マウントアダプターを使ってオールドレンズを楽しんでみませんか?

坂井田富三

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はじめに

 昔使っていたレンズをまた楽しみたいと思った事ありませんか?オートフォーカスでなくても、ちょっと古くて味わいのあるレンズを使ってのんびりと撮影を楽しみたい。でも、どうやって今あるカメラに装着して使えるのか分からない人も多いのではないでしょうか。

 今回はマウントアダプターを使用し、オールドレンズをミラーレスカメラに装着して撮影できるようになるまでの準備編を紹介します。

オールドレンズを使い始める前の準備

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■撮影機材:ソニー α7R III + コンタックス プラナー T* G 45/2 クローム
※K&F Conceptマウントアダプター使用
■撮影環境:シャッター速度1/400秒 絞りF2 ISO100 焦点距離45mm

 最初に準備するものは、お気に入りのオールドレンズとミラーレスカメラのボディ。そして重要なのは、マウントが異なるオールドレンズを装着する為のマウントアダプターです。今回は1994年~2005年までに販売されていたコンタックスGシリーズの交換レンズ、

・コンタックス ビオゴン T* G 28/2.8 クローム
・コンタックス プラナー T* G 45/2 クローム

の2本を例にご紹介します。

ビオゴンT*28mmF2.8 プラナーT*45mmF2
レンズ構成 5群7枚 4群6枚
焦点距離 28mm 45mm
画角 75度 50度
絞り F2.8/F22 F2/F16
最短撮影距離 0.5m 0.5m
フィルター径 46mm 46mm
重量 150g 190g

 コンタックスGマウントはもともとフランジバックが短く、レンズ側もボディ内にミラーなどの障害物が無い前提に設計されているため、一眼レフボディで使用することが難しかったのですが、フランジバックの短いフルサイズのミラーレスカメラが発売になると再び脚光を浴びたレンズなのです。中古でも在庫を見かける事は多く、値段的にも購入しやすい範囲のレンズです。

 このGマウントのレンズをソニーEマウントに装着するには、マウントアダプターを用意しなければなりません。「K&F Concept」や「SHOTEN」、「Fotodiox」、「Fringer」など様々なメーカーからマウントアダプターが発売されています。今回は「ボディ側Eマウント・レンズ側Gマウント」のK&F Concept製マウントアダプターをチョイスしました。

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 このマウントアダプターを介する事で、フォーカスはマニュアル、絞り調整も手動にはなりますが、GマウントのレンズをソニーのEマウントボディに装着する事が可能になります。実際にソニー α7Cに装着したものが下の写真になります。絞りはレンズの絞りリングを使用して調整、ピント合わせはマウントアダプターのシルバー部分を回転させてピント合わせをします。

 オートフォーカスに慣れている人にとっては、最初はピント合わせに少々手こずる事もあると思いますが、ミラーレスカメラ側の機能をしっかりと使いこなせば、オールドレンズも快適に撮影することが可能になります。

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マウントアダプターを介してオールドレンズを装着

 マウントアダプターを介しての撮影には幾つかの問題点も発生します。この「K&F Concept」マウントアダプターには電子接点は無いので、例えばExif情報の一部が記録されないことです。具体的には、撮影時の絞り値やレンズ情報、レンズの焦点距離情報などが記録されません。レンズ情報などは、撮影中に頻繁に交換しなければ後で情報を付加する事も簡単ですが、絞り値になるとなかなかそうはいきません。きちんと絞り値も残したい方は、撮影時にメモ(ファイル番号と絞り値)を取る事をお勧めします。撮影後にパソコンに画像を取り込んだ後に、メモを参考に情報を追記しましょう。

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Exif情報を見ると絞り値や焦点距離などが記録されていないことが分かる

オールドレンズ使用時のカメラの設定

 オールドレンズを使いこなすには、カメラ側の準備がとても重要です。先にもお話ししましたが、電子接点が無いためレンズ側の情報がボディに伝わりません。ですから、あらかじめボディ側にオールドレンズ+マウントアダプターを使うための設定をしておきます。今回はソニー α7R IIIのメニューで紹介します。

■「レンズなしレリーズ」の設定を「許可」にする

 カメラのデフォルト設定では、もともと「許可」にはなっていますが、設定を変更している人は確認が必要です。この項目が「禁止」になっていると、オールドレンズ+マウントアダプターを装着した状態でシャッターを切ることができませんのでご注意を。

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■ピーキング表示の設定を「入」にする

 オールドレンズの使用に限らず、ピントをマニュアルで撮影する際には便利な機能なので積極的に使いましょう。ピーキング表示を「入」にすればピントを手動で合わせる際に、ピントがあっている部分を色で表示してくれます。下の写真はピーキング表示「入」でピーキングレベルは「中」、そしてピーキング色を「レッド」で表示した場合の見え方になります。ピントがあっている部分が赤くなり、手動でのピント合わせを楽にしてくれます。

 「ピーキングレベル」は、ピーキングによる輪郭強調の程度を変えることが出来る設定です。最初は「中」で良いと思いますが、よりシビアなピント調整をして行きたい場合は「低」を選択するとピーキング表示の輪郭強調が弱くなるので、ピーキングで色が表示される範囲が少なくなります。

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ピーキング表示をすればマニュアルフォーカスでもピントが合わせやすくなる

■撮影モードは絞り優先で、ISO感度はオートに設定するのが便利

 レンズ側で絞り値を設定して撮影するため、絞り優先モードで撮影した方が楽に撮影する事ができます。また、ISO感度も上限値と下限値を設定した上でオート設定にした方が撮影が楽になります。

