ライカとカレー。今日はあの駅で降りようか。vol.4|LEICA Q2

山本まりこ

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はじめに

今日、新しいライカカメラが届く。
ライカQ2。

ライカQ2は、高性能レンズ「ライカ ズミルックス f1.7/28mm ASPH.」が搭載された、レンズとボディが一体型のコンパクトカメラ。しかも、有効4730万画素の35mmフルサイズ機。フットワーク軽く作品作りをしたい私にとって思わず目が輝いてしまうカメラ。

この連載「ライカとカレー。今日はどの駅で降りようか。」は、写真家山本まりこが、毎回異なるライカカメラとレンズを持って電車に乗り、気になる駅で降りて旅をし、そしてカレーを食べて帰ってくるという内容の企画。今回は、連載の第四回目。最近、初めてお会いする方に「ライカの連載好きです。」と声をかけていただくことが増えた。とても嬉しい。たくさん写真を撮ってどんどん記事が長くなってしまうのが今の悩みどころ。ShaSha編集部の方には写真の枚数も文章の長さもほとんど何も言われていないので短くてもいいのだけれど、でも私の写真も文章もどんどん増えていく。ライカカメラとの旅が楽しくて。うう。さて、今回は、どうなるだろう…。

私は、ライカQ2と一緒に行きたい場所がある。

お庭で

届いたライカQ2を手に持ってみる。ズミルックスf1.7/28mm ASPH.レンズはとても小さく、ボディからのせり出しはフード含め7cmもない。それにしても美しいフォルムだなあとボディとレンズのラインをしみじみ眺めていると、レンズにMACROの文字を見つける。マクロも撮れるのね。レンズ一本にしてマクロも撮れるのは嬉しい。まずは、お庭で育てている植物を撮ってみる。レンズの根元をクルリと回してMACROに切り替えると、マクロの距離計が表示される。0.17mから0.3mまで撮影できるよう。最短撮影距離17cm。それは、すごく嬉しい。

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ぐぐぐ、と寄ってみる。
赤トウガラシが生き生きと美味しそう。
カレーに入れたらとっても辛そうだ。

フジバカマは全盛期を終えてもう枯れ果てそうだったけれど、背景ボケの美しさで秋の気配を感じる写真になった。お花が咲き出した頃はアサギマダラという青い羽根の渡り蝶が数羽飛んできたけれどもう今は来ない。きっともうどこか遠くの空を優雅に飛んでいるのだろう。それにしても、このレンズ、ぐっと寄れるし背景ボケも前ボケも美しい。ライカQ2、いい。ファーストインプレッション。

メニューボタンを押してどんな機能があるのか探してみる。フィルムモードにて、STD標準・VIVビビッド・NATナチュラル・BWモノクロ・BWモノクロHC、といろいろな風合いで撮影が可能。さらにはフィルムモード設定で、コントラスト・彩度・シャープネスなどを高くも低くも出来るので、自分好みのテイストで撮影することが出来る。

さらに見ていると、デジタルズーム機能を発見。28mm・35mm・50mm・75mmと表示されている。これはさらに嬉しい。だって、1本のレンズで、マクロとそして4本のレンズ、合計5本のレンズを持ったようなものじゃない。デジタルズームだから記録画素数は小さくなってしまうけれど、でも便利であることは間違いない。駅に行くまでの道すがら、お花が咲いていたので撮ってみる。28mm・35mm・50mm・75mm。

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お昼に咲いているから、昼顔なのだろうか。いつもこの道でこの紫色に会うのが楽しみだったりする。ライカのカメラでレンズをつけ変えずに、こんなにも簡単にズームした写真が撮れるなんてとちょっとした感動を覚えながらシャッターを切った。ライカQ2は、高精細な368万ドットの有機EL電子ビューファインダーを搭載している。ライカM10やライカM10-Pなどのレンジファインダー機とは異なり、撮れる画像がそのままファインダーや液晶画面に反映される。撮るものが見えているという、スマホや最近のデジタルカメラに慣れている人には手に取りやすいカメラなのではないかと思う。

