ライカQ3 43|旅は道連れ、カメラは相棒:長崎・雲仙紀行

大門正明
ライカQ3 43|旅は道連れ、カメラは相棒:長崎・雲仙紀行

旅に持ち出すカメラに関する、真面目な戯言

「旅の過程にこそ価値がある」とは、まこと至言。しかし、その「過程」たるや、目的地の吟味から始まり、足、宿、そして地元の粋な酒場探しまで、我々旅人が果たすべきタスクは山積みである。その中でも、最高の相棒(カメラ)を選ぶことは、最重要かつ最も甘美な難題と言えよう。

さて、今回の舞台は長崎・雲仙。異国情緒が薫る市内と大地の息吹を感じる猛々しい雲仙を前に、私が選んだのはライカQ3 43とリコー GR IV。この2台のクロップ機能をフル活用し、焦点距離28mmから150mmまでを網羅する、名付けて「長崎紀行セット」を引っ提げて、機内へと乗り込んだ。

■撮影機材:ライカQ3 43
■撮影環境:f/4.5 1/250 ISO100 150mmクロップ

標準域から望遠域を射抜く、異次元のスナイパー降臨

■撮影機材:ライカQ3 43
■撮影環境:f/2.0 1/125 ISO320 60mmクロップ
■撮影機材:ライカQ3 43
■撮影環境:f/2.0 1/500 ISO100 120mmクロップ
■撮影機材:ライカQ3 43
■撮影環境:f/2.0 1/160 ISO400 75mmクロップ

ライカQ3 43を一言表すとすればそれはもう、「最高のレンズを搭載した最上のカメラ」としか言いようがない。搭載されている「ライカ アポ・ズミクロン f2/43mm ASPH.」は、世界最高峰のレンズの称号を献上すべき逸品。絞り開放でシャッターを切れば、驚くべき解像感と、絹のように滑らかに溶けていく上質なボケ味が、ファインダーの向こうに広がる。

このレンズのポテンシャルを最大限に活かすのが、6,000万画素のセンサー。その異次元の能力により、43mmから150mm相当まで、ファインダー越しに焦点を「寄せる」愉しみを満喫させてもらった。

クロップ時の画素数
・43mm時:6,030万画素
・60mm相当時:3,000万画素
・75mm相当時:2,000万画素
・90mm相当時:1,370万画素
・120mm相当時:770万画素
・150mm相当時:500万画素

150mm相当では少々心許ない画素数だが、そこはAdobe Lightroom classicの「スーパー解像度機能」で事なきを得る。右手親指のファンクションキーにデジタルズームを割り当て、ワンタッチで焦点距離を変更してスナップを重ねたが、異次元のポテンシャルだった。

ただ一点、贅沢を言えば、ファンクションキーをポチポチ押すたびにクロップしていくのは良いが、逆戻りや43mmへのワンタッチ復帰がない。もう一つファンクションキーがあるので、ぜひそこに「逆クロップ機能」を割り当てられるようになると、さらに使い勝手は良くなるだろう。

43mmという魔力

■撮影機材:ライカQ3 43
■撮影環境:f/2.0 1/80 ISO1250 43mm

「標準レンズは50mm」とはよく聞く話だが、私にとって50mmは少々窮屈で、むしろ35mmがしっくりくる。ライカ M11 グロッシーブラックにはアポ・ズミクロンM f2/35mm ASPH.を付けっぱなしにし、ストリートスナップを楽しんでいるのがその証拠だ。
視界を余すことなく「切り取る」なら、35mm。しかし、被写体をそっと「浮かび上がらせる」なら、43mm。この絶妙な43mmという焦点距離は、実に都合がよろしい。

そして、ライカQ3 43のEVFは視認性が非常に高く、まるで光学ファインダーを覗いているかのような錯覚に陥るのは、決して過言ではない。何より、シンプルなデザインと操作性が、余計なものを排除し、私を撮影という行為に没頭させてくれる。

地獄で証明された防塵・防滴性能

■撮影機材:ライカQ3 43
■撮影環境:f/2.8 1/250 ISO100 60mmクロップ

長崎市からバスで2時間も揺られれば、世界的に名高い雲仙温泉に到着する。そこには30もの「地獄」が存在し、湧き上がる硫黄泉は威容を誇り、大地の鼓動を感じさせてくれる。今回は古湯、小地獄、新湯と巡った。
古湯は江戸時代から続く共同浴場で、多くの湯治客で賑わった歴史を持つ。明治以降は外国人の避暑地として発展し、今に至る素晴らしい温泉街だが、カメラにとっては実に過酷な環境。噴煙、硫黄、湿気……まさに地獄の環境だ。

しかし、私は防塵・防滴性能という、ライカQ3 43のタフな肩書きを信じ、この相棒を地獄へと連れ出した。火山が生み出した猛々しい景色を、恐れることなく写し取ることができたのだ。地獄から湧き出る噴煙に顔を近づけ、60mmクロップでその迫力を切り取る。やはり、このカメラは頼りになる。

夕焼け、粋な出会い

■撮影機材:ライカQ3 43
■撮影環境:f/2.0 1/125 ISO160 60mmクロップ

旅の初日にも訪れた料理屋へと向かう道すがら、突然、空が真っ赤な夕焼けに染まった。建物と建物の間から覗く夕焼けを、迷わず60mmクロップで撮影。
ライカQ3 43に搭載されたアポズミクロンは、収差を抑えつつも、発色が実によろしい。「神レンズ」と呼ぶにふさわしい、なだらかな階調を見事に描き出す。興奮冷めやらぬまま、胸いっぱいの幸せな気持ちを携え、料理屋へと急いだのは言うまでもない。

テーブルの上の魔術師

■撮影機材:ライカQ3 43
■撮影環境:f/2.8 1/80 ISO100 43mm
■撮影機材:ライカQ3 43
■撮影環境:f/2.8 1/125 ISO160 60mmクロップ
■撮影機材:ライカQ3 43
■撮影環境:f/2.8 1/500 ISO100 60mmクロップ

向かった先は、一昨日も舌鼓を打った、こじんまりとした料理屋。旬の素材を慈しむ優しい味の数々を堪能しつつ、利き酒師の店主が勧める多彩な銘柄を心ゆくまで愉しんだ。

カウンターに並ぶ料理やお酒を記録するのに、私はマクロ機能を多用した。ライカQ3 43のマクロ機能は、驚くほど強力。わずか26.5センチまで被写体に肉薄できるため、升に入った日本酒グラスの艶やかさや、料理の繊細なディテールを鮮明に写し出すことができた。
リングを少し動かすだけで、店主が毎日目利きして仕入れる新鮮な素材を使用した料理の「美味しさ」をそのままに、思い出を余すことなく残せる。まさに、テーブルの上の魔術師と呼ぶべき、頼れる機能である。

 

 

■写真家:大門正明
大門美奈と2011年リコーRING CUBEの公募展「Portugal」でデビュー。以来、妻に鍛えられながら制作を続けている。グループ展への参加のほか2022年に2人展「Bright Britain」など。DAIMONWORKS主催。

 

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