コスモスを撮ろう!|可憐に撮る方法をプロが紹介 ~吉住志穂~

吉住志穂
コスモスを撮ろう!|可憐に撮る方法をプロが紹介 ~吉住志穂~

はじめに

 10月にもなると花のシーズンはほぼ終盤です。その中で人気が高い花といえば、コスモスではないでしょうか。濃淡の違うピンクや白の花色が優しげで、爽やかな秋空の下で咲く姿がイメージされます。馴染み深い、スタンダードな花ですが、品種改良が進み、珍しい花色や形をしたものも見られます。

 コスモスの開花期は10月ですが、コスモスよりも少し早めに黄色やオレンジの花をつけるキバナコスモスも人気があります。いずれも秋風にそよそよと揺れる姿が可憐ですが、群生には華やかさもあり、一輪をアップで写すのもいいですし、花畑全体を狙うのもいいでしょう。

秋晴れの空

■使用機材:オリンパス OM-D E-M1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO
■撮影環境:絞り優先・12mm・F2.8・ISO200・1/4000秒

 秋晴れの空にコスモスを重ねました。空の青色を出すには順光で撮影するのがポイントです。順光は花に対して正面から光が当たる状態。つまり、自分の背中側に太陽があるわけです。青空の日に空全体を見回すと、順光側とその逆の逆光側では青空の濃度が違います。

 空の青が濃く見える順光で撮影することで、背景に爽やかな青空を重ねることができるのです。私の場合、順光は影が強く出ることがあるので避けることが多いのですが、背景に青空を入れる場合は積極的に順光を選びます。

可憐なコスモス

■使用機材:オリンパス OM-D E-M1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
■撮影環境:絞り優先・150mm・F2.8・ISO320・1/320秒

 初心者の方の場合、うっかり花が小さく写って主役がどれだかわからないといったケースがあります。被写体に迫りきれず、漠然と撮ってしまうと、見る人には主役がどの花なのかが伝わりにくいものです。徐々に撮影に慣れてくると、クローズアップが楽しくなってきます。

 しかし、画面いっぱいにアップで撮れば主役の花はわかりやすいですが、小さく可憐な雰囲気は出てきません。そこで、小さく写しても主役が明確になる撮り方を目指します。主役を画面内に小さく配置しますが、主役の花と背景の花々が離れている場所を選んでいるので背景がボケやすくなります。

 また、機材面では望遠系のレンズを選び、絞りを開けます。すると、花は小さく写っているのに、背景がボケるという写真になります。このようなテクニックを使って、コスモスの可憐な雰囲気を引き出してみましょう。

花畑の賑わい

■使用機材:オリンパス OM-D E-M1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
■撮影環境:絞り優先・150mm・F2.8・ISO200・1/400秒

 キバナコスモスは黄色とオレンジの花色がありますが、二色が分かれて植えられているところに目をつけました。花畑を撮るとき、ピントを合わせる位置は真ん中より手前寄りが多いのですが、ここではいちばん奥に合わせています。かつ、望遠レンズを使い、絞りを開けることで、手前の花々をぼかすことができました。

 手前の花がボケることでふんわりとした雰囲気が出るだけではなく、奥行き感も出てきて広がりを感じるし、花がたくさんあるように見えるので賑やかな印象になります。立った状態からアングルを下げると前ボケとの重なりが多くなるので、立ったり、しゃがんだりしながら、ベストなアングルを探してください。

コスモスの造形美

■使用機材:オリンパス OM-D E-M1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro
■撮影環境:絞り優先・60mm・F2.8・ISO200・1/800秒

 マクロレンズで一輪のコスモスをクローズアップしました。画面全体にすっぽり収めるのもいいですが、それを超えて、画面からはみ出すほどにアップにすると迫力が生まれ、形の美しさが見えてきます。花を撮るときは雰囲気重視の場合と、このような造形に重きを置いて撮るパターンがあります。

 ここではコスモス全体にピントが合うよう真正面から撮っていますが、背景はぼかしたいので絞りは開放のF2.8です。花をアップにした時も背景には気を配り、コスモスのピンク色が入る場所を選んでいます。通常のレンズでもある程度、花に寄れますが、マクロレンズなら容易にクローズアップできます。花を撮るなら持っていると便利ですね。

夕暮れ空とシルエット

■使用機材:オリンパス OM-D E-M1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO
■撮影環境:絞り優先・12mm・F4.5・ISO200・1/800秒