ライカQ2と東京へ

JR東海道線に乗り込んでボックス席の窓際に座る。東海道線の上り列車は、先頭の数輛がボックス席であることが多い。高校生の時、オレンジとグリーンカラーの高崎線の青いシートのボックス席に座って高校に通っていたからだろうか、いまだにボックス席が好きだ。ボックス席がある電車は田舎に多い気がするのだけれど、どうなのだろう。今日は人が少なくてまばら。今日もしばらくボックス席で大きな窓を横にのんびりと東京に行こう。小山に緑が生い茂る景色から、少しずつ建物が多くなっていく外界をのんびりと眺める。今日は天気がいいなあ。空が真っ青。ライカQ2、小さくてかわいいなあ。

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西荻窪の謎

最初に向かうのは、西荻窪。あるカレーを食べに行くのが目的。

先日、facebookにあるメッセージが届いた。「元気ですか?今月から月2回、第2第4土曜日にカレーランチを始めます。お時間のある時に立ち寄ってもらえると嬉しいデス。」と。スパイス料理教室仲間のYUKIさんからだった。そうそう、私山本は、スパイス料理を本気で勉強中。雑誌でカレーレシピを連載中でもあります。写真の片手間ではなく、本気でスパイスについても仕事をしていきたいと思っているので、今年の夏までスパイス料理教室のインストラクターコースに通っていた。YUKIさんは、そのスパイス教室のインストラクターコースの同期、10カ月一緒に教室で奮闘した大切な仲間。今年の9月にはれて無事卒業した仲間の中で、お店でカレーを出すのはYUKIさんが初めて。そんなYUKIさんに会いに、YUKIさんのカレーを食べに、JR西荻窪駅へ。初めて降りる駅。

改札を出てGoogleマップでアクセスを確かめながらふと前を見ると、商店街のアーケードが。

まあ、商店街。
通らずにはいられない。

商店街を眺めながら歩くのが好きだ。その町の人たちの胃袋になっているお店が並ぶ商店街は、その街を知るための辞書みたいなもの。Google先生もこの方向でいいと言っているので、商店街を行こう。小さなお店がたくさん並んでいる。てくてく。

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む。
むむ。
ゾウ。
何故ゾウ?
しかも足に何かくっついている。猫だろうか。

上を向いて写真を撮っていると、女子大生くらいの二人組が気づいて話している。「あ、ゾウだ。好きでしょ?」「え、なんで?ぜんぜん好きじゃないけど…」「でもなんでゾウ?」「ね。」と言いながらスマホでパシャパシャっと写真を撮って通り過ぎていった。アーケードの屋根からゾウが吊り下げられているという疑問は膨らむばかり、謎だ。みんなが疑問に思っているようだけれど、まずは行こう。先に行こう。うん。

YUKIさんのカレー

西荻窪の街はなんだかのんびりゆっくりとしている。豆腐屋さん、お菓子屋さん、カレー屋さん、ごはん屋さんがポツポツとあり、なんだかとても住みやすそうな街だなあそして美味しいものがたくさんありそうな街だなあと思いながら歩く。デジタルズーム75mmに設定し街並みを撮影。数分歩くと、カレーの写真が大きく貼られた看板を発見。「スパイスごはんYUKI」。

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ビルの地下へ。BAR METEORAのお昼部門として第2第4土曜日に月2回営業している「スパイスごはんYUKI」。ここでいいのかなと開けられていた入口のドアからソロリ中に入ると、いた。YUKIさんだ。鮮やかなカラーの店内の奥で、YUKIさんはクルクルと動きながらスパイス料理を作っている。

「YUKIさん。」
「あ。まりちゃん。え、突然来るからびっくり。」
なんていう久しぶりのあいさつをしてカウンター席に座る。YUKIさんは、変わらずの優しい笑顔。ランチメニューは、2種類。スパイスカレーランチプレートと、カレーランチ。スパイスカレーランチプレートは、野菜カレー1種、野菜炒めなどのサブジが数種、野菜のピクルス、ミックススパイスライスがプレートになっているいろいろ食べられるお得なプレート。迷わずスパイスカレーランチプレートを注文。メニューにある「スパイスティーはご自由にどうぞ♪」の文字が嬉しい。カウンターの上に置いてあるスパイスティーのポットからスパイスティーを注ぐと、スパイスがふわりと香った。飲むと、シナモンがシャキッと効いたスパイスティーだった。このくらいシャキッとスパイスが効いたお茶を口飲むのは気持ちがいい。

