ニコン D6 レビュー|三井公一

三井公一

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はじめに

 ニコンのプロフェッショナル向けデジタル一眼レフ「D6」がついに登場した。主に報道やスポーツの現場で活躍する「ニコン ひと桁番台」の最新鋭機だ。シャッターチャンスを確実にモノにでき、過酷な環境下でも正確無比に稼働することを求められる「闘うマシーン」である。先代モデル「D5」も素晴らしかったが、オートフォーカス性能などをブラッシュアップして正常進化を遂げた。そのニコン「D6」がいよいよ発売開始となる。

先代モデル D5 からの進化点

 「D6」はどのように変貌したのか主要スペックをチェックしてみよう。まずはイメージセンサー周りだ。フォーマットはフルサイズで画素数に変更はなく、2133万総画素 / 2082万有効画素となっているが、画像処理エンジンが「EXPEED 6」にアップデートされている。

 これによってイメージセンサーの広域な情報を包括的に高速処理し、豊かな階調と高品位な画質を実現。レタッチなしでも緊急を要する報道やスポーツの現場でダイレクトに入稿できるクオリティを誇る。

 高感度特性は「D5」と同様で、ISO 100~102400を常用感度とし、拡張感度ではISO 50相当(Lo1)への減感とISO 3280000相当(Hi5)までの増感が可能になっている。幅広い被写体と撮影環境に対応し、あらゆる瞬間をノイズ少なくキャプチャーできるだろう。高速シャッタースピードで動体を写し止めるスポーツ報道の現場で活躍が期待大だ。

 また大きく改良されたのが注目のオートフォーカス周りだ。「ニコン史上最強AF」と銘打たれ、新開発の全点クロスセンサー、全点が選択可能な105点AFシステムを搭載した。測距点こそ数を減らしたが、全点クロスセンサー化され、広いカバー範囲と相まって動きの速い被写体でも瞬時に正確にフォーカシングし続けることができる。これもアクティブな被写体を撮る際に強力な武器となる。

 高速連写性能も磨きをかけた。AF/AE追従で約14コマ/秒、最大200コマまでのメカニカルシャッターによる高速連続撮影を実現し、シャッターチャンスに強いフルサイズデジタル一眼レフカメラに仕上がっている。

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コネクティビティと速報性に優れた設計

 「D6」のサイズは約160×163×92mm(幅×高さ×奥行き)で、質量は約1450g(バッテリーおよびCFexpressカード2枚を含む、ボディーキャップ、アクセサリーシューカバーを除く)、約1,270g(本体のみ)となっている。「D5」よりわずかに全高が増しているが、新たに「GPS」と「Wifi」、「Bluetooth」を搭載。これによりコネクティビティが増し、写真への位置情報の付加、そして撮影結果をスピーディーに送信することが可能になっている。なお有線LANは1000BASE-T、「SnapBridge」によるスマートフォン、タブレットとの接続ももちろん可能だ。

 またメディアはCFexpress(Type B)/XQDカード対応ダブルスロット。[順次記録]、[バックアップ記録]、[RAW+JPEG分割記録]、[JPEG+JPEG分割記録]など多彩な記録方法が可能なので、さまざまな撮影および入稿シチュエーションに対応できる。まさにプロフェッショナル機と言える仕様だ。

 詳細スペックはニコンイメージングジャパンのウェブサイトをチェックして欲しい。
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バツグンの使用感

 「D6」は、ニコンのデジタル一眼カメラを使っているフォトグラファーなら、短時間ですぐ順応できる操作体系がいい。右手の人差し指一本で電源を投入できすぐ撮影に入れるところや、右手の親指一本でメモリーカードカバーを開けられるところなど、脈々と受け継がれたニコンの伝統が使っていて気持ちいい。よく練られた使いやすいボタンとダイヤル配置、またググッとせり出して操作しやすくなったモードダイヤル部といい、被写体に集中できるカメラ設計になっているところが素晴らしい。

 何よりも大きく明るい光学ファインダーが最高だ。視野率約100%、倍率約0.72倍のクリアさは、他メーカーと違ってマニュアルフォーカス時のピントの山も掴みやすく、オールドレンズを使用する際も存分に楽しめる。40万回にも及ぶレリーズテストをクリアーしたシャッターユニットも、軽快なシャッター音で撮影をリズミカルにしてくれる。剛性感の高い堅牢なマグネシウム合金採用の前・後ボディー、上面、背面、底面カバーも頼もしく、シーリングによる高い防塵・防滴性能と相まって、過酷な自然環境下または、もみくちゃになるような報道の現場でも撮影業務を確実に遂行できるタフさを有していると言えよう。

