ニコン NIKKOR Z 24-105mm f/4-7.1 レビュー|機動力と高画質が融合した新スタンダード

Amatou
ニコン NIKKOR Z 24-105mm f/4-7.1 レビュー|機動力と高画質が融合した新スタンダード

イントロダクション

都市は巨大な生き物のようにその表情を刻一刻と変化させます。圧倒的な質量を持つ建築群が織りなす幾何学模様、路地裏に落ちる鋭い影、そして行き交う人々の刹那のドラマ。これらすべてを一本のレンズで、しかも軽快に残したいと願うのは都市写真家にとって永遠のテーマと言えるでしょう。

これまで標準ズームと呼ばれるレンズ群は利便性と引き換えに何かを妥協する存在として語られることが少なくありませんでした。F値が変動する、解像力が単焦点に劣る、あるいは帯に短し襷に長し…。

しかし、2026年1月30日、ニコンから登場する「NIKKOR Z 24-105mm f/4-7.1」はそうした既成概念に対する一つの回答であり、Z マウントシステムが到達した実用性の極地とも言える存在です。


約350gという驚異的な軽量ボディに広角24mmから中望遠の域を超える105mmまでを凝縮。さらにハーフマクロに迫る近接撮影能力までを備えたこのレンズは画質の妥協ではなく、撮る自由を最大化するための選択肢といえるでしょう。ニコンの光学技術の粋を集めたEDレンズや非球面レンズの採用によりクラスを超えた描写性能を実現しています。

本稿では最新のニコン Z5IIと本レンズを携え、都市の風景を切り取りながらその実力を多角的に検証していきます。スペックシートの数字だけでは語り尽くせないフィールドでこそ輝くこのレンズの真価を、技術的・実践的側面から分析していきます。

約350gがもたらす知覚の拡張

まず、このレンズを語る上で避けて通れないのが約350gという質量です。全長約106.5mm、最大径約73.5mm。これは単に軽いという物理的な事実以上の意味を持ちます。

都市スナップにおいて機材の重さは撮影者のフットワークに直結し、ひいては精神的な余裕さえも左右します。一日中歩き回り多くのシャッターを切るような撮影スタイルにおいて重い機材は徐々に集中力を削いでいきます。
しかし、NIKKOR Z 24-105mm f/4-7.1をZ5IIに装着した時のバランスはまるで手の一部になったかのような一体感をもたらします。


カメラを構える動作にストレスがないため、視界の端で何かが動いた瞬間にレンズを向けることができる。この即応性こそが予測不可能な都市の瞬間を捉えるための最大の武器となります。どこにでも持ち歩けるサイズ感は撮影を目的としない日常の移動中であっても、常に撮るという選択肢を我々に与えてくれます。

軽量化を図りつつもニコンは持つ喜びを忘れてはいません。鏡筒の根元部分には、金属のような質感を湛えたスピンリングが採用されています。光の当たり方によって鈍く輝くそのテクスチャはプラスチッキーな安っぽさを排除し、精密機器としての信頼感を演出しています。

また、ズームリングとコントロールリングの間に設けられた段差のあるデザインは指先の感触だけでリングの位置を把握するのに役立ちます。ファインダーから目を離すことなく、直感的に操作できるデザインへの配慮。これらは長年カメラを作り続けてきたニコンだからこそ成し得る機能美の表れと言えるでしょう。

MTF曲線から読み解く光学性能の真実

「便利ズームだから画質はそこそこ」という時代は終わりました。本レンズの光学性能を客観的に示すMTF(Modulation Transfer Function)曲線を紐解くとZ マウントの基準がいかに高いレベルにあるかが分かります。

■Wide
■Tele

参照元:https://nij.nikon.com/products/lineup/nikkor/zmount/nikkor_z_24-105mm_f4-71/spec.html

10本/mmに見る「ヌケの良さ」

まず注目すべきは、コントラストの再現性を示す10本/mmのラインです。

広角端(Wide) 画面中心部において1.0に近い極めて高い数値を記録しています。これは被写体の輪郭をくっきりと描き出し、都市風景において重要な線の強さを表現できることを意味します。

望遠端(Tele) こちらも中心部は非常に高く、周辺に向かってもなだらかに推移しています。望遠撮影時の浅い被写界深度の中でもピント面がキリッと立ち上がる描写が期待できます。

30本/mmに見る「解像力と均質性」

次に、微細な部分の解像力を示す30本/mmのラインを見てみましょう。
一般的に高倍率ズームレンズは、広角側の周辺部で急激に解像力が低下する傾向にあります。
しかし、本レンズの曲線は周辺部(像高15mm付近)に至るまで落ち込みが非常に緩やかです。これは10群12枚というレンズ構成の中でEDレンズ1枚と非球面レンズ2枚を効果的に配置し、諸収差を徹底的に補正した結果でしょう。

