
■使用機材:OM-3+ M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO(15mm)
■撮影環境:F8.0 1/160秒 ISO200 絞り優先モード WBオート 仕上がりモードVivid S-AF 連写 IS OFF 
■使用機材:OM-3 + M.ZUIKO DIGITAL M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO(12mm)
■撮影環境:F5.6 1/320秒 ISO200 絞り優先モード +0.3EV WBオート 仕上がりモードNatural アートフィルターネオノスタルジー S-AF S-IS Auto 連写
■使用機材:OM-3 + M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO(15mm)
■撮影環境:F5.6 1/40秒 ISO200 絞り優先モード +0.3EV WBオート 仕上がりモードCOLOR3 S-AF 単写 S-IS Auto
■使用機材:OM-3 + M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO(45mm)
■撮影環境:F6.3 1/100秒 ISO200 絞り優先モード WBオート 仕上がりモードCOLOR1 S-AF 単写 S-IS Auto
■使用機材:OM-3 + M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO(19mm)
■撮影環境:F4.5 0.8秒 ISO200 マニュアルモード WBオート 仕上がりモードVivid S-AF 静音単写 S-IS Auto ライブGND08 Soft
■使用機材:OM-3 + M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO(17mm)
■撮影環境:F5.6 1/160秒 ISO200 絞り優先モード -0.3EV WBオート 仕上がりモードMONO2 S-AF 単写 S-IS Auto
■使用機材:OM-3 + M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PRO(8mm)
■撮影環境:F4.0 30秒 ISO3200 マニュアルモード WB4200K 仕上がりモードNatural MF IS OFF 単写秒 ライブコンポジット30コマ
■使用機材:OM-3 + M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO(12mm)
■撮影環境:F4.0 8秒 ISO800 マニュアルモード WB4200K 仕上がりモードVivid MF IS OFF 単写秒 ライブコンポジット73コマ

写真機の普遍的な機能美を再び人の手に

OM-3の魅力は高い基本性能や豊富な先進機能に留まらない。開発発表以降、多くの人々の目を惹きつけている理由には、そのクラシカルなスタイリングも大きな要素として含まれている。金属ボディの存在感を惜しみなく前面に出すとともに直線的なボディ筐体とピラミッド形状に尖ったファインダー部の組み合わせ、そしてシンプルかつ馴染みのあるダイヤルやボタン類の配置などのレイアウトを旧来のフィルム一眼レフカメラに限りなく近づけたことにより、多くの人々の記憶にある「カメラらしさ」を具現化したカメラとなっている。

OM-3のデザインコンセプトは、OM SYSTEMの前身であるオリンパスがかつて販売していたフィルム一眼レフカメラ「OM-1」であるという。OM-1(M-1から発売後に改称)は1972年に発売されたシステム一眼レフカメラの名称だ。当時まだ高性能な一眼レフカメラは大きく重くなるというのが常識とされていたなかで、画期的な小型軽量カメラとして人気を博し、その後登場する一眼レフカメラの小型軽量化を牽引した名機だ。それだけに当時のユーザーのみならず、新たにフィルム一眼レフカメラを始めようとする若い人までも巻きこみ、現在でも中古市場にて人気となっているカメラでもある。

かくいう筆者も当時からOM-1(および改良型のOM-1N)を愛用している一人である。2000年代以降カメラがデジタル化され代を重ねてきた現在においても、時折OM-1を手にする度にいつかはこの形状・軽さのデジタル一眼カメラが世に出てきてくれはしないだろうかと願うほどには、『カメラ=OM-1スタイル』であるという思い入れを深く持ち続けてきた。おそらく(一定の世代以上の)多くのカメラ好きの人々も同じような思いを持っていたことだろう。そこに登場した「OM SYSTEM OM-3」なのだから、それはみんな気にならないはずがない。そこでここではOM-3と当時のフィルム一眼レフカメラ「オリンパスOM-1N、OM-2」を並べ見比べてみることにしよう。

手前がこのたび新しく登場したOM SYSTEM OM-3、右奥がOLYMPUS OM-1N、左奥が同OM-2。こうやって並べてしまうとOM-3が現在の最新デジカメだと判っていても、軽く頭がバグってしまいそうなくらいに似ている。

手前がOM SYSTEM OM-3、右上がOLYMPUS OM-1N、左上が同OM-2。もちろん細部を見ると違いはあるが、事情を知らなければ同じカメラでしょ、と言われそう。

