オールドレンズを始めよう!作例編Vol.6:秋~冬に使いたい虹のゴーストが出るレンズ「ミノルタ M-ROKKOR-QF 40mm F2」

鈴木啓太|urban
オールドレンズを始めよう!作例編Vol.6:秋~冬に使いたい虹のゴーストが出るレンズ「ミノルタ M-ROKKOR-QF 40mm F2」

はじめに

こんにちは!フォトグラファーの鈴木啓太|urbanです。長年オールドレンズやフィルムを中心にポートレート、スナップ、家族写真を撮影しております。今回は秋から冬にかけての撮影シーズンに、虹のゴーストが美しく現れるM-ROKKOR-QF 40mm F2の魅力をご紹介します。40mmという焦点距離に加えて、MマウントのROKKORと不思議なレンズですが、どのような描写を見せてくれるのか、さっそく見ていきたいと思います。

Minoltaから発売されたレンジファインダー用レンズ

■撮影機材:SONY α7 IV + M-ROKKOR-QF 40mm F2
■撮影環境:f2 1/400秒 ISO100 WBオート

この聞き慣れないMinolta M-ROKKOR-QF 40mm F2というレンズは、LEITZ(現Leica)とMINOLTAが共同開発したフィルムカメラLEITZ Minolta CLの標準レンズ。このフィルムカメラには先述のMinolta銘のものとLeica銘のLeica CLが存在し、Leica CLに付けられたレンズが、SUMMICRON-C 40mm F2となります。名前違いで両社からリリースされており、設計はLeica、製造はLeicaとMinolta両社で、性能は同一という珍しいレンズです。

日本国内ではM-ROKKOR-QF銘レンズの流通が多く、比較的安価。どうしてもSUMMICRON銘にこだわりたい方は、やや値段が上がりますが、そちらを購入するのも良いでしょう。ただし、SUMMICRONはフィルター径が39mm、ネジピッチが0.75mmと特殊なため、フィルターやフードを手軽に取り付けることができません。

M-ROKKOR-QFはフィルター径40.5mmとフィルターやフードといったアクセサリーも見つけやすいため、そういった意味でもROKKOR銘が一押し。さてここからスペックについても確認していきましょう。

対応マウント Leica Mマウント
サイズ 最大径Φ51×全長22.5mm
質量 125g(付属品なし)
焦点距離 40mm
フォーカス MF(マニュアルフォーカス:距離計連動型)
レンズ構成 4群6枚
対応撮像画面サイズ 35mmフルサイズ
最短撮影距離 0.8m
絞り F2-F16
フィルター径 40.5mm

上記は「M-ROKKOR-QF」のスペックで、Minolta CLE用に発売されたM-ROKKORは同じ40mm F2ながら、サイズは最大径Φ51×全長24.5mmと若干長くなっており、質量は105gと軽量化が図られています。

レンズ構成は同じでレンズマウント面の距離計と連動するカムが平行か傾斜かの違いがあり、傾斜カムが採用されているLeitz minolta CL/Leica CLカメラ用のレンズは、これら以外のMマウント機ではピント精度にずれが生じる可能性があると言われています。

ですが、傾斜カム採用のM-ROKKOR-QFとLeicaM10及びM6でもピント合わせに不具合が出たことはないですので、そこまで神経質になる必要はないでしょう。

■撮影機材:Leica M10 + Minolta M-ROKKOR-QF 40mm F2
■撮影環境:f2 1/125秒 ISO100 WBオート
■撮影機材:Leica M10 + Minolta M-ROKKOR-QF 40mm F2
■撮影環境:f2 1/180秒 ISO100 WBオート
■撮影機材:SONY α7 IV + M-ROKKOR-QF 40mm F2
■撮影環境:f2 1/8000秒 ISO100 WBオート
■撮影機材:Leica M10 + Minolta M-ROKKOR-QF 40mm F2
■撮影環境:f2 1/180秒 ISO100 WBオート

小型軽量+オールドレンズの描写も味わえる1本

■撮影機材:SONY α7 IV + M-ROKKOR-QF 40mm F2
■撮影環境:f2 1/8000秒 ISO100 WBオート

ここからは、レンズについて詳しく見ていきましょう。まず、40mmという画角の話からです。この40mmは準広角~標準に位置し、どっちつかずという印象があるため好き嫌いが分かれるところかもしれません。しかし、いざ使ってみるとこれほど心地良い焦点距離は中々ないのではというのが素直な感想です。35mmが苦手な人にとっての+5mmは背景整理がしやすく、50mmが苦手な人にとっての-10mmはその画角の窮屈さから解き放ってくれ、スナップでも背景整理がしやすい焦点距離です。

