ネイチャースナップのすすめ|マクロレンズを楽しもう

小林義明
ネイチャースナップのすすめ|マクロレンズを楽しもう

はじめに

ネイチャースナップでは、いろいろな場所で自然的な被写体を撮影します。そのなかで欠かせないのがマクロレンズになります。マクロレンズがあれば、どんな場所でも被写体を見つけられると言ってもいいでしょう。

今回は、撮影に出るなら必ず持っていたいマクロレンズについてお話ししようと思います。

ラベンダーにやってきたミツバチが一生懸命に蜜を吸っている。ラベンダーの蜜を食べたら、全身から心地よい香りがするようになるのだろうかと考えながらシャッターを押していた。マクロレンズなら小さないきものの姿も適度な大きさで撮影できるようになる。
■撮影機材:PENTAX K-1 Mark II + smc PENTAX-D FA MACRO 100mmF2.8 WR
■撮影環境:F3.2 1/200秒 +0.3EV補正 ISO800 WB太陽光

マクロレンズはこんなレンズ

みなさんは、マクロレンズというとどんなイメージがあるでしょうか。カメラメーカーのカタログなどを見ると、花とか虫をクローズアップした写真が使われていることが多いので、被写体を大きく撮影するためのレンズだと思っているかもしれません。それで間違いではありませんが、もう少し厳密に説明すると、普通のレンズよりももっと近づいて被写体を大きく撮影できるレンズだと思ってください。

どんなレンズでも「最短撮影距離」と言って、一番近くでピントを合わせられる距離が決まっています。たとえば、100mmの単焦点レンズの最短撮影距離が70cmだったとすると、同じ100mmのマクロレンズでは最短撮影距離が25cmくらいになるという具合で、かなり近接できるようになります。被写体を大きく撮影するためにはかなり近づかないといけないということは、忘れてはいけないポイントとなります。

直径が1cmほどの小さなユウゲショウの花を撮影している。左は一般的なレンズの最大撮影倍率となる0.25倍。これだと小さな花などを撮影するにはちょっと物足りない感じがしてしまう。右側はマクロレンズの等倍で撮影したもので、これだけ大きく撮れれば、花の細かなところもしっかり見えるようになる。
ユウゲショウはマツヨイグサなどと同じグループの植物。マクロレンズで拡大すると、花の構造がマツヨイグサと似ていることがよくわかる。背景のボケも大きくきれいで、マクロレンズならではのボケを活かした画面構成も楽しい。
■撮影機材:CANON EOS R5 Mark II + TAMRON SP AF180mmF/3.5 Di LD [IF] MACRO1:1
■撮影環境:F5.6 1/800秒 +0.7EV補正 ISO800 WB太陽光
等倍で撮影すると、フルサイズのモデルでは、10円や100円玉大のものが画面いっぱいに入る(左)。APS-Cモデルではさらに大きく撮影でき、画面の横幅からも100円玉がはみ出すくらいになる(右)。これならかなり小さな被写体でも十分な大きさで撮影できるのがわかると思う。

どのくらい被写体を大きく撮れるのかを表す目安として、「最大撮影倍率」があります。被写体そのものの大きさとセンサー上に写る大きさを比較したもので、本格的なマクロレンズではセンサー上に実物大の大きさで撮れる「等倍」撮影が可能となっています。一般的なレンズでは0.2〜0.3倍程度のものが多いです。センサー上の被写体の大きさを表していますので、センサーサイズの小さい方が、画面上では大きく写ることになります。

最近はマクロと言いながら最大撮影倍率が0.5倍までのものもありますし、ズームレンズでマクロと表記があるものは補助的なマクロ機構付きということがあるので、購入前に最大撮影倍率を確認しておきたいところです。

