ニコン「NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S II」全方位にアップデートされた大三元標準ズーム
速さと軽さを手に入れた「NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S II」登場!
現代のフォトグラファー必携レンズと言われる「大三元ズームレンズ」。それは「広角ズーム」、「標準ズーム」、「望遠ズーム」の3本のことで、F2.8通しと明るく、3本合わせておよそ14mmから200mmまでを網羅し、多くの被写体を過不足なく撮影できる組み合わせのことを言います。
その中核を担うのが「標準ズーム」です。50mmを中心に、日常的に多用する画角をカバーしていることから、もっとも重要なレンズになっています。ニコンはその核となる標準ズームを6年ぶりにアップデートしました。ついに最新型「NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S II」の登場です。

「NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S II」の特徴
まずは外観とスペックから、その進化を見ていきましょう。初代モデルが全長126mm、質量約805gであったのに対し、このII型は全長142mm、質量約675gと、大幅な軽量化を実現しています。数値上では質量マイナス130gですが、実際に手に取るとその差は歴然です。重心バランスも最適化されており、Z9のようなフラッグシップ機はもちろん、Z5IIなどの小型ボディに装着した際の軽快さは、撮影スタイルそのものを変えてしまうほどのインパクトがあります。同クラスのズームレンズとして世界最軽量を誇っています。
先代の意匠であった、撮影情報を容易に確認できる「レンズ情報パネル」は廃止され、シンプルな形状となりました。細身になった形状からか、最高の万能ズームレンズと称される「NIKKOR Z 24-120mm f/4 S」とそっくりなルックスに感じるフォトグラファーもいることでしょう。
そしてズーミング機構としてインターナルズームを採用したことも大きなニュースです。先代はズーミングすると鏡筒が伸縮するのですが、このレンズは長さが一定のままです。これにより適切な重量バランスが得られ、防滴防塵に有利なだけでなく、クローズアップ時のレンズ繰り出しも気にせず撮影に臨めます。

さらにコントロールリングのクリック感をオンオフすることが可能になりました。この感触は絶妙の一言。「絞り」を操作に割り当てて撮影したのですが、とてもフィーリングよく操作できました。
また、新たに搭載されたL-Fnボタンは、縦位置撮影時に自然に指が届く位置に配置されており、撮影への集中を妨げない設計思想に感心させられました。まさに「使うほどに馴染む」とはこのこと。道具としての完成度が、また一つ上のステージへと昇華しています。またフォーカス制限切り換えスイッチで、ピント合わせの範囲を0.33m以上に制限可能になりました。カメラのポジションを変えられない撮影時に便利になりますね。

光学設計も改められています。大口径の両面非球面レンズを前玉に搭載。EDレンズと非球面レンズを効果的に配置することによって、S-Lineクラス最高の画質を実現しています。さらに使用レンズを先代レンズよりも減らし小型軽量化も達成しているのです。ニコンお得意のゴーストやフレアを効果的に抑制する「メソアモルファスコート」と「アルネオコート」ももちろん採用。この相乗効果で太陽を構図に入れてもヌケの良いクリアなカットを撮影可能です。
そして一番うれしいのがオートフォーカスのさらなる高速化です。ボイスコイルモーター(VCM)とニコン開発のシルキースウィフトVCM(SSVCM)をAF駆動用アクチュエーターに採用した、マルチフォーカス方式によってニコン史上最速、そして最高精度のAFを実現しているのです。画像処理エンジン EXPEED 7搭載カメラとの組み合わせ時はなんと約5倍高速になっています。これは実際に使うとビックリするほど。撮影がより快適に楽しくなること間違いなしですね。なお最短撮影距離は広角端で0.24m、望遠端で0.33mとなっています。
付属のレンズフードにはフィルター操作窓が装備されました。円偏光フィルターや可変NDフィルター操作時に、この窓を開けて容易にフィルター枠を回転することが可能です。これはうれしいですね。なおフィルター径は77mmとなっています。

「NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S II」でブラブラ実写スナップ!
Nikon ZマウントのS-Lineを代表する『NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S』の登場は、まさに衝撃的でした。その完璧とも思われたレンズが、6年の時を経てどのような進化を遂げたのか気になりますよね。最新型「NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S II」を「Z8」に装着して、ブラブラとスナップ撮影を楽しんでみました。
▼24mm

■撮影環境:24mm 1/640秒 f/8 ISO110
▼70mm

■撮影環境:70mm 1/640秒 f/8 ISO125
「NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S II」のワイド端24mmとテレ端70mmでのカットです。どちらもシャープかつコントラストも高く、申し分ない描写となっています。ヌケ感も高くいい印象ですね。

■撮影環境:40mm 1/250秒 f/2.8 ISO80
街中をブラブラとフォトウォーク中、工事現場を絞り開放で撮ったものです。スッと浮き出るような前ボケも美しく、画面中央のコンクリート片などの緻密さと立体感がとてもシャープに写しとられています。

■撮影環境:24mm 1/400秒 f/8 ISO125
「NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S II」は日常的に活躍する高性能な標準ズームレンズです。ワイド端の24mmは日々の光景を広々と写し出します。このカットは隅田川で転回しようとする観光船を捉えたものですが、広角レンズの奥行き感と広がり、臨場感が伝わってきます。船の細部まで克明に描写しているのがお分かりでしょうか。

