ネイチャースナップのすすめ|格安中古で学ぶ一眼レフの基礎【露出編】キヤノン EOS Kiss Digital X / Kiss X2

はじめに
前回の記事でピント合わせはだいぶ上手くできるようになっていることと思います。まだピンボケになってしまうことがあるという方は、カメラをうまく操作できるように練習を続けてみてください。
今回は露出に関する基本から、ちょっとした写真表現も含めてお話しします。これらのことを理解できると、写真がさらに面白くなっていきますので、読んで終わりではなく、実際に体験し、さらに理解して実践できるようになるといいでしょう。

■撮影機材:CANON EOS Kiss X2 + TAMRON SP AF17-50mm F/2.8 XR Di II
■撮影環境:F22 1/50秒 +1EV補正 ISO100 WB太陽光
写真の明るさを調節する
スマホで撮影していると、AIがほどよく調節してくれるのでスマホ任せでもほぼ見た目に近い感じに撮れてしまいます。簡単でいいのですが、写真の明るさ=「露出」ということを意識しなくなってしまう原因でもあります。
一方で一眼カメラでは、撮影するときの画面に入る色合いやその面積に合わせて適切な露出の調節が必要になります。
露出を調節する操作を「露出補正」といいます。画面の中に明るい色が多い時はプラス補正、暗い色が多い時はマイナス補正が基本です。カメラの操作は「露出補正ボタン」を押しながらダイヤルを回すものが多いです。カスタマイズで直接露出補正できるものもあります。


色が濁ったように感じる原因の多くが、露出が暗くなってしまっていることです。適切に露出をプラス側に露出補正すると、見た目の色を再現することができます。逆に色が淡く感じる場合は明るく写っていることが多く、マイナス側に露出補正すれば色が再現できます。
写真はかならずしも見た目通りの露出で撮影するのが正しいわけではなく、自分がこの雰囲気がいいと感じる露出になればいいので、意図的に明るくまたは暗く撮影してもいいのです。同じ写真でも露出を変えて撮影すると雰囲気が変わりますので、実際に試してみてください。
露出補正はあまり小刻みに変えても違いがわからないことがあります。はじめは補正なし、±1EV、±2EVといったように大幅に変えて試してみましょう。自分の好みがわかってきたら、小刻みに0.3EVずつ変更するといいです。一度露出補正するとその数値はリセットされないので、撮影が終わったら0に戻しましょう。


■撮影機材:CANON EOS Kiss Digital X + TAMRON 18-270mm F/3.5-6.3 Di II VC PZD
■撮影環境:F8 1/640秒 ISO400 WB太陽光


■撮影機材:CANON EOS Kiss Digital X + TAMRON 18-270mm F/3.5-6.3 Di II VC PZD
■撮影環境:F11 1/80秒 +1EV補正 ISO100 WB太陽光


■撮影機材:CANON EOS Kiss X2 + EF-S55-250mm F4-5.6 IS
■撮影環境:F5.6 1/800秒 +1EV補正 ISO200 WB太陽光


■撮影機材:CANON EOS Kiss X2 + EF-S55-250mm F4-5.6 IS
■撮影環境:F5.6 1/640秒 +1EV補正 ISO200 WB太陽光


■撮影機材:CANON EOS Kiss X2 + EF-S55-250mm F4-5.6 IS
■撮影環境:F6.3 1/125秒 -2EV補正 ISO200 WB太陽光
スマホやミラーレス一眼では露出を変えるとその結果をファインダーや画面で見ることができますが、一眼レフではファインダー上で確認できないので、露出補正の感覚を養うことが大切です。見た目通りの明るさで撮影するにはどう露出を調節するか、イメージ通りの色に再現するにはどうするかと考えながら露出を決めていくのは写真撮影の楽しみでもありますから、じっくり練習してみてください。

■撮影機材:CANON EOS Kiss Digital X + TAMRON 18-270mm F/3.5-6.3 Di II VC PZD
■撮影環境:F10 1/250秒 ISO200 WB太陽光

■撮影機材:CANON EOS Kiss X2 + EF-S10-22mm F3.5-4.5 USM
■撮影環境:F16 1/20秒 +0.7EV補正 ISO200 WB太陽光

■撮影機材:CANON EOS Kiss X2 + EF-S60mm F2.8 マクロ USM
■撮影環境:F4 1/60秒 +0.7EV補正 ISO200 WB太陽光
絞り、シャッター速度、ISO感度
写真の露出を変えることができるようになりましたが、どうしてこれらの違いが生まれるのか、仕組みを知っておきましょう。
写真の露出を調節する要素は3つあり、「ISO感度」、「絞り」、「シャッター速度」です。
まず「ISO感度」は、センサーが必要とする光の量の目安です。数字が大きくなるほど少ない光の量でも写るので、暗いところでも撮影できると考えればいいです。逆に数字が小さいと多くの光が必要になります。一般的に、数字が小さいと低い感度、数字が大きくなると高い感度といいます。ISO感度を高くするとノイズが出やすくなりますが、初めのうちはそれほど気にする必要はないでしょう。
続いて、「絞り」はレンズを通して光が入ってくる窓のことです。窓を大きく開ければ光がたくさん入りますし、窓が小さくなると当然光は少ししか入ってきません。窓を大きく開けることを「絞りを開ける」と言い、窓を小さくすることを「絞りを絞る、絞り込む」と言っています。絞りを表す数値はわかりにくく、2.8や5.6、11などの数字で表されますが、数字が小さいほど窓が大きく開いていて、数字が大きくなると窓が小さくなります。この数字は少しずつ覚えていきましょう。


