フルサイズをもっと日常に。ニコンZ5IICで撮る、いつもの景色

鎌田風花
フルサイズをもっと日常に。ニコンZ5IICで撮る、いつもの景色

はじめに

こんにちは、フォトグラファーの鎌田風花です。
ニコンから新しいフルサイズミラーレスカメラ「Z5IIC」が発表されました。「フルサイズのカメラ」と聞いて、みなさんはどんなイメージが浮かびますか?特にこれから初めてカメラを手にする方にとっては、何となく「大きくて、重たくて、操作も難しそう…」と感じる方もいるのではないでしょうか。

確かに、お手軽なスマホと比べれば大きくて重たいものがほとんどです。ですが、カメラで撮る楽しさや、写真に残す価値は十分にあると思っています。私が写真で残したいのは、特別な出来事だけではありません。いつもの散歩道でそっと咲いている花や愛猫がくつろいでいる時間、そんな日常の中にある小さな幸せです。そういう景色こそ、毎日持ち歩けるカメラで、気負わずに撮りたいと思っています。そして自分の好きな雰囲気で、美しくイメージ通りに残せたらもっと嬉しいですよね。

そこで、ひとつの選択肢となるのが新しいカメラ「Z5IIC」です。
Z5IICは、2025年4月発売の「Z5II」と同等の性能を持ちながら、カメラを操作するのが初めての方でも、直感的に楽しめる使いやすさがあります。Z5IICの「C」は「カジュアル」という意味です。それくらい、気軽にフルサイズのカメラを使ってもらいたいという思いが込められています。

この記事では、Z5IICのサイズ感や使い心地、おすすめの機能を使った写真の楽しみ方を、写真とともにご紹介します。(Z5IICは2026年10月23日発売予定です。)

Zシリーズの中のZ5IIC

同じフルサイズの「Z5II」と「Z5IIC」。まず大きな違いは、ファインダーの有無です。
ファインダーがない分、Z5IICは少し軽くなりました。バッテリーとSDカードが入った状態で、Z5IIが約700g、Z5IICが約620gです。さらに、カメラ上部の凹凸が少ないフラットなデザインなので、バッグから出し入れするときに引っ掛かりにくく、スムーズです。装着するレンズをコンパクトなものにすると、見た目もよりすっきりします。気軽に持ち歩くことを重視するなら、クッション性のあるポーチに入れて持ち出す機会も多くなりそうです。

Z5IICにNIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S IIを装着して、カメラバッグに入れました。厚みが薄いカメラバッグでも、上部がフラットなので出し入れがスムーズでした。

個人的には、Z5IICのシルバーとNIKKOR Z 40mm f/2 SEの組み合わせが、コンパクトにまとまり、クラシカルな雰囲気になって可愛いと思っています。
カラーは、ブラックとシルバーの2色展開です。上部の色が変わると、カメラ全体の雰囲気も変わるので、好みに合わせて選べるのは嬉しいところです。

他にもZ5IIとはいくつか違いがあります。背面モニターのドット数は、Z5IIが210万ドット(Zfなどと同じ)なのに対して、Z5IICは104万ドット。モニターを並べてじっくり見比べれば違いは分かりますが、104万ドットでも、十分写し出される画は美しく、見づらいなと感じることもありませんでした。

SDカードのスロットは、Z5IIが2つ、Z5IICは1つです。2つあれば同時に保存してバックアップが取れますが、日常の撮影が中心なら、RAWとJPEGの同時書き出しをするなど、1つでも困る場面は少なそうです。

グリップはしっかり握れる深さがあり、安定感があります。ZシリーズのカメラはAPS-Cからフルサイズまで、サイズも強みもそれぞれ異なるラインナップとなります。できるだけコンパクトでグリップもしっかりあり、気軽にフルサイズのカメラを使いたい方にとって、Z5IICはカメラ選びの候補として入れたい一台です。

ファインダーレスという選択

Z5IICは、ファインダーを搭載しません。構図を決めるのも、ピントを確認するのも、背面モニターになります。普段から写真を撮っている方なら、「ファインダーがないと、撮りにくいのでは?」と心配になるかもしれません。実際に使ってみた体験を、作例を交えてお伝えします。