■撮影環境:70mm 1/250秒 f/8 ISO180
もちろんテレ端の70mmも素晴らしい写りを見せてくれます。ビルの反射光を浴びる店舗を狙いましたが、その微妙な色合いの再現や、植物の葉を一枚一枚シャープに解像しています。壁の凹凸までリアル感がスゴいですね。

■撮影環境:70mm 1/400秒 f/2.8 ISO110
闊歩する外国人観光客を背後から撮影しました。すれ違いざまに「Z8」を起動してシャッターボタンを押したのですが、「NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S II」は音もなく瞬時に合焦し、その姿をしっかりとキャプチャーしました。シャツのテクスチャーがよく分かりますね。

■撮影環境:70mm 1/250秒 f/2.8 ISO140
このレンズの最短撮影距離は広角端で0.24m、望遠端で0.33mと被写体に肉薄できる仕様になっています。テーブルフォトやフードフォトなどでも頼りになるスペックですね。金網に取り付けられた旅の思い出に接近して撮影しましたが、その塗装や質感描写に驚かされました。瞬時にピントが合うオートフォーカスも素晴らしいと思いました。

■撮影環境:70mm 1/60秒 f/2.8 ISO250
「NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S II」のF2.8通しという明るさは低照度下でも活躍します。絞り開放から画面全域に渡って高い画質なのがうれしいところです。またズーミング時に鏡筒が繰り出さないインターナルズームなので、焦点距離に関係なく安定したホールド感が得られます。これは心強いですね。

■撮影環境:70mm 1/500秒 f/2.8 ISO80
白熱する祭り。その中で暴れる御輿を狙いました。「NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S II」は動き回る御輿を、高速かつ正確にフォーカシングし続けました。動体にも強いレンズと言えるでしょう。またピント面の解像感、シャープさも見事です。まさに大三元ズームレンズのセンターフォワードという存在感を見せてくれました。

■撮影環境:70mm 1/640秒 f/8 ISO64
「NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S II」はポートレート撮影でも外せないレンズと言えるでしょう。モデルの美しい表情をイメージどおりに写し撮りました。瞳周辺のシャープさとスキントーンの滑らかさがいいですね。ズームレンジ的にも使いやすく、オートフォーカスも高速なので、動き回っての人物撮影にもピッタリだと言えるでしょう。
「NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S II」のスペック
型式:ニコン Z マウント
焦点距離:24mm-70mm
最大口径比:1:2.8
レンズ構成:10 群14 枚(EDレンズ2 枚、非球面レンズ3 枚、メソアモルファスコートあり、アルネオコートあり 、最前面のレンズ面にフッ素コートあり)
画角 :84°–34°20′(撮像範囲 フルサイズ/FXフォーマット)
61°–22°50′(撮像範囲 APS-Cサイズ/DXフォーマット)
焦点距離目盛:24、28、35、50、70mm
ピント合わせ:マルチフォーカス方式、IF(インターナルフォーカス)方式
最短撮影距離:0.24m(焦点距離24mm)、0.24m(焦点距離28mm)、0.27m(焦点距離35mm)、0.3m(焦点距離50mm)、0.33m(焦点距離70mm)
最大撮影倍率:0.32倍(焦点距離70mm)
絞り羽根枚数:11枚(円形絞り)
絞り方式:電磁絞りによる自動絞り
最大絞り:f/2.8
最小絞り:f/22
フォーカス制限切り換えスイッチ:FULL(∞~0.24m)とLIMIT(∞~0.33m) の2段切り換え
アタッチメントサイズ(フィルターサイズ):77mm(P=0.75mm)
寸法:約84mm(最大径)×142mm(レンズマウント基準面からレンズ先端まで)
質量:約675g
付属品:
• レンズキャップ77mm LC-77B(スプリング式)
• 裏ぶた LF-N1
• レンズフード HB-117
• レンズケース CL-C2
「NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S II」のまとめ
主要レンズの中核とも言える標準ズームレンズ。ニコンはそれをアップデートしてきました。使ってみて、先代モデルよりグンと使い勝手と描写が向上しているのを実感できましたよ。
まずは軽くなって細くなったこと。これで長時間の撮影も集中力を切らすことなく可能です。インターナルズーム化によってホールドも格段にラクになりましたし、超高速のオートフォーカスは撮影体験をより快適にしてくれました。そしてさらに底上げされた描写性能は申し分ありません。
全方位的にアップデートされたこの「NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S II」は、これからの「ニコンZ」を牽引するマイルストーン的なレンズになるに違いないでしょう。
■モデル:吹
■写真家:三井公一
新聞、雑誌カメラマンを経てフリーランスフォトグラファーに。雑誌、広告、ウェブ、ストックフォト、ムービー撮影や、執筆、セミナーなどで活躍中。さまざまな企業のイメージ撮影や、ポートレート撮影、公式インスタグラムの撮影などを多く手がける。スマートフォン撮影のパイオニアとしても活動中。