 細かいところだが、プレスルームに「D6」を置いていかざるを得ない状況や、リモート撮影時に盗難防止効果が期待される「ケンジントンロック」に対応しているところも素晴らしい仕様だ。

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D6作例と使用感

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 ニコン「D6」はメインターゲットが報道やスポーツなどを撮影対象とするプロフェッショナルフォトグラファーだが、この高い信頼性と俊敏性を求めるアドバンストアマチュアにも最高の武器となる。写りも当然素晴らしいが、明るく大きく見やすい光学ファインダーと、キレのいいシャッターとミラーのフィーリング、そしてレリーズタイムラグの少ないクイック感はどんな被写体を撮影しても実に気持ちよく感じるはずだ。狙った瞬間を確実にキャプチャーできる性能は魅力である。このカットは画質に定評のある「AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR」を使用して瓦屋根を撮ったが深みのあるトーンが心地よい。

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 ニコン「D6」はオートフォーカス機能が大幅に強化された。全点クロスセンサーの105点AFシステムは精度と正確さでフォトグラファーの期待に応えてくれる。スポーツ大会が新型コロナウィルスの影響で開催されておらず、残念ながら実戦で試すことはできなかったが、17種類もの豊富な「グループエリアAF」のパターンで狙った動体を逃がさないで撮影が可能だった。ランニング中の女性を「AF-S NIKKOR 500mm f/5.6E PF ED VR」で高速連続撮影したがパーフェクトなフォーカシング性能を見せてくれた。

 プロスポーツがターゲットなだけに当然の結果と言えるが、追従特性をカスタマイズできる「AFロックオン」や、一時的なモード切り換えができるAFエリアモードの割り込み機能など、AF機能全般的に痒いところに手が届くような設定がうれしい。さらに中央のフォーカスポイントが-4.5EV対応と低照度に強いところもいい。

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 ニコン「D6」の「アドバンストシーン認識システム」も進化している。オートフォーカス、露出制御、ピクチャーコントロール、ホワイトバランス、アクティブDライティング、フリッカー低減など、さまざまなシーンでの撮影をアシストしてくれる。日陰での緑葉を撮ったが自然かつ鮮やかな写りが好ましい。レンズは「AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR」。

 また人物の顔や上体検出情報、デフォーカス情報、動き検知情報など追従性が格段にアップし、光学ファインダー撮影時に瞳の位置を優先したフォーカスポイントの選択ができるという、デジタル一眼レフカメラで初めての機能を実装している。これはスゴい。

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 「D5」より引き継がれた高感度特性も、画像処理エンジン「EXPEED 6」によってより低ノイズを実現している。常用感度 ISO 100~102400、拡張感度 ISO 50相当(Lo1)への減感とISO 3280000相当(Hi5)と、どんな光量下でも最上の撮影結果が得られる特性が頼もしい。「AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8E FL ED VR」を用いて東京駅を撮影したカットだが、ISO 7200 でもノイズ感が整っており、ハイライト部からシャドウ部まで安定した写りを見せてくれた。

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 空を悠々と舞うトビを「AF-S NIKKOR 500mm f/5.6E PF ED VR」で狙った。「オートエリアAF」でシャッターを切ったが、しっかりとトビの鋭い眼にフォーカスを合わせてくれた。「アドバンストシーン認識システム」恐るべしである。逆光気味だが、羽毛のディテールもよく表現されており、「アクティブDライティング」の信頼性も向上しているようだ。AF/AE追従で約14コマ/秒、最大200コマ撮影できるのはうれしい。
 またバッテリーの保ちが驚異的なのも特徴である。

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 ISO 32000で建築物を撮った。レンズは「AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8E FL ED VR」。壁面のタイルの精細感、窓ガラスの質感、また微妙な色のトーンまでしっかりと「D6」は写しとってくれた。均整なノイズ感は美しくもあり、より高感度での夜間撮影、スポーツシーンでの撮影も難なくこなしてくれることであろう。

 ニコンの闘うフラッグシップデジタル一眼レフ「D6」の物語はこれから始まるのだ。

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