銘匠光学 TTArtisan AF 75mm f/2 Lマウント × LUMIX S5II レビュー
はじめに
Lマウントアライアンスとして、ライカ・シグマ・パナソニックの3社以外のメーカーからLマウント規格のレンズが登場。しかもAFレンズとあって、すごく気になっていた中望遠単焦点レンズ、銘匠光学 TTArtisan AF 75mm f/2を早速パナソニック LUMIX S5IIに装着して撮影を堪能してきました。
TTArtisan AF 75mm f/2 Lマウントの主な仕様

焦点距離:75mm
レンズ構成:7群10枚(EDレンズ1枚、高屈折レンズ4枚)
フォーカス:AF(オートフォーカス)
絞り:F2.0-F16
絞り羽根:9枚
最短撮影距離:0.75m
フィルター径:62mm
質量:約330g
付属品:レンズフード
合焦速度・精度はカメラ本体のAF性能に依存します。Lマウントの仕様は、信頼性や画質などの重要なデータにいたるまで、非常に広範囲におよび規定されていることから、互換性を向上させるため、レンズ側のファームウェアの確認・更新を行ってから使用することが推奨されています。4月のファームウェアアップデートでは、LUMIX S1RIIに対応したばかりです。
外装・デザイン
LUMIX S5IIとのバランスは、見た目、質量ともに良好。レンズ鏡筒にはクリック感のよい絞りリングが装備され、絞り優先モードで撮影する際には、絞りリングを回すだけでF値を変えられるシンプルな操作が気に入りました。絞りリングの「A」ポジションでは、カメラ本体側から絞り操作が可能です。ピントリングは滑らかに動き、フォーカスピーキングと合わせたMF撮影も苦になりません。



リアキャップにはファームウェアアップデートのために必要なUSB Type-Cケーブルの差し込み口がある
質量は約330gで大口径単焦点レンズとは思えない軽さ。コンパクトなサイズ感も非常に魅力的です。ズームレンズの他にもう一本、開放F値の明るい単焦点レンズを連れていきたいときにうってつけといえます。
中望遠だからといってポートレートに限らず、切れの良いシャープさと柔らかい表現を加えたいときや、標準レンズではちょっと届かない距離をかせぎたいときに活躍すること間違いなし。買うべきか? 迷ったらプライスが後押ししてくれますよ。
小さな被写体もしっかりとキャッチするAF+開放F2のボケ
中望遠の単焦点レンズといえば、F1.4、F1.2、はたまたF0.95などのさらに明るい開放値のレンズでシビアなピントを求めるのもよいですが、サクッと気負いなく撮影できる開放F2というのがTTArtisan AF 75mm f/2のポイントです。
開放F値では背景分離がよく、合焦面が明確になって際立ち、前後のボケの雰囲気も軽やかに写し出すことができる上に、LUMIX S5IIの像面位相差AFと自動認識AFとの組み合わせにより、微細に動いているものや、小さな被写体もしっかりと追従してくれます。
絞り開放付近は周辺減光も感じられますが、このレンズの味わいとして、むしろ表現の一つとして活かした撮影が好ましいといえそうです。

■撮影環境:絞りF2・1/200秒・ISO100・WBオート・+0.3EV・フォトスタイル/風景+オリジナルLUT

■撮影機材:パナソニック LUMIX S5II + 銘匠光学TTArtisan AF 75mm f/2
■撮影環境:絞りF2・1/200秒・ISO100・WBオート・+1.3EVフォトスタイル/風景+Sample LUT3

■撮影環境:絞りF2・1/400秒・ISO100・WBオート・+0.3EV・フォトスタイル/風景+オリジナルLUT
絶妙な距離感 最短撮影距離75cm
ポートレート撮影を主軸に考えていることがわかる最短撮影距離は75cm。身近なシーンでのテーブルフォト撮影でピントを合わせるには少々遠いので、撮影していてのけぞってしまいました。スタジオなどで被写体とのワーキングディスタンスを考慮すれば商品撮影にちょうどいい焦点距離といえるでしょう。
また、小さすぎるものに寄ってクローズアップすることができないので、被写体選びの感覚や距離感を養うという面で、本レンズの扱いに慣れることを忘れずにとどめておきたいものです。

■撮影機材:パナソニック LUMIX S5II + 銘匠光学TTArtisan AF 75mm f/2
■撮影環境:絞りF3.5・1/50秒・ISO640・WBオート・フォトスタイル/風景+オリジナルLUT

■撮影機材:パナソニック LUMIX S5II + 銘匠光学TTArtisan AF 75mm f/2
■撮影環境:絞りF5・1/25秒・ISO800・WBオート・+1EV・フォトスタイル/風景+オリジナルLUT
中望遠の距離で楽しむスナップ撮影
スナップ写真といえば、広角レンズか標準レンズで被写界深度を深く絞り込み撮影をする。と、思っている方も少なくないでしょう。広角レンズで寄ってグイグイ攻めるのもいいですが、中望遠75mmは歪みがほとんどなく、スッと立ち上がるような構図で切り取るのが醍醐味といえます。個人的に、最近では被写体との距離間を保つ“あえて寄らない見守り目線”のスナップ撮影が楽しく感じられています。
ズームレンズでいうところの望遠端の焦点距離に近いので、扱いにくいと感じる人も少ないのではないでしょうか。痒いところに手が届く絶妙な焦点距離は、スナップ撮影にも適切といえます。