カレーが届く間にいろいろなことを考えた。YUKIさんは今日、どんなカレーを出してくれるのだろうか。スパイス教室に通っている間、同期たちが作るカレーは毎回何十種類と山のように食べた。毎回20種類くらいのカレーを食べていたから、トータルしたらものすごい数のカレーを食べたことになると思う。もちろん私もたくさん作ったし、YUKIさんが作ってくれたカレーもたくさん食べた。私も含め、たまにびっくりするような斬新なカレーが出来上がってくることも多かったけれど、そのほとんどがとても美味しかった。インドへの愛とスパイスへの愛が溢れる先生からみっちり教えていただき、卒業するころにはびっくりするくらい美味しいカレーをみんなが作れるようになっていた。そんじょそこらのお店には負けない美味しさだなあと思いながら仲間が作るカレーをしみじみ食べていた。そして、YUKIさんのカレーはいつも上品で美味しかった。ブレずにまっすぐ美味しい、という感じ。私は思う。写真を見れば、その人がいったいどんな人かどうかという事が分かるように、料理にもその人の人柄や性格が出ると思う。YUKIさんは、まっすぐ優しい人なのだと思う。

私はと言えば、ついつい新しいことに挑戦してみたい性格らしく、使ったことがないような素材を使って探検するような気分で料理をして成功することもあれば大きく失敗することもあったり。妄想と想像が膨らんで突き進んでしまう妄想突進型だ。そんなことを考えていたら、YUKIさんのスパイスカレーランチプレートが目の前に現れた。

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まあ、なんて美味しそう。今日の野菜カレーは、たっぷりきのことレンコンのカレー。サブジは、赤ひよこ豆とキャベツのスパイス炒め、長芋のマスタードオイル炒め。そして、紫キャベツとミニトマトのスパイスピクルス、ミックススパイスライスがついている。レンズをマクロモードにして野菜カレーだけにピントを当てて撮影。ライカで寄って撮影できるのは嬉しい。いつも、寄りたい気持ちをグッとこらえながら立ち上がって撮影していたので、とても嬉しい。

さあ食べよう。まずはやっぱり、野菜カレーから。一口ぱくり。きのこがぷりっとしていて、レンコンはしゃっきり、コクが深い。特に好きなのは、酸味。絶妙。うーん、すごく美味しい。思わず食べる手が早くなる。「YUKIさん、すごく美味しい。」そう伝えると、大きな笑顔で「全部野菜だけで作っているの。お肉とか一切使ってないの。」と、YUKIさん。このカレーのコク深さを野菜だけで作り出すのは、とても大変なことだと思う。手間暇をたくさんかけないと、このコクにはならないだろうなと想像しながら食べ進める。サブジもピクルスもライスも、とっても美味しい。

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相変らずクルクルテキパキと動きながらYUKIさんはサブジなどの料理を作っている。私が食べている間に、常連さんらしき人たちが数名やってきてあっと言う間に今日のカレーは完売。カレーが美味しいので「もう一杯食べたい!」と大きな声で伝えると、常連さんたちからも笑顔が返ってくる。地元の方なのだそう。

常連のみなさんと少し話をさせていただいていてふとさっきのアーケードのゾウを思い出して「あのゾウは何ですか?」と聞いてみると、あれはね、子供たちが秋祭りの時に引いたりするのねと教えて下さった。昔は手作りのハリボテで作られていて、それも味があって良かったそう。なるほど、お祭りの時の!と妙に嬉しく納得しながらうなずく。スパイスティーをごくりと飲み干し、お会計をしてまたねとお店を後にする。YUKIさん、美味しく楽しい時間をありがとう。

同期の新しい旅立ち。
おめでとうYUKIさん。

帰りがけ、YUKIさんに教えていただいたオーガニックのスパイス屋さんに立ち寄る。チャイのスパイスと、フンザのドライベリーを購入して駅に向かう。

あ、でも。そうだ。
何故ゾウなのか。
その疑問は解明されないままだった。
しまった。
くっついていた猫みたいなものはまるで分からない。
でもいいか。
また来たときに聞いてみよう。
西荻窪のゾウの謎は、続く。