森の中でみかけたウスアカオトシブミ。体長は7mm程度ととても小さな昆虫だ。それでもマクロレンズの等倍で撮影すれば、それなりの大きさに撮影できる。構図に気をつければ、しっかりと絵にすることができる。
■撮影機材:CANON EOS R5 Mark II + SIGMA 70mm F2.8 DG MACRO Art
■撮影環境:F9 1/500秒 +0.3EV補正 ISO6400 WB太陽光
高画素機を使っているのなら、クロップを活用すればより大きく被写体を捉えることができる。このような小さな被写体は特大サイズのプリントにすることは少ないので、画素数が減っても積極的にクロップを活用している。
■撮影機材:CANON EOS R5 Mark II + SIGMA 70mm F2.8 DG MACRO Art
■撮影環境:F9 1/640秒 +0.3EV補正 ISO6400 WB太陽光 1.6倍クロップ

焦点距離の違い

マクロレンズを見ていると、さまざまな焦点距離のものがラインナップされていることに気づくと思います。現在主流となっているのは、50mmクラスと100mmクラスのものでしょう。以前は200mmクラスも多く発売されていました。
ここでは、50mm、100mm、200mmクラスのマクロレンズで、写り方の違いを見ていきます。

まず使い勝手の違いとして、「ワーキングディスタンス」(レンズ先端から被写体までの距離)が違ってきます。焦点距離が短くなるほどワーキングディスタンスも短くなり、等倍撮影時にはレンズ先端が被写体に触れるかどうかになったりレンズ先端やフードの影が被写体に落ちたりすることもありますが、左手の指で小さな花を摘んで固定しながら撮影するようなこともできます。
逆に焦点距離が長くなれば被写体から離れられるので、離れたところから大きく撮影でき、虫や小動物を驚かせずに撮影しやすくなります。

花を撮ることを例に考えてみると、自分で花を育てながら撮影している人などは花に近づいたり鉢を動かすようなこともできるので、50mmなど近くで撮影できる方が便利なことが多いです。柵に囲まれた植物園や遊歩道から離れられないフィールドでは花に近づけないことも多く、200mmクラスの方が扱いやすいです。100mmは両方の中間的な使い勝手でいろいろな場面に利用できる焦点距離となっていて、マクロレンズ入門におすすめです。

同じ場所で、左から50mm、100mm、180mmで撮影している。焦点距離が長くなるほど離れたところから大きく被写体を撮影できるのは、一般的なレンズと同じだ。自分が撮影する被写体までの距離を意識して、扱いやすい焦点距離を選ぶようにすると撮影もスムーズに行える。
ラベンダーの花を真上から撮影して放射状に広がるパターンを作り出してみた。真上から撮るようなときは被写体までの距離が自由にならないことも多いので、50mmのような焦点距離が短い方が撮影しやすい。
■撮影機材:PENTAX K-1 Mark II + smc PENTAX-D FA MACRO 50mmF2.8 
■撮影環境:F4 1/100秒 -0.3EV補正 ISO200 WB太陽光
巣を作り始めたフタモンアシナガバチの女王。驚かさないようにちょっと距離を置いて静かに撮影した。フードがあるとワーキングディスタンスが短くなるので、フードは外している。100mmクラスは比較的コンパクトで色々なシーンに利用できるので、常用マクロとしておすすめだ。
■撮影機材:CANON EOS R5 Mark II + EF100mm F2.8 Macro USM
■撮影環境:F4.5 1/160秒 +0.7EV補正 ISO1600 WB太陽光

画面構成的には、焦点距離によって前景や背景の写り方が変わってきます。被写体を同じ大きさで撮影した場合、焦点距離が短い方が背景が広く写り、焦点距離が長くなると写る範囲が狭くなります。

被写体を大きく見せながら周りの様子も画面に入れたい場合は焦点距離が短いレンズを使います。逆に背景を整理してスッキリしたい場合や、背景に見えるものを大きくしたいときには、焦点距離が長いレンズを使うのです。