■手ブレ補正は「入」に

 ミラーレスカメラでオールドレンズを使用する際にとても助かる手ブレ補正。ボディ側に手ブレ補正機能があるカメラであれば、オールドレンズでもその恩恵を受ける事ができます。

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 ここで少し気を付けなければいけない点は、手ブレ補正「入」に設定をした後に、「手ブレ補正設定」で「手ブレ補正焦点距離」の設定をして、使用するレンズの画角に設定を合わせる事が必要になります。

 普段の電子接点のあるレンズでは、自動でレンズの焦点距離などの情報がボディに伝わって最適に対応してくれるのですが、流石にオールドレンズ+マウントアダプターではここまで対応ができません。ですので、使用するレンズにその都度焦点距離を合わせる事を忘れない様にしましょう。

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■DRO(Dレンジオプティマイザー)は、「切」がおすすめ

 ソニーαのDRO機能は、デフォルトではオートになっています。Dレンジオプティマイザーの機能は、明暗差が大きい撮影で暗部がつぶれず、そして明るいところも白飛びしないようにコントロールしてくれる機能です。これがONのなっていると、せっかくのオールドレンズの味わいをスポイルしてしまいます。

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 これでカメラ側の事前準備はほぼ完了です。

■レンズの装着手順を確認する

 オールドレンズをカメラに装着する際には、あらかじめオールドレンズにマウントアダプターを装着しておきます。オールドレンズの指標とマウントアダプターにある指標を合わせて装着し、マウントアダプターの指標とカメラボディ側の指標を合わせて装着します。最初は少し戸惑う事もありますが、オールドレンズにマウントアダプターを装着した状態であれば、レンズ交換は通常と同じ方法で簡単に交換ができます。

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オールドレンズ撮影のコツ

 カメラ側の設定が終わり、マウントアダプターを装着したオールドレンズをカメラボディに装着できたら、いよいよワクワクする撮影です。オールドレンズでの撮影の際には、少しコツがあります。

1. オールドレンズの絞りリングを操作し、絞りを開放に設定します。どうして最初に絞りを開放にするのかと言うと、ピントを合わせたい被写体への精度を高く合わせるための手段になります。

2. 絞りを開放にセットしたら、次にピント合わせです。先に紹介したピーキング機能を使いピントを合わせたい位置にレンズ(レンズにピントリングがない場合はマウントアダプター)のピントリングを調整してピントを合わせていきます。この時、さらにカメラ側にある「ピント拡大機能」を使えば、ピントを合わせたい位置をファインダー上で拡大する事ができる為、より正確なピント合わせをする事できます。

3. ピント合わせができたら、レンズの絞りリングを調整して撮影する絞り値を決めて、シャッターを押して撮影します。絞り値の決め方が慣れないうちは、「絞りを開放、少し絞る、大きく絞る」の3パターンぐらいを同じ被写体で撮影しておくと、使用するオールドレンズの特徴をつかみやすくなり、以後の撮影がスムーズになります。

4. 撮影後は撮影したデータを再生し、拡大表示をしてピントが合っているかを確認します。デジタルで撮影できる最大のメリットは、その場で撮影したデータが見れること。積極的にデジタルの恩恵を使いながらオールドレンズを楽しみましょう。

 現在発売されているレンズはどの絞り値でも非常にシャープに写りますが、オールドレンズはレンズにもよって異なりますが、開放値では周辺部で滲むものが多いです。この滲みを楽しむのがオールドレンズで表現する大きなポイントになります。オールドレンズの味わいを楽しむ方法として、積極的に絞り開放で撮影するのがおすすめの撮り方の一つとなります。

 今回撮影に使用したコンタックスのGマウントレンズは、絞り羽根が6枚と現在のレンズに対して少ないので光芒の出方も特徴的になります。羽根枚数が偶数枚の6枚なので、光芒の線の数も6本になります。

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■撮影機材:ソニー α7R III + コンタックス ビオゴン T* G 28/2.8 クローム
※K&F Conceptマウントアダプター使用
■撮影環境:シャッター速度1/125秒 絞りF22 ISO100 焦点距離28mm

まとめ

 オールドレンズを持って撮影に出かけると、普段とは違った感覚で撮影ができます。そのオールドレンズでどういう撮影をしたら、一番そのオールドレンズの味わいを表現できるのか、そしてその味わいを活かすための被写体はなんなのかを凄く考えながら撮影することができます。もちろんそんなに難しく考えなくても、普段と違う撮影の仕方がとても新鮮で撮影自体を楽しめるはずです。

 最近ではフイルムカメラを使ってフイルムでオールドレンズを楽しむ方が増えていますが、もう少し気楽に楽しめるのが、ミラーレスカメラとマウントアダプターを使って、オールドレンズを活用する方法です。撮影の失敗のリスクも少ないので、フイルムカメラを楽しみたいと思っている人も、まずはマウントアダプターを使ってオールドレンズを楽しむのが良いのではないでしょうか。

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■撮影機材:ソニー α7R III + コンタックス プラナー T* G 45/2 クローム
※K&F Conceptマウントアダプター使用
■撮影環境:シャッター速度1/5000秒 絞りF2 ISO100 焦点距離45mm

■写真家:坂井田富三
写真小売業会で27年勤務したのち独立しフリーランスカメラマンとして活動中。 撮影ジャンルは、スポーツ・モータースポーツ、ネイチャー・ペット・動物・風景写真を中心に撮影。第48回キヤノンフォトコンテスト スポーツ/モータースポーツ部門で大賞を受賞。

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ツアイスレンズ コンタックス「プラナー T* G 45/2」「ビオゴン T* G 28/2.8」

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