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移動中はスマホに入れたアプリ「Leica FOTOS」とカメラをBluetoothでつないでお気に入りの写真をスマホに転送したり。東京のアトリエに戻ると、そろそろ夕刻の時間になってきていた。チャイを作ろう。最近、インドのチャイグラスを買った。インドの町中のチャイ屋さんが使っているグラスだ。少し水色なところが気に入っている。チャイはスパイス強め、砂糖もたっぷり入ったものが好き。飲むと、インドの町に吹く風を思い出すから。

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ほっ。
ひゅう。

浅草にて

翌日。今日も行きたい場所がある。合羽(かっぱ)橋(ばし)。
そう、あの、料理道具が並ぶ商店街のある合羽橋。ずっと行きたいと思っていた場所。合羽橋で料理器具を買いたい。合羽橋で買った料理器具を使ってカレーを作りたい。まずは、合羽橋がどこにあるのかgoogle先生に聞いてみると、浅草駅から徒歩で行けると出てくる。ふむふむ。浅草をお散歩して、浅草寺にご挨拶をして、合羽橋で料理器具を見る。なんて素敵なプラン。さらには、その近くに美味しそうなカレー屋さんがあったら最高じゃないと検索すると、いろいろなカレー屋さんが出てきた。中でも「西インドスパイス ガヤバジ」というお店の文字がバンと目に入ってきた。西インドのスパイスカレー。北インドや南インドカレーは人気があるけれど、でも、あえて西インドを謳うお店はなかなか見たことがない。これはもう行くしかない。インドを旅した時に、一番好きだったのが西インドのカレーだ。ジャイプールやジョードプルで食べたカレーは、スパイス強め、油も塩分も多め、肉も多め。西で食べるカレーは、バチバチと音がしそうなくらい強烈なカレーが多かった。そんなカレーに会えるのだろうか。

都営浅草線に乗ると、新しい車輛なのか鮮やかな背もたれのシートが目に入る。電車はそこそこ混んでいたけれど、ちょうど終点の駅でみんなが一旦降りるのでそのタイミングでパチリ。赤い色が美しい。ライカの赤バッジも背景の赤にシンクロして輝いて見える。赤はそう、カレーで言えばレッドペッパーの赤。ホットな赤。

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浅草駅で地上に上がると、人はまばら。雷門を埋め尽くすくらいの海外からの旅人たちでいっぱいだった去年と比べたら1/5いや、1/6くらいの人出だろうか。久しぶりの浅草の町をちょっとお散歩してみる。

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フィルムモードをBWモノクロHCにして、歩く。

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カラーで撮ったり、モノクロで撮ったり。一瞬の心のコントラストが描けるのが楽しい。

西インドのスパイスカレー屋さんガヤバジ

さあ、合羽橋に行こう。料理道具を買いに行こう。とその前に、お腹が空いてきたので、カレーを食べに行こう。西インドスパイス ガヤバジ。調べたところによると、BARの間借りをして土日のみ営業しているカレー屋さんだそう。ビルの二階、ここで合っているのかなと少し不安になりながらも扉をそおっと押すと、中からいらっしゃいませという明るい声がした。

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女性にカウンター席に案内されて、メニューを見る。迷わずスペシャルプレートを注文。だって、一番たくさんの種類のカレーやサブジが載っているから。食後にホットチャイも追加。西インドのカレー。ああ、なんて待ち遠しいの。わくわくうずうずしながらしばらくすると、スペシャルプレートが到着した。「わーすごい。」思わず声が出てしまう。ボリュームたっぷり。

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なんと、カレーは4種もある。マトンの辛口カレー・鳥出汁のマイルドカレー・Moth豆のカレー・チキンキーマカレー。そのほかに、マサラ味のチキン(チキンティッカ)、マサラエッグ、サブジ、アチャール、バスマティライス、アロエ。わあああ。西インド満載。ここは楽園なのだろうか。どれからいただこうか迷うけれど、まずはマトンカレーからいただく。実は匂いが強いマトンが苦手なので少々ドキドキしながらいただくと、このマトンカレーは苦手な匂いはまったくなくてとても爽やか。美味しい。次々にカレーをいただき、ボリュームたっぷりだったプレートをあっと言う間に完食。中でも、チキンキーマカレーがとりわけ好きで「食べ終わりたくない」と思いながらゆっくり噛み締めながらいただいた。

