コンデジ戦国時代を勝ち抜け!今が買い時 FUJIFILM X100VI

鈴木啓太|urban
コンデジ戦国時代を勝ち抜け!今が買い時 FUJIFILM X100VI

はじめに

こんにちは!フォトグラファーの鈴木啓太|urbanです。長年オールドレンズやフィルムを中心にポートレート、スナップ、家族写真を撮影しております。今回は発売から1年経過し、ようやく購入ができるようになりつつある大人気コンパクトデジタルカメラ、FUJIFILM X100VIを紹介していきます。

コンパクトデジタルカメラは近年GRシリーズやLeica Qシリーズを筆頭に、非常に人気のある機種が数多くリリースされており、最近ではGFX100RFといったラージフォーマットセンサーを搭載したコンデジのリリース、以前紹介したオールドコンデジも根強い人気でまさにコンデジ戦国時代と言える状況。そんな中、様々な魅力ある使い方ができるX100VIを解説していきたいと思います。

究極の進化を遂げたX100シリーズの完成形

まず初めに、FUJIFILM X100VIについておさらいしていきましょう。X100VIは富士フイルムが2024年3月28日に発売した、35mm判換算で焦点距離35mm相当のレンズを搭載する高級コンパクトデジタルカメラ「X100シリーズ」の第6世代最新モデルです。完成されていた第5世代「V」にボディ内手ブレ補正を搭載するなど、細かな使い勝手をアップデートしています。

税込み定価約28万円と高額ながら各カメラ店から一瞬で姿を消し、なかなか入手できない状態が続いていましたが、少しずつ入荷状況は改善しているようで、購入できるチャンスは増えてきたように思います。中古品も大人気で、リセールバリューも高いのは、万が一自分に合わなかったときにも売却しやすいというメリットがあります。

X100Vから高画素化された4020万画素の「X-Trans CMOS 5 HR」センサーと新開発の高速画像処理エンジンを搭載。個人的にコンデジに4000万画素も必要かな?と懐疑的ではありましたが、デジタルテレコン機能を使用したクロップ機能は非常に有益で、50mm、70mmとクロップした場合も、画素数を確保できるのは大きなメリット。

X100シリーズと言えば、アドバンスト・ハイブリッドビューファインダーと呼ばれる光学式(OVF)と電子式(EVF)を瞬時に切り替えられるハイブリッドビューファインダーを採用しているのも強みです。撮影スタイルやシーンに応じて柔軟に対応でき、OVFとEVFを切り替えて撮影ができるのはFUJIFILM機にしかない撮影体験だと言えるでしょう。

新フィルムシミュレーション:REALA ACEの使いやすさ

■撮影機材:FUJIFILM X100VI
■撮影環境:f2 1/2000秒 ISO125 WBオートフィルムシミュレーション:REALA ACE

X100VIにはもうひとつの大きな特徴があります。フィルムシミュレーション「REALA ACE」が搭載されたことです。実際に販売されていた同名のカラーネガフィルムを再現したもので、前身となるフジカラーREALAは世界初となる「第4の感色層技術」を導入し、1989年に発売されました。赤、緑、青の3感色層フィルムで困難だった、紫や黄緑と言った微妙な色の忠実再現を目指したとされています。

REALA ACEはその後継商品で1996年に発売され人気を博したものの、デジタルカメラの波に押された2012年に残念ながら発売終了となりました。筆者もREALA ACEを実際に使用した経験があり、粒子は細かくやや青味のある透き通った色を出すというイメージを持っています。今も冷凍庫でしっかりと保存しており、ここぞという時に少しずつ取り出して使っています。

富士フイルム公式サイトより引用
https://www.fujifilm-x.com/ja-jp/products/cameras/x100vi/

REALA ACEは本来、ラージフォーマットセンサー搭載のGFX100II用に開発されたフィルムシミュレーションですが、APS-Cで使えるのはありがたいところ。発色についてはラージフォーマットとAPS-Cで異なり、ラージフォーマットはAPS-Cと比べ彩度やコントラストが下がり、より諧調豊かな表現が可能となっています。

