ニコン NIKKOR Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VRで描く旅スナップ
はじめに
ニコン ZシリーズのDX(APS-C)規格カメラ用レンズ、NIKKOR Z DX 18-140mm f/3.5-6.3 VRは、日々のスナップから旅行、ポートレートや風景まで幅広い場面で活躍してくれる万能レンズです。気軽に持ち運べるサイズ感でありながら、7.8倍という高倍率ズームを実現。撮りたい瞬間を逃さず、美しく捉えることができるこのレンズの持つ機能・性能を、この夏、北海道と埼玉・秩父を訪れた際の旅スナップでご紹介します。

■撮影環境:140mm, Aモード, F8, 1/800秒, -0.3段, ISO 400, WB自然光オート, PC:スタンダード
コンパクトでありながら7.8倍の高倍率ズーム
本レンズの最大の特徴は、18mmから140mm(35mm判換算で約27mm〜210mm相当)という幅広い焦点距離をカバーする7.8倍の高倍率ズームでありながら、非常に小型・軽量であるという点です。全長が約90mmで質量はわずか約315g(500mlのペットボトルよりも軽い!)。カメラバッグはもちろん日常使いのバッグにもすっきりと収まるので、日々の何気ない撮影から荷物を軽くしたい旅行まで、気軽に持ち出せることで一眼カメラでの撮影をより身近なものにしてくれます。
スナップでも風景でも、広角で広くダイナミックに撮りたい場面から、遠くの被写体を大きく切り取ったり、圧縮効果を活かすといった望遠の場面まで、撮影シーンに合わせてレンズ交換をすることなく1本で多彩な表現が可能な点も大きな魅力です。
小樽といえば、の小樽運河にて。同じ場所で画角を変えるとそのスケール感がよくわかります。18mm(35mm判換算で約27mm)では広さや奥行きが感じられますが、望遠側の140mm(同、約210mm)では画角が狭くなることで一部分だけが大きく切り取られることがよくわかります。
▼18mm

■撮影環境:18mm, Aモード, F8, 1/800秒, +0.3段, ISO 400, WB自然光オート, PC:スタンダード
▼140mm

■撮影環境:140mm, Aモード, F8, 1/1000秒, 0段, ISO 400, WB自然光オート, PC:スタンダード
同じく小樽で「旧国鉄手宮線」の廃線跡を散策しました。18mmの広角では線路の手前が広く、遠くに行くほど線路幅が狭くなり、枕木の幅も広く奥行きが感じられます。一方で140mmの望遠では手前と奥の線路幅に広角ほどの差がなく、また圧縮効果により枕木の幅も狭くぎゅっと詰まった印象となり、線路の長さが随分と短く感じられます。
▼18mm

■撮影環境:18mm, Aモード, F4.5, 1/640秒, +0.3段, ISO 100, WB自然光オート, PC:スタンダード
▼140mm

■撮影環境:140mm, Aモード, F6.3, 1/200秒, +0.3段, ISO 100, WB自然光オート, PC:スタンダード
ワイド端 0.2m/テレ端 0.4mの最短撮影距離
本レンズの最短撮影距離は、ワイド端(18mm)で0.2m(20cm)、テレ端(140mm)でも0.4m(40cm)と被写体にかなり近づいてもピントを合わせられることから、室内であればテーブルフォトでも活躍してくれますし、お花をマクロ的に撮影することも可能です。ズーム全域でこれだけの近接撮影ができるレンズは貴重と言えます。
私の住む関西よりも季節が1ヶ月ほど遅い北海道西部では、紫陽花の見頃が7月のようで、訪れたタイミングでお花を楽しむことができました。一番広角の18mmと140mmで、それぞれピントが合うギリギリまで寄って撮影。高倍率ズームにしては被写体をかなり大きく捉えることができる印象です。
▼18mm

■撮影環境:18mm, Aモード, F4.5, 1/50秒, +0.3段, ISO 100, WB自然光オート, PC:スタンダード
▼140mm

■撮影環境:140mm, Aモード, F6.3, 1/200秒, +0.3段, ISO 400, WB自然光オート, PC:スタンダード
暗所での撮影も安心の手ブレ補正
写真撮影において失敗してしまった!となる要素のひとつが「手ブレ」です。特に望遠撮影や、夜間・暗い屋内での撮影ではシャッタースピードが遅くなりやすく、手ブレが起きやすくなります。
しかし、本レンズは最大5.0段分(CIPA準拠)の光学式手ブレ補正(VR)機構を内蔵しており、暗所でも低速シャッターが使いやすく、三脚を持ち合わせていなかったり使えない場面でも安心して手持ち撮影が可能です。

■撮影環境:42mm, Aモード, F4.5, 1/20秒, -0.3段, ISO 1600, WB オート, PC:スタンダード

■撮影環境:39mm, Aモード, F4.5, 1/25秒, +0.3段, ISO 1600, WB オート, PC:スタンダード

■撮影環境:28mm, Aモード, F4.5, 1/80秒, -0.7段, ISO 2000, WB オート, PC:スタンダード
雨でも安心の防塵・防滴性能
さらに注目したいのが、防塵・防滴性能です。エントリー向けのレンズながら、しっかりとしたシーリングが施されており、突然の雨や砂ぼこりなどの環境でも撮影が継続可能です。今回、秩父ではお天気に恵まれず基本雨の中での撮影となってしまったのですが、同じく防塵・防滴性能を備えたZ50IIとの組み合わせにより、雨を気にせず安心してシャッターを切ることができました。
雨が降ったり止んだりを繰り返す中、秩父の街を散策。どこか懐かしさを感じる街並みを撮影。