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食後にチャイをいただく。やっぱり、カレーの後はチャイがいい。あったかくて、スパイスたっぷりで、甘いチャイがいい。そんな、あったかくてスパイスたっぷりで甘いチャイを飲んでほっと一息ついて、お店の男性の方に声をかける。掲載をさせていただいてもいいでしょうかと聞くともちろんですと快くOKをいただいた。ありがとうございます。

少しお話を聞くと、店主の富永さんと、西インドのプネーという街出身のガヤさんの二人でお店を運営しているそう。「ガヤは私の名前、バジはカレーという意味だから、ガヤバジというお店の名前はガヤさんのカレーという意味です。」と教えていただいた。ちなみに、プネーという街はムンバイの南170kmに位置するデカン高原にある人口500万人近い大きな都市だ。私が思っていた西インドは、デリーから見て西側であり、インドの中では北西の地区。砂漠が広がる地域だ。ガヤさんの故郷のプネーとは大分離れている。気候も全く異なる地域。ガヤさんのカレーを食べたときに、あれ、あの西インドの味と比べて大分優しいマイルドな味だなあと思ったのは、地域が全く違っていたからだったのか。「プネーはジャイプールやジョードプルみたいに砂漠が近くにあったり華やかではないけれど、美味しいお店がたくさんあるんですよ。」と笑顔で故郷の話をするガヤさん。西インドのプネーと言う街にいつか行ってみあいなあと想像が膨らむ。最後に「照れますね」と言いがらも微笑むお二人のツーショットを撮らせていただき、お店を後にする。

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お二人は、来年2021年2月に、近所に店舗を構えることになったそう。今は間借りだけれどご縁が重なってと笑顔で話すお二人のお店が誕生することを心待ちにしています。お店が出来たら、また行きます。必ず。

かっぱの町を歩く

ガヤパジのお店を出ると、もうそこは実は合羽橋の商店街の中だった。まずはカレーを食べようとgoogleマップを起動していたので気づかなかった。合羽橋の真ん中にあるカレー屋さんだったのだ。なんて素敵な立地なのかしら。合羽橋の町を歩いてみよう。

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ズラリ。鍋、フライパン、包丁、皿、トング、箸などなど、料理器具が並ぶ。お店にちょっと入ってみると、目が丸くなるほど値段が安いものも多い。この木のスプーン欲しいなあ、このガラスのお皿も。てくてく。今一番欲しいのは、包丁を研ぐ砥石。長年使えるしっかりしたものが欲しい。

とある包丁屋さんの前でじっと砥石を眺めていると、買い物客らしい少し年上の男性が私の横にスーッと並ぶ。結構近い距離。もっと見たかったけれど、一人でじっくり見たかったのでお店を後にして信号待ちをするために立ち止まる。すると、さっき横にいた男性がすっと近づいてきて私の横に立つ。また結構近い距離。な、何だろう…、そう身構えたときに声をかけられた。「なかなか素敵なカメラですねえ。」と。あ、そ、そうね、ライカQ2ね、私じゃなくて。ちょっと恥ずかしくなりながら「ありがとうございます。」と答える。「レンズは何ミリ?28?それでフルサイズなんでしょ。」と聞かれる。「28mmです。これボディと一体型なんです。レンズ交換はできないライカQ2というカメラです。フルサイズの。」と答えると、男性はまじまじとライカQ2を眺めて「へー、一体型の。」と言ってスーッとどこかに消えていった。私はびっくりしながらも、ライカカメラが人を引き付ける力の強さについて深く実感した。東京の街を歩いていて、カメラで声をかけられるなんて滅多にない。ライカの磁力、すごい。

その後もふらふらと歩いていて、気になるお店に入ってお話を聞いたり。中でも、あるお鍋に一目惚れしてしまい、店員さんのお話をゆっくり聞く。美しいフォルムと美しい色のお鍋。なかなかのお値段だったのだけどああこのお鍋買っちゃうかもと思いながらもギリギリで踏みとどまってお店の外でAmazon検索をしてみたら、アマゾンの方が7,000円も安かった。ふう。