撮影するシーンによって画面構成は違ってくると思いますが、自分の好みや撮影条件に合わせてレンズの焦点距離を選ぶことが必要なことが理解できるでしょう。

バラのつぼみが同じくらいの大きさになるように、左から50mm、100mm、180mmで撮影している。この場合は焦点距離が長くなるほどつぼみから離れることになる。被写体の大きさが同じでも、背景の写る範囲が違うのがわかるだろう。焦点距離が短いほど広く、焦点距離が長くなると狭くなる。撮影意図によって焦点距離を使い分けよう。
バラの花を青空を背景に撮影した。青空をなるべく多く入れられるようにしたかったので、50mmのマクロレンズを選んでいる。写真の雰囲気は背景によって大きく変わるので、撮影する条件と撮影意図に合った焦点距離選びが大切だ。
■撮影機材:PENTAX K-1 Mark II + smc PENTAX-D FA MACRO 50mmF2.8 
■撮影環境:F3.5 1/2500秒 +0.3EV補正 ISO800 WB太陽光
葉の上に落ちていたハート型の花びら。上から撮影すると地面が画面に入ってしまうので、なるべく背景に地面が入らないよう、背景の写る範囲が狭くなる180mmを選んで撮影した。
■撮影機材:CANON EOS R5 Mark II + TAMRON SP AF180mmF/3.5 Di LD [IF] MACRO1:1
■撮影環境:F7.1 1/200秒 +0.7EV補正 ISO320 WB太陽光
コスモスが同じくらいの大きさになるよう、左から50mm、100mm、180mmで撮影している。後ろでボケているコスモスの大きさが違うことがわかるだろう。焦点距離が違うと、背景に写るものの大きさが違ってくるので、画面構成によって焦点距離を使い分けることでイメージ通りの絵作りが可能になる。
植物園で撮影したアケボノフウロの群生。スポットライトの当たっている花を浮き上がらせながら、周りの花の様子も見せたかったので、50mmで後ろの花を小さめに入れて画面構成した。
■撮影機材: PENTAX K-1 Mark II + smc PENTAX-D FA MACRO 50mmF2.8 
■撮影環境:F4 1/125秒 ISO200 WB太陽光
ジニアの上に乗っているカマキリの子供。背景に見えている花の写る大きさやカマキリまでの距離を考えて、100mmマクロで撮影した。
■撮影機材:PENTAX K-1 Mark II + smc PENTAX-D FA MACRO 100mmF2.8 WR
■撮影環境:F4.5 1/200秒 ISO400 WB太陽光
奥に見えているバラが同じくらいの大きさに写るよう、左から50mm、100mm、180mmで撮影している。手前にあるバラが前ボケとして写っているが、その大きさやボケ具合が違っているのがわかるだろう。一般的に焦点距離が長い方が大きなボケが得られると思われがちだが、この場合は50mmの方が手前の花に近づくため、大きなボケとなっている。前ボケを入れる場合は、被写体を意図した大きさにしたときに、前ボケとしたいものに近づけるような焦点距離を選ぶ必要もある。
アジサイの葉の上に乗っているアマガエル。手前にある葉や花を前ボケとして画面に入れて、奥行きと柔らかな雰囲気に仕上げた。前ボケは被写体に被らないようにした方がすっきり見える。
■撮影機材:CANON EOS R5 Mark II + TAMRON SP AF180mmF/3.5 Di LD [IF] MACRO1:1
■撮影環境:F4.5 1/1000秒 +1EV補正 ISO2500 WB太陽光
フタマタイチゲの花をクローズアップ。手前に入る花の雰囲気を適度に残せるようにしながら前ボケとして利用した。ボケすぎても花の雰囲気がなくなってしまうので、ここでは100mmマクロを使った。
■撮影機材:CANON EOS R5 Mark II + EF100mm F2.8 Macro USM
■撮影環境:F2.8 1/500秒 +1.3EV補正 ISO200 WB太陽光

距離感を覚えよう

マクロレンズを使いこなす第一ステップとしては、被写体までの距離感を覚えることです。初めてマクロレンズを使った人は、こんなに近づかないといけないのか!と驚くことでしょう。

望遠レンズは離れたところから被写体を大きく撮影できるのですが、マクロレンズは近づいて大きく写すレンズなので、等倍にしたときにどのくらい近づけば思い通りに撮れるのかを感覚的にわかるよう練習しておいてほしいです。