さらに特筆すべきは、実線(放射方向)と破線(同心円方向)の乖離が少ない点です。この二つの線の間隔が開いていると非点収差が発生しやすく、ボケ味もざわつきがちになります。しかし本レンズはこの乖離が少なく抑えられており、素直なボケ描写と夜景撮影時の画面周辺における点光源の再現性が高いレベルで安定していることを示唆しています。

ここからは本レンズが具体的にどのような描写を見せるのか焦点距離やシーンごとにグルーピングして詳細に解説していきます。

広角域が描く都市の骨格とパースペクティブ

都市風景において、広角域(24mm程度)という焦点距離は建築物のダイナミズムや空間の広がりを表現するために不可欠な画角です。

■ニコン Z5II + NIKKOR Z 24-105mm f/4-7.1
■焦点距離24mm f10 1/200秒 ISO100

ジャンクションの曲線と背後にそびえ立つ高層ビルを見上げた一枚です。ここでは24mmの広角端を使用し強烈なパースペクティブ効果を活かしています。手前の高架橋が覆いかぶさるような迫力で描かれ、視線は自然と奥のタワーへと導かれます。

f10まで絞り込んだことで画面の隅々までシャープネスが行き渡っています。特筆すべきは画面周辺のビルや柱の直線が不自然に歪んでいない点です。通常、このクラスのズームレンズでは樽型の歪曲収差が目立ちやすいものですが、非球面レンズの効果的な配置とカメラ内補正の連携により、建築写真としても通用する端正な描写を実現しています。

■ニコン Z5II + NIKKOR Z 24-105mm f/4-7.1
■焦点距離25mm f11 1/400秒 ISO100

幾何学的な構造が美しい歩道橋の内部を捉えたカットです。広角端に近い25mmでの撮影ですが、放射状に広がる天井のラインや床のタイル目地が気持ちよく伸びています。

逆光気味の強い光が差し込むシチュエーションですが、ハイライトからシャドウへのトーンが破綻することなく豊かに再現されており、無機質な空間に冷ややかな空気感を与えています。
ゴーストやフレアの発生も最小限に抑えられており、クリアな視界を確保できています。広角域で懸念される像の流れもなく、中心に配置された人物のシルエットも極めてシャープです。

最強の武器、即応性と中望遠域

刻々と変化する路上においてレンズ交換のタイムロスは致命的です。標準域から中望遠域を瞬時に行き来できる本レンズはスナップにおける最強の武器となります。

■ニコン Z5II + NIKKOR Z 24-105mm f/4-7.1
■焦点距離50mm f9 1/1250秒 ISO100
■ニコン Z5II + NIKKOR Z 24-105mm f/4-7.1
■焦点距離77mm f9 1/2500秒 ISO100

同じ歩道橋のシーンを、焦点距離を変えて連続的に捉えた2枚です。この可変性こそが高倍率ズームの真骨頂です。
50mmでは、人間の視野に近い自然な遠近感で階段と構造物、そして空の広がりをバランスよく配置しています。

一方、瞬時にズームリングを回して撮影された77mmではより人物と構造物の関係性にフォーカスし、余計な情報を削ぎ落としています。望遠側に振ることで背景の橋の主塔が引き寄せられよりドラマチックなシルエット写真へと変化しました。

強い逆光線が真正面から入る厳しい条件ですが、コントラストの低下は見られず、シルエットの黒がしっかりと引き締まっています。STM(ステッピングモーター)による高速AFが歩行者のふとした動きを逃さず捉えている点も見逃せません。

■ニコン Z5II + NIKKOR Z 24-105mm f/4-7.1
■焦点距離59mm f8 1/1000秒 ISO100

俯瞰で捉えた路上の影と通行人。何気ない日常の光景ですが、標準域59mmの誇張のない画角が、見たままの臨場感を写真に定着させています。

特筆すべきは、アスファルトやタイルといった路面の質感の描写です。f8まで絞ることで、光が当たっている部分の粒立ちと影の中にあるディテールが克明に描かれています。Z5IIのダイナミックレンジの広さもありますが、レンズ自体が持つ階調再現性がシャドウ部を黒つぶれさせることなく、粘り強く情報を伝達していることが分かります。

■ニコン Z5II + NIKKOR Z 24-105mm f/4-7.1
■焦点距離77mm f8 1/125秒 ISO100

ビルの壁面に落ちる影とそこを歩く人物。ここでも77mmという中望遠域が活きています。広角レンズであれば周囲の看板や道路が入ってしまう場面でも中望遠で切り取ることで幾何学的な構成美を抽出することに成功しています。

暖色系の壁面のタイルと影の中の冷たいアスファルトの色彩対比が美しく表現されています。f7.1という絞り値ですが平面的な被写体に対して十分な被写界深度を確保しており、タイルの目地一本一本まで解像しています。

望遠域が切り取る都市のディテール

本レンズの白眉は105mmまでシームレスにズームできる点にあります。70mmで止まる標準ズームとは異なり、さらに一歩踏み込んで被写体を引き寄せることで肉眼とは異なる密度感のある表現が可能になります。