上からカメラ天面を見比べてみる。上面に配置されているダイヤル等はフィルムカメラとデジタルカメラの違いから用途は異なるが、これもぱっと見ではこの三機種が並んでいることに違和感を感じない。なおOM-1Nはペンタプリズム部にオプションのアクセサリーシューを取り付けてある。

右からOM SYSTEM OM-3、中がOLYMPUS OM-2、左がOM-1N。デジタルカメラの大きな特徴である背面モニターが見えるOM-3は、OM-1NおよびOM-2とのフォルムが異なるのでさすがに違いが判る。ただカメラ上面に配置されているダイヤルやスイッチ類の形状や配置がOM-1NやOM-2のものに丁寧に似せてあることが判る。このような点にOM SYSTEMのプロダクトデザイナーのこだわりを感じてしまう。なお旧OMシリーズ一眼レフカメラ(一桁シリーズ)の大きな特徴であるマウント部に設けられたシャッタースピードダイヤルは、OM SYSTEM OM-3においては再現されなかった。ちょっと残念。

OM SYSTEM OM-3にマウントアダプターを介して旧OM用レンズ「ZUIKO AUTO-S 50mm F1.2」を装着してみたところ、ものの見事に見た目がマッチしてしまった。実はマイクロフォーサーズカメラでは、旧OMレンズとの組み合わせでも撮影することはできる。ただしピント合わせはマニュアルフォーカス限定のうえ自動絞りも不可という制限がある。もちろんフィルム用として作られた古いレンズであるので、最新のデジタルカメラの画質を引き出すことはできないが、旧OMカメラのデザインを継承するOM SYSTEM OM-3だけに、ついこのような遊びをしたくなる魅力があるのだ。

時代を超えて写真の楽しみを繋いでいくデジタルカメラのFirst Heritageモデル

今回紹介したOM SYSTEM OM-3は、これまで同社が展開してきたミラーレス一眼カメラのなかではかなり尖った印象のカメラとなっている。その理由の一つとしてクラシカルな見た目が大きな要因となっていることは間違いないだろう。だがハイエンド機であるOM-1 Mark IIに肉薄する機能および性能が備わっていることを考えると、やはりOM-3はOMシリーズの最新かつ上位のモデルとしての実力を持ち合わせたカメラであることに間違いはない。つまり、OM-3は決して見た目重視だけのカメラではなく、最先端の機能を惜しみなく搭載された実戦向きのカメラであるということだ。このことは今回のレポートにおいてOM-3の画質/機能/使い勝手などの検証を行ったことでも実証されている。

ただそれを踏まえていても、旧OMシリーズを使用してきたユーザーとしては、OM-3のデザインには無条件で心が惹かれてしまうのも事実だ。一眼カメラがデジタル化されて以降、これほどまでにスタイリングに惚れてしまうカメラというものはあっただろうか。もちろん旧OMシリーズと比較すると「ここのボタンはもっとこっちに、このレバーの形状はあまり似ていない」といった注文はいくらでも出てくるのだが、そんなことを言いたくなってしまうほど気になるヤツとなっていたのである。

なんてことをつい考えてしまう筆者は、OM-3をスペックの高いカメラとしてだけでなく、写真をこれから長年共に楽しんでいく、相棒としての存在感を育んでいくことができるアイテムとして迎え入れたいと考える。デジタル一眼カメラが一般的となってすでに20年余り。時間はかかったもののようやくここまで辿り着いたということか。これからもきっと様々な個性的なカメラが生まれてくることだろうが、このOM-3はきっと「デジタル一眼で初めてのHeritageモデル」として、長く語り継がれることだろう。

■カメラバッグ/ネックストラップ協力 WOTANCRAFT

 

■写真家:礒村浩一
広告写真撮影を中心に製品・ファッションフォト等幅広く撮影。著名人/女性ポートレート撮影も多数行う。デジタルカメラ黎明期よりカメラ・レンズレビューや撮影テクニックに関する記事をカメラ専門誌に寄稿/カメラ・レンズメーカーへ作品を提供。国境離島をはじめ日本各地を取材し写真&ルポを発表。全国にて撮影セミナーも開催。カメラグランプリ2016,2017外部選考委員・EIZO公認ColorEdge Ambassador・(公社)日本写真家協会正会員

 

 

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