ビクセン 星空雲台ポラリエU レビュー|北山輝泰

北山輝泰

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はじめに

 星景写真家・写真講師の北山輝泰です。ShaShaでは初めて記事を執筆させていただきます。今回は、天体望遠鏡メーカー「株式会社ビクセン」より発売されております、大人気のポータブル赤道儀「星空雲台ポラリエU」についてご紹介させていただきます。

 星景写真撮影は何度か経験はあるけれど、赤道儀を使って撮影したことはないという方もまだまだ多いのではないでしょうか。そんな皆さんに、赤道儀の特徴や、追尾撮影のメリットをお伝えした上で、ポラリエUの魅力をご紹介できればと思います。

赤道儀とは

 赤道儀とは、星空の動き(日周運動)と同じ速度で回転することで、長時間の追尾撮影を可能にした星空撮影に適した機材のことを言います。昔は手動で操作するものなどありましたが、今は電動のものが一般的です。また、赤道儀のラインナップも、星景・星野写真の撮影を目的とした小型のものが多く発売されるようになるなど、ニーズに合わせて変わってきています。

追尾撮影のメリット

 ポラリエUの魅力をお伝えしていく前に、まずは赤道儀を使用した撮影についてお話ししていきます。赤道儀を使用して撮影することを「追尾撮影」と言いますが、星空を追尾しながら撮影することのメリットとしては、主に下記の2点があります。

1. 長時間シャッターを開けて撮影しても星を点像で撮れること
2. 流星群のシーズンなどに、流星が流れる起点(放射点)方向を常に画角の中に収めながら撮影できること

 1つ目の「長時間シャッターを開ける」というシチュエーションですが、主に以下のような時です。

・空が暗いところに遠征をして撮影する時
・ISO感度を低くして撮影する時
・F値が暗いレンズ(F2.8以上)を使って撮影する時

 空が暗いところとは、天の川が肉眼で分かるような環境です。そういった場所で撮影を行う際のカメラの設定は、F2.8程度の明るいレンズでも、シャッタースピードが30秒、ISO感度が3200程度になります。30秒もシャッターを開けると、どんなに広角レンズで撮影をしても、星の流れが見て分かる写真になります。

 さらに、F値が2.8以上の暗いレンズは、明るく撮るためには光をたくさん受け取らなければいけないため、さらにシャッタースピードが遅くなります。それらを補うために、ISO感度を高くして撮影するという考え方もありますが、ISO感度を高くすると、どんなカメラであれノイズが出てきますので、極力上げたくないというのが正直なところです。以上のことから、空が暗いところで、ISO感度をそこまで上げずに星空を点像で撮影するためには、赤道儀が必要ということになります。

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■使用機材:Canon EOS 5DS + EF16-35mm f/4L IS USM
■撮影環境:シャッター速度:90.0秒 絞り値:F4.0 ISO感度:6400 ホワイトバランス:蛍光灯 星空雲台ポラリエ 恒星追尾モード

 2つ目の流星の放射点方向を常に画角の中に収めるというものは、流星が降り注ぐような比較明合成写真を作りたい時のことを指します。流星群は、放射点と呼ばれる起点から四方八方に流れる特徴があり、ある一方向を撮り続けると、そこに写る流星はほぼ同じ方向から流れてきます。

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■使用機材:α7Ⅲ + FE 20mm F1.8 G 焦点距離 (35mm換算):20.0mm
■撮影環境:シャッター速度:10.0秒 絞り値:F1.8 ISO感度:6400 ホワイトバランス:蛍光灯 11枚を比較明合成

 上の写真は、8月のペルセウス座流星群の際に撮影した写真のうち、流星のみを比較明合成した作品になりますが、赤道儀を使わないで撮影した場合は、時間の経過と共に放射点の位置が変わってくるため、写り込んでくる流星の方向が最初と最後では異なってしまいます。一方、放射点方向を追尾して撮影することで、合成した時に「一点から放出される」様子を残すことができます。

