ヒガンバナを撮ろう!|上手に撮る方法をプロが紹介 ~吉住志穂~

吉住志穂
ヒガンバナを撮ろう!|上手に撮る方法をプロが紹介 ~吉住志穂~

はじめに

 秋のお彼岸のころになると、葉も何もなかった地面から緑の蕾がニョキニョキと伸び、真っ赤な花を咲かせるヒガンバナ。鮮やかな花色が特徴なので、やや暗めの露出で色を濃く見せるのがスタンダードですが、私は淡くハイキーに撮るのも好きです。また、花の形も独特なので、長いシベと反り返った花弁の造形をクローズアップしたり、シルエットで狙うのも面白いものです。

 田んぼの畦や川辺の土手などに群生し、まるで真っ赤な絨毯のように華やか。首都圏では埼玉県の日高市にある巾着田が日本最大の群生地として有名です。

一輪を引き立てる

 たくさん群生していると、どれを主役にすればいいのか迷ってしまいますよね。そんなときは花の高さまで目線を下げれば、周りよりも丈の長い花だけが目立って見えます。その花にピントを合わせれば、自然と主役がはっきりした写真になります。主役はシャープで、それ以外の花はボケているのが理想的ですが、主役と同じ距離にある花はピントが合ってしまうので、この作例は下の花に前ボケを被せました。林の雰囲気を残した背景を選び、赤と緑の色の対比を作り出しています。

■撮影機材:オリンパス E-M1 MarkII+ M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
■撮影環境:絞り優先・150mm・F2.8・ISO200・1/40秒

前ボケで包み込む

 画面全体が赤く覆われていますが、これは前ボケが全体的にかかっているためです。全体的といっても、ぼかす花がレンズ前を全て覆っていては主役が写らないので、複数のヒガンバナの花と花との隙間から覗くように写しています。そのため、主役はシャープでありながら全面にボケがかかっているのです。また、画面に丸ボケが見られますが、これは前ボケになった花の光が反射した部分。ヒガンバナはシベに艶があって、光を反射するのですが、その輝いた部分がボケると白く丸いボケになります。

■撮影機材:オリンパス E-M1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
■撮影環境:絞り優先・150mm・F2.8・ISO200・1/1250秒

夕暮れの木漏れ日

 夕暮れになって、木々の間から夕日の木漏れ日が射し込んできました。夕陽をぼかせばひとつの大きなボケになりますが、木漏れ日なので小さく丸ボケが分散して、キラキラと輝きます。日中のボケとは違い、オレンジに色に染まった丸ボケが美しいですね。日が傾いてきてから、完全に落ちてしまう前の僅かな時間帯でチャンスをものにしましょう。ここではボケの明るい部分とシベの先端を重ねて、そこに見る人の視線が行くようにしています。

■撮影機材:オリンパス E-M1 Mark II + M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
■撮影環境:絞り優先・150mm・F2.8・ISO200・1/250秒

水滴の輝き

 この日は撮影地に到着するまで雨が降っていて、撮影を始めた頃に雨が止むという、水滴を撮るには絶好のタイミングでした。シベを真横から写すと、手前、中、奥へと奥行きがあり、中程にピントを合わせると前後のシベとシベに付着した水滴がボケました。水滴は曇り空を映し込むので、ぼかすと白く輝きますよ。シベの部分だけをクローズアップしたいので、望遠レンズでピントが合うギリギリまで迫るか、マクロレンズを使いましょう。マクロレンズは通常のレンズよりも近距離でピントが合わせられるので便利です。雨の日は色が濁りやすいので、見た目よりも明るく仕上げました。またホワイトバランスをカスタムで調整し、雨の日らしく、少し青みを加えています。

■撮影機材:オリンパス E-M1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
■撮影環境:絞り優先・150mm・F2.8・ISO200・1/40秒

光の道

 密集して咲いているヒガンバナの群生に、夕陽が低い角度から差し込んでいました。丈の高い花だけに日が当たって、周囲は影になっているので、まるで花の道が現れたようです。赤色はもともとマイナス補正が必要な色ですが、ヒガンバナを写すときは、基本的には僅かにマイナス補正をかけるくらいで適正露出が得られます。しかし、ここでは黒い日陰の部分も多く、また明るい部分を強調したかったので、ぐっと露出を落とし、マイナス2.7EVの大幅な露出補正をかけています。

■撮影機材:オリンパス E-M1 Mark II + M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO
■撮影環境:絞り優先・12mm・F5.6・ISO200・1/160秒

小さな世界

 うまく育たず、長く茎を伸ばせないまま咲いた花がありました。決して珍しいものではなく、気にしているとよく見かけます。そんな花に注目してみるのもいいですね。背の高い大人に囲まれた子どものようで、健気に咲く姿には愛らしさを感じます。この花を目立たせるためには他の花を入れないのがポイント。周囲は茎だけにして花は画面からカットしています。

■撮影機材:オリンパス E-M1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
■撮影環境:絞り優先・73mm・F2.8・ISO200・1/40秒

シルエットで魅せる

 ヒガンバナは花の形が特徴的なので、シルエットで写すのもいいですよ。この作例は日の入り後の空を背景にして写しました。地上のヒガンバナは日が当たらないので暗いですが、空はまだほのかに明るいので、その明暗差からシルエットになるのです。もちろん、露出補正を使って花に露出を合わせることもできますが、それでは空が真っ白になってしまいます。ここは空に露出を合わせることで、自然と花はシルエットになるのです。12mmの広い画角レンズを選び、低い位置から見上げることで、空の広がりと空へ伸びるような遠近感を表現することができました。

■撮影機材:オリンパス E-M1 Mark III + M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO
■撮影環境:絞り優先・12mm・F8・ISO200・1/30秒

終わりかけの美

 基本的に、綺麗に写すには旬の花を選びましょうとお話ししていますが、最近では“終わりかけの美”が気になっています。綺麗な花を綺麗に写すというのは当たり前ですが、旬をすぎた花をどうしたら美しく感じさせられるのかというのが、今の課題でもあります。そのきっかけとなったのがこの作品で、小川の煌めきを背に、終わりがかったヒガンバナが最後の輝きを見せてくれました。この作品から何か感じるものがあるのか、ないのかをぜひみなさんにお伺いしたいです。

■撮影機材:オリンパス E-M1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
■撮影環境:絞り優先・110mm・F2.8・ISO200・1/10000秒

まとめ

 ヒガンバナは好きな花のひとつなので、いろいろな撮り方に挑戦したくなります。今回ご紹介したように群生を狙ったり、一輪をアップにしたり、部分を切り取ったりすることができますし、ハイキー、ローキー、シルエットなど、豊かな表現ができる花です。実際の見た目は真っ赤な花色で、暗めに写すと妖しげに見えますが、明るく写すとピンクっぽくなるので、優しい雰囲気も出せます。テクニックを上手に組み合わせて、一種類の花から、いろいろなイメージを引き出してみましょう。

 

 

■写真家:吉住志穂
1979年東京生まれ。日本写真芸術専門学校卒業。写真家の竹内敏信氏に師事し、2005年に独立。「花のこころ」をテーマに、クローズアップ作品を中心に撮影している。2021秋に写真展「夢」、2022春に写真展「Rainbow」を開催し、女性ならではの視点で捉えた作品が高い評価を得る。また、写真誌やウェブサイトでの執筆、撮影講座の講師を多数務める。

・日本写真家協会(JPS)会員
・日本自然科学写真協会(SSP)会員

 

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