最後に「シャッター速度」です。これはセンサーに光を当てる時間を表します。シャッター速度が遅ければセンサーにたくさん光が当たり、速くなるとセンサーに当たる光は少なくなります。実際には1/60秒や1/500秒といった短い時間のことが多いですが、数秒やもっと長い時間シャッターを開けておくことも可能です。
写真はISO感度に合った適切な量の光をセンサーに当てることで、見た目に近い露出で撮影できます。光が多ければ明るく写り、光が少ないと暗く写ります。この光の量を絞りとシャッター速度で調節しているのです。


撮影モードを切り替える
撮影時、露出を合わせるために「ISO感度」、「絞り」、「シャッター速度」それぞれを毎回切り替えるのはけっこう面倒なものです。そこで、カメラには便利な撮影モード(露出モード)が搭載されています。
主な撮影モードには、「P」モード、「AV」モード、「TV」モード、「M」モードがあります。これらを撮影意図に合わせて使うことで、思い通りの撮影ができるようになります。
まずは「P」モードで、プログラムモードと呼びます。これは絞りとシャッター速度を自動的に調節してくれます。絞りとシャッター速度のことを考えずに撮影できるので、前回のピント合わせを練習する時に利用しました。
続いて「AV」モードで、絞り優先モードと呼びます。「A」モードで表すメーカーもあります。絞りを自分で決めるとシャッター速度はカメラが自動的に設定してくれます。絞りには露出だけでなくボケ具合を調節する効果もあり、ボケ具合にこだわって撮影したい時に効果的です。
「TV」モードは、シャッター速度優先モードと言います。「S」モードで表すメーカーもあります。シャッター速度を自分で決めると絞りをカメラが調節してくれます。シャッター速度には被写体のブレ具合を調節する効果もあるので、動くものを撮影するのに適しています。
最後に「M」モードは、マニュアルモードです。これは絞りとシャッター速度を自分で設定するモードになります。絞りとシャッター速度を固定しておきたいときや、自分で露出を調節したいときに利用するといいでしょう。



ISO感度については、Kiss Digital Xではオートが使えないのでISO400か800にしておいて、必要なら他に設定します。Kiss X2では基本的にオートにしておくといいですが、Mモードの時は任意の感度に切り替えましょう。
私はふだんAVモードで撮影することが多いです。撮影時にファインダーに表示される絞りとシャッター速度を確認して、意図する写りが得られるようにしているからです。
たとえば、AVモードでシャッター速度を速くしたいときは、絞りを開けると同時にISO感度を高く設定します。逆にシャッター速度を遅くしたい時は絞り込むと同時にISO感度を低く設定すればいいのです。このような絞り、シャッター速度、ISO感度の関係を撮りながら理解していきましょう。


■撮影機材:CANON EOS Kiss X2 + EF-S18-55mm F3.5-5.6 IS
■撮影環境:F5.6 1/400秒 +0.7EV補正 ISO200 WB太陽光

■撮影機材:CANON EOS Kiss X2 + EF-S60mm F2.8 マクロ USM
■撮影環境:F4 1/250秒 ISO200 WB太陽光

■撮影機材:CANON EOS Kiss X2 + EF-S18-55mm F3.5-5.6 IS
■撮影環境:F14 1/100秒 +1EV補正 ISO200 WB太陽光

■撮影機材:CANON EOS Kiss Digital X + EF-S55-250mm F4-5.6 IS
■撮影環境:F11 1/160秒 +1EV補正 ISO400 WB太陽光

■撮影機材:CANON EOS Kiss Digital X + EF-S55-250mm F4-5.6 IS
■撮影環境:F5.6 1/400秒 ISO400 WB太陽光


■撮影機材:CANON EOS Kiss X2 + EF-S55-250mm F4-5.6 IS
■撮影環境:F5.6 1/1250秒 ISO400 WB太陽光

■撮影機材:CANON EOS Kiss X2 + EF-S18-55mm F3.5-5.6 IS
■撮影環境:F11 0.4秒 +0.3EV補正 ISO200 WB太陽光

■撮影機材:CANON EOS Kiss Digital X + EF-S55-250mm F4-5.6 IS
■撮影環境:F11 1/1000秒 +0.7EV補正 ISO1600 WB太陽光


■撮影機材:CANON EOS Kiss X2 + EF-S55-250mm F4-5.6 IS
■撮影環境:F10 1/30秒 +0.7EV補正 ISO200 WB太陽光

■撮影機材:CANON EOS Kiss X2 + EF-S55-250mm F4-5.6 IS
■撮影環境:F22 0.8秒 -1EV補正 ISO200 WB太陽光
まとめ
今回は露出の調整と撮影モードについてお話ししました。露出は画像処理ソフトで後処理も可能ですが、撮影時にどんな明るさで撮影したいのか自分の意図をはっきりさせることで、イメージがより明確になります。後処理は微調節程度にとどめて、撮影時に露出を決めておくことが大切です。
撮影モードは露出調節を半自動化してくれるもので、これに露出補正を加えることが必要です。すべてをカメラ任せにせず、自分の意図を反映させて撮影するようにしていきましょう。慣れるまでは撮影後の画像をチェックして、意図通りの明るさで撮れているか確認することも必要です。
さらに絞りとシャッター速度の効果を理解できると、より自分の思い通りに撮れるようになっていきます。絞りやシャッター速度は撮影するシーンによって、適切な設定は違ってきますので、いろいろ試してみてください。
■自然写真家:小林義明
1969年東京生まれ。自然の優しさを捉えた作品を得意とする。現在は北海道に住み、ゆっくりとしずかに自然を見つめながら「いのちの景色」をテーマに撮影。カメラメーカーの写真教室講師などのほか、自主的な勉強会なども開催し自分の視点で撮影できるアマチュアカメラマンの育成も行っている。