虫などを撮影するときに、一度近づいてから距離を変えるためにまた近づくようなことをすると逃げられてしまいます。花のような逃げない被写体であっても、この距離感が分かっていると、この花は離れすぎているから撮影には向かない、とかちょうどいい場所に咲いている花を見つけるのが簡単になります。

練習方法としては、家の中でもいいのでMFにしてピントリングを最短撮影距離にしておき、さっとカメラを構えると同時に思った場所に大まかにピントを合わせられるように繰り返すと距離感を身につけられます。

敏感なカナヘビに最短撮影距離付近まで近づいて撮影した。近づいてから無駄な動きをすると驚いて逃げられてしまうので、静かに近づいて素早く撮影する必要がある。自分が使っているマクロレンズの最短撮影距離での距離感を体で覚えておくと、素早く撮影が可能だ。
■撮影機材:CANON EOS R5 Mark II + TAMRON SP AF180mmF/3.5 Di LD [IF] MACRO1:1
■撮影環境:F6.3 1/250秒 +0.3EV補正 ISO1000 WB太陽光

シャープに撮るコツ

何よりも難しいのが、マクロレンズを使ってシャープに撮影することです。クローズアップ撮影では思っている以上にピントの合う範囲が狭く、等倍撮影時には数mmずれるだけでピンボケになるので、ピント合わせはとにかくシビアです。AFに頼っても思ったところにピントが合っていないということも当たり前にあります。AFエリアは一番狭くして、ピントを合わせたい場所に正確に合わせます。うまくピントが合わないときは、MFに切り替えて拡大しながらピント合わせをするのもいい方法です。1枚だけ撮影して撮れたと思わず、撮影後はピントを確認するようにしましょう。

同時にブレも起きやすいです。拡大撮影しているためカメラブレ、被写体ブレともに目立つので、可能な限りシャッター速度を速めに設定しておくようにします。私は1/250秒以上を目安にしていて、被写体が動くときは1/1000秒程度にしています。
手持ち撮影では体を完全に固定するのは無理ですから、ピンボケ、ブレともに起きやすいです。数カット撮影しておいてもっともシャープに撮れているカットを選ぶといいでしょう。三脚が使えるときには利用すると歩留まりも良くなります。

3コマ続けて撮影したものを拡大してみると、風で揺れたり体が微妙に動いていることで、シベにピントの合っている位置がすこしずつ違っているのがわかるだろうか。一番目立つシベが花びらと重ならないところにピントが合っている左側が見やすいピントになっていると思う。他のカットもどこかのシベに合っているが、大きくプリントした時にはちょっと気になるかもしれない。
森の中で咲いていたカンゾウの花。背景に森の雰囲気を残しながら撮影した。風はあまりなかったもののゆっくり揺れていたので、確実に撮影できるよう何枚か撮影しておいた。後から見ると、比較カットのように微妙にピント位置が違っているので、マクロ的な撮影では数枚撮影しておくと安心だ。
■撮影機材:CANON EOS R5 Mark II + SIGMA 70mm F2.8 DG MACRO Art
■撮影環境:F2.8 1/125秒 +1.3EV補正 ISO200 WB太陽光
いきものの撮影ではしっかり目にピントを合わせるのが基本。このセグロイナゴを撮影したときにも、逆光気味でカメラがイナゴの目を認識できず、ピントの甘いカットも多かった。カメラを過信すると後悔することもあるので、その場でピントを確認しながら撮影しよう。
草原を歩いていると、あちこちからバッタが飛び出す姿があった。静かに近づいてみるとセグロイナゴだった。離れたところから撮影できる180mmマクロで撮影しているが、開放絞りではピント合わせもけっこうシビアで数枚撮影しておいて正解だった。
■撮影機材:CANON EOS R5 Mark II + TAMRON SP AF180mmF/3.5 Di LD [IF] MACRO1:1
■撮影環境:F3.5 1/320秒 +1EV補正 ISO200 WB太陽光