フィルムシミュレーションはFUJIFILM機の魅力のひとつにはなっているのですが、デジタル現像で自分の色を作りたい層にとってはやや癖のある機能という認識もあり、標準となるPROVIA以上にナチュラルな発色のフィルムシミュレーションが望まれていました。今回はそれに答える形で、このREALA ACEが搭載されたのではと想像しています。

ここでPRO Neg.HiとREALA ACE、PROVIAの発色を比較してみましょう。

PRO Neg.Hi

REALA ACE

PROVIA

ご覧の通り、PROVIAはやや鮮やかな発色となるところ、REALA ACEは更に落ち着いた発色となっているのがわかると思います。PRO Neg.Hiは更に低彩度でやや軟調という特徴が見えます。微妙な差ではありますが、比較すると以下のフィルムシミュレーションチャートからもわかるようにポジションも明確になっているようです。

富士フイルム公式サイトより引用
https://digitalcamera-support-ja.fujifilm.com/digitalcamerapcdetail?aid=000005232

筆者は今までスナップやポートレートはクラシックネガ、クラシックネガの渋みのある発色がアンマッチとなりやすいポートレートメインの撮影ではPROVIAと使い分けていましたが、X100VIを使うときはPROVIAを低彩度でよりニュートラルな表現となるRELALA ACEに置き換えて使用しています。

一方で、パッと見てフィルムと見間違えるフィルムシミュレーションはクラシックネガに軍配が上がり、よりフィルムライクな出力を楽しみたいのであれば、これらを使い分けるなどフィルムを交換するようにフィルムシミュレーションを選ぶといった楽しみがまたひとつ増えたのも嬉しいですね。

さてここからはREALA ACEで撮影した作例を見ていきましょう。

■撮影機材:FUJIFILM X100VI
■撮影環境:f5.6 1/60秒 ISO1600 WBオート
■フィルムシミュレーション:REALA ACE
■撮影機材:FUJIFILM X100VI
■撮影環境:f2 1/3200秒 ISO125 WBオート
■フィルムシミュレーション:REALA ACE
■撮影機材:FUJIFILM X100VI
■撮影環境:f2 1/3200秒 ISO125 WBオート
■フィルムシミュレーション:REALA ACE
■撮影機材:FUJIFILM X100VI
■撮影環境:f4 1/60秒 ISO250 WBオート
■フィルムシミュレーション:REALA ACE
■撮影機材:FUJIFILM X100VI
■撮影環境:f2 1/60秒 ISO1000 WBオート
■フィルムシミュレーション:REALA ACE
最短撮影距離で撮影。最短&開放ではボケもかなり大きくなるので、花やテーブルフォトにも有用です。
■撮影機材:FUJIFILM X100VI
■撮影環境:f2 1/3800秒 ISO125 WBオート
■フィルムシミュレーション:REALA ACE
■撮影機材:FUJIFILM X100VI
■撮影環境:f16 1/25秒 ISO125 WBオート
■フィルムシミュレーション:REALA ACE
■撮影機材:FUJIFILM X100VI
■撮影環境:f2 1/2400秒 ISO125 WBオート
■フィルムシミュレーション:REALA ACE
■撮影機材:FUJIFILM X100VI
■撮影環境:f2 1/75秒 ISO125 WBオート
■フィルムシミュレーション:REALA ACE
諧調も非常に豊かで、APS-Cフォーマットを感じさせません。小型軽量で、この描写が出せるのは間違いなく現代最強コンデジの一角です。

X100VIをもっと楽しむための方法

X100シリーズには、グリップやサムレスト、レンズフードなど主にサードパーティーからそれぞれ専用のアクセサリーが発売されています。筆者もサムレストやフードはこだわって選んでいるのですが、特におすすめなのがソフトフィルター系製品です。筆者は主にオールドレンズで撮影することが多く、X100V、そしてX100VIに見られる高解像、高コントラストの描写が強すぎると感じることがありました。特にフィルム時代のレンズは現代と比べると適度な収差が残り、それが心地よく感じる事さえあります。