事実、フィルムカメラ時代に流行したKonica C35等、レンズ付きレンジファインダー機はそのほとんどが40mmという画角でした。M型Leicaをはじめとした機種では40mmのブライトフレームが現れないことが欠点であり、正確なフレーミングには外付けファインダーが必要。生産終了していますが、フォクトレンダーから40mmの外付けファインダーもリリースされておりLeicaユーザーの方はこちらを狙うのも良いでしょう。勿論、ミラーレスカメラで利用する場合は、そのような悩みはないので筆者はどちらかと言うとαシリーズでの利用をメインとしています。

Leica CLではSUMMICRON銘となりますが、描写傾向は解像度の高さよりもにじみとトーンで描くSummiluxに近いと感じます。特に絞り開放では、独特のにじみが発生しその柔らかさに魅了される人も多いのではないでしょうか。

その他にもSummiluxやSummarit同様、虹のゴーストが出るという特徴もあり、低価格ながらLeicaの描写をしっかりと味わうことができます。発色が良く、長さ2㎝というコンパクトさから旅行との相性も◯。オールドレンズとしては比較的色乗りが良いため、赤や緑といった原色を多用するシーンで力を発揮します。

一方で、ボケの形はやや楕円系、二線ボケの傾向もあり、ゴーストが出やすいなど逆光下の癖は強め。極端なコントラストの低下は起こりにくく、レンズの持つ発色の良さと相まってLightroom等ソフトウェア現像によるコントラストの復帰は容易です。これにより、逆光下でもボケやゴーストといったオールドレンズの特徴を惜しみなく写真表現に取り入れることができると考えています。

個人的にはポートレートに使い易いレンズと考えていますので、作例も併せてご覧ください。

■撮影機材:SONY α7 IV + M-ROKKOR-QF 40mm F2
■撮影環境:f2 1/250秒 ISO100 WBオート
■撮影機材:SONY α7 IV + M-ROKKOR-QF 40mm F2
■撮影環境:f2 1/1250秒 ISO100 WBオート
■撮影機材:SONY α7 IV + M-ROKKOR-QF 40mm F2
■撮影環境:f2 1/8000秒 ISO100 WBオート
斜め45度の角度から光を入れることで、虹のゴーストを発生させることができます。顔にゴーストがかからない様レンズを太陽に向ける角度を微調整しながら、写真全体のコントラストが下がらない角度でシャッターを切るのがコツ。微妙な角度の調整が必要になるため、チルトができるミラーレスカメラの使用をおすすめします。
■撮影機材:SONY α7 IV + M-ROKKOR-QF 40mm F2
■撮影環境:f2 1/4000秒 ISO100 WBオート
■撮影機材:SONY α7 IV + M-ROKKOR-QF 40mm F2
■撮影環境:f2 1/3200秒 ISO100 WBオート
絞り開放は四隅の光量落ちも強いため、中央に被写体を置いた撮影で力を発揮します。
■撮影機材:SONY α7 IV + M-ROKKOR-QF 40mm F2
■撮影環境:f2 1/8000秒 ISO100 WBオート
■撮影機材:SONY α7 IV + M-ROKKOR-QF 40mm F2
■撮影環境:f8 1/250秒 ISO100 WBオート
F8まで絞ることで解像力は向上しますが、硬くなりすぎないのがオールドレンズのいいところです。
■撮影機材:SONY α7 IV + M-ROKKOR-QF 40mm F2
■撮影環境:f2 1/8000秒 ISO100 WBオート
絞り開放は虹のゴーストの他、キラキラと淡くにじむのもポイント。関東ではレアなシチュエーションですが、雪が光に照らされて溶けるようなシーンで特に力を発揮します。
■撮影機材:SONY α7 IV + M-ROKKOR-QF 40mm F2
■撮影環境:f8 1/250秒 ISO100 WBオート
■撮影機材:SONY α7 IV + M-ROKKOR-QF 40mm F2
■撮影環境:f2 1/8000秒 ISO100 WBオート

唯一の弱点はヘリコイドアダプタでカバー

■撮影機材:Leica M10 + Minolta M-ROKKOR-QF 40mm F2
■撮影環境:f2 1/750秒 ISO100 WBオート

レンジファインダー用レンズは、距離計連動の関係で最短撮影距離が短くとも70cm程度と制約があります。本レンズは80cmと寄れないレンズになるため、テーブルフォトや花を大きく撮るといった撮影には不向きです。