バリアングルモニターで自由に撮る

Z5IICの背面モニターは、角度を自由に変えられるバリアングル式です。

ローポジションで地面すれすれから花や猫を撮るとき、ハイポジションで頭上にカメラを掲げて撮るときなど、ファインダーを覗くために体勢を崩す必要がなく、モニターを見ながら自然な姿勢で構えられます。私自身も、ローポジションなどさまざまなアングルで撮ることが多く、普段から背面モニターを見て撮る機会が多いので、ファインダーレスでも撮影はスムーズに行えました。ファインダーがなくても、バリアングル式のモニターのおかげで、撮りやすい印象です。

NIKON Z5IIC |NIKKOR Z 70-180mm f/2.8 1/640秒 F/2.8 ISO100 140mm イメージングレシピ:Tender Clear

背の低い花を、地面すれすれで撮影しました。奥の花にピントを合わせ、手前の花をしっかりぼかすことで、奥行き感を表現できました。モニターを横に開いて角度を調整し、仕上がりを確認しながら撮影しています。

ファインダーを覗かないからこそ

ファインダーを覗かない撮り方には、ほかにも良さがあります。

たとえば、周りの様子が見えやすいこと、ポートレートなどでコミュニケーションを取りやすいことなど。特に後者は、家族写真などを撮る際、カメラが大きくなるほどファインダーで構えると、相手に圧迫感を与えてしまうと感じています。相手の表情を見つつ、目線を合わせながら撮ることで、リラックスして写ってもらえることが多いです。

また、カメラ初心者のワークショップ講師をしていて感じるのは、スマートフォンの操作に慣れている方には、ボタンやダイヤルよりも、モニターのタッチ操作のほうが直感的に使える方が多いということです。

気をつけたいこと

一方で、ファインダーレスならではの注意点もあります。

それは明るい屋外ではモニターが見づらくなる点です。画面が反射して、構図やピントが確認しにくい場面があります。

NIKON Z5IIC |NIKKOR Z 70-180mm f/2.8 1/4000秒 f/3.2 ISO800 180mm

朝日に照らされたコスモスを逆光で撮影しました。光の向きによって、写真の印象は大きく変わります。光を浴びる植物たちは、生き生きとして美しいです。この撮影では、モニターの角度を変えながらピントと構図を確認しました。極端なシチュエーションですが、このような強い逆光のシーンでは、正直ファインダーがあった方が見やすいな…と感じました。

対策としては、モニターの角度を反射しづらい向きに調整すること、モニターの明るさを調整することなどが挙げられます。少し工夫することで見やすさが変わります。また、モニターを見ながら撮るときは身体からカメラを離して構えるため、安定感が下がりブレやすくなる傾向がありますが、その点、Z5IICは最大7.5段の強力なボディ内手ブレ補正が搭載されているので、ブレにくく安心です。

ファインダーレスは、撮り方の選択でもあります。ローポジションやさまざまな角度で撮ることが多い方、画面を見ながら気軽に撮りたい方には相性が良い一台です。一方で、ファインダーを覗いてじっくり構図を決めたい方、明るい屋外での撮影が多い方、動きのある被写体を追いかけたい方にはZ5IIの方が向いているかもしれません。

どちらにも良さがあります。大切なのは、自分の撮り方に向いているかどうかをしっかりと判断することだと思っています。

フルサイズ初のシーンモード

Z5IICのモードダイヤルに「SCN」と書かれているところがあります。これが、ニコンのフルサイズミラーレスで初めて搭載された「シーンモード」です。

使い方はシンプルで、ダイヤルをSCNに合わせて、撮りたいシーンを選ぶだけ。ポートレート、ペット、料理など、15種類のシーンの中から選ぶと、ホワイトバランスやピクチャーコントロールなどさまざまな設定が、自動で最適化されます。初心者にとって難しく感じてしまう、シャッタースピードや絞りを頭で組み立てなくても、「今何を撮りたいか」に集中して、シャッターを切ることができます。

実際に使ってみて

まずは【ペット】に合わせて、愛猫を撮影してみました。(一部明るさのみ、撮影後に調整しています。)

