佐藤俊斗 × ポートレートVol.13|雨の日。ロケと室内で撮るラフな撮影テクニック

佐藤俊斗
佐藤俊斗 × ポートレートVol.13|雨の日。ロケと室内で撮るラフな撮影テクニック

はじめに

テーマは雨の日の撮影。
今回はFUJIFILM X100Vを使用した撮影テクニックをご紹介します。
梅雨の時期は雨が続き、なかなかロケでの撮影スケジュールを組むのが難しいですよね。

そんな中でも今回は、雨の日ならではの質感を生かした撮影方法を紹介します。
また、後半では室内での撮影テクニックも紹介していますのでぜひ最後までご覧ください。

雨の日の写真の良さ

撮影日が雨になってしまった、、、皆さんはそんな経験はありますか?
どうしても撮影日をずらせないことや、延期してもその日も天気が不安定になってしまうことはよくあることです。

雨になったとしても、いい写真が撮りたいと思うのは当然のこと。
私が思い浮かべるのは、しっとりした雰囲気やフィルム調。また少し落ち着いたイメージで、あえて作り込みすぎないような写真。
雨の日だからこそ撮影できる写真は、実はたくさんあります。

冒頭でお伝えしたように、今回はじめてFUJIFILMのコンデジを使用して撮影しました。
なぜこの機材を選んだかにはいくつか理由があります。

X100Vといえばコンデジ界でとても優秀な機材。
FUJIFILMらしい色味表現と繊細な写りであると同時に、フィルムカメラのような操作方法で自分流に使いこなせるのが魅力の一つです。
このコンパクトさで手軽に持ち運ぶことができるので、スナップや日常を写す撮影に向いているカメラといえるでしょう。X100Vは、雨の日に片手で傘を持ちながらでも、気軽にエモーショナルな写真を撮れるカメラなのです。

ではここからは、撮影した作品をご紹介します。

写真に質感をプラスにするフラッシュ撮影

■撮影環境:1/500秒 f/2 23mm ISO250

フィルムカメラでいつも撮影されている方は、雨の日にフラッシュが必須なのはもうご存知のことではないでしょうか。X100Vは、フィルムカメラのような操作性で写真が撮れることも魅力的なポイント。その時の温度感を表現できます。

次の写真を比較してみてください。

■撮影環境:1/500秒 f/2 23mm ISO250
■撮影環境:1/500秒 f/2 23mm ISO250

上の写真がフラッシュなし、下の写真がフラッシュありです。

皆さんはどちらの写真が好みでしょうか?
モデルさんが素敵なので正直どちらも好きなのですが、私はフラッシュを使った写真の方が好きです。

光が当たる範囲が広がることで、モデルさんの顔周りが明るく照らされています。
また傘についた水滴にも光が回ることで、よりシャープな写りになっているのがわかりますよね。フラッシュを焚くことによって、よりフィルムらしい質感を表現した1枚になります。

雨の日のフラッシュ撮影の良さはたくさんありますが、以下数点にまとめてみました。

1. 影が持ち上がり被写体を綺麗に写せる
2. アイキャッチが入る
3. 色味がはっきりと出る
4. 手ブレや被写体ブレを防げる

1)被写体を綺麗に写せる
フラッシュは人を美しく撮るのに大事なツールです。
カメラの軌道と同じ線を通る内臓フラッシュだからこそ、被写体に無駄な影を作らず撮影できます。
今回は黒髪のモデルさんでした。フラッシュを焚くことでより髪にツヤ感が出て繊細な写りになっていますよね。

2)アイキャッチが入る
2つ目は皆さんも馴染みのあるアイキャッチ。
上の写真のようにアイキャッチが入ることで瞳が綺麗に写り、顔の明るさが上がるだけでなく、表情の見え方が変わり美しく引き立ちます。

3)色味がはっきりと出る
モデルさんの服にも注目してみてください。
そのまま写真を撮ると、服の色が暗いため顔周りも暗い印象になってしまいます。
ここでフラッシュを使用することで、内臓フラッシュならではの正面からの硬い光が、服の色味やディテールもしっかりと写してくれます。
さらに上記でも説明した肌のツヤ感も加わり、顔周りから服まで全体的に明るく持ち上がっています。

4)手ブレや被写体ブレを防げる
フラッシュを使うメリットは被写体の見え方だけではなく、シャッタースピードを稼ぐことができる上、暗い場所でもブレを防いだ写真を撮影できることです。

■撮影環境:1/500秒 f/2 23mm ISO250

フラッシュ撮影の注意点

ここまではフラッシュの良さを紹介してきましたが、フラッシュ使用時にも注意点があります。次の写真をご覧ください。こちらはフラッシュの失敗例です。

■撮影環境:1/500秒 f/2 23mm ISO250

傘が顔の前にあることで、影が顔に入ってしまっているのがわかりますか? これでは暗い印象になってしまいます。
傘などの小物を使用する際は、影の入り方で印象が大きく変化してしまうので角度や向きなどを工夫して撮影しましょう。