合羽橋には、カッパ様がたくさんいらっしゃる。

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合羽橋(かっぱばし)というくらいなので、カッパとのご縁があるのだろうと思っていたけれど、金色のカッパ像の前に看板があり説明書きがあった。読んで見ると、1804年から1818年までの文化年間の頃、水はけの悪いこの地域は度々水害に遭っていたそう。そこで、合羽川太郎氏が私財を投じて排水工事に着手したけれど工事は難航。川太郎氏に昔助けられたことのあるカッパたちが工事を手伝い、無事工事は完了。そのことから、この辺りが合羽橋と名付けられたとのこと。他にも説あり、とのこと。

その後もたくさんのお店に入っていろいろな調理器具を見た。古いお店もあれば改装してある新しいお店もあり。あれもこれも欲しい。心が躍ってずっとドキドキしている。お料理のことを考えている間は本当に幸せだ。でも、いろいろあっていろいろ見て考えているうちに気持ちが満腹になってしまった。お腹いっぱい、心一杯。結局、何も買わなかった。また今度じっくりプライベートで来よう。そうしよう。

帰りがけにクリスマスツリーを見つける。もうそんな季節かあ。今年は月日が過ぎるのがいつもの年より何だかとても早く思える。そんなことを思いながらマクロモードで煌くツリーを撮影して銀座線に乗り込む。私の前に女性、斜め前に少し年上の男性が立つ。私は知っている。男性の視線が私のリュックの上に釘付けだったことを。つり革につかまる手に目を半分隠しながら、電車の揺れに任せて何度も何度も眺めていた。ライカQ2を。ライカの磁力、すごい。

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銀座で降りて少し暗くなった街を歩く。煌々と光るライカ銀座店の前を通る。ライカQ2を抱きしめながら。さあ、家に帰ろう。

おわりに

今回一緒に旅をしたライカQ2、私はこのカメラが好きだ。とても好きだ。フットワーク軽く撮れることはもちろん、マクロ撮影機能あり、デジタルズームでいろいろな画角で撮影できることも大きな魅力。カラーもモノクロもと、いろいろな範囲を一台で撮れることに大きな魅力を感じた。ライカカメラの中では、自由度がとても高いカメラだと思う。そして、フルサイズというのは最大の魅力。

撮影している間、私は何だかいろいろな想像をしていた。私はこのライカQ2といろいろ旅をしたい。日本を、世界を。私の頭の中では、マレー鉄道に乗って壮大な自然を車窓に見つつライカQ2と一緒に電車に揺られている映像が浮かんでいた。いつの間にか。そして、タイのグリーンカレーや、マレーシアの赤いカレーが目の前に置かれ、ふわりふわりと湯気が揺れている映像が浮かんでいた。マレーシアには行ったことがないのに、何故か分からないけれど、浮かんでいた。いつかライカQ2と一緒にそんな旅をすることがあるのだろうか。分からないけれど、そんな気持ちになったことは確かだ。

そして、今回はカレーを二度も食べた。どちらも本当に美味しかった。スパイスごはんYUKIさんには、後日、掲載可能か聞いてみると、「うれしい。人生初だから!ワクワクありがとう。」とメッセージが届いた。私も嬉しい。YUKIさん、ありがとう、おめでとう。

ライカカメラとの旅はまだまだ続く。次はどんなライカカメラに出会えるのだろうか。のんびり、ゆっくり、綴っていきたいと思う。

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スパイスごはんYUKI
東京都杉並区西荻南荻南2-20-3サンパレス西荻パートB1
第2・第4土曜日12時~OPEN*売り切れ次第終了

西インドスパイス ガヤバジ
東京都台東区西浅草2-23-10 第2島谷ビル2F、080-4766-5163
土日11時~15時OPEN *売り切れ次第終了
2021年2月移転予定。詳細はInstagramにて。

■参考文献
ライカHP

■写真家:山本まりこ
写真家。理工学部建築学科卒業後、設計会社に就職。25歳の春、「でもやっぱり写真が好き」とカメラを持って放浪の旅に出発しそのまま写真家に転身。風通しがいいという意味を持つ「airy(エアリー)」をコンセプトに、空間を意識した写真を撮り続けている。

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