NIKON Z5IIC |NIKKOR Z 40mm f/2 (SE) 1/500秒 f/2 ISO 9000 シーンモード:ペット

かくれんぼしているつもりで、今にも飛び出しそうな瞬間を狙っています。

使いやすいと感じた点は、モードを変えると自動で高速連続撮影に設定されたこと。実は結構設定し忘れて、シャッターが間に合わなかった…ということがあります。また、ペットの予測しづらい動きにも対応するため、シャッタースピードも遅すぎない設定になっています。ただし、暗めの室内だとISO感度が上がってしまうので気をつける点となります。自動で設定してくれるので失敗写真が減ることが、このシーンモードを選択するメリットです。

【料理】

NIKON Z5IIC |NIKKOR Z 40mm f/2 (SE) 1/125秒 f/4 ISO 500 シーンモード:料理

窓から入る自然光と室内の照明がミックスされ、難しいシチュエーションでしたが、ホワイトバランスは程よく調節されています。カップケーキとクリームの質感もしっかりと描写されていて、被写体の色は彩度があるものの誇張しすぎず、目で見た状態に近い写りになっています。

【クローズアップ】

NIKON Z5IIC |NIKKOR Z 40mm f/2 (SE) 1/125秒 f/4 ISO 450 シーンモード:クローズアップ

あえて手前にあった花を前ボケにして撮影してみました。私は何も設定していませんが、撮影者の意図を汲むように手前の花をしっかりぼかし、植物の本来の色を写し出しています。花や小さなものを接写する際に活用できるモードです。

【風景】

NIKON Z5IIC |NIKKOR Z 24-50mm f/4-6.3 1/500秒 f/11 ISO 100 50mm シーンモード:風景

「風景」モードは、風景を鮮やかでシャープに写すことができます。自動でF値が絞られていて、解像感も伺えます。もともとニコンのカメラが写す青が、自然体でしっかりと色乗りするので好きなのですが、このモードはより色乗りの良さを感じます。目で見た感動をそのまま写真に残す。それがモード選択で簡単に行えるようになりました。

 

15種類あれば、ある程度のシーンに対応することが可能です。初心者の方の「設定が分からない」「何を触ればいいのか迷う」という声をこれまでたくさん聞いてきたので、まずは悩むよりもシーンモードを使って撮影を楽しんでほしいです。「こういう写真が撮りたい」という感覚をつかんで、そこから少しずつステップアップするのに、フルサイズという選択は可能性が広がるのではないでしょうか。

設定をカメラに任せる分、細かく自分で調整したいときには物足りなく感じることもあるかもしれません。そんなときはダイヤルを変えて、ぜひ自分でコントロールするモードにチャレンジしてみてください。

ニコン初の、被写体検出「魚」

Z5IICには、これまでニコンのカメラにはなかった機能があります。ピントを合わせる被写体として、ニコンで初めて「魚」を検出できるようになりました。

被写体検出とは、カメラが人物や動物、乗り物などを自動で見つけてピントを合わせてくれる機能です。Z5IIにはフラグシップ機と同等の9種類の被写体検出が搭載されていますが、Z5IICでは、そこに新しく「魚」が加わり10種類となりました。

水族館などで魚を撮った経験がある方は分かると思いますが、魚は動きが早く、進む方向も読みづらいのでピントを合わせるのが難しい被写体のひとつです。

実際に被写体検出を「魚」にして撮影してみました。

NIKON Z5IIC |NIKKOR Z 40mm f/2 (SE) 1/320秒 f/2.5 ISO 1250 イメージングレシピ:Tender Clear

比較的ゆっくりと泳ぐ魚に関しては瞬時に瞳を検出して、しっかりと目にピントが合います。ピントをカメラに任せられるので、撮影者は魚の向きや構図、明るさなどを考える余裕が生まれます。

この写真のピント位置はここです。

赤枠がピント位置

ピンポイントで目にピントが合っていることが分かります。

目を認識しやすい魚に関しては全く問題なく、全体的に模様がかかっているカサゴなどは、フォルムで魚と認識して顔のあたりにピントが合っていました。(目を認識しやすい角度によっては、しっかり目にピントを合わせていました。)

館内は暗く、水槽のガラス越しに撮ることがほとんどです。レンズをガラスから離し、角度を付けてガラス越しに撮ると、不要な写り込みや歪みが発生してしまいます。できるだけレンズをガラスに近づけて平行にすることがポイントです。黒っぽい服装のほうが、反射が抑えられて撮りやすくなります。