雨の日の光探し

どこから撮影しても同じであろうと思ってしまいがちですが、実は雨の中でも光は存在します。晴れた日は光と影がくっきりと見えるので、光の選択がしやすいですよね。

一方、雨の日はただでさえ撮影が困難な上に、明るい場所を見つけるのは難しいでしょう。
ここで大事なのは高層ビルが立ち並ぶ場所や、大きな木に囲まれたような場所を避け、抜け感のある場所を選ぶことがポイント。

前回、スタジオ撮影をテーマに説明した点光源・面光源について覚えていますか?
晴れの日は太陽光のようなスポットの光。反対に雨や曇りの日は雲に覆われた優しい光が全体的に注ぎます。

下の写真をご覧ください。

■撮影環境:1/500秒 f/2 23mm ISO250

傘を通して優しい光が被写体に当たっています。
傘はビニール傘のような透明な色なのがポイント。黒や紺などの場合は光を通さないため全体的に暗くなってしまいます。

また、雨の日撮影の傘選びに差し色として綺麗な色や目立つ色を選ぶ方も多いでしょう。
しかし個人的にはビニール傘を使うことで明るさを確保しつつ、傘に付いた水滴越しに被写体を写すなど、構図でも味のある写真を撮影できるのでおすすめです。

構図選びのコツ

今回のポイントは、路地裏の一本道をただ往復しかしていないということ。
背景はそこまで大きく変わらないので、微妙な傘の位置やポージングで写真の印象が変わってきます。

次の写真をご覧ください。

■撮影環境:1/500秒 f/2 23mm ISO250

電信柱が印象的な一枚ですよね。
他の写真に比べて髪の毛の色がしっかりと出ているのがわかるでしょうか?
やや左上からの自然光が髪に直で当たっているので綺麗な艶が出ています。
そしてこちらもフラッシュを焚き正面からの光を当てることで、自然光とのバランスが取れた綺麗な写真に仕上がっています。

次の写真は、緑の柵が可愛い場所でしゃがんでもらいました。

■撮影環境:1/500秒 f/2 23mm ISO250

しゃがんでもらうことでモデルさんの魅力やアンニュイさがより引き立ち、どこか儚げで言葉では表し切れないほど、女優としての表現力が溢れた一枚です。
さらに柵と服の色味とのバランスや、抜け感をつくるなど細かな拘りも入れています。

中華料理店での店内撮影

■撮影環境:1/100秒 f/2 23mm ISO640
■撮影環境:1/100秒 f/2 23mm ISO640

次に室内に移動して撮影しました。
背景の黄色と赤が可愛い店内。

髪に当たる照明を見るとわかるのですが、暖色の光が少し気になっていました。
本来であれば電気を消して色温度を整えた状態で撮影することが一番ですが、営業中なのでそうもいきませんのでそのまま撮影しました。

雑誌や広告などでもカフェや喫茶店、中華料理店でモデルさんが佇む姿や食べている姿を切り取るページがよくみられますが、こういった対面での撮影の際に「どうしても彼女感が抜けなくて悩んでいる」「いい瞬間を切り取る方法がわからない」と悩んでいる方も多いでしょう。

そこで、解決方法がいくつかあるので紹介します。

1. 彼女感をあまり出さずに、かつ被写体を美しく切り取る方法

まずは、広角で撮ること。対面撮影では写真の奥行きや空間の作り方が大切です。
そこでグッとよって撮ることにより写真に動きがでて、臨場感が生まれます。

2.「動」の表現の意識

今回においての「動」は、食べているという動き。
モデルさんがカメラ目線で決めている場面や、ポーズを撮っている瞬間だけを狙って撮影していませんか?
いい瞬間とは、その動きの中の一瞬に存在します。
シャッターをサクサク切りやすいコンデジだからこそ、食べている動作のその一瞬を切り抜きましょう。

「動きの過程を撮影する」これが商業でも実際に使用される写真の技術。
ただの可愛い写真にしないためには、以上の技術をプラスすることでワンランク上の撮影ができます。

おわりに

■撮影環境:1/100秒 f/2 23mm ISO640

今回は雨の日撮影のテクニックをお話ししてきましたが、いかがでしたでしょうか?
ロケのシーンでは主にフラッシュの重要性について解説しましたが、シーンや環境によって光量を調整することでまたそれぞれ写り方は変わってきます。

フラッシュを使うことが必ずしも正解ではなく、「光」がプラスされる事で広がる可能性や自分自身の技術の引き出しとして、覚えておくと便利だと思います。雨の日だからこそ撮れるような写真。コンデジを片手に散歩すると新たな発見があるかもしれません。
ぜひ撮影の参考にしてみてください。

 

 

■モデル:小西桜子

■写真家:佐藤俊斗

 

 

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