 もちろん、最初に映り込んでいた地上景色は時間の経過とともにずれてきますので、地上景色の写真は別に撮影して合成する必要があります。

星を点像でとること

 ここまでは追尾撮影のメリットについてご紹介しましたが、ここで一度話を戻し「星を点像で撮ること」について考えたいと思います。逆説的なことを言いますが、星は必ずしも点像で撮る必要はありません。

 長時間露光や比較明合成をして星の動きを線で表現する作品があるように、「点」と「線」という2つの表現方法があるのが星空写真です。では、星を点像で撮る必要があるのはどういったシーンなのかについて考えたいと思います。それは大きく分けて3つあります。

・写真を大きなサイズに印刷して発表したい時
・天の川銀河の中心方向を撮影する時
・星座や天体がテーマの作品を撮る時

 一つ目の写真を大きく印刷する時ですが、A4サイズ以上の大きさに写真を印刷した時、それまで気にならなかった星のわずかな流れが目立ってきます。特に焦点距離で24mm以上になると顕著に現れます。わずかな流れというのは、言わば手ブレした作品を見ているような印象で、どんなに魅力的な構図で撮られていても残念な印象になってしまいます。撮った作品はSNSで共有するだけということであれば、気にする必要はありません。

 次に天の川銀河の中心方向を撮影する時ですが、これは星景写真の被写体でもおなじみの
「夏の天の川」の一部分を指します。無数の星が集まり、まるで夜空を流れる川のように写る天の川は、誰しも一度は撮ってみたいと思う被写体ですが、その中でも、色彩豊かな星雲があり、暗黒星雲とバルジの対比が美しい銀河の中心部分は、赤道儀で撮影すべき領域です。

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 上の写真はシャッタースピードを360秒にして撮影した写真で、上が赤道儀を使わない撮影、下が赤道儀を使った撮影になります。追尾撮影をした写真の方が美しいのは一目瞭然です。赤道儀を使う目安としては、30秒以上の露出をかけて撮影したい時と覚えておきましょう。

 最後に星座や天体がテーマの作品を撮る時ですが、具体的には「冬の大三角形を撮りたい」「北斗七星を撮りたい」「彗星を撮りたい」など、主に標準~中望遠レンズを使って撮影するようなシチュエーションの時には、星を点像で撮影する必要があります。

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■使用機材:α7Ⅲ + TAMRON 35mm F/2.8 Di III OSD 焦点距離 (35mm換算):35.0mm
■撮影環境:シャッター速度:20.0秒 絞り値:F2.8 ISO感度:800 ホワイトバランス:蛍光灯 ポラリエU 恒星追尾モード
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■使用機材:Canon EOS R + TAMRON SP 35mm F/1.4 Di USD
■撮影環境:シャッター速度:15.0秒 絞り値:F2.0 ISO感度:1600 ホワイトバランス:蛍光灯 ポラリエU 恒星追尾モード

 その際、赤道儀で追尾撮影するのに加え、ソフトフィルターなども併用すると、より星を強調して撮影することができますのでおすすめです。

ポラリエUとは

 2020年1月31日に発売されたポラリエUは、以前より発売されていたポータブル赤道儀「星空雲台ポラリエ」のイズムを受け継ぎながらも、様々な点でブラッシュアップされています。

主な点としては、

・よりコンパクトになり、カメラバッグへの収納がしやすくなったこと
・約150g軽量化され、持ち運びしやすくなったこと
・タイムラプス撮影を意識したカスタム速度が搭載されたこと
・スマートフォンまたはタブレットの専用アプリでコントロールできること
・アルカスイス式の雲台に直接取り付けができるようになったこと