NIKON Z5IIC |NIKKOR Z 40mm f/2 (SE) 1/200秒 f/2 ISO 1250 イメージングレシピ:Tender Clear

※レンズとガラスがぶつからないよう、十分注意してください。また水族館などで撮る際は、必ず施設の撮影マナーに従ってください。生き物にストレスを与えるのでフラッシュは厳禁です。

ピクチャーコントロールボタンとイメージングレシピ

SNSで見かけるような写真で、「こんな雰囲気で撮りたい」と思っても、撮影後に編集で調整するのは、初心者の方にはハードルが高いものです。Z5IICには、簡単に写真や動画の色味や雰囲気を変えることができる「ピクチャーコントロール」を選べる専用のボタンがあります。(Z5IIとZ50IIにも搭載されています。)

撮影モードダイヤルの隣が、ピクチャーコントロールボタン

その中でも「イメージングレシピ」は細かく色調整ができるため、自由度が高いピクチャーコントロールになります。ニコン公式の画像編集ソフト「NX Studio」を使えば自分でも作成することができますが、ニコンやクリエイターが作っているものがたくさん公開されており、WEBからカメラにダウンロードすることができるのでお試しください。

イメージングレシピ

自身で作成している、Tender Clearを使って撮影しました。

NIKON Z5IIC |NIKKOR Z 70-180mm f/2.8 1/160秒 f/2.8 ISO100 105mm イメージングレシピ:Tender Clear

カラフルな花畑でも色のまとまりが良く見えるように、各色の調節を行っています。また、やわらかな雰囲気が好きなので、写真全体の明瞭度を下げています。

NIKON Z5IIC |NIKKOR Z 40mm f/2 (SE) 1/400秒 f/2.5 ISO 400 イメージングレシピ:Tender Clear

雨粒をまとった青い花に、右手前のやわらかな前ボケが重なることで、淡く空気感のある一枚になるよう意識しました。青や緑に透明感が出るイメージングレシピです。

動画でも、フィルムグレイン

Z5IICにはニコンZfで追加された、フィルムグレイン機能が搭載されています。フィルムのような粒状感を加えて、印象的な世界観をつくることができます。動画でも使えるようになったので静止画と動画で同じ雰囲気に揃えることができます。ただし動画で使う場合は、4KやRAW、10bitを除くなど一部制限があります。

NIKON Z5IIC |NIKKOR Z 40mm f/2 (SE) 1/1000秒 f/2.5 ISO 1250 ピクチャーコントロール:モノクローム
フィルムグレイン:強度/3 サイズ/小

雨の日に、街をモノクロ×フィルムグレインを使って撮影しました。撮ったままで、フィルムで撮影したような質感に仕上がりました。よく通る道も、ピクチャーコントロールで雰囲気を変えて写真を楽しむことができます。

さいごに

ニコンZシリーズのカメラはAPS-Cからフルサイズまで、サイズも強みもそれぞれ異なるラインナップです。描写は妥協したくないけれど少しでもコンパクトなものが良い。グリップもしっかりあって、気軽にフルサイズのカメラを使いたい。そんな方にZ5IICをぜひ使ってみてほしいです。

「フルサイズを日常で気軽に使ってみたい方」「カメラの設定にまだ自信がない方」「ローポジションなどさまざまなアングルで撮る方」。実際に使ってみた印象では、このカメラはそのような方に向いていると思います。カバンにも入れやすいので、すでに上位機種をお持ちの方は、サブカメラとしても使いやすい一台です。

フルサイズを、もっと日常に。
Z5IICと一緒に、みなさんのいつもの景色を美しく切り取ってみませんか。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

NIKON Z5IIC |NIKKOR Z 40mm f/2 (SE) 1/1000秒 f/2 ISO 400
NIKON Z5IIC |NIKKOR Z 70-180mm f/2.8 1/1000秒 f/3.2 ISO800 115mm

 

 

■フォトグラファー:鎌田風花
兵庫県在住。一般企業への就職を経て2017年よりフォトグラファーとして活動。ナチュラルで透明感のあるポートレートや風景写真を得意とし、家族写真の出張撮影や広告撮影、写真セミナーの講師などを務める。
近畿日本鉄道「わたしは奈良派」広告掲示(2023年春/夏)。その他カメラ、レンズのパンフレット撮影など。Nikon CP+ステージ登壇(2022~2026年)。ニコンカレッジ講師。

 

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