ニコン NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S II ポートレート レビュー|水咲奈々
はじめに
2025年9月26日に発売された、ニコンの新型標準ズームレンズ「NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S II」は、従来モデルからの飛躍的な性能アップが発表と同時に話題を呼び、筆者の周りでも気になるレンズとして盛り上がっていました。今回は、F2.8通しのレンズにぴったりなポートレートをテーマに、本レンズのレビューをお送りします。
広角端と望遠端比較

■撮影環境:焦点距離::24mm(広角端) 絞り値:f/2.8シャッタースピード:1/250秒
露出モード:マニュアル WB:オート0 ISO800
ピクチャーコントロール:ポートレート

■撮影環境:焦点距離::70mm(望遠端) 絞り値:f/2.8 シャッタースピード:1/250秒
露出モード:マニュアル WB:オート0 ISO800
ピクチャーコントロール:ポートレート
本レンズは焦点距離24-70mmのフルサイズ(FXフォーマット)対応Zマウントで、最大絞りはF2.8です。望遠側にズームすると絞りが絞られてしまう構造ではなく、24mmでも70mmでも、開放絞りF2.8で撮影できる、いわゆるF2.8通しのレンズです。
レンズ構成は10群14枚(EDレンズ2枚、非球面レンズ3枚を含む)で、メソアモルファスコートとアルネオコートのコーティング組み合わせでレンズに入る光の反射やゴースト、フレアが低減されて、広角側でも四隅まで淀みのないクリアーな画を得られます。
ポートレートのように順光で撮る機会が少ない、主に逆光や半逆光での撮影が多い撮影ジャンルでは、このコーティングがあるのと無いのとでは、まったく違う画になると言ってもオーバーではないくらいです。
S-Lineらしいピント面がシャキッとクリアーな画をこの価格で味わえるのは、実はコスパがいいのでは?が、第1印象でした。
インターナルズーム機構で動画撮影にも有利!

■撮影環境:焦点距離::57mm 絞り値:f/2.8 シャッタースピード:1/250秒
露出モード:マニュアル WB:オート0 ISO500
ピクチャーコントロール:ポートレート
本レンズと前モデル「NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S」とで全長を比較してみると、広角端の収縮時が約126mmの前モデルに比べて、本レンズは約142mmなので、数字だけ見ると大きくなったように感じるのですが、本レンズはインターナルズーム機構を採用しています。
どういうことかというと、ズームしてもレンズ先端がニョキッと伸びない仕様なので、70mmの望遠端で撮影してもレンズの全長は約142mmのままです。ちなみに、前モデルはズームするとレンズが長くなる仕様なので、70mm撮影時の全長は約156mmになります。
このインターナルズーム機構は、ポートレートのスチール撮影だけだとそれほどピンと来ないかもしれませんが、動画を撮影しているときにはとってもありがたい機構です。ジンバル使用時にズーミングによってレンズの重心がズレてしまうと、バランス調整をやり直さないといけないのですが、全長が変わらないレンズならその心配はいりません。
レンズの重心が変わらないインターナルズーム機構と、ピント位置の変化によって発生するフォーカスブリージングの抑制がなされているレンズなので、今後、スチールだけではなくムービーも撮りたいと思っている方は、ぜひ一度手に取ってみることをお勧めします。
難しいシーンでも精度の高いAF

■撮影環境:焦点距離::24mm 絞り値:f/2.8 シャッタースピード:1/250秒
露出モード:マニュアル WB:オート0 ISO4000
ピクチャーコントロール:ポートレート
筆者のポートレートは強い逆光や顔の片側だけ暗いシーンなど、カメラとレンズが困りやすい状況での撮影が多いのですが、本レンズのAF性能は格段に良くなったと、本当にお世辞なしに実感しました。
このシーンはガラスのテーブルの反射を写し込むために、肉眼でもかなり暗い状況で、構図右側にある窓からのわずかな自然光をメインの光として撮影しました。全体を明るい露出にしてしまうと反射が目立たなくなってしまうので、少し暗めの露出にするのがポイントのポートレートです。この薄暗いなか、前髪が目にかかっている状況にもかかわらず、精度の高いAFが綺麗に目にピントを合わせてくれました。
また、テーブルとモデルの肘で遠近感を強調したかったので、レンズをテーブルにくっつけるように撮影しています。広角端で撮影しているので、写真の印象よりも実際は、モデルの顔にかなり近付いて撮影しています。
本レンズの撮影最短距離は広角端で0.24m、望遠端で0.33mなので、ポートレートであれば十分に接近した撮影ができます。広角レンズの特性でもある近くのモノを大きく写して、遠くのモノを小さく写すパースを強調した撮影も楽しめます。
ナチュラルなボケ味となだらかなグラデーション

■撮影環境:焦点距離::70mm 絞り値:f/2.8 シャッタースピード:1/250秒
露出モード:マニュアル WB:オート0 ISO800
ピクチャーコントロール:ポートレート
筆者はニコンのF1.8からF2.8レベルの、標準画角のレンズの自然なボケ具合が好きで、ポートレート撮影でよく使用しています。本レンズのボケ具合も筆者好みのナチュラルさでした。
ニコンのピクチャーコントロール「ポートレート」と、このナチュラルなボケ具合の相性はとても良く、自然光や過度ではないライティングを使用した、その場のムードを写し込むようなポートレートにぴったりです。
本レンズの柔らかいボケ味と、ピントが合っている面からボケている箇所へのなだらかなグラデーションは、見ている人を疲れさせない、優しいポートレートを生み出してくれます。
フィルター使用を考えたレンズフードが標準付属

■撮影環境:焦点距離::36mm 絞り値:f/2.8 シャッタースピード:1/250秒
露出モード:マニュアル WB:オート0 ISO10000
ピクチャーコントロール:ポートレート
今回はレンズ性能のレビューのため、フィルター類は使用しませんでしたが、この写真のようなシーンでは光の線を強調するようなフィルターや、逆にふんわり和らげるフィルターを使用しても面白いでしょう。
本レンズのフィルター径は77mmと一般的なサイズなので、様々なフィルターに対応しています。付属のレンズフード「HB-117」にはフィルター操作窓があり、上下どちらにも配置可能です。可変式NDフィルターなど、回転させることで効果を調整するフィルター使用の際に便利なレンズフードが、標準で付属してくるのはとてもありがたいですね。
今、標準画角のズームレンズを買うならこれに決まり!

■撮影環境:焦点距離::42mm 絞り値:f/2.8 シャッタースピード:1/250秒
露出モード:マニュアル WB:オート0 ISO4000
ピクチャーコントロール:リッチトーンポートレート
まさに、標準ズームレンズの新スタンダードと言えるレンズ。今、明るい標準画角のズームレンズを購入するなら、このレンズで決まりでしょう。
一対一でじっくり撮影できるときは、単焦点レンズを色々取り替えながら撮影するのも楽しいですが、大人数の撮影会やロケで身軽に動きたい場合、本レンズがあればストレスなくポートレートが楽しめますね。
■写真家:水咲奈々
東京都出身。大学卒業後、舞台俳優として活動するがモデルとしてカメラの前に立つうちに撮る側に興味が湧き、作品を持ち込んだカメラ雑誌の出版社に入社し編集と写真を学ぶ。現在はフリーの写真家として雑誌やWEB、イベントや写真教室など多方面で活動中。興味を持った被写体に積極的にアプローチするので撮影ジャンルは赤ちゃんから戦闘機までと幅広い。日本写真家協会(JPS)会員。













