初心者におすすめのカメラ『富士フイルム X-E5』|写真家 ミゾタユキ
はじめてのカメラを旅とともに始めよう
旅は新しい景色、偶然の出会い、思いがけない発見や驚きなどに心が動き、カメラを始めるきっかけとしてぴったりです。自然とシャッターを押して撮る楽しさを実感できます。カメラやレンズをできるだけシンプルに、旅先で出会う光や空気をただ記録するだけでなく、感じたままの印象に残したいと感じる方も多いと思います。今回は、旅先での一瞬を気軽に美しく残したい初心者の方へおすすめのカメラとしてFUJIFILM X-E5を選びました。
持ち歩きたくなるサイズ感とデザイン
X-E5は、レンズ交換ができるAPS-Cサイズのミラーレスカメラです。約445gの軽量ボディに、キットレンズのXF23mmF2.8 R WRは薄いパンケーキレンズで重さ約90g。カメラにレンズをつけると、まるで一体型のような印象でスタイリッシュ。小さいバッグにもすっと収まるサイズ感です。アルミ削り出しのトッププレートは質感も高く、指先でふれたときの感触も滑らかで、ダイヤルやレバーのクリック感、クラシックなレンジファインダースタイルのデザインと佇まいは場の空気に溶け込み、また自分のファッションの一部のようになじみオシャレです。
イメージに合わせて使いたいFUJIFILMの色「フィルムシミュレーション」
FUJIFILMのカメラが持つ魅力のひとつに、「フィルムシミュレーション」があります。最近、動画の影響からカラーグレーディングや写真の色をつくることを推す傾向もありますが、フィルムシミュレーションはシンプル。全部で20種類のフィルムのテイストで写真を撮ることができます。Velviaで鮮やかに、クラシッククロームでシックに、ASTIAでソフトになど、イメージや気持ちに合わせてフィルムシミュレーションを選ぶと、そのときの空気や感情をワンショットに込められると思います。
カメラとレンズ1本で瀬戸内アート旅へ~ X-E5とXF23mmF2.8 R WR
今回の旅ではX-E5とXF23mmF2.8 R WR、カメラとレンズ1本のみで行きました。瀬戸内のどこまでも凪が続く静かな海や、青空と島のアートに触れる光景に合う雰囲気をイメージして選んだフィルムシミュレーションは「ノスタルジックネガ」。フィルムシミュレーションダイヤルの中に入っていないので「フィルムシミュレーションダイヤル設定」でFS1に割り当てました。少しカスタムするだけで使いこなしている感じがします。さらに、画質の効果として「カラークロームブルー」をON。「強め」にすると青の表現がぐっと深まるので、空や海、影の中に潜む青がより深く印象的に写ります。

■撮影環境:絞り優先AE・F5(+0.7EV)・1/1000s・ISO250・フィルムシミュレーション ノスタルジックネガ・カラークローム 強め
写真のアスペクト比(縦横の比率)の基本は3:2ですが、16:9、5:4、4:3、1:1、に変えることもできます。港の歩道から見下ろした大きなオブジェを中心に1:1のスクエアで存在感アップ。人と比べてみるとスケール感がわかります。レンズの右上あたりあるにコントロールレバーを長引きすると簡単に切り替えられて便利でした。

■撮影環境:絞り優先AE・F3.2(+0.7 EV)・1/420s・ISO64・フィルムシミュレーション ノスタルジックネガ・カラークローム 強め
単焦点レンズF2.8の明るいレンズなので、絞り開放側で撮ると背景が大きくぼけ、主役が浮かび上がります。小さい被写体にもAFでピントを合わせて撮ることができるのでカメラに慣れていなくても安心です。

■撮影環境:絞り優先AE・F4(+0.7 EV)・1/2200s・ISO250・フィルムシミュレーション ノスタルジックネガ・カラークローム 強め
波打ち際を歩いていた少女と足元の波の動きを撮りたくてカメラを水面近くで構えました。ローアングルなので、このようなときはモニターを手前に引き上げます。ファインダーを覗けないアングルの時、チルト式のモニターは便利でよく使います。

■撮影環境:絞り優先AE・F2.8(+1.3 EV)・1/10s・ISO80・フィルムシミュレーション ノスタルジックネガ・カラークローム 強め
X-E5は約4020万画素でX-Trans CMOS 5センサーとX-Processor 5の組み合わせにより、細部まで美しく描写することができます。この木型は和三盆を作るための道具ですが、板のくぼみや削り後の質感が緻密で手触りが伝わるような感じがします。このレンズの最短撮影距離は20㎝なので、ぐっと近づいて撮ると思った以上に大きく捉えることができます。