■撮影環境:84mm, Aモード, F5.3, 1/400秒, +0.7段, ISO 800, WB 自然光オート, PC:スタンダード
ロープウェイで宝登山神社の奥宮へ。山麓はそれほどでもなかったのですが、山の上は霧が濃く、とても幻想的な光景が広がっていました。フレキシブルカラーピクチャーコントロールの「Hidamari Color」で緑を鮮やかに表現しつつ、幻想的な1枚に仕上げました。

■撮影環境:25.5mm, Aモード, F4, 1/200秒, -0.7段, ISO 500, WB 自然光オート, PC:Hidamari
宝登山上で蜘蛛の巣を発見。雨による水滴が綺麗だったので、最短撮影距離の短さを活かして撮影。

■撮影環境:140mm, Aモード, F8, 1/200秒, +0.7段, ISO 400, WB 自然光オート, PC:スタンダード
旅のスナップ
最後に、その他のスナップを焦点距離順にご紹介いたします。
訪れた北海道開拓の村のシンボリックな建物のひとつ、旧開拓使札幌本庁舎の全景を入れるには一番広角がベストでした。この日はお天気が下り坂だったのですが、この時は少し晴れ間も見えていたため、貴重な青空を入れたかったことと、建物下部はどうしても入れたくないものが入ってしまうため、カメラを見上げる角度に振って空を大きく入れる構図としました。
▼18mm

■撮影環境:18mm, Aモード, F8, 1/2000秒, +0.3段, ISO 200, WB オート, PC:Tender Clear
神戸から新千歳へ向かう飛行機はA席を予約、北側の景色を眺めながらの移動中、青森上空より眼下に岩木山が見えました。あまりにも綺麗なので思わずパチリ。カメラもレンズも小型で機内でも手元に置いておけるサイズ感ゆえにこういった写真も気軽に撮ることができます。なお、撮って出しではどうしてもかすみが掛かってしまうため、後で画像処理によりかすみの除去を施してみました。
▼25.5mm

■撮影環境:25.5mm, Aモード, F4.5, 1/1250秒, +0.3段, ISO 200, WB 自然光オート, PC:スタンダード

35mm判換算の50mm、APS-C規格では35mm付近の写真を探したところ、こちらの写真が該当しました。極端に何かがデフォルメされているわけでも、圧縮効果により遠近感が縮められているわけでもなく、撮影時に焦点距離を見て画角を決めたわけではないのですが、文字通り肉眼で見たイメージと近い印象になっています。
▼33.5mm

■撮影環境:33.5mm, Aモード, F4.5, 1/800秒, +0.3段, ISO 100, WB 自然光オート, PC:スタンダード
50mm(35mm判換算で約75mm)付近、標準ズームレンズの一番望遠側が大体このあたりとなります。室内ですが縦構図で左右に余計なものが入らないようすっきりまとめてみました。
▼49mm

■撮影環境:49mm, Aモード, F4.8, 1/25秒, -1.0段, ISO 1000, WB 自然光オート, PC:スタンダード
帰りの飛行機を待つ間、窓際でPCを広げつつ、時折目の前を行く飛行機を眺めて過ごしていました。飛行機を撮るとなるとやはり望遠側がメインとなってくることが多いもの。最近は神戸空港の利用が多い筆者ですが、必然的に中・小型機に乗ることが多く、目の前を行く大型機(B767とA350)をついパチリ。飛行機の全景は入っていませんが、機体の特徴と2機の位置関係から気に入っている一枚です。
▼80mm

■撮影環境:80mm, Aモード, F5.3, 1/500秒, +0.3段, ISO 1000, WB 自然光オート, PC:スタンダード
110mmで撮影したこちらは、出発時に飛行機を押してくれるトーイングカーや作業をされる方々、そして拡大すると操縦席のパイロットまでしっかり視認できるほどになりました。
▼110mm

■撮影環境:110mm, Aモード, F6.3, 1/800秒, +0.7段, ISO 400, WB 自然光オート, PC:スタンダード
小樽で廃線となった旧手宮線跡を散策中、向こうから手を繋いだ親子が歩いてきました。一番望遠の140mmでピントはできるだけ手前に合わせることで、親子の姿は認識しつつもしっかりボカすことができました。
▼140mm

■撮影環境:140mm, Aモード, F6.3, 1/125秒, +0.3段, ISO 100, WB 自然光オート, PC:スタンダード
まとめ
広角から望遠までの高倍率でありながらも小型・軽量で、高倍率ズームレンズなのに被写体にぐんと寄れて、手ブレも抑えられ、かつ少々の雨にも強い。そんな本レンズは旅のみならず日常使いとしても活躍してくれること間違いなし。機動性を重視したDX規格のZシリーズをお使いの方にはぜひおすすめしたいレンズです。

■撮影環境:140mm, Aモード, F6.3, 1/320秒, 0段, ISO 200, WB オート, PC:スタンダード
■写真家:クキモトノリコ
学生時代に一眼レフカメラを手に入れて以来、海外ひとり旅を中心に作品撮りをしている。いくつかの職業を経て写真家へ転身。現在はニコンカレッジ、オリンパスカレッジ講師、専門学校講師の他、様々な写真講座やワークショップなどで『たのしく、わかりやすい』をモットーに写真の楽しみを伝えている。神戸出身・在住。晴れ女。
公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員