などが挙げられます。

 これらの変更は、ポラリエを愛用していた天文ユーザーの声を少しずつ拾い上げて改良されているということで、同社の物づくりに対する姿勢が表れています。

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ポラリエUのモーター速度

 ポラリエUには5つのモーター速度があります。

・恒星時に対して0.5倍速追尾
・恒星時追尾
・太陽追尾
・月追尾
・カスタム

 0.5倍速は、主に星景写真撮影で使用する速度です。恒星時追尾で地上風景の流れが目立ってしまうようなシチュエーションの時に使用します。恒星時追尾は、星空をメインに撮影する時に使用します。

 太陽追尾は、皆既日食や部分日食の際、太陽が欠けていく過程を一定間隔で撮影する時や、太陽の前をISS(国際宇宙ステーション)が通過する時に、その瞬間まで太陽を画角にいれておくなどの用途で使用します。

 月追尾は、皆既月食や部分月食の撮影、ISSの月面通過や、惑星食(月が惑星を隠す)の撮影などで使用します。カスタム速度は、0.0倍~10倍までの間で、0.1刻みで任意の速度を設定することができ、主にタイムラプス撮影で使用します。カスタム速度の設定は、ポラリエU専用のアプリ上で行います。

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ポラリエUのセッティング

 赤道儀を使って正確に星空を追尾するためには「極軸合わせ」というセッティングが必要なります。極軸合わせとは、赤道儀の赤経軸を天の北極方向に向ける作業のことです。北半球の場合は、北極星のある位置がおおよそ天の北極方向になりますので「北極星の方向に赤道儀を向けること」と言い換えることもできます。

 ポラリエUの極軸合わせには、三通りの方法があります。

・付属のポーラファインダーを使用する方法
・別売のポーラメーターを使用する方法
・別売の極軸望遠鏡を使用する方法

 最も基本的な方法は、ポーラファインダーを使用する方法です。ポーラファインダーには直径約9mmの素通しの穴が空いており、ここから北極星を探すことで、おおよそ極軸を合わせることができます。最初は慣れないかもしれませんが、おおよそ向いているだけでもいいのであまり難しく考える必要はありません。

 次に別売のポーラメーターを使用する方法ですが、これは北極星が山などに遮られて視認できない時や、雲に隠れて見えない時に極軸を合わせることができる便利なツールです。ポーラファインダーでの極軸合わせに難しさを感じた方にもおすすめです。

 ポーラメーターには、方位磁石、角度計、水準器がついており、方位磁石を北に、角度計を北極星がある高さに、水準器の気泡が円の中心にあるようにすれば、おおよそ極軸合わせは終了となります。北極星の高さは撮影する地域によって異なりますので、使用する前に調べるようにしましょう。また、方位磁石の北は、真北とはちょっとだけずれており、厳密なセッティングをするのであれば「偏角」を調べ修正してあげる必要があります。

 最後に、極軸望遠鏡を使用する方法ですが、これは主に100mm以上の望遠レンズを使用する際に、より正確な極軸合わせが必要な時に行います。望遠鏡という言葉通り、拡大した視野の中で北極星を導入する必要が出てきますので、極軸微動雲台などを併用することが前提となります。

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 このように、ポラリエUはユーザーのレベルや使用目的によって、極軸合わせの方法を変えることができるのが魅力です。特に、別売のポーラメーターは、極軸合わせが難しいとされる南半球での撮影でも大変役に立ちますので、いずれ海外遠征を考えている方は購入を検討してみてください。

ポラリエからの改良点

 ポラリエUは、ポラリエと比べると形状がよりスクエア型になっているのが分かりますが、この形は撮影において理想的な形をしています。それは「南方向の縦構図での撮影がしやすくなった」ことです。

 従来のポラリエは、横長の長方形の形をしていたため、カメラを縦構図にして南に向けると、レンズとポラリエが干渉してしまうことがありました。そのため、L 字ブラケットなどを併用して、ポラリエとカメラの距離を離して撮影する必要がありましたが、それに対してポラリエUは、縦構図にして南に向けても機材が干渉することがないため、ストレスなく撮影することができます。