■撮影環境:絞り優先AE・F5(+1.0 EV)・1/320s・ISO160・フィルムシミュレーション ノスタルジックネガ・カラークローム 強め
山々に囲まれた棚田の中にアート作品がありました。アートへ向かう道を歩く人それぞれの様子も夏らしい光景です。太陽が眩しく、ファインダー越しにのぞくと棚田や木々のナチュラルな色は目に優しく、広がる風景が長閑で美しいです。アスペクト比を変えたレバーを一回引くとファインダーの表示方法を変えられました。「長引き」と「引き」で切り替えられる操作もユニークで便利に感じます。

■撮影環境:絞り優先AE・F13(+0.7 EV)・1/60s・ISO640・フィルムシミュレーション ノスタルジックネガ・カラークローム 強め
辿り着いた作品の内部は覆うように編まれた竹を通して、柔らかな光と影が文様をつくる心地よい空間でした。23mmのレンズの画角は35mm判換算で約35mm。人の視野に近いので風景も人物も自然な距離感で写しだすことができます。

■撮影環境:絞り優先AE・F8(+1.3 EV)・1/500s・ISO500・フィルムシミュレーション ノスタルジックネガ・カラークローム 強め
あのカボチャが!!走っているバスの窓から見えた瞬間、大きく揺れながら慌ててシャッターを押したので斜めになりましたが、X-E5のボディ内手振れ補正が効いてブレずに撮ることができました。うれしい。このとき、ドライブモードで「ミニチュア効果」の設定にしていたので、カラフルで可愛い印象になりました。

■撮影環境:絞り優先AE・F6.4(+0.7 EV)・1/500s・ISO2500・フィルムシミュレーション ノスタルジックネガ・カラークローム 強め
美術館の外から中を見たときにガラスの反射や映り込みが重なり、何気ない風景が不思議な光景に変わりました。閃きのまま絵画とシルエットを重ねてみたらアートのようなオシャレ感です。

■撮影環境:絞り優先AE・F5.6(+0.7 EV)・1/4000s・ISO2500・フィルムシミュレーション ノスタルジックネガ・カラークローム 強め
楽しそうに海を眺める姿に合わせて、露出補正をプラスにして明るいハイキ―な雰囲気で撮りました。「カラークロームブルー」の効果で空の色も白くなりすぎず軽やかに描写できます。ISO感度が高すぎる設定ですが高感度画質も良く、旅の空気をそのまま写しとってくれるようです。

■撮影環境:絞り優先AE・F5.6(+1.0 EV)・1/280s・ISO250・フィルムシミュレーション ノスタルジックネガ・カラークローム 強め
日が沈み、眺める空と海は淡く優しい光が広がり、建物のフォルムも浮かぶように際立っていました。薄い雲や夕日のグラデーションを見たままに美しく捉えることができ、より一層記憶に残る光景になるように思いました。

■撮影環境:絞り優先AE・F8(+1.0 EV)・1/210s・ISO250・フィルムシミュレーション ノスタルジックネガ・カラークローム 強め
帰路に向かう船で、あれ?よく見ると黒い手袋がOKサインを出しています。楽しい偶然に気づけて、風で形が変わる瞬間を逃さずに捉えることができてラッキーでした。
まとめ
X-E5は、ただ撮るだけではなく、写真って楽しいと感じさせてくれるカメラです。旅から帰った日常でもふと立ち止まって、光や色に惹かれてシャッターを押すような瞬間が増えると思います。軽くて使いやすく、操作も簡単なので初心者にもやさしく、フィルムシミュレーションで空気感や感情をのせることができるのも魅力です。キットレンズから始めて撮りたい世界に合わせてレンズを変えると、視点そのものが広がっていく感覚も味わえます。クラシックでスタイリッシュなカメラとともに過ごす日々は少し特別になり、きっと長く使い続けていきたくなる存在になると思います。
■写真家:ミゾタユキ
猫や日常、旅先でみつけた情景を作品として撮り続け、近年では2023年Nikon THE Galleryで「Pastel~夢をめぐる」、2024年FUJIFILM HoP Galleryで「Time to cross」個展を開催。カメラ誌やWEBでの執筆、カメラメーカーのセミナー講師、フォトコンテストの審査などを通じて写真の楽しさを伝える活動にも携わる。著書「カメラでパチリ へやねこ そとねこ」、共著「美しいボケの教科書」など多数。
撮影会&web講評「フォトプラネッタ」主宰
ニコンカレッジ講師
FUJIFILMメタバースHouse of Photographyアンバサダー
日本作例写真家協会会員【JSPA】
