マクロレンズ=クローズアップではない

マクロレンズをつけると、何でもかんでも大きく撮影してしまう人もいるのですが、それはマクロレンズを活用しているとはいえません。
マクロ撮影をする人が口にする言葉に、「図鑑写真になってしまう」というものがあります。とにかく被写体を大きく画面に入れて撮影していると、その被写体だけが写っている写真になってしまい、並べてみると図鑑のようになってしまうということなのです。

マクロレンズは被写体を大きく撮影できますが、その被写体だけを画面に入れるのではなく、周りの空間を活かして画面構成することで写真にストーリーが生まれます。被写体のいる場所の雰囲気やその場の空気感を画面に入れることで写真に変化が出てきます。
被写体の特定の表情や動きだけに注目したいときは余計な要素を排して被写体だけで見せるのでも効果的ですが、ときには周りの空間を活かした画面構成も必要なのです。そのときは被写体が画面の中で小さく写っていても構いません。
適度に緩急をつけて被写体を捉えることで、マクロレンズを使いこなすことができます。

花壇に植えられていたベコニア。左のように花全体を見せてしまうと、あまり背景もきれいではないし図鑑っぽい感じになってしまう。しかし、右側のように花の中央だけをクローズアップすると変化が出てきて面白い。マクロレンズらしい見せ方だ。
ベコニアを思い切ってクロースアップすることで花の持つ独特のフォルムも強調されるし、シベの形の面白さも見えてくる。肉眼でも気づかないような発見があるのは、マクロレンズらしい効果と言えるだろう。
■撮影機材:PENTAX K-1 Mark II + smc PENTAX-D FA MACRO 100mmF2.8 WR
■撮影環境:F3.2 1/200秒 +0.7EV補正 ISO400 WB太陽光
森を歩いていると赤い色が目についた。よく見てみると、シダの若葉が伸びてきたところで、横から見ると何かの生き物のようにも見えて面白かった。特定の形などを強調したい時はマクロレンズでその物だけを見せるようにすると効果的だ。
■撮影機材:CANON EOS R5 Mark II + SIGMA 70mmF2.8 DG MACRO Art
■撮影環境:F4.5 1/125秒 +1EV補正 ISO500 WB太陽光
紫陽花に潜り込んでいたアマガエルを発見した。マクロレンズが付いているからとあまりアップで撮ってしまうと、左のようにただアマガエルがアジサイの上にいるだけになってしまう。中央の少し引いただけでもあまり雰囲気は伝わらないだろう。右のように引いてフレーミングすることで、アマガエルのサイズ感や花に潜り込んでいるような雰囲気が伝わるので、マクロレンズだからといって常にアップで撮る必要はないことを覚えておこう。
大輪のアジサイの中に埋もれるようにしてアマガエルが座っていた。アジサイのボリューム感と同時にアマガエルのサイズ感、埋もれている様子を伝えたくて、あえてアマガエルを小さくフレーミングして撮影した。こういった周りの雰囲気を伝えるようにすると、図鑑的な写真からストーリーのある写真にすることができる。
■撮影機材:CANON EOS R5 Mark II + TAMRON SP AF180mmF/3.5 Di LD [IF] MACRO1:1
■撮影環境:F6.3 1/200秒 +1.3EV補正 ISO500 WB太陽光
ラベンダーにやってきたモンキチョウ。せっかくたくさんのラベンダーが咲いているので、まわりのきれいな景色の雰囲気を画面に取り込みながら撮影した。チョウのいる風景というイメージで絵作りをしていくと変化も出せるようになる。
■撮影機材:PENTAX K-1 Mark II + smc PENTAX-D FA MACRO 100mmF2.8 WR
■撮影環境:F2.8 1/250秒 +1.3EV補正 ISO200 WB太陽光

普段使いにも

普通のレンズよりも近づいて撮影できるレンズなので、クローズアップ撮影ばかりではなく、遠景などの風景撮影にもマクロレンズは利用できます。マクロレンズを1本つけて散歩しながら撮影してみると遠景から小さな被写体まで撮影できて、まさに肉眼で見ているような感じになります。

小さなものをときどき撮るという場合は、前回紹介した標準レンズの代わりに50mmマクロをつけているという人もけっこう多かったのですが、街中の公園などでネイチャースナップするときには広い風景を撮影することは少ないので、切り取りやすい100mmマクロでもいいと思います。 