■ニコン Z5II + NIKKOR Z 24-105mm f/4-7.1
■焦点距離85mm f8 1/500秒 ISO100

曲面を描くビルのファサードをポートレートレンズの定番画角である85mmで切り取りました。この作例を拡大して確認するとタイルの継ぎ目、金属パネルの質感、ガラスの反射などが克明に描写されていることに驚かされます。

軽量な高倍率ズームレンズでは望遠側の描写が甘くなることが懸念されがちですが、このレンズにその常識は当てはまりません。被写体の持つ硬質なマテリアル感を余すところなく伝えており、建築写真のパーツ撮りとしても十分に実用可能です。

■ニコン Z5II + NIKKOR Z 24-105mm f/4-7.1
■焦点距離105mm f8 1/250秒 ISO100

枠越しに捉えた建築物。望遠端105mmの圧縮効果により手前のシルエット、中景のマンション、そして背景の空との距離感が凝縮され迫力ある画面構成となっています。

開放F値が変動するズームレンズですが、日中の都市風景においてはf8程度まで絞ることが多いため、f/7.1という望遠端の開放F値は実用上のネガティブ要素にはなりません。むしろ画面全体が均質に整うスウィートスポットで撮影できるメリットを感じます。マンションのベランダの手すりや窓枠といった高周波な被写体もモアレや偽色を感じさせず極めてシャープに解像しています。

マクロ性能が拓く小さな宇宙

NIKKOR Z 24-105mm f/4-7.1の隠れた、しかし最強の武器。それが70-105mm域での最大撮影倍率0.5倍というハーフマクロ性能です。

■ニコン Z5II + NIKKOR Z 24-105mm f/4-7.1
■焦点距離105mm f7.1 1/1250秒 ISO100

逆光に輝くススキの穂に、最短撮影距離付近まで肉薄しました。
スペック上の開放F値f/7.1を見て「ボケないのではないか?」と懸念される方もいるかもしれません。しかし、この作例を見ればその不安は払拭されるはずです。被写体に近づくことで被写界深度は極端に浅くなり、背景は大きく溶け、主役のススキだけが浮かび上がっています。

背景の玉ボケにも注目してください。非球面レンズを使用しているにも関わらず、年輪ボケは目立たず、口径食も比較的少なく美しい円形を保っています。散歩中にふと足元の草花やショーウィンドウの小物に目を向ける。レンズ交換なしでそのままマクロ撮影に移行できるシームレスさは撮影者の発見を逃しません。

夜間撮影への適応と手ブレ補正

開放F値が明るくない本レンズにとって夜景撮影は一つの挑戦です。しかしZ マウントシステム全体の総合力がそれを解決します。

■ニコン Z5II + NIKKOR Z 24-105mm f/4-7.1
■焦点距離62mm f5.6 1/10秒 ISO 250

夜の繁華街。行き交う人々をブラして動感を表現しつつ街の賑わいを捉えるためにあえて1/10秒というスローシャッターを選択しました。

従来であれば三脚必須のシーンですが、Z5IIの強力なボディ内手ブレ補正とレンズの軽量さが相まって手持ちでも背景のビル群をブレることなくシャープに写し止めることができました。

ISO感度を250に抑えられたことで、ネオンの色彩や夜空のグラデーションもノイズレスでクリアです。また、街灯や看板などの強い点光源に対してもサジタルコマフレアの発生が抑えられており、点光源が鳥の羽ばたいたような形にならず点のまま描写されています。夜のスナップにおいてもこのレンズは十分に信頼に足るパートナーとなります。

まとめ

NIKKOR Z 24-105mm f/4-7.1を使用して強く感じたのは機材の存在が消えるという感覚です。
約350gという軽さは長時間の歩行でも身体的な負担にならず、撮りたいと思った瞬間に最適な画角へアクセスできる約4.4倍のズームレンジは思考と撮影のラグを極限までゼロに近づけてくれます。

そして何よりMTF曲線や実写データが証明する通りの高い解像力と逆光耐性、そしてマクロ撮影による表現の幅。これだけの要素が一本に詰まっていることは都市を撮り歩く者にとって最大の自由を意味します。

F2.8の大三元レンズでなければ撮れない画があるのは事実です。しかし、このレンズを持っていたからこそ撮れた画があることもまた真実です。重い機材を置いて出かけたい日も妥協のない一枚を残したい。そんな写真家のわがままを叶えてくれるこのレンズは初めてのZ レンズとしてはもちろん、ハイアマチュアやプロフェッショナルにとっても日常を作品に変えるための常用レンズとして極めて魅力的な選択肢となるはずです。

ニコン Z マウントの懐の深さを象徴する一本。ぜひこのレンズを通して見慣れた街の新しい表情を発見してください。

 

 

■写真家:Amatou
1995年千葉県生まれ。非現実的な都市景観の表現をコンセプトとしたファインアートフォトグラフィーをメインに撮影している。その独特な世界観が評価され、International Photography Awards、Sony World Photography Awardsをはじめ、国際的写真コンテストで数多くの上位入賞を果たす。

 

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