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 夏から秋にかけては、南の空に天の川が聳え立つような形になり、冬は明るい星座たちが南の空に集まります。縦構図で南の空を撮影したいというシチュエーションは年間を通して何度もありますので、この形は理にかなっています。

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■使用機材:α7Ⅲ + TAMRON 28-75mm F/2.8 Di III RXD 焦点距離 (35mm換算):44.0mm
■撮影環境:シャッター速度:20.0秒 絞り値:F2.8 ISO感度:4000 ホワイトバランス:蛍光灯 ポラリエU 恒星追尾モード

 また、ポラリエUはタイムラプス撮影にも使用することができます。タイムラプスとは、星空の日周運動などの長時間かけて変化する動きを一定間隔で撮影し、短時間に圧縮して動画として見せる技法のことです。

 ポラリエUは、このタイムラプスの素材撮影の際に、構図に動きを加えることができます。ポラリエUで付与できる動きとしては、横の回転運動であるパニングと、縦の回転運動であるチルトの2つです。

 こういった動きはモーションタイムラプスと呼ばれ、タイムラプスを作る上では必須のテクニックです。

 ポラリエUとカメラを別売のシャッターケーブルで繋ぐことで、専用アプリからシャッター制御をすることができます。露光中、露光停止中の回転速度や、回転方向、さらには撮影間隔、露光時間など、細かく設定することができるため、自分が理想とする動きのタイムラプスを撮影することができます。

 それらを設定すると、アプリ画面に回転角度が表示されますので、ポラリエU本体に刻まれた目盛り(一目盛りは5度)と照らし合わせることで、どの程度回転するのかをシミュレーションできるのも良い点です。

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まとめ

 ポラリエUは、その小さく可愛らしいボディながら、発想次第ではクリエイティブな作品作りにも挑戦することができる魅力的な機材です。極軸合わせの様々なバリエーション、豊富なモーター速度やアプリを利用した制御など、これから追尾撮影やタイムラプスに挑戦したいと思っている方からすでに撮影されているベテランの方まで、幅広いニーズに答えてくれる機材です。

 ビクセンの公式YouTubeチャンネルでは、ポラリエUを使用して撮影した星景タイムラプスムービーをアップしておりますので、ぜひそちらもご覧いただければと思います。

■写真家:北山輝泰
東京都生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業。天文台インストラクター、天体望遠鏡メーカー勤務を経て、2017年に写真家として独立。世界各地で月食や日食、オーロラなど様々な天文現象を撮影しながら、天文雑誌「星ナビ」ライターとしても活動。また、タイムラプスを中心として動画製作にも力を入れており、観光プロモーションビデオなどの制作も行っている。星空の魅力を多くの人に伝えたいという思いから、全国各地で星空写真の撮り方セミナーを主催している。セミナーでは、ただ星空の撮り方を教えるのではなく、星空そのものの楽しさを知ってもらうために、星座やギリシャ神話についての解説も積極的に行なっている。

第2回「それぞれの宙を見上げて」星空フォトコンテスト2021のお知らせ

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 ビクセンでは第2回「それぞれの宙を見上げて」星空フォトコンテスト2021を開催しています。宙(そら)は、もっとも身近にある、スケールの大きな被写体です。満天に星の広がる高原や海辺から、歴史的な建造物とともに、都会の景色の中で、あるいはご自宅からも、星空を撮影することができます。みなさんの「宙を見上げる時の想い」を、ぜひ作品にしてご応募ください。お一人何点でもご応募可能です。

・募集締め切り:11月30日(火)
・募集テーマ:星にまつわる8つのテーマ(国内・海外問わず)
(1)自然風景
(2)山
(3)海
(4)建造物
(5)水鏡
(6)天体写真(星雲星団、惑星など)
(7)月
(8)自由
・応募方法:プリントまたはWeb
・各賞:グランプリ(1作品)ビクセンオンライン商品券5万円分 + 「星空雲台 ポラリエU」 ほか

詳細はビクセンホームページをご覧ください。

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