X100シリーズ専用で作られているNiSiのAllure Soft (アルーアソフト)というフィルターはソフトフィルターにジャンルされる製品ですが、SOFTとGLOWという2つの効果を持ち、X100VIをより表現豊かなカメラに変えてくれます。

SOFT効果は、X100VIの高いシャープネスを落とすことで、柔らかな印象を加え、デジタルカメラの高コントラストを抑える特徴があります。一方、GLOW効果は、光を拡散して、光源の周辺にハレーションを生む効果をもたらします。オールドレンズのフレアに似た効果ですが、フレアと違いハレーションによるコントラストの低下が少ないことが特徴です。また、ハレーション部分がやや青味がかるといった独特の変化もあります。

フィルターなし

フィルターあり

逆光など強い光でない限りフィルターのGLOW効果はごくわずか。窓際の手付近のGLOW効果、そして顔から服にかけてSOFT効果による緩やかなコントラストの低下がみられます。
■撮影機材:FUJIFILM X100VI + NiSi AllureSoft
■撮影環境:f4 1/240秒 ISO125 WBオート
■フィルムシミュレーション:REALA ACE
逆光時のGLOW効果が窓際に見られます。幻想的なシーンや強い夏の光などに有効で、疑似的にオールドレンズのフレアを模した効果を得ることができますが、オールドレンズによくみられる逆光下での大きなコントラストの低下がないのがメリットです。

ミスト系フィルターとの大きな違いは、GLOW効果が強い光源下や白の被写体にほぼ限定されるため常用しやすく、SOFT効果によりデジタルの癖を抑えることができ、更に軟調な表現が得られるという事です。GLOWの効果が限定的なのは非常に使いやすく、ミスト系フィルターによく見られる写真全体が飽和してしまうという事にはなりにくいのがメリット。

特にクラシックネガとの相性が抜群ですので、最後はポートレートでの作例を載せてみます。ぜひクラシックネガと組み合わせて使ってみましょう。

■撮影機材:FUJIFILM X100VI + NiSi AllureSoft
■撮影環境:f2 1/30秒 ISO125 WBオート
■フィルムシミュレーション:クラシックネガ
■撮影機材:FUJIFILM X100VI + NiSi AllureSoft
■撮影環境:f2 1/320秒 ISO125 WBオート
■フィルムシミュレーション:クラシックネガ

おわりに

■撮影機材:FUJIFILM X100VI
■撮影環境:f4 1/125秒 ISO125 WBオート
■フィルムシミュレーション:クラシックネガ

ざっとですが、X100VIの特徴に触れてみました。近年コンデジのユーザーも多くなっているのは、クロップ機能やレンズの高性能化により1台で十分な機能を持つカメラが多くなっているからと感じます。X100VIはそれらに加えフィルムシミュレーションといった色に関する強みもあり、より1台で完結できるスペックを有しています。ようやく購入ができるようになりつつあるX100VI、ぜひお手に取ってそのデザインや描写を確かめてみてください!

更に実践的な撮影方法が知りたい場合は、僕が講師を務めるワークショップ「フィルムさんぽ」にもご参加いただければ嬉しいです!ではまた、次の記事でお会いしましょう!

 

 

■モデル:Suu(@soonononono

■フォトグラファー:鈴木啓太|urban
カメラ及びレンズメーカーでのセミナー講師をする傍ら、Web、雑誌、書籍での執筆、人物及びカタログ撮影等に加えフィルムやオールドレンズを使った写真をメインに活動。2017年より開始した「フィルムさんぽ/フランジバック」は月間延べ60人ほどの参加者を有する、関東最大のフィルム&オールドレンズワークショップに成長している。著書に「ポートレートのためのオールドレンズ入門」「ポートレートのためのオールドレンズ撮影マニュアル」がある。リコーフォトアカデミー講師。

 

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