そこで登場するのがヘリコイド付きマウントアダプタとなります。筆者の記事では何度も登場していますが、特にLeicaマウントのレンズを使う場合は必須と言って良いほどの重要なアイテムです。

近年はアダプタの精度もかなり向上しており、SONY Eマウントだけではなく、Nikon ZマウントにもAFアダプタが発売されるなど選択肢の幅が大きく広がっています。

最短撮影距離80cmはこのぐらいの画角になります。正直あと1~2歩寄りたいというのが本音。そのためヘリコイドアダプタが有効になってきます。
ヘリコイドアダプタを使うことで、最短撮影距離は30cm程度まで短くなりました。このぐらい寄れれば汎用性もかなり上がります。
M-ROKKOR-QFは寄った撮影ができないので、ポートレートでもその力を借りる必要があります。

AFアダプタはヘリコイドアダプタ同様、マクロ機能を内蔵しておりヘリコイドアダプタほどではないにせよ、かなり寄ることができます。

だったらAFアダプタの方が良いのでは?と思われますが、AFアダプタはAFを正常動作させるためのレンズ重量制限が設けられているといったデメリットも存在します。また、マクロモードに切り替えるための手順がやや複雑であり、マクロ域ではAFが迷いやすいこともあります。

その点ヘリコイドアダプタは非常にシンプルなので、誰にでも使いやすいのが良い点です。ただし、オールドレンズAF化のメリットは非常に大きいですので、よく考えて選びたいところですね。

AFアダプタの代表格TECHARTシリーズです。AF精度も高く、速度も問題なくストレスなく使えます。動く被写体は厳しいですが、ポートレート、スナップには非常に役立ちます。
こちらはヘリコイドアダプタ2種です。AFアダプタの存在しないマウントですが、ヘリコイドアダプタだけでも十分な利便性を誇ります。GマウントのヘリコイドアダプタSHOTEN LM-FG Mは2025年に発売されたGFXユーザー待望のヘリコイドアダプタです。
※上記4画像は焦点工房のHPより転載(https://www.stkb.jp/shopbrand/techart)

上記はどれも筆者が使用しているオススメマウントアダプタですので、是非検討してみて下さい!特にGFXで使えるGマウントのヘリコイドアダプタは1種類しかありませんので要チェックです。ミラーレス機で使う場合、ヘリコイドアダプタはほぼ必須と言える便利さを誇るツールです!詳細はマウントアダプタを解説したこちらの記事(https://www.kitamura.jp/shasha/article/mount-adapter-20221124/)でも記載しておりますのでご参考下さい。

まとめ

■撮影機材:Leica M10 + Minolta M-ROKKOR-QF 40mm F2
■撮影環境:f2 1/15秒 ISO100 WBオート

M-ROKKORはMinoltaとLeicaが生み出した銘玉です。現代レンズと比べると解像力は低いものの、現代レンズにはないゴースト、にじみ、淡さと言った魅力を多数持ち合わせています。オールドレンズ好きのコミュニティの中でも、本レンズが好きと言う人はかなり多く、それでいてまだまだ購入しやすい価格のレンズですので、中古市場で見つけた場合は是非購入してみてください。

純正フードはゴム製でほぼ確実に劣化しているので、40.5cm径のフードを購入すると良いでしょう。あまり大型のものを購入するとフィルム機のCL/CLEで使用する際、距離計が隠れてしまいピント合わせが難しくなるのでその点もご注意下さい!フィルム機で使用感はこちらの記事にもまとめていますので、ぜひご覧ください!

この記事でLeicaオールドレンズにも興味を持っていただけたのであれば、僕が執筆している「ポートレートのためのオールドレンズ入門」そして「ポートレートのためのオールドレンズ撮影マニュアル」に数多くのオールドレンズの作例と詳細な設定等解説を載せておりますのでぜひご覧ください。また、実践的な撮影方法が知りたい場合は、僕が講師を務めるオールドレンズワークショップ「フランジバック」にもご参加いただければ嬉しいです!では、次の記事でお会いしましょう!

 

 

■モデル:suu(https://x.com/soonononono)

■フォトグラファー:鈴木啓太|urban
カメラ及びレンズメーカーでのセミナー講師をする傍ら、Web、雑誌、書籍での執筆、人物及びカタログ撮影等に加えフィルムやオールドレンズを使った写真をメインに活動。2017年より開始した「フィルムさんぽ/フランジバック」は月間延べ60人ほどの参加者を有する、関東最大のフィルム&オールドレンズワークショップに成長している。著書に「ポートレートのためのオールドレンズ入門」「ポートレートのためのオールドレンズ撮影マニュアル」がある。リコーフォトアカデミー講師。

 

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