■撮影機材:パナソニック LUMIX S5II + 銘匠光学TTArtisan AF 75mm f/2
■撮影環境:絞りF2・1/500秒・ISO100・WB晴天・+1EV・フォトスタイル/Flat+オリジナルLUT

■撮影機材:パナソニック LUMIX S5II + 銘匠光学TTArtisan AF 75mm f/2
■撮影環境:絞りF5.6・1/125秒・ISO100・WB晴天・フォトスタイル/Flat+オリジナルLUT

■撮影機材:パナソニック LUMIX S5II + 銘匠光学TTArtisan AF 75mm f/2
■撮影環境:絞りF2・1/4000秒・ISO100・WB晴天・フォトスタイル/L.クラシックネオ+LUT Vlog_709
TTArtisan AF 75mm f/2を連れて下町さんぽ旅へ
休日は、都会の雑踏を避けて葛飾区柴又へさんぽ旅におでかけ。賑わいを見せる柴又帝釈天参道の佃煮屋さんで足を止めると、あさりの佃煮を勧めてくださったので一口いただきました。しっかりと旨味のある佃煮の美味しさはもちろんですが、気軽に声を掛けてくださる気さくな雰囲気と、飾らない人柄を感じる接客は心地よく。
粋の生業、東京下町ってやっぱり落ち着くなぁ。と、しみじみ感じたひとときです。店主の素敵な笑顔も撮影させていただき、すっかり心を掴まれました。

■撮影機材:パナソニック LUMIX S5II + 銘匠光学TTArtisan AF 75mm f/2
■撮影環境:絞りF4・1/125秒・ISO100・WB晴天・-0.3EV・フォトスタイル/L.クラシックネオ+オリジナルLUT

■撮影機材:パナソニック LUMIX S5II + 銘匠光学TTArtisan AF 75mm f/2
■撮影環境:絞りF5・1/50秒・ISO100・WBオート・-0.3EV・フォトスタイル/Flat+オリジナルLUT
佃煮屋さんを後にしてさんぽ旅は続きます。帝釈天参道で目にする懐かしい空気。店先で涼をとる人も、美味しいものをほおばる人もたくさん。カッコつけない、気取らない。まさに休日を満喫できる柴又。昭和レトロという言葉でひとくくりにできない活気からは、大人が子どもの頃に戻れる町ともいえそう。

■撮影環境:絞りF5.6・1/50秒・ISO100・WB晴天・-0.3EV・フォトスタイル/Flat+オリジナルLUT

■撮影環境:絞りF2.8・1/400秒・ISO100・WB晴天・-1EV・フォトスタイル/Flat

■撮影機材:パナソニック LUMIX S5II + 銘匠光学TTArtisan AF 75mm f/2
■撮影環境:絞りF4・1/160秒・ISO100・WB晴天・-0.3EV・フォトスタイル/Flat+オリジナルLUT

■撮影機材:パナソニック LUMIX S5II + 銘匠光学TTArtisan AF 75mm f/2
■撮影環境:絞りF3.5・1/800秒・ISO100・WB晴天・フォトスタイル/ポートレート
訪れた日は夏のような眩しい日差し。柴又帝釈天は休日とあって大賑わい。日陰で休憩する人々のリラックスムードも下町らしく、気取らない姿に安心感を抱きました。

■撮影環境:絞りF7.1・1/160秒・ISO100・WB晴天・-1EV・フォトスタイル/Flat+オリジナルLUT

■撮影機材:パナソニック LUMIX S5II + 銘匠光学TTArtisan AF 75mm f/2
■撮影環境:絞りF7.1・1/125秒・ISO100・WB晴天・-1EV・フォトスタイル/Leicaモノクローム++sample LUT2

■撮影環境:絞りF4・1/100秒・ISO100・WB晴天・-1.3EV・フォトスタイル/Leicaモノクローム+sample LUT2
帰り際に柴又駅のホームから1枚。ワンマン運転の京成金町線らしく、踏み切りを渡る様子ものどか。

■撮影機材:パナソニック LUMIX S5II + 銘匠光学TTArtisan AF 75mm f/2
■撮影環境:絞りF4・1/2000秒・ISO100・WB晴天・-1EV・フォトスタイル/ポートレートポートレ+オリジナルLUT
おわりに
5月という光眩しく、彩りの美しい季節に連れて歩いたTTArtisan AF 75mm f/2 Lマウント。シャープさと繊細さの両立が可能で、ちょっとオールドレンズっぽさもあり、雰囲気を重視して撮影したいシーンにふさわしいレンズです。LUMIX S5IIのLUTでさらに効果的にイメージを引き出すことができました。
ビルドクオリティも高く写りも抜群。しかも軽量。手に入れやすい価格も相まって非常に魅力的な一本です。他の焦点距離も発売にならないかなぁと期待している自分もいます。
■撮影協力:有限会社 柴又丸仁
https://www.shibamata-marujin.co.jp/
https://www.instagram.com/shibamata_marujin/
■写真家:こばやしかをる
デジタル写真の黎明期よりプリントデータを製作する現場で写真を学ぶ。スマホ~一眼レフまで幅広く指導。プロデューサー、ディレクター、アドバイザーとして企業とのコラボ企画・運営を手がけるなど写真を通じて活躍するクリエイターでもあり、ライターとしても活動中。