多くのマクロレンズの開放絞り値がF2.8といった明るいものなので、ちょっとした大口径単焦点レンズの代わりとしても使え、利用範囲は広いです。普段からいろいろな場面で使ってほしいレンズです。

ちょっと咲いている花と富士山を一緒に画面に入れて、パンフォーカスで撮影した。50mmマクロは標準レンズの代わりとして普通に利用することもできる。比較的広い画角が必要なこのような風景撮影も可能なので、常用レンズとしていつもカメラにつけっぱなしでもいいだろう。
■撮影機材:PENTAX K-1 Mark II + smc PENTAX-D FA MACRO 50mmF2.8 
■撮影環境:F16 1/80秒 ISO400 WB太陽光
夕方、空がどんどん色づいてきたので慌てて外に出てスナップ的に撮影した。マクロレンズの中でも50mmは比較的画角が広いので、ちょっとした風景から本格的なクローズアップまで対応できる。
■撮影機材:PENTAX K-1 Mark II + smc PENTAX-D FA MACRO 50mmF2.8 
■撮影環境:F4.5 1/80秒 ISO400 WB太陽光
森の中を歩いていた時に、木漏れ日がスポットライト的に入ってきて葉の形を浮き上がらせていたので、まわりにちょっと暗い部分を入れながら切り取った。マクロレンズだけをつけて歩いていると、だんだん視角がレンズに合ってくるので、フレーミングも素早く行える。
■撮影機材:CANON EOS R5 Mark II + SIGMA 70mmF2.8 DG MACRO Art
■撮影環境:F11 1/160秒 -0.7補正 ISO200 WB太陽光
北海道の大きな景色は中望遠レンズで切り取るくらいの方がちょうどいいことも多い。街中でネイチャースナップするときも切り取りが中心になるので、100mmクラスのマクロレンズは扱いやすい。
■撮影機材:PENTAX K-1 Mark II + smc PENTAX-D FA MACRO 100mmF2.8 WR
■撮影環境:F13 1/125秒 ISO800 WB太陽光
バラの花壇の様子を望遠レンズとして切り取った。180mmとなると広い風景には向かないので、本格的な望遠レンズ兼近寄れるレンズとなる。望遠レンズらしい大きなボケを利用した絵作りにも向いている。
■撮影機材:CANON EOS R5 Mark II + TAMRON SP AF180mmF/3.5 Di LD [IF] MACRO1:1
■撮影環境:F4.5 1/1250秒 +1EV補正 ISO1000 WB太陽光
50mほど先に見える滝の姿を180mmマクロで引き寄せて撮影した。マクロレンズは遠景も撮影できるので、普段持ち歩く標準ズームと望遠マクロを組み合わせると、撮影できる範囲を広げてくれる。
■撮影機材:CANON EOS R5 Mark II + TAMRON SP AF180mmF/3.5 Di LD [IF] MACRO1:1
■撮影環境:F16 1/8秒 -0.3EV補正 ISO1600 WB太陽光

まとめ

マクロレンズで撮影できる範囲はとても狭いので、ちょっとした小さな被写体があれば立派な被写体にできます。風景を撮影しに行って思い通りにならないときにも、視点を変えてマクロの視点で見てみると、何かしら見つけることができます。街中であってもじっくり探すことで被写体を見つけられるはずです。あとは慌てずゆっくり歩いて探すことです。

また、マクロレンズはほとんどが単焦点レンズなので、その画角に合った被写体を見つける練習にもなります。ぜひマクロレンズを活用して、身近な自然を楽しんでください。

 

 

■自然写真家:小林義明
1969年東京生まれ。自然の優しさを捉えた作品を得意とする。現在は北海道に住み、ゆっくりとしずかに自然を見つめながら「いのちの景色」をテーマに撮影。カメラメーカーの写真教室講師などのほか、自主的な勉強会なども開催し自分の視点で撮影できるアマチュアカメラマンの育成も行っている。

 

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