 秋になるとだんだんと日の入りの早まりを感じます。秋の夕暮れ空にコスモスのシルエットを重ねてみました。夕日が落ちると、地上には光が当たりませんが、空はまだほのかに明るく見えています。この明暗差を利用してシルエットを作り出すのです。

 一輪だけ丈の長い花を選び、低いアングルから狙うと、その一輪だけが空と重なります。露出は花ではなく、ここでは空に合わせると、明暗差から花が暗く写るのです。この方法はどの花でも使えるテクニックですが、丸型の花などの、シルエットになったときに黒い塊になってしまう花は避けましょう。コスモスの場合、花びらの形から“コスモスらしさ”が感じられるので、ぴったりですね。

秋の落日

■使用機材:オリンパス OM-D E-M5 Mark III + M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4.0 PRO
■撮影環境:絞り優先・150mm・F4.0・ISO200・1/200秒

 背景に夕陽を入れると、大きな丸ボケになります。小さなコスモスと大きな太陽が重なるなんて素敵ですよね。しかも、オレンジ色に染まってとても綺麗。太陽の位置がかなり低くならないと光が強すぎるので、日没が建物や木々に邪魔されない、開けたところで撮るのが理想的です。

 広大な原っぱや河川敷、海辺などが狙い目。夕日は大きくぼかしたいので望遠系のレンズで絞りを開けましょう。花に近づくことでもボケを大きくできます。絞りを絞ってしまうと丸いボケが角張るので要注意です。主役と背景とでコントラストが強いので、オートフォーカスでのピント合わせが迷いやすくなります。マニュアルフォーカスでもしっかり合わせられるよう、普段から練習しておきましょう。

チョコレートコスモス

■使用機材:オリンパス OM-D E-M1 MarkII + M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
■撮影環境:絞り優先・120mm・F2.8・ISO250・1/200秒

 スタンダードなコスモスはセンセーションと呼ばれる品種で、他にも、八重咲きのものや花びらが巻かれているシーシェルといった、変わった形のコスモスが見られます。また、形はセンセーションに似ていますが、黄色いイエローガーデンやピンクと黄色が混ざり合ったようなオレンジキャンバスも人気があります。

 その中でも変わり種なのがこのチョコレートコスモス。名前の通り花が茶色いだけではなく、ほのかにチョコレートのような甘い香りがします。ただ、色が地味なのと花も小ぶりなので、写真にすると華やかさに欠けるのが難点。そこで、別の花をぼかして、背景に華やかさを出しましょう。ここではキバナコスモスの黄色やオレンジを入れました。

かわいいつぼみ

■使用機材:オリンパス OM-D E-M1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro
■撮影環境:絞り優先・60mm・F2.8・ISO200・1/60秒

 基本的に開いた花を狙いますが、バリエーションを増やす意味で、つぼみを主役にするのもひとつです。緑だけの硬いつぼみより、花びらが見え始めた、ほころびかけのつぼみを選びました。色もあるので綺麗ですよね。

 しかし、つぼみを画面いっぱいにアップで撮ってしまうと迫力が出て、つぼみの可憐さが感じられなくなります。前の項目でも解説したように、花を小さく写して可憐さを引き出しましょう。その代わり、画面に空間が多くできるので、彩りのボケで埋めてください。ここではキバナコスモスの黄色い背景ボケと前ボケで挟み込んでいます。主役が小さいので、画面はシンプルにして目立たせることも忘れずに。

おわりに

 コスモスの撮影でいちばんの大敵は風です。コスモスは先月ご紹介したヒガンバナと比べると、花の大きさに対して茎がとても細く柔らかいので、わずかでも風が吹くと揺れてしまいます。そのため、被写体ブレに注意しましょう。風が吹いているときは止むのを待ちます。

 また、ブレていなくても花が前後に揺れることによってピントがずれるので、多めに撮って、再生して確認しましょう。あとからパソコンで確認したらブレていた、ピントがずれていたとがっかりすることが無いよう、いいシーンは確実に残していきたいですね。

 

 

■写真家:吉住志穂
1979年東京生まれ。日本写真芸術専門学校卒業。写真家の竹内敏信氏に師事し、2005年に独立。「花のこころ」をテーマに、クローズアップ作品を中心に撮影している。2021秋に写真展「夢」、2022春に写真展「Rainbow」を開催し、女性ならではの視点で捉えた作品が高い評価を得る。また、写真誌やウェブサイトでの執筆、撮影講座の講師を多数務める。

・日本写真家協会(JPS)会員
・日本自然科学写真協会(